【伊藤岳議員】
まず、この度の一連の台風の被災地の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。お亡くなりになられた方々、御遺族にお悔やみを申し上げます。
初めに、気候変動を背景にした台風被害による災害ごみの問題についてお聞きします。
台風十九号の被害を受けた埼玉県東松山市は、全壊九十、半壊五十一、床上二百六十六、床下七十二、合わせて四百七十九棟に上る県内最大の被害です。住民の方は、ピアノまで流された、水の威力は恐ろしいと振り返っておられます。
運び出された災害ごみは日にちが経過すればするほど異臭を放ち、災害ごみの仮置場への搬出と処理が切実な課題となっています。また、一万八千六百六十六トンと推計される市の災害廃棄物、宮城丸森町が一万九千トンですから、それに匹敵する量ですが、これを市の家庭ごみ焼却施設で処理をしています。
市の焼却施設は築四十二年経過していて、一日当たりの焼却能力は九十トンしかありませんから、桁違いの深刻さです。一般家庭ごみの処理もできず、近隣自治体に何とか受け入れてもらっています。
どうしたら迅速に進むか。東松山市の廃棄物対策課長さんは、「災害廃棄物を運搬する人手と車両、また廃棄物を受け入れる側への支援強化をいただければ災害廃棄物処理が加速します」とお話をされていました。
今求められているのは、災害廃棄物運搬処理への支援を相互支援協定などに基づいて促進していくことです。
十一月七日時点で自衛隊も入っていますが、環境省職員延べ二十五人、応援自治体職員延べ七十一人の派遣にとどまっています。これで、大臣、支援が足りていると考えていらっしゃいますか。
【小泉進次郎環境大臣】
まず、伊藤先生の御地元でもあります東松山市におかれましては、お亡くなりになられた方、そして被災をされた方、心からお悔やみ、お見舞いを申し上げたいと思います。
環境省では、埼玉県内で全壊棟数が最も多かった東松山市に対しまして、発災直後の十月十五日から環境省の職員延べ十五名を派遣をし、さらに、支援自治体の廃棄物担当職員延べ七十七名を派遣をしています。仮置場の管理運営などの支援を実施していますので、引き続き自治体や関係団体と連携し、人的支援、全力で行ってまいりたいと思います。
【伊藤岳議員】
大臣、足りているかどうか聞いてるんですが、いかがですか。
【小泉進次郎環境大臣】
引き続き、適切に必要な支援を丁寧に行ってまいりたいと考えております。
【伊藤岳議員】
適切? 足りていないと思います、全く。
東松山市の仮置場では、様々なものが混じり合ったごみの分別に一番てこずっているという話も伺いました。災害廃棄物を迅速に仮置場に運搬することはまず大事ですが、分別、減量化に心掛けないと、仮置場から焼却施設などへの運搬が遅れてしまい、復興の遅れにもつながっていきます。
環境省は、十月十一日に分別、搬入について、十八日に自衛隊、ボランティア等との連携について事務連絡を急遽出しましたが、分別、減量化の初動での対応手順をまとめた手引を備えておくことがあらかじめ必要ではないでしょうか。今年度中に手引の策定をすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
【小泉進次郎環境大臣】
伊藤先生おっしゃるとおり、必要だと思います。
ですので、この初動対応に必要な事項をまとめた自治体向けの手引を今作成中です。本手引は、処理計画が未策定の自治体はもちろん、策定済みの自治体においても災害時に適宜活用いただくとともに、処理計画における初動対応部分の充実化につなげていただきたいと考えています。
この手引については、今、年度中にと伊藤先生から御指摘がありましたが、年度中に策定をして周知を図ってまいりたいと考えています。
【伊藤岳議員】
しっかりお約束いただけたと確認いたします。
東松山市廃棄物対策課長は、「三月に策定した災害廃棄物処理計画に立ち返りながら対応をできました、この計画を策定していない自治体が被災したら大変だったと思います」と語っておられました。
