【伊藤岳参議院議員】
日本共産党の伊藤岳です。新型コロナ感染症の広がりの中で、本年度の地方財政の資金繰り、また来年度の地方財政について質問し、武田新大臣と考え合いたいと思います。
今年度の地方財政計画には新型コロナの影響は想定されていません。その下で二月からは新型コロナウイルス感染が広がった。大型イベントの自粛、小中高の一斉休校要請等が行われ、四月七日には緊急事態宣言が出されました。政府の対策が小出しで遅過ぎる中、地方自治体は補正予算を組んで、客足が途絶えた中小商店への協力金や受診抑制で大幅な減収となった医療機関への支援や自粛要請で暮らしが厳しくなった住民への減免等を実施してきました。その財源としては、財政調整基金を取り崩して対応してきた自治体も少なくありません。
国の二次にわたる補正予算で地方創生臨時交付金や緊急包括支援交付金が決定されましたが、交付は数か月後と遅れに遅れて、財政調整基金の取崩し額にははるかにそもそも届きません。景気低迷による税収の落ち込みが追い打ちを掛けて、更に財政調整基金を取り崩すという状況にもなっています。地方自治体は今年度の資金繰りに苦慮している事態になっています。この間の新聞報道でも、県担当者の声として、交付金を活用した上で不足分を財政調整基金から取り崩しており厳しい状況、これ石川です。コロナで税収が大きく減ると財政調整基金で予算の穴埋めをせざるを得ない、これ神奈川ですが、掲載されています。
政府参考人、総務省は五月二十二日、「令和二年度内の資金繰りへの対応について」を発出しましたが、どのような問題意識でどのような措置を講じているのですか。
【内藤尚志政府参考人】
お答え申し上げます。現下の地方財政は、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして地方税収が大幅に減少するおそれがございますとともに、住民生活に密接に関連したサービスを提供しております公営企業におきましても減収が見込まれたところでございます。
このため、地方団体が当面の資金繰りに困らないよう、地方税の猶予に対する猶予特例債の創設、そして地方債に対する公的資金の増額確保、それから公営企業の資金不足についての特別減収対策企業債の発行、それから地方議会の議決後速やかに地方債を発行できるよう起債手続を弾力化することなどの支援を直ちに講じたところでございます。現場を担います地方団体が今後も積極的に感染症対策に取り組めますよう、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。
【伊藤岳参議院議員】
地方債、減収補填債についてですが、景気の動向に影響を受けやすい法人税等を対象に、年度途中に生じる減収分について地方債を充てることができる既存の仕組みです。この間は地方税の増収がありましたが、今年度はコロナの影響で法人税や地方消費税の減収が見込まれています。
政府参考人、早期発行の手続として九月臨時協議を実施しましたが、現時点で減収補填債の同意等の団体数、県と市町村で幾つですか。年度末、どの程度まで増えると想定をしていますか。また、リーマン・ショックのときには都道府県、市町村で幾つでしたか。
【内藤尚志政府参考人】
お答え申し上げます。本年度は、新型コロナウイルス感染症に対応した資金繰り対策といたしまして、例年、税収が明らかとなる年度末に発行されます減収補填債を九月に前倒し発行することを可能としたところでございます。現時点で、減収補填債の同意等団体でございますけれども、都道府県三団体、市町村三団体の計六団体となっているところでございます。
本年度は、地方税の大幅な減収のおそれがあることに加えまして、新型コロナウイルス感染症の対応などにより多額の支出を余儀なくされており、地方財政、大変厳しい状況にございますので、年度末に向けてかなりの数の地方団体において減収補填債の発行が見込まれるものと考えております。
リーマン・ショックのときでございますけれども、平成二十年度で二百二十四団体、約八千六百億円、平成二十一年度で二百六十九団体、約一兆二千億円の発行がなされたところでございます。
【伊藤岳参議院議員】
三県、政令市で三市となっていますが、リーマン・ショックのときの実績を見ても、申請が伸びてくることが考えられます。
ここに、ある政令市の資料を持っています。今年度及び来年度の市債活用の考え方についてという資料です。内容の一部を紹介するので、聞いていただきたいと思います。市税収入の減収相当分を歳出事業の見直しにより捻出することは市民生活や市民経済への支障が生じることが考えられるため、市債活用による対応を検討する必要がありますとしています。私、ここの市民生活、市民経済への支障が生じてはならないというこの自治体の思い、非常に大事だと考えています。多くの地方自治体がこういう立場で税収動向に着目し、資金繰りの判断を探っている。今、資金繰りに苦慮をしている地方自治体に寄り添った国の施策、対応が求められていると思います。
