議事録

2020年2月26日 参議院国際経済・外交に関する調査会(海洋資源・エネルギーの確保など海洋の利活用及び開発の在り方〈海底資源・海洋再生可能エネルギーの管理・利活用と今後の展開〉について)

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。参考人のお三方、ありがとうございました。環境保全に配慮した開発が私は重要だと思っております。

 そこで伺います。海洋基本法では、海洋環境の保全を図りつつ海洋の持続的な開発及び利用を可能とすることとされ、海洋政策はこれに従うことになっています。環境省は二〇一六年に生物多様性の観点から重要度の高い海域を公表していますし、自然環境保全法では海洋保護区も位置付けられています。

 こうして指定された海域や保護区と開発エリアが重なったとき、海洋基本法が定めた海洋環境の保全はどのように守られるのか、守られるべきなのか、浦辺参考人、白石参考人のお考えをお聞きしたいと思います。

 

【浦辺徹郎参考人】

 御質問ありがとうございます。この海洋の環境については、もうこれは守っていく、開発をする前に必ずそういうことをやるということは、もうこれは必然だと思っております。

 ただ、懸念もございます。それは、いわゆる観念的といいますか、一歩も手を付けてはいけないというような、観念的な環境保護というのは、必ずしも人類の福利と合い、うまく組み合わさっていくものではない。それで、基本的にはきちっとサイエンティフィックにどういう影響があるか、あるいはその影響を減らす方法があるのかということをモニタリングし、エビデンスベースドでやっていくという必要がございます。

 それを、今の議論の中ではそれがなしにいろんな変な議論が行われることも間々あるということでございますので、日本としては、きちっと環境を見ていく技術をまず開発して、それでスタンダードを作ってガイドラインを作って、ここから以上は駄目ですよということをやった上で開発に取りかかる必要がございます。

 一例を挙げさせていただきますと、深海底でこういう開発が行われるわけですけれども、深海底で一年間、春夏秋冬、余り季節の影響はないとはいえ、一年間そこでどういう環境なのかを見て、それから開発計画を立てる必要があるわけですけれども、世界的に見て、日本しかそういう一年間ずっと見れる機械を開発した国はない。SIPではそういう機器を開発して、今世界中でそれは売れているんですが、そういうものをベースにした上で作っていく、開発をしていくということが必要で、それが今できるのは我が国だけだというふうに思っていますので、エビデンスベースドでやっていく。

 それから、保護区の問題も、今、海洋保護区、八%ぐらいつくっておりますけれども、開発地域からは少し離れております。ただ、こういう問題に関しても、非常に柔軟的に、順応的管理をしていくことによって、様々な多重の用途が海底にはございますけれども、それを解決していくことは可能だというふうに思っております。

 

【白石隆参考人】

 ありがとうございます。今、海洋の開発と環境については、今、浦辺参考人が言われたことで大体私も尽くされていると思いますが、一点だけ付け加えさせていただきますと、環境の問題、あるいは脱炭素、気候変動の問題、確かに一方では人類にとっての非常に大きな課題ですが、同時に、国の、国際的な、国際政治のレベルで見ますと、こういうものを言わば使いながら自分たち、自国にとって有利な形でゲームをつくっていこうという、そういう動きがあることも間違いございません。

 ですから、日本としましては、それをただ制約条件だというふうに受け止めるんではなくて、先ほどからSIPのお話が出ておりまして、私はあれは非常にいいプログラムだったと考えておりますけれども、こういうもので国としてもやはり科学技術に投資して、この制約条件を逆に日本の優位にどうやって転換していくのかという、そういう政策的な考えが要るというふうに考えております。

 

【伊藤岳議員】

 ありがとうございます。国会で議論を重ねていきたいと思います。洋上風力発電と環境の保全についてお聞きします。洋上風力発電計画が今秋田で一気に進んでいますが、環境面において不安の声が広がっていると聞いています。由利本荘市の計画では、八十八基の風車が陸から僅か一キロ余りのところに二列で並ぶというもので、これだけ風車が建ったら夕日を見れる状態ではないという声が上がっていると聞いています。漁業への影響にも心配の声が出ています。再エネ海域利用法では、発電事業の実施により、漁業に支障が及ぼさないことが見込まれることとガイドラインを定めていますが、由利本荘市などでの調査はいまだ行われていません。