この災害廃棄物処理計画について、朝日新聞が一連の台風で被災した十七都県を独自調査したところ、計画の策定率は三三%としています。環境省の平成三十年三月末現在の調査でも全国で二八%、著しい遅れです。
また、策定した自治体の中でも、災害廃棄物の推定量や仮置場の位置などが記載されていないところがあります。環境省は、先ほどもありましたが、二〇二五年度までに六割の市町村での計画の策定を目指すとしています。
予想をはるかに超える災害が頻繁に発生する下で、まずこの目標、構えが低過ぎますよ。大臣、災害廃棄物処理計画の策定期日目標を、自治体への援助を抜本的に強めることと併せて前倒しをする必要があるのではないですか。
【小泉進次郎環境大臣】
一自治体でも多く、一日でも早くこの計画作りが進んでいくように我々も支援をしたいと考えております。
伊藤先生御指摘のとおり、二八%ですから、これ、本来であればもう既に六〇%達成していなければいけなかったんです。ですので、なぜ達成できないのかという原因の調査をすれば、やはり自治体のマンパワーの不足など、自治体の方から切実な声が上がってきています。
ですから、我々、昨年度に閣議決定をしたこの六〇%目標達成に向けて、具体的には防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策の一環として、これまでの災害対応における知見も踏まえて、計画がまだ策定されていない自治体を対象としたモデル事業、これらを重点的に実施することによりまして自治体による計画の早期策定に向けた支援を強化しています。これによって少しでも早く目標を達成できるように支援をしていきたいと考えております。
【伊藤岳議員】
目標の前倒しについてお答えありませんでしたが、目標、構えが低いから市町村の計画策定が遅れているということを認識すべきだと思います。再検討を求めます。
次に、台風被害の背景にある気候変動を引き起こしている廃プラスチック焼却の問題について伺います。
中国を始めとする外国政府による使用済廃プラスチック等の輸入禁止措置を受けて、環境省は通知を出し、家庭のごみを処理するための自治体の一般廃棄物処理施設で事業系の産業廃棄物の処理するように要請しました。
私、さいたま市と市内の桜環境センターをお訪ねしました。さいたま市には四つの一般廃棄物処理施設があります。資料一を御覧ください。この黄色の部分です。三つは、築二十年以上経過した施設で、焼却能力が落ちています。もう一つの施設は、築四年ですが、稼働率は一〇〇%なので、やはり焼却能力には余裕がありません。また、市の職員は、市民にごみの分別をお願いしておいて、様々なものが混じった産廃を受け入れることはできないですよとも言われていました。埼玉県が実施したアンケートでも、これ資料二を御覧いただきたいと思いますが、受入れを予定していると回答した自治体はゼロ、つまり一つもありませんでした。
廃プラスチック類の自治体の一般廃棄物処理施設における処理は、処理の余力はないし、地元の同意も取れません。
環境省、現時点で受入れを表明した自治体はありますか。
【山本環境再生・資源循環局長】
お問合せ等はいただいておりますが、現段階で受入れを表明している市町村はございません。
【伊藤岳議員】
通知出して半年ですよ。それで受入れ自治体は一つもない。もうこれ破綻だと思います。
茨城県笠間市のプラスチックリサイクル業者、亜星商事株式会社では、廃棄物処理施設が逼迫するような状況にはならないし、再資源化を促進する国の施策が遅れていることが問題と話しておられました。
そもそも、中国などに輸出していた使用済みのプラスチック類は、資源に代わる有価物です。それを再資源化、リサイクルではなく、自治体に焼却処理を要請すること自体が無理があるんです。
廃プラスチック類の一般廃棄物処理施設における処理を要請した通知の八番は撤回すべきです。大臣、いかがですか。
【小泉進次郎環境大臣】
御指摘の通知では、都道府県を通じて全市町村に対して、緊急避難措置として、必要な間、廃プラスチック類を受入れ処理することについて積極的な検討を依頼したところであります。
