議事録

2025年6月5日 総務委員会(行政書士法の改正について)

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 改正案は、行政書士の使命を規定するとともに、デジタル社会の進展を踏まえた行政書士の職責などの規定を整備し、また、二〇一四年改正で創設された特定行政書士の業務範囲の拡大などを行うものとなっています。

 まず、特定行政書士の業務範囲の拡大について聞きます。

 行政書士には付与されていなかった不服申立ての代理業務については、平成二十六年、二〇一四年の行政書士法の改正で、日行連、日本行政書士会連合会が行う研修を修了し、特定行政書士として登録されれば、行政書士が作成した提出書類に限って不服申立てでも代理ができることになりました。

 さらに、今回の改正案では、行政書士が代理で作成していない許認可等に関する不服申立てについても特定行政書士が代理依頼を受けることができるように、その業務範囲を広げることになります。

 一方、特定行政書士については、その実績と活動実態が十分には把握されていないのではないかと思います。例えば、日行連が会員サイトで行ったウェブアンケートをまとめた令和五年行政書士実態調査集計でも、特定行政書士の法定研修修了者の都道府県別集計はありますが、その活動実態を取り出したものはありません。

 法案提出者にお聞きします。

 特定行政書士制度の導入から十年が経過し、さらに、特定行政書士の業務範囲を拡大する今回の改正に当たって、特定行政書士の実績や活動実態について把握していく仕組みが必要になってきているのではないでしょうか。利用者の利便性、公平性を確保していくためにも、特定行政書士制度の成果や課題を明らかにするためにも、今回の改正に合わせて検討すべき課題ではないかと思います。法案提出者の認識を伺いたいと思います。

【上野賢一郎衆議院議員】 今回の改正によりまして、御指摘のとおり、特定行政書士の果たす役割が大きくなります。

 そうした観点から、やはりその実績であったり活動実態について、これ十分に把握していくことが必要だと考えておりますので、今後、日本行政書士会連合会あるいは総務省におきましてこの実態把握に努めていただきたいというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 実態把握に努めていただきたいという答弁いただきました。

 総務省にもお聞きします。法律を所管する総務省として、特定行政書士の実績や活動実態について把握していく仕組みを検討する必要について総務省はどのような認識か、また、調査方法としては具体的にはどのようなアプローチの仕方が考えられるか、答弁をお願いします。

【阿部知明 自治行政局長】 お答えいたします。

 法改正の実現によりまして特定行政書士が不服申立て手続を代理する件数が増えることが想定される中、委員御指摘のとおり、改正後の特定行政書士の業務実態を把握することは国民の制度活用促進の観点からも重要だと考えてございます。

 改正法が成立しますれば、日本行政書士会連合会に対しまして業務実態の調査や事例の収集に努めていただくよう要請するなど、総務省においても必要な協力をしたいと考えてございます。

 具体的な調査方法としましては、例えば、日本行政書士会連合会におきまして、法施行後のしかるべき時期に、全国で約五千五百人いらっしゃる特定行政書士に対して実態調査を実施することや、特定行政書士として不服申立て手続を請け負った際の事例報告を要請したいと、そのようなことが考えられるのではないかと思っているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 法改正後の適切な時期に日行連にアドバイスして調査を依頼すると、こういうことでよろしいですね、もう一度確認ですが。

【阿部知明 自治行政局長】 委員おっしゃるとおり、適切な時期に行政書士会にお願いをしていきたいというふうに思っております。

【伊藤岳 参院議員】 是非、適切な時期に日行連に対して依頼を行っていただきたいと思います。

 利用者の利便性の向上、公平性の確保につなげるためにも、法改正に合わせて検討すべきだと思います。改正、日本行政書士会連合会、ごめんなさい、日行連の実態調査は五年ごととなっています。そして、総務省は、行政書士制度の企画立案のための基礎資料の収集や都道府県による監督に資するため、毎年度独自に実態調査を実施しています。日行連だけに頼るのではなくて、総務省としても、法律、制度を所管する立場から積極的に調査を検討することを求めておきたいと思います。

 次に、行政書士の職責規定の新設について聞きます。

 改正案は、行政書士の職責規定を新設して、行政書士がその業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便性の向上及び当該業務の改善進歩を図るように努めなければならないと定めます。他の士業法にはない規定であり、行政書士法が初めて定めることになります。

 法案提出者にお聞きします。

 マイナンバーカードの取得については義務ではなく、その取得は任意であります。個々の行政書士がマイナンバーの、マイナンバーカードを取得するかどうかも当然任意であります。行政書士の職責を規定するに当たり、この点は十分に踏まえられる必要があり、その上に立って利用者への丁寧な対応が行政書士に一層強く求められることになります。

 この点については、法案提出者としてどのように認識をしていますか。

【長谷川淳二衆議院議員】 お答えいたします。

 今回の行政書士の職責規定でございますが、デジタル社会が進展し、行政手続のオンライン化が進む中で、行政手続に関する国家資格者である行政書士がデジタル化に的確に対応することが国民の権利利益の実現に資するものとの考え方から新設をさせていただいているものでございます。

 委員御指摘のとおり、マイナンバーカードの取得はあくまでも任意でございます。行政書士がその業務を行うに当たっても、その点を十分に踏まえる必要があると考えています。

 今回の法改正によりまして、行政書士の職責の一つとしてデジタル社会への対応等が規定されることになりますが、マイナンバーカードの取得に関しても、行政書士がそれぞれの利用者の希望や置かれた状況を踏まえて丁寧に対応することを通じて国民の権利利益の実現に資することを期待しております。

【伊藤岳 参院議員】 マイナンバーの、マイナンバーカードの取得は任意だという点に立って、丁寧な対応が求められるということでした。

 この点について、マイナンバーの発行を所管し、マイナンバーカードの発行を所管し、また行政書士法を所管する総務省として十分な注意が求められることになります。

 そこで、総務省に聞きます。

 総務省は、令和四年、二〇二二年一月から令和五年、二〇二三年三月末まで委託事業として日本行政書士会連合会へのマイナンバーカード代理申請手続事業を行っています。その概要、予算額、実績、行政書士による代理手続の件数、どうなっていますか。

【阿部知明 自治行政局長】 お答えいたします。

 今お話ございました委託事業でございますけれども、マイナンバーカードの普及促進を図るため、令和四年一月から実施してございます。様々な行政手続に精通し、官公署への提出書類の作成を業とする行政書士に交付申請書の作成などの申請サポート等を実施していただくため、日本行政書士会連合会に委託をしたというものでございます。

 予算額は約二・九億円でございまして、実績としましては、マイナンバーカードの申請を希望された方から七万一千二百九十件の申請を受け付けていただいたということでございます。

【伊藤岳 参院議員】 この委託事業は、政府がマイナポイントを付けることをうたってマイナンバーカードの普及に力を入れた時期が含まれています。河野大臣、当時のデジタル大臣も、マイナポイントを付けるやり方は言わば邪道だと言って、カードの普及ありきで突き進んだことを認めておられました。

 もちろん、委託事業の中での行政書士の役割は申請者代理としての手続ですが、だからこそ、行政書士の職責に明記する以上、今後一層、総務省が取得は任意であることを踏まえた行政書士の活動についても十分な注意を払うことが必要であると、このことを求めて質問を終わります。