議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
本法案でNTTの電話のあまねく提供責務を見直すとしますが、それによって何が起こるのか伺っていきたいと思います。
契約件数は減少したとはいえ、一千二百七十八万件ある加入電話の大半、一千百六十九万件の加入電話の提供をNTTが担っています。NTTは、全国津々浦々に電電公社から承継した電柱、管路等の線路施設基盤を保有し、サービスの適切かつ安定的な提供を確保することを目的として設立した会社として、電話のあまねく提供責務が課せられています。
本法案では、このNTTの責務を規定したNTT法第三条は削除されます。電話についてのあまねく日本全国における提供の確保について規定されているのは、電気通信事業法第七条一号となります。一号の電話の基礎的電気通信役務の提供する事業者、第一種適格電気通信事業者はどのような要件を満たす必要がありますか、総務省。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
電気通信事業法第百八条第一項には、総務大臣は、電話のユニバーサルサービスを提供する事業者であって、一定の基準に適合すると認められるものを、その申請により、交付金の交付を受けることができる第一種適格電気通信事業者として指定することができると規定されております。
この第一種適格電気通信事業者の指定の基準は、加入電話につきまして指定を受けようとする場合には、業務区域が存在する都道府県において、加入電話を提供することが可能な世帯数の割合が百分の百であること、公衆電話について指定を受けようとする場合には、業務区域が存在する都道府県において、市街地はおおむね一キロ四方に一台、それ以外の地域はおおむね二キロ四方に一台の基準に基づき、一定数以上の公衆電話を設置していることなどが規定されているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 その規定によって現在指定されているのはNTT東西ということだと思います。このNTT東西のメタル回線設備は二〇三五年頃には維持限界を迎える見込みとされ、その設備維持の負担は重いとされています。
NTT東西はメタル回線の縮退をどのように進めていく予定ですか。どう示されているんでしょうか。お答えください。
【村上誠一郎 総務大臣】 NTTは、メタル回線設備につきまして、設備の維持限界を迎える二〇三五年頃に、目途に縮退する考えを表明していると承知しております。
また、メタル固定電話の契約数は、現状のトレンドで減少した場合、二〇三五年頃にも約五百万程度は残存すると見込まれております。仮に五百万の利用者が残存する状態でサービスを終了する場合、社会的な混乱が生ずるおそれがあります。このため、まずNTTにおいて、メタル回線の設備の縮退と既存利用者の意向に関する具体的な計画を早急に策定する必要があると考えております。
総務省としましては、NTTが計画を作成次第、速やかに有識者や関係事業者等の意見もお伺いしながら、移行の時期、方法や移行先のサービスの案内等を含めその内容を検証し、利用者への影響を最小限に抑えるため必要な対応をしていきたいと、そのように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 早急に計画を立てる、どういうことが想定されるのか、今の段階では漠然としています。
衆議院の答弁では、NTT東西は、他に電話のユニバーサルサービスを提供する事業者がいる地域におきましてはこの責務を負わないこととなるため、このような地域におきましてはNTT東西がサービスを終了することも可能となると答弁をしておりました。
NTTが最終保障提供責務から外れサービスが終了した地域は、メタル縮退を進める地域となるのではないですか。どうですか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
本法案において新たに設けることとしている最終保障提供責務は、他の事業者が電話のユニバーサルサービスを提供しない地域においてこれを提供する責務でございます。
したがいまして、NTT東西は、他に電話のユニバーサルサービスを提供する事業者がいる地域ではこの責務を負わないこととなるため、そのような地域におきましてはNTT東西がサービスを終了することも可能となります。
【伊藤岳 参院議員】 ですから、聞いているのは、そのサービスを終了した地域はメタル縮退を進める地域となるんですか。どうですか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
そのような地域におきましては、これはあくまでもNTT東西の経営判断ではございますが、メタル回線設備は撤去され、他事業者等が利用できない事態ということも生ずることも想定されるところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 メタル縮退が進められる可能性があるということだと思います。
次に、公衆電話について聞いていきたいと思います。