具体的には、それぞれの地域の実情や廃棄物処理業者の状況を踏まえて各市町村が判断されるものと考えています。市町村から問合せ等があれば適切に対応し、受入れを促進するとともに、今後、廃プラスチック類の処理の逼迫状況を踏まえて、更なる働きかけが必要か検討していきたいと考えています。
【伊藤岳議員】
緊急避難と言われますが、マテリアルリサイクルの六割も外国に頼り切ってきたんでしょう。国内の再資源化、リサイクルを措置する施策が遅れているから、中国の輸入禁止を受けて緊急避難で焼却せざるを得ないという事態になっているのではないのかと思います。
さらに、災害ごみの処理も問題になっている。廃プラスチック処理の一般廃棄物処理施設での要請は撤回すべきだと思います。
この問題の根本には、廃プラスチックを焼却して熱回収することに頼る政府の戦略に私はあると思います。国内の現状は、マテリアルリサイクルが二三%、ケミカルリサイクルが四%、サーマルリサイクル、つまり熱回収で燃やす、これが五八%。圧倒的な熱回収に頼っています。
熱回収とは、廃プラスチックを発電とか熱利用で焼却する、燃やすということですよね。つまり、CO2が排出されますよね。
資料三を御覧ください。左の欄になりますが、地球温暖化対策計画では、廃プラスチックなどの廃棄物の焼却量を削減すると述べています。そう言いながら、廃プラスチック処理の六割近くを焼却して、CO2を排出する。
大臣、これ、矛盾しているんではないですか。
【小泉進次郎環境大臣】
環境省としましては、熱回収よりもリサイクルを優先する立場に変更はありません。
これまでも環境省では、リサイクル設備の設置を補助金により支援するなど、国内リサイクル体制の整備を進めているところであります。御指摘の通知においても、当該補助事業について周知をしています。
一方で、リサイクル設備の整備には一定程度の時間を要するものと考えています。このため、通知では、今般の廃プラスチック類の処理が逼迫している状況を踏まえ、リサイクル体制の整備がされるまでの間の当面の対策を示しています。
そのうちの一つとして、あくまで緊急避難措置として、ごみ焼却施設又は廃プラスチック類の再生施設等を保有する市町村での受入れの検討をお願いをしているものであります。
【伊藤岳議員】
いや、いろいろ言われますが、二酸化炭素、CO2を排出しているということには違いはないんですよ。
資料四を御覧ください。下線を引きましたが、G20を前に政府が策定したプラスチック資源循環戦略では、全ての使用済プラスチックをリユース又はリサイクル、それが技術的、経済的な観点から難しい場合には熱回収と書かれています。
資料五、下線を引きましたけれども、これ、パリ協定に基づく長期戦略ですが、プラスチック廃棄物のリデュース、リユース、徹底回収、リサイクル、熱回収と、やはり熱回収と書いています。
環境省、間違いないですね。
【山本環境再生・資源循環局長】
ただいま委員御指摘のとおり、資料四に、プラスチック資源循環戦略に関係の記述がございます。具体的には、二〇三五年までに、全ての使用済プラスチックをリユース又はリサイクル、それが技術的、経済的な観点等から難しい場合には熱回収も含め一〇〇%有効利用するよう、国民各界各層との連携協働により実現を目指しますと記載しております。
また、資料五でお示しいただいたように……
(発言者あり)はい。ということでございます。
【伊藤岳議員】
要するに、間違いないと。この熱回収でよしとする政府の計画、戦略では、プラスチックの大量生産、大量消費、大量焼却は変わっていないんです。資料六を御覧いただきたいと思いますが、ここで示したように、この棒線全体がプラスチックの排出量、生産量になります。濃いオレンジの部分が熱回収、つまり焼却している。この十年間ほとんど変わっていません。つまり、削減は進まなかった。
プラスチックの生産者、使用者である企業に、熱回収でよしというシグナルを送っているからだと私は思います。
埼玉県三芳町の石坂産業株式会社をお訪ねしましたが、「欧州では、プラごみは自治体では回収、焼却していません。生産から回収まで企業は責任を持つ、これが当たり前です」と言っておられました。
