インタビュー

伊藤岳新参院議員に聞く

7月の参議院選挙埼玉選挙区で21年ぶりに日本共産党の議席を獲得した伊藤岳議員に、党埼玉県委員会青年学生部の小沢結実さんが初登院の感想や抱負などについて聞きました。

 18年間の活動を支えた現場の声

―当選、おめでとうございます。埼玉選挙区では21年ぶりの議席獲得となったわけですが、今のお気持ちはいかがでしょうか。

伊藤 ようやくたどり着いたというのが率直な気持ちですね。埼玉の共産党にとっては21年ぶりの議席獲得ですが、そのうち18年間、私は国政選挙の候補者でした。長かったですね。(笑い)

―参議院では4度目の挑戦で、衆院選も含めれば8度目の挑戦になりますが、長い間の候補者活動を支えた原動力は何だったのでしょうか。

伊藤 一つは共産党の綱領の立場、社会の変革は一歩一歩階段を昇るように進めていくという立場に励まされ、何度転んでも、自分を奮い立たせながらやってきたことです。特に18年間のうち最初の5年間ぐらいは、自民か民主かの「二大政党制」が叫ばれ、共産党がテレビ番組からも外されるような状況でした。二大政党時代が終わると、今度は「第三極」と言うことで・・・

―「第三極」って何ですか。

伊藤 二大政党の破綻が明らかになって、代わりの受け皿として「みんなの党」とかが第三極としてマスコミにもてはやされ、報道からも共産党がはじかれる。共産党が議席を伸ばしていくには困難な時代でした。私の息子が、「小学生の頃、選挙の結果が出た後に学校に行くのは嫌だった」「お前の親父、また負けたなと言われた」と振り返っていたけど(笑い)、当時は「学校の周囲200メートル以内には宣伝カーを入れないでくれ」とか、「おやじ、自民党か民主党のどっちかに入るわけにはいかないのか」とか言われましたね。(笑い)

 二つ目は、18年間候補者活動をやってきましたから、現場の声を聞いてきた数はどの候補にも負けないという自負があります。現場、現場で聞く市民の声、市民の怒りの声が私の原動力になったと思います。こんどの選挙では,シングルマザーの声を紹介しました。低賃金のなかで睡眠時間を削ってダブルワーク、トリプルワークをしているわけですよね。それでも自分の子どもに食べさせないといけないので、自分の食事を1回分除いて、それでも生活が苦しいというこの現状を何とか変えて欲しいという市民の心からの叫び、怒りの声。これが私を転んでも、転んでも前に向かわせたもう一つの原動力になったと思います。

首長訪問で期待の大きさ実感

―ところで、8月1日に初登院されたときの感想はいかがでしたか。

伊藤 ようやくたどり着いたと思ったのは当選後の何日かで、開会が近づくにつれてプレッシャーになってきて、このバッチの重さ、実際には軽いんですけど(笑い)、それを噛みしめて登院しました。初登院までの間に一つやり始めたことがあって、県内の63市町村の首長をすべて訪ねようと決意して回り始めています。ある保守系の市長さんからは、「伊藤さん、衆議院のバッチと違って参議院のバッチの重みが違う。衆議院のバッチは小選挙区の代表だから、1選挙区の代表。全県を網羅し、県内で7人しかいない議席だから伊藤さんに期待するものは大きい」と言われました。バッチの重さと、その期待に応えなければというプレッシャーもあって、複雑な気持ちでしたね。

―参院議員としてどんな問題に取り組んでいくお考えですか。

伊藤 共産党が掲げた公約だけでなく党派を超えた幅広い県民的な要求を実現していく仕事に全力で取り組んでいきたいですね。すでに市長さんからも沢山の要望が出されています。避難所となる学校体育館へのエアコン設置、「国の事業債が2020年度までで切れてしまう。これを延長してくれ」とか。「市の職員に地域手当が出ているが、なかなか算出の仕方が実情に合わなくなっているので、全県あるいは全国で統一するなど改善してほしい」とか。全県民的な立場で仕事をしていきたいと思っております。