公衆電話は設置基準が見直しされて、NTTは二〇三一年までに十一万台から三万台程度に削減する計画を立てております。
NTTの第一種公衆電話の削減方針に示された告示で定める最低限必要な台数は、これは私、調べてみましたら、東京都は一千百六十五台になるんです。二〇二一年度末時点では一万四千台でしたから、何と八%、一割以下に減ることになります。私、地元埼玉県ですが、埼玉県の場合は九百三十八台になります。二〇二一年度末で四千二百八十一台でしたので、何と二割程度に減るという、この驚くべき削減なんですね。
村上大臣は衆議院の議論の中で、公衆電話の役割についてこう答えられました。利用は減少しているものの、屋外におきまして携帯電話を利用していない場合もあることから、社会生活上の安全及び最低限の通信手段として重要であり必要なサービスである、情報通信審議会での最終答申におきましても、引き続きユニバーサルサービスに位置付けられることが適当とされていると認識を述べられました。
大臣、このように大幅に公衆電話が削減されていく下でも、公衆電話の役割が担保されているという、大臣、認識でしょうか。どうですか。
【村上誠一郎 総務大臣】 公衆電話の収支は赤字が続いている状況ですけれども、やはりユニバーサルサービスとしての公衆電話を提供することは可能であると考えております。
電気通信事業者がどのようなサービスを提供するかについては、その経営判断によるものでありますが、一概にお答えすることは難しいんですが、他方、公衆電話は、社会生活上の安全及び屋外における最低限の通信手段として重要でありまして必要なサービスであることから、引き続きユニバーサルサービスに位置付け、あまねく日本全国における提供を確保していきたいと、そのように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 NTTの削減計画、削減方針によりますと、二〇二三年から二〇二五年のこの三年間では年々九千台ずつ減らしていく計画になっています。
この公衆電話をですよ、年に九千台ずつ削減したところで、大臣、これメタル回線を、このところはメタル回線を縮退するということになるんですか。どう大臣考えていますか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
メタル回線につきましては、今、NTTにおいて、具体的に二〇三五年に維持限界を迎えることから、それに向けてどう縮退していくかというのを今検討しているというところと認識しておりまして、その移行計画を私どもとしては出てくるのを待っているというような状態でございます。
【伊藤岳 参院議員】 先ほども、今後計画だと、サービスが終了した地域、メタル縮退を進めるんですかと聞くと、今後の計画だと。で、公衆電話が削減したところ、メタル回線は縮退するのかというと、今後の計画だと。全然漠然としているんですね。
一体どこが縮退になるんですか。局長はどういうふうに想定しているんですか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 先ほど、今答弁申し上げましたとおり、具体的にどの地域からどのようにメタル回線の撤去ということを決めていくのは、まずNTTの方で計画を策定し、それを提示するということだと思っておりまして、私どもといたしましては、まずNTTがどのような形で計画を進めていくかということを見守りたいと思っているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、漠然とした計画のまま突き進むということなんですね。
次に行きます。
公衆電話は、一、災害時優先電話として、回線が混み合っても通信規制の対象外だと、二、通信ビルからの給電、回線を通じて電力供給を受けているため、停電時でも電話が掛けることができるとされています。災害時にはなくてはならない役割を担っていますし、きました。
最終答申でも触れられていますが、メタル回線縮退で、一般の公衆電話、災害用の特設公衆電話とも、光ファイバーで提供可能とするための追加コスト、これ、バッテリー設置や課金機能の開発、実装などが必要となることを踏まえて、無線や衛星などの活用を含め、その効率的な提供の在り方について検討することも必要と最終答申ではされています。
災害時の役割は、これまでメタル回線だから担保できてきました。メタル回線の縮退で提供の質を落としていくことになるのでは、公衆電話の役割を果たせません。提供の質を担保するために、総務省はどのように対応しているのでしょうか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
ユニバーサルサービスに位置付けられる公衆電話は、御指摘の局給電、すなわち、メタル回線を通じた局舎からの電力供給を光ファイバー等により代替することができないことなどを踏まえまして、現在はメタル回線により提供されているものに限られていると認識しているところでございます。
一方、委員御指摘のとおり、NTTが二〇三五年頃を目途にそのメタル回線設備を縮退すると局給電ということができなくなるため、停電時を想定すると、光ファイバーで提供する場合には、例えばバッテリー設置等の追加コストが必要になるのも御指摘のとおりでございます。