 石田参考人にお聞きします。秋田で進んでいるこの洋上風力発電計画について、環境面での影響について御所見をお聞かせいただきたいと思います。

 

【石田茂資参考人】

 ちょっと、秋田でどうというところまではちょっと私詳しくは存じ上げないんですが、一般論として言えば、当然、そういった不安が出るというのはこれは当然だと思います。日本でまだそういった大規模なウインドファームというのは存在しない以上、それはそのとおりだと思います。

 当然、環境アセスの対象になるわけですけれども、今の再エネ海域法ですと、まず、促進海域に指定された後がたしか環境アセスに入る手順になっているので、まだその辺は、どういうアセスをしていくかというところははっきりしていないと思うんですが、当然、漁業問題はそれでは対象になります。それはやっぱりそのときの知見を総動員してやるしかないんだと思います。

 それから、やはり一番問題になるのは景観の問題ですね。これは、数字で割り切れるものではございませんし、別に平気だという人もいれば、自分が愛してきたふるさとの夕日が汚されると、断じて許せぬという人はもちろん当然いるわけでございまして、それは私のところの佐賀県でもちょっとそういったところはあるんですけれども、そこは本当に私も正解はちょっとございません。やはりどう折り合いを付けていくかということであろうかと思います。

 あと、漁業影響を一点だけ言えば、ヨーロッパの海では今四千五百ぐらい風車が立ってございますけれども、取りあえず、そんなに大きな影響があったという話は一応出ておらないようですので、もちろん、日本の海とヨーロッパの海、全然違いますし、魚も違いますので、そこはきちっと検証をしていかないといけないんですけれども、個人的には、それで魚が捕れなくなるとか、そういうことはないと思っております。

 ただ、先ほど申しましたように、特定の漁法がちょっとやりにくくなるとか、そういったことはあると思いますので、それはその地域地域でまた見ていかないといけない問題だろうというふうに思っております。

 

【伊藤岳議員】

 長崎県五島市、先ほど紹介があった、営業運転が開始された洋上風力発電設備ですが、市民との協議を繰り返して、信頼関係もめているという話も聞いています。この市民参画という点での教訓や、また更なる課題もあると思いますが、石田参考人の御所見があればお聞きしたいということが一つ。

 また、この五島市の例は、先ほどの秋田の着床式とは違って、いわゆる浮体式と呼ばれる海底に基礎を置かない方式でありまして、沖合五キロのところに敷設をされて、漁業への影響調査でも、海中の支柱部分に海藻が繁茂し、魚が集まり、魚礁になる可能性も出ているという報告もあると聞いています。同時に、コスト面などの課題も指摘されています。

 この浮体式の設備について、環境保全との関係での展望や課題の御所見、石田参考人にお聞かせいただければと思います。

 

【石田茂資参考人】

環境問題ということでいいますと、着床式の、例えばパイルを打つようなケースですと、流れがあると、いわゆる洗掘というか、ちょっとえぐられたりとか、そういったようなことがあったりします。そういった対策をしたりします。

それから、一番影響が大きいと言われているのは打ち込むときですね。これはさすがに音と振動がしますので、そういったところの対策をヨーロッパでも取っているところがございます。例えば、周りにあぶくがばっと上がるようにして、そういうところで音が拡散しないようにするとか、いろいろな工夫がされているところでございます。

浮体式はそういうところがないわけですけれども、やはり係留というところですね、先ほど申しましたように、チェーンがある程度長く海底をはうようなことがありますので、浮体式ですので、例えば台風が来たときとか、ある程度動いたりします。そうすると、チェーンがちょっと海底をこすったりするようなこともございますので、一般的には浮体式の方が環境影響は小さいと言われてございますけれども、そういうところも少し見ていかないといけないかなというふうに思います。

それから、魚礁効果ですけれども、おっしゃったように、非常に藻がいっぱい付いているということでございまして、何か、魚礁というと、魚がただ集まってくるような印象があるんですけれども、そうではなくて、そこで餌をついばんで、卵を産んで子育てをするというか、そういう増える要素が非常にあそこではあるというふうに聞いておりますので、そういったところは是非伸ばしていけたらいいんじゃないかなというふうに思っております。

 

【伊藤岳議員】

ありがとうございました。質問を終わります。