報告記事

デジタル法が成立 共産党反対「個人情報をもうけに」

(写真)反対討論する伊藤岳議員=12日、参院本会議

 

 個人情報の保護より利活用を優先するデジタル関連法が12日の参院本会議で、自民、公明両党、日本維新の会などの賛成多数で可決・成立しました。日本共産党は反対しました。伊藤岳議員は反対討論で、「行政が特定の目的のために集めた個人情報を『もうけのタネ』として本人同意もないまま成長戦略や企業の利益につなげるものだ」と批判しました。(伊藤議員の討論要旨)

 同法案には個人情報保護の規定や考え方が欠落しています。

 伊藤氏は反対理由の第一にプライバシーの侵害をあげ、参院の審議では、政府が本人同意を得ずにデータを外部提供できる「非識別加工情報」制度の危険な実態が浮き彫りになったと指摘しました。

 また、個人情報保護法制の一元化は自治体独自の個人情報保護条例に縛りをかけるとともに、政府が運営するオンラインサービス=マイナポータルを入り口とした個人情報の集積は攻撃されやすく、一度漏れた情報は取り返しがつかなくなると指摘。個人情報保護の仕組みをAI(人工知能)などデジタル技術の進展に対応させることが急務だとして「情報の自己決定権を保障することが今こそ必要だ」と主張しました。

 第二に、地方自治への侵害として、「情報システムの共同化・集約」で「自治体は国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えない」と指摘。「自治体独自の業務が『行政の効率化』『財政健全化』を理由に削られていく」と懸念を表明しました。

 さらに、強い権限を持つデジタル庁は、自治体にも予算配分やシステム運用に口を挟めるようになると批判しました。

 伊藤氏は第三に、マイナンバー制度について、個人の預貯金口座のマイナンバーへのひも付けにより国が所得・資産・社会保障給付を把握し「徴収強化と社会保障費の削減を進めるものだ」と批判し、制度の廃止を主張しました。

 

 

(以下、伊藤議員の討論要旨)

 デジタル技術の発展と普及によって、行政等の業務や手続きを効率化し、国民生活の利便性を向上させることは大切です。しかしそれは、行政機関が保有する膨大な個人情報の利活用を、国民自らが監視・監督できる法整備、体制整備と一体に行われなければなりません。

 本法案には、個人情報のビッグデータ化、顔認証などAI(人工知能)の普及のもとでの個人情報保護、個人の基本的人権尊重のための新たな規定も、その考え方さえも欠落しています。行政機関が特定の目的のために集めた個人情報を「もうけのタネ」として、本人同意もないままに目的外利用、外部提供し、成長戦略へ、企業の利益につなげようとするものです。

 反対理由の第1は、個人情報保護をないがしろにし、プライバシーを侵害するおそれがあるからです。

 すでに国や独立行政法人は、大量の個人情報ファイルを非識別加工し、民間利活用の提案募集にかけています。横田基地騒音訴訟の原告の方々の情報や国立大学の学生の家庭事情、受験生の入試の点数まで、データ利用したい民間事業者からの提案募集の対象としてきました。プライバシーにかかわる情報を本人が知らぬ間に行政から民間へデータ提供するのがこの制度です。

 さらに本案は、個人情報保護法制の一元化により、地方自治体が独自に制定する個人情報保護の条例にも縛りをかけるものです。匿名加工した個人情報を外部提供する「オープンデータ化」を都道府県や政令市に義務化し、条例による個人情報の「オンライン結合の禁止」を認めないとしています。

 個人情報保護の仕組みを切り捨て、市民が築き上げてきた保護のための制度を壊すことは許されません。

 第2は、地方自治に対する侵害です。

 本案では、国と自治体の「情報システムの共同化・集約」を掲げており、地方自治体は、国がつくる鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになりかねません。

 また、強力な権限をもつデジタル庁は、国の省庁にとどまらず、地方自治体や準公共部門に対しても予算配分やシステムの運用について口を挟むことができるようになります。

 第3に、国民にマイナンバー制度を押しつけようとしていることです。

 本案では、個人の預貯金口座のマイナンバーひもづけなどを盛り込んでいます。マイナンバー制度は、国民の所得、資産、社会保障給付を把握し、国民への徴収強化と社会保障費の削減を進めるものです。そもそもマイナンバー制度は廃止すべきです。

【2021年5月13日付しんぶん赤旗・写真提供=しんぶん赤旗】