こうした点も踏まえまして、本年二月の情報通信審議会の最終答申では、メタル回線設備の縮退後の公衆電話の在り方についての検討が必要とされております。
総務省といたしましては、最終答申を踏まえ、利用者にとって支障が生じることがないよう、メタル回線設備の縮退後の公衆電話の在り方について丁寧に検討してまいります。
【伊藤岳 参院議員】 ちょっと大臣の考えをお聞きしたいんですが、公衆電話の担い手となるための要件は、先ほど紹介したように、NTTの計画であるように、全国三万台規模の公衆電話の提供が要件としては求められると思うんですね、公衆電話の担い手となる事業者には。これ、現実的に考えると、大臣、NTT以外に公衆電話の担い手となれる事業者がいるでしょうか。どう考えますか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
電気通信事業者がどのようなサービスを提供するかということにつきましては、あくまでも各会社の経営判断でございますので、一概にお答えするのは困難だというふうに思っております。
一方で、公衆電話自体は、当然、これは社会生活上の中で大変重要な最低限の通信手段であることから、総務省としては、引き続きユニバーサルサービスに位置付け、あまねく日本全国における提供というのを確保していきたいと考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 KDDIなど他事業者にお聞きしましたけれども、とてもとてもこれは、公衆電話はNTTしか担えませんというふうに言っておりましたよ。
携帯を持ってない方や、携帯を持っていたとしても携帯が通じない緊急時の場合など、なくてはならない公衆電話の提供が確実に保障されなきゃなりません。大臣、この公衆電話の担い手となる事業者には、この公衆電話の確実な保障、求めていきますか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
公衆電話は、委員からも御指摘ございましたとおり、屋外などにおいて例えば携帯電話を利用できない場合であったり、災害時であったり、社会生活上の安全及び最低限の通信手段として重要であり、また必要なサービスであるため、引き続きユニバーサルサービスに位置付けるということをしております。
その上で、公衆電話につきましては、その提供を確保するため、設置台数の基準といったものを定めているところでございます。この設置台数の基準についてでございますが、現在、屋外における最低限の通信手段として、徒歩でたどり着ける範囲に設置されるということを念頭に定めているというのが現状でございます。
総務省といたしましては、こうした基準に基づき必要な台数が設置されることを確保することで、屋外などにおける社会生活上の安全及び最低限の通信手段をしっかりと確保してまいりたいと考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 担い手にしっかり求めていってほしいと思うんですね。そこを強く求めたいと思います。
NTTは、これまで電話単体のサービスを提供しています。最終保障提供責務に移行していく際に、電話単体の契約となるのか、ブロードバンドとセットで提供となると条件はかなり違うものとなると思いますが、どのようにお考えですか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
電話のユニバーサルサービスは国民生活に不可欠であり、また、あまねく日本全国における提供が確保されるべきものでございます。したがいまして、その提供内容、また料金につきまして、適正な水準が確保されるべきであると考えているところでございます。
固定電話について言えば、現在の利用実態として固定電話のみ単独で使うものということが現在約一千三百万残存している状況を踏まえますと、引き続き、このような固定電話のみにつきましてもユニバーサルサービスに位置付けることとして、その提供水準も確保することとしているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 価格はどうなっていくでしょうか。現在、NTTでは千七百円で提供されています。人口減少地域や離島のような条件不利地域で提供料金が上がっていくということにはなりませんか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
固定電話の料金についてでございますが、委員からも御指摘ございましたとおり、地方の利用者負担、こういったものが過度に大きくならないようにする観点から、地方の料金だけ高くするといったことを制限することとし、これを法令においても規定することとしております。
総務省としては、引き続き、電話のユニバーサルサービスを適切な条件で利用できる環境の確保に取り組んでまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、事業者ごとに料金設定が違ってくることはあり得るということですか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