大臣、プラスチック製品は、単一素材を使用を義務付けてリサイクルする、そして削減を抜本的に進めるなど、生産者、使用者の企業責任を徹底すべきではありませんか。
【小泉進次郎環境大臣】
プラスチックの資源循環を進める上で、製造事業者の果たすべき役割は私も重要だと考えています。
本年五月に策定したプラスチック資源循環戦略では、二〇二五年までにプラスチックのデザインを分別容易かつリユース、リサイクル可能なものとすること、二〇三〇年までにプラスチック製容器包装の六割をリユース、リサイクルすること、こういったマイルストーンを定めています。この戦略においては、このマイルストーンの実現を目指して、製造事業者を含めてあらゆる主体の連携協働を通じて、必要な投資やイノベーションを促進することとしています。
現時点でも、循環型社会形成推進基本法や、容器包装、家電、自動車などの各種リサイクル制度においても製造事業者等にリサイクルが容易なものを使用することを求めるとともに、リサイクル等の義務を課すことにより、製品設計の見直しを促す仕組みとなっています。
こうした既存の仕組みも踏まえ、環境配慮設計等のイノベーションが促進される公正かつ最適なリサイクルシステムの在り方を検討していきたいと思います。
【伊藤岳議員】
廃プラスチック処理のうち六六%、今現在焼却なんですよ。
大臣、記者会見で大臣は、気候変動について危機感を持ってとお話しされました。企業が相も変わらずプラスチックを大量に生産し、大量に焼却処理し続けている、しかも今後の戦略でも続いていく、これでは気候変動対策に逆行していると言われても仕方ないと思いますが、いかがですか。
【小泉進次郎環境大臣】
そうではなく、日本が気候変動の取組に対して前向きな取組を確実に進めているということを御理解いただく、また国際社会にも発信をしていくことが非常に大切だと思っているので、今、具体的なアクションと、そして発信も含めた強化をやっているところであります。
よく石炭についても批判をされます。国際社会に行けばクールジャパンじゃなくてコールジャパンと言われることもありますから、この批判があるのは私も重々承知をしていますし、何とか日本が世界でリードしている気候変動の取組の分野は、TCFDなどESGファイナンスの部分とかもありますので、先月もイングランド銀行総裁のカーニー総裁が日本に来られて、日本はこの分野はリードしているというふうに言っています。
こういった気候変動の前向きな取組が、一部のそうだとは思われない取組のことで覆われてしまうようなことは大変もったいないと私は思っていますので、歩みが停滞しているとか、気候変動に後ろ向きだとか、決してそういうことはないということを私はこれからも進めてまいりたいと考えています。
【伊藤岳議員】
廃棄物に関するEU指令というのは御存じでしょうか。そこでは、リサイクルとは、エネルギーリカバリーは含まれないと書かれてありますよ。つまり、日本が頼っている熱回収は、世界ではリサイクルとは認められていないんです。認識ございますか。
【小泉進次郎環境大臣】
そういう御指摘があるのは認識をしておりますが、一方で、3Rを含めてこれだけ回収というところも積極的にやっている社会全体の取組があるのも日本の強みだと思っております。これはフロンのこともそうですし、日本がこの社会全体で3Rを進めているということは、私は今後、世界により好意的な、前向きな理解をしていただくような我々の発信や取組が更なるものが必要だと考えています。
【伊藤岳議員】
だから、回収と言いますが、熱回収、リサイクルと呼ばれないような、CO2を排出し続ける対策なんです。私は、ここをやっぱり改めていかないと、世界に胸を張れる国にはならないと思います。
パリ協定の、二〇五〇年以降、温室効果ガス排出量を実質ゼロにという目標には、日本の長期戦略は遠く及びません。削減目標の引上げがどうしても必要だと思います。こうしたときに、逆にプラスチックを焼却してCO2を出し続けるような長期戦略、資源戦略は根本的にやっぱり見直すようにするべきだと私は思います。
このことを改めて強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。