いきなり環境委員会の理事に

―所属委員会が環境委員会に決まりました。環境問題ではどのような課題に取り組んでいくお考えですか。

伊藤 環境委員会ではいきなり理事に選ばれました。いま勉強中ですが、一番ビックな仕事は地球温暖化対策です。原水爆禁止世界大会に参加した時に、ある海外の代表が「今の人類には二つの問題がある」と言うんですね。一つは核も原発もない社会をつくっていくこと。もう一つは、地球温暖化もこのまま放置すると人類は生き延びられないというのです。この問題を解決しようと思えば、大企業の横暴を抑えなくてはいけないという問題にもなるわけです。地球温暖化対策は、人類にとって最もビッグな課題ですが、同時に財界大企業中心の政治から国民本位の政治に切り換えるという共産党の路線とも合致するので、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 身近な問題ではペットの殺処分の問題とか動物愛護の問題もありますが、この間、いろんな動物愛護団体ともつながりができて、殺処分ゼロの仕組みをつくって欲しいという要望を受けています。

 原発の問題も、原子力規制庁というのは環境省の管轄ですので、除染だとか原発の規制、復興支援の問題とか、これはこれで大きな仕事になるのではと感じています。

―今回の参院選の結果、埼玉から共産党の国会議員が塩川鉄也衆院議員と伊藤参院議員の2人になったため、県民の要求を実現するうえで大きな期待が寄せられています。今後、県民の要求を実現していくために、どのような分野や活動に力を入れていくお考えですか。

伊藤 私も入ったことで、県民の要求と国会をつなぐ窓口が2倍に広がったことは、大きいことだと思います。国会にはすでに様々な団体が来られています。共産党と関係の深い団体はもちろん、関係のない団体も含めて要望を寄せてきています。寄せられた要望には全力で取り組む決意ですが、今度の選挙では大きな問題を二つ取り上げました。

 一つは、大学の学費を半額にすること。いまある奨学金の利子を無利子にすること。特別養護老人ホームの1千カ所建設、これは全国的な要求でもあるけれど、日本一のスピードで高齢化が進む埼玉にとっても重要課題です。東京のベッドタウンとして学生の比率が高い独特の県でもあるので、この二つの問題にはとりわけ力を入れていきたいと考えています。財源ですが、大学学費の半額化は1兆3千億円、特養ホームでいえば、F35戦闘機の爆買い(147機)1兆7千億円を止めれば1千カ所できるわけですから、そういう論戦を国会でやっていきたいと思っています。

政治を変える流れのなかに希望が

―伊藤さんは長い間、民主青年同盟など青年運動にも携わってきました。選挙戦の演説の中でも若者の実態をお話しされていましたが、青年・学生の分野で特に取り組んでいきたい問題は何でしょうか。

伊藤 先ほど触れた学費、奨学金の問題と、もう一つ最低賃金を時給1500円に引き上げていくという問題。やはり最賃を引き上げていかないと、暮らしも大変だけど日本経済が好転していかないと思います。賃金が上がらなかったらトヨタも日産も車を買ってもらえないわけだし、経済の好循環をつくり出していくためにも、最賃を1500円に引き上げていくという仕事に取り組んでいきたいと考えます。

―最後に青年に向けてメッセージがあれば、お願いします。

伊藤 選挙後、あるマスコミの調査で嬉しかったのは、10代の投票先で私が第2位だったということですね。学費、奨学金の問題での訴えが、10代、学生の層に響いたという結果ですから、若い人の皆さんの期待や気持ちに応えた活動をしていきたいと思っています。今の青年には希望が見えていないのだと思います。希望はあるんですよ。政治の流れを変えていく流れのなかで、このようにすれば、あなたの生活は激変しますよというメッセージをこれからも若い人に送り続けていきたいですね。

―活躍を大いに期待しております。ありがとうございました。

【2019年9月1日付け 新埼玉】

聞き手 党県委員会青年学生部 小沢結実さん