もちろん利用者によって料金設定というのは原則自由でございますので、利用者ごとに料金水準というのは当然異なる場合が想定されるということでございます。
【伊藤岳 参院議員】 想定されると。あまねく提供責務を削除して、利用者にとっては提供水準が後退ということにあってはならないと指摘したいと思います。
電報について聞きます。
衆議院の議論で、NTTからは情報通信審議会の場におきまして、電報の利用が大幅に減少して赤字であることを踏まえて、機動的に事業を見直し効率化を図るため、提供条件を変更できるよう規制緩和の要望があったと説明しています。
総務省は、この提供条件の変更についてどのようなものを想定できると考えておられるでしょうか。
【湯本博信 総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
現在、電報事業は、電気通信事業法附則第五条により、当分の間、電気通信事業とみなされ、NTT東西に対して料金を含む契約約款の変更認可等の規律が課せられているところでございます。
NTTからは個別具体的な変更の内容について聞いておりませんが、今後、一般論として申し上げるならば、例えばでございますが、市場環境の変化に対応し料金等の変更を行う、こういったことが考えられるところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 料金等の変更は考えられると。
信書便であれば、提供エリアは原則事業者により自由な設定が可能とされています。現状でも配達員がいない地域があると思いますが、そういった地域は提供しないエリアとされていくことになりませんか。
【牛山智弘 情報流通行政局郵政行政部長】 お答え申し上げます。
電報配達員がおらず配達が難しい地域につきましては、オペレーターが受取人の電話番号に電話することで電報の内容について伝えていると承知をしております。
NTT東西からは、例えばNTT東西が特定信書便事業の規律が課される場合の個別具体のサービス内容につきましてはお聞きはしていないところではございますけれども、こうした配達困難なエリアへの現行の対応は、電報事業が特定信書便事業となっても経営判断により継続は可能であると承知しております。
【伊藤岳 参院議員】 電報の電文を電話で読み上げるというんですか。それ、電報というんですか。台紙はどうするんですか。
【牛山智弘 情報流通行政局郵政行政部長】 お答え申し上げます。
電報配達員がおらず配達が難しいにつきましては、オペレーターが受取人の電話番号に電話をするということでございますのと、受取人が電報の物理的な配達を希望する場合には、電話による配達などと別途郵送にてお届けをしているというのが現在の状況であると承知してございます。
【伊藤岳 参院議員】 利用者が想定する電報の姿と大きく変わりますよね。利用者にとってどのような可能性があるのかきちんと説明すべきだと指摘をして、質問を終わりたいと思います。
以下反対討論です。
【伊藤岳 参院議員】 私は、日本共産党を代表し、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部改正法案に対する反対討論を行います。
NTT法は、国民の共有財産である通信インフラを電電公社から承継したNTTに対し、その果たすべき業務と責務を定め、その実行に必要な担保措置を定めた法律です。ところが、昨年の法改正に続き、本法案は附則で改廃の検討を規定し、NTT法の廃止を盛り込んだものです。
本法案は、NTTに国民生活に不可欠な電話の役務の適切、公平かつ安定的な提供を確保させるために規定したあまねく提供責務規定の削除を行うものです。代わりに、電話、ブロードバンドとともに最終保障提供責務を設け、複数事業者に担わせるとしています。
政府は加入電話の契約数の減少を指摘しますが、NTT東西が提供してきたひかり電話は堅調に契約数を伸ばし、メタル固定電話の契約数と合わせればその需要は減少しておらず、NTTが電話役務の適切、公平かつ安定的な提供の確保を行うことこそが求められています。この見直しの結果、国民、利用者に契約内容や通信品質の低下、地域格差を押し付けることになりかねません。
さらに、本法案が、電報事業についての電気通信事業法の規定を削除し、信書便法に基づく事業とすることでNTTが電報事業から撤退する自由を許すものとなっていることも問題です。
民営化の際に提供を義務付けてきた国内の電報事業は、減少したとはいえ、いまだ三百七十七万通の利用があります。電報事業は歴史も長く、国民に広く浸透しており、NTTの経営判断のみで自由に撤退できるようにすれば、国民の利便性に影響を及ぼすことになりかねません。
二〇二三年度のNTTグループ全体の営業収益は十三兆を超え、営業利益も約二兆円で、毎年連続で増加しています。利益優先のNTTの姿勢に追随し、NTTに課せられたあまねく提供責務を削除するとともに、電報事業からの撤退を許し、その公的役割を後退させることは重大です。
NTTの完全民営化への布石となる本法案には反対であることを述べて、討論といたします。