減収補填債は既存の仕組みですが、活用経験がない自治体もあると聞きます。大臣、年度末に向かう中で一層の周知徹底を図るなど、自治体に寄り添った対応を求めたい。どうですか。
【武田良太総務大臣】
御指摘のように、地方税収入が大幅に減ると見込まれる中、地方財政というのは本当に厳しくなってくるわけであります。その中においてでも、各地方団体というのは最前線に立ってコロナの感染拡大防止に努めておられる。先立つものがなかったからその防止対策ができなかったなんてことが起こらないように、我々はしっかりとした手だて、助言を行っていかなくてはならないと思います。
また、こうした団体が資金繰りに困らないようにいろいろな支援策を講じてきたところでありますけれども、先ほどからお話ある、減収補填債の発行経験の少ない市町村においても今回は財源不足が見込まれるという事情もあるわけでありまして、今後とも、しっかりと資金繰り支援の内容というものを丁寧に助言するとともに、公的資金の増額確保などにより地方団体の資金調達というものをしっかりとサポートしていきたいと考えております。
【伊藤岳参議院議員】
是非積極的に実施をしていただきたいと思います。地方消費税の大幅減収も見込まれます。全国知事会、指定都市市長会、中核市市長会など、地方団体は十月二十六日に国への共同提言を採択し、武田大臣にも手渡されました。その中で、地方消費税交付金などを減収補填債の対象項目に追加するなどを要請をしています。大臣は、地方税の減収に対する減収補填債、これに対する対象税目というものも今から増やしていくことも併せて検討させていただいておりますと十一月二日の衆議院予算委員会で答弁されています。
今年度の減収補填債の対象税目に地方消費税交付金を加えること、判断の時期などなど、どう検討していらっしゃるでしょうか。
【武田良太総務大臣】
様々な方からこの御指摘はいただいておるわけであって、このコロナ禍、これはもうありとあらゆる手段を講じてこのコロナ禍打ち勝っていかなくてはならないわけであります。こうした減収補填債の対象税目の拡大につきましても、柔軟な考え方でしっかりと対応していきたいと、検討していきたいと、このように考えております。
【伊藤岳参議院議員】
次に、特別減収対策企業債について聞きます。政府参考人、現時点で同意等実績額と自治体数を示してください。そのうち公立病院への活用自治体は幾つですか。また、過去、特別減収対策企業債を活用した事例として東日本大震災と熊本地震のときがありますが、それぞれの同意等実績額を示してください。
【内藤尚志政府参考人】
お答え申し上げます。新型コロナウイルス感染症に係ります特別減収対策企業債につきまして、現時点までの同意等実績額は約二百三十八億円、自治体数は三十八団体、このうち公立病院に活用した団体は三十四団体となっております。また、東日本大震災減収対策企業債の同意等実績額でございますけれども、平成二十三年度からの累計で約五十九億円でございます。また、熊本地震減収対策企業債の同意等実績額は、平成二十八年度からの累積で約百五十億円となっているところでございます。
【伊藤岳参議院議員】
つまり、もうこの今年度の九月の臨時協議の時点で既に東日本大震災とか熊本地震の同意等実績を大きく上回っているということだと思います。また、先ほど三十八分の三十四と言われましたが、多くが公営病院事業に活用されているということだと思います。新型コロナウイルス感染症拡大が第三波を迎える状況となる中で地域の病院経営が心配をされます。
私は、この間、埼玉県内六十三自治体全ての首長さんと懇談をしてきました。公立病院経営は飛び抜けて大変だと私自身感じましたし、首長さんも支援を求められていました。地域医療をどう守っていくのかが鋭く問われているし、我が党は病院への減収補填を求めてきました。
例えば、埼玉県草加市立病院は、新型コロナの影響で今年度六億二千九百万円の赤字見込みだそうです。そこで、地方創生臨時交付金の中、あっ、ここは十三億八千二百万円の配分がある市ですが、その中から二億円を病院会計に充てることにした。それでも四億円以上の赤字になるというんですね、大変深刻です。
大臣、特別減収対策企業債は、地方自治体が企業債を返済する際の償還利子の二分の一の額を一般会計から繰り出すことに対して、その十分の八を特別交付税で措置するという国の財政支援があります。一方、東日本大震災のときには、被災自治体の負担をゼロにするという立場で震災復興特別交付税が創設されました。そして、償還利子の二分の一の額を一般会計から繰り出すことに対してその全額、十分の十、震災特交で措置するという国の財政支援がありました。
大臣、公営病院の経営がこれだけ懸念される中、特別減収対策企業債に対する国の財政支援の充実、増額、例えば東日本大震災と同じように十分の十などを検討すべきではないでしょうか。
【武田良太総務大臣】
このコロナウイルスの影響によって、先生御指摘の病院でありますとか、あと交通機関とか、こうした収益というものがかなり落ち込みまして、この資金不足について特別減収対策企業債というものを発行できるようにしたわけであります。
この企業債につきましては、償還利子負担の軽減を図るため、特別交付税措置を講じることとしておりますが、これは過去の災害における対応や民間病院への同市の融資制度等も踏まえて講じているものであります。今後とも、公立病院の経営への影響を考えながらも、また、これ民間とのバランスも考慮しながら適切な対応を取ってまいりたいと考えております。
【伊藤岳参議院議員】
先ほど大臣も言われていましたが、公営、公的病院は大変感染症の中で役割果たしています。是非検討を急いでいただきたいと思います。
続いて、来年度の地方財源確保について聞きます。財政調整基金の取崩し、税収の落ち込みの中で、来年度以降の地方財源確保に対する不安の声が出てきています。ある市では財政非常事態宣言を出しました。この宣言読みますと、財政調整基金を取り崩すことなどではこれまで同様の市民サービスを提供することができない見込みとなりました、様々な分野で事業費の削減を行うことで事態の打開を図ってまいりますので市民の皆さんよろしくお願いしますとされ、来年度から、非課税世帯の重度心身障害者手当の削減、一人親家庭の医療費削減、医療費助成の削減などが事例として挙げられています。また、ある首都圏の政令市です、あっ、済みません、ある関西の政令市ですが、来年度当初予算編成で五百億円の財源不足が見込まれる、これまでと同じ行財政改革では立ち行かないと感じていると、市民サービスを維持していけないという発言を議長並びに市長がしています。
新型コロナ感染拡大で住民の命や暮らしが苦境に立たされている中、とりわけ医療や福祉の住民サービスの維持は欠かせないと思います。新型コロナ感染から住民を守るためにも、財政難を理由にして住民負担増やサービスを切り捨てるという事態にしてはならないと私は考えますが、大臣の認識を伺いたいと思います。
【武田良太総務大臣】
必要な行政サービスというものは、どういう状況下においても安定的にサービスが展開されるべきものだと私も考えております。
しかし、この国難のとき、やはり国民一人一人がみんなで我慢してこのコロナに打ち勝っていかなくてはならないわけであって、国、地方問わず、財政問題というものは本当に頭の抱える問題であります。
ここは、国は国としての役割をしっかり演じるとともに、各自治体の首長さんにおいては、しっかりとめり張りを付けた政策展開をしていただいて、しっかりとした行政サービスの安定化に努めていただきたいと、このように期待しておきたいと思います。
【伊藤岳参議院議員】
大臣、もう国民、随分我慢してきましたよ。今度は国の出番だと思います。
総務省は来年度の概算要求の中で、新型コロナウイルス感染症の影響により地方税等の大幅な減収が見込まれる中、地方団体が行政サービスを安定的に提供できるように、一般財源の総額について、令和二年度地方財政計画の水準を下回らないように実質的に同水準を確保と、一般財源総額を確保するとしています。
大臣、先ほどもこの一般財源総額の確保を言われましたけれども、来年度、新型コロナの影響で地方税収の減収が生じます。その減収が生じても、その減収分を見込んで必要な一般財源総額を確保するのが前提だということでいいですね。
【武田良太総務大臣】
必要な一般財源総額というものをしっかりと確保してまいりたいと、このように考えています。
【伊藤岳参議院議員】
私たちは、一般財源総額の実質同水準確保というのは、例えば毎年の社会保障の自然増分などをしっかり反映していないなど、本当に必要な地方の財政需要に応えたものとしていくためには課題も多いと考えています。
しかし、来年度の地方財政については、新型コロナ感染症による、感染の広がりによる地方税収の減収を見込んで、その上で一般財源総額を確保するのが当然の前提であると思いますし、大臣からそういう答弁があったということを確認をしていきたいと思うし、財政難で住民サービスが切り捨てられるという事態にはしてはいけないということの大臣のメッセージとしても受け止めたいと思います。よろしいですね。
【武田良太総務大臣】
先ほども申しましたけれども、先立つものがないからコロナ対策ができなかったとか、人間が生きていく上で必要な行政サービスが提供できなかった、こうしたことは避けるべく一般財源総額の確保に努めていきたいと考えています。
【伊藤岳参議院議員】
住民サービスの切捨てにつながらないようにということだというふうに受け止めました。またあわせて、コロナ感染の拡大の中で地方自治体が住民の命と暮らしを支える地域の実情に応じた例えば助成制度などの取組のためにも、地方単独事業費の充実確保を求めたいと思います。これについては、時間もありませんので、答弁は結構です。これは求めておくだけにしておきたいと思います。
さて、昨日、十六日ですね、総理官邸で行われた新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で菅総理が、エリア、業種を限定した効果的な営業時間短縮要請などを行い、協力金の支払などを行う場合には、新たに五百億円の枠を活用して地方創生臨時交付金の追加配付を行うと表明されたと今朝方の新聞報道で私も知りました。これは北海道などいろんなところを想定しているんだと思いますが、今日、三ッ林内閣府副大臣来ていただきました。この五百億円の追加配分はどのような趣旨なのか。また、配分の仕方についてはどのように考えているんでしょうか。
【三ッ林裕巳内閣府副大臣】
伊藤委員にお答えいたします。十月三十日の第四十四回新型コロナウイルス感染症対策本部会議におきまして、感染が拡大した場合の対策として、めり張りの利いた特措法等による措置をエリア、業種を限定して効果的に実施することを推進していくこととしております。
このため、国による一定の関与の下に、都道府県が効果的に営業時間短縮要請等を行い、対象事業者に協力金の支援等を行う場合には、新たに五百億円の枠を活用して地方創生臨時交付金を追加配分することで、地方公共団体による機動的な対応を支援することとしたところでございます。各都道府県への配分額につきましては、都道府県の協力要請の内容、すなわち、要請を行う店舗数、要請期間、協力金の単価等に応じて算定した額を交付することを予定しておりますが、詳細な算定方法については近々お示しをすることとしております。
【伊藤岳参議院議員】
非常に大事な提案だと思いますが、しかし、この五百億円の追加配付といっても、これは既に補正予算で計上していた例の三兆円の地方創生臨時交付金の枠内だということですよね。どうですか。
【三ッ林裕巳内閣府副大臣】
そのとおりです。
【伊藤岳参議院議員】
私は、実際の地方創生臨時交付金の増額を行うべきだと思います。それが求められていると思うんですね。全国知事会も六千百三十四億円の不足が見込まれるとしています。
大臣、地方創生臨時交付金について、地方を管轄する大臣として、強く内閣に地方創生臨時交付金の増額を求めていくべきではないでしょうか。どうですか。
【武田良太総務大臣】
地方の声にも、かなりそうした声が届いております。しっかりと関係省庁と連携して適切な対応を取っていきたいと思います。
【伊藤岳参議院議員】
是非強く求めていただきたいと思います。
私、調べてみましたら、今回の三兆円の地方創生臨時交付金、これはリーマン・ショックを参考にしたと言われていますが、リーマン・ショックのときには、名前は違いますが、臨時交付金、三兆四千七百九十億円を出しています。ですから、その現在の三兆円というのはそれにすら及ばない。しかし、リーマン・ショックの状況をはるかに超える経済状況だと言われています。
先ほど武田大臣からもお答えいただきましたが、内閣府副大臣、地方団体の要望、声をどのように受け止めて、次の補正や、また来年度の予算でどのように地方創生臨時交付金の増額を提案していくのか、増額に向けて検討していくのか、どうでしょうか。
【三ッ林裕巳内閣府副大臣】
御懸念の点でありますけれども、地方団体からの臨時交付金の増額の要望を踏まえて、第三次補正予算につきまして、十一月十日の閣議におきまして菅総理より編成の指示があったところでございます。第三次補正での対応につきましては、十日の菅総理からのこの指示を踏まえて今後検討していきたいと思います。
【伊藤岳参議院議員】
地方創生臨時交付金、本当に私も現場を回ってみて喜ばれていると思います。逆に言えば、協力金や医療支援など、臨時交付金を使ってやるわけですけれども、それだけやっぱり地方の財源が足りていない。しかも、来年、更にコロナの感染拡大や減収が見込まれる中、是非、武田大臣も内閣府副大臣も地方創生臨時交付金の増額に向けて全力を挙げていただきたいというふうに思います。
そのことを強く求めつつ、同時に、地方財源の確保、コロナに対応した、財政需要を十分に踏まえた地方財源の確保などについては委員会で引き続き求めていくことを述べまして、質問を終わります。