議事録(未定稿のため今後変更される可能性があります)
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
初めに、公立大学の出資認可対象にベンチャーキャピタルファンド等を追加する改正について武部文科副大臣にお聞きします。
本改正法案では、産業競争力強化法に規定される特定研究成果活用支援事業を含む三つの類型を公立大学法人の出資対象に追加します。特定研究成果活用支援事業については、約一千億円の政府出資に支えられてスタートし、官民イノベーションプログラムの、スタートした官民イノベーションプログラムの令和五年度末までの投資の結果が明らかになっています。イグジット案件があります。上場等十四社、MアンドA二十八社、清算五社といった結果が出ています。
五社の清算によって、出資額の未回収が確定した金額、幾らですか。
【武部新 文部科学副大臣】 官民イノベーションプログラムは、国立大学法人の研究成果の実用化を促進するため、これらの成果を活用した大学発ベンチャーに対し、創業直後の早い段階を中心に出資を行う事業です。
本プログラムの投資実績は、令和五年度末時点で、大学発ベンチャー二百二十六社に対し約六百二十一億円の投資を行い、委員御指摘のとおりでありますが、このうちイグジット案件は、IPOが十四社、MアンドAが二十八社、清算が五社となっております。
また、これらのイグジット案件に関わる出資額は約八十六億円、回収額は約百五十二億円で一・七六倍となっており、一方、このうち元の出資額まで回収に至らなかった清算五社の損失は約七億円となっております。
【伊藤岳 参院議員】 出資ですから、当分、当然、分配される場合もあれば、出資分が回収されない場合もあります。
官民イノベーションプログラムの大学ごとの認定ファンドへの投資額を見ますと、東京大学四百十六億円、京都大学二百九十一億円、東北大学百二十四億円などとなっており、政府からの出資額一千億円に支えられたものとなっています。
相当規模の投資と支援が必要だということを示しています。
しかし、全国八十五ある国立大学法人の中で、これに見合うような取組が可能なのはどれだけあるのか。
副大臣にお聞きします。
国立大学法人及び大学共同利用機関法人についての出資認可基準では、出資の財源について、運営交付金や授業料等については、これは充てない、充ててはならないとされていますが、それはなぜでしょうか。
【武部新 文部科学副大臣】 国立大学法人等からの出資に、出資を受ける事業者は損失を生じないように努めなければならないと考えておりますが、結果として仮に損失が発生した場合、その損失が国立大学法人等の教育、研究等に対して影響を与える事態は避けなければなりません。
このため、国立大学法人及び大学共同利用機関法人の出資に関する認可基準においては、国立大学法人運営費交付金や授業料等の相当額を出資の財源には充ててはならない旨定めております。
【伊藤岳 参院議員】 重ねて副大臣にお聞きします。
国立大学法人等の出資認可基準は、特定研究成果活用支援事業に参加する公立大学にも適用されますか。
【武部新 文部科学副大臣】 これは公立大学の設置の、が決定することでありますので、国の方では、この適用には、基準には適用されません。
【伊藤岳 参院議員】 出資基準、出資財源の基準については、文科省の出資認可基準は公立大学には適用されないということでした。
そこで、伊東大臣にお聞きします。
公立大学の運営経費に対しては、毎年度一千七百億円から一千八百億円の普通交付税が措置をされています。地方自治体も、地方税や地方交付税などからつくられる地方財源を公立大学の運営資金、運営支援に充てています。
私の地元、埼玉県立大学も、公立大学として保健医療福祉に関する教育、研究の中核となって地域社会に貢献をというのをミッションとして掲げて設立、運営されてきました。各地の公立大学も同様に大事な役割を果たしてきていると思います。
そこで大臣に聞きますが、出資財源に何を充てるかは自治体の長の認可となると言いますけれども、国立大学法人と同じように、公立大学法人の運営に必要な経費について出資財源とはしないということを徹底すべきだと思うんですが、どうでしょうか。
【伊東良孝 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 公立大学法人の出資に当たりましては、設立自治体の長の認可を要件としており、設立自治体が関与するものとなっております。
これは今委員御指摘のとおりであります。そのため、出資する際の財源につきましても、設立自治体におきまして、国立大学法人の例を参考にしつつ、公立大学法人の運営への影響も踏まえ、適切に判断がなされるものと承知をしているところであります。
【伊藤岳 参院議員】 先ほども武部副大臣からもお話あったように、国立大学は、やっぱり大学の研究、学問に影響を与えちゃいけないというふうなことで出資認可基準で定めています。やはり公立大学にもこうしたことを徹底する必要があると思うんですね。
政府は、国立大学法人に対して、運営費交付金に依存することなく、稼ぐ大学運営を推し進めていますが、公立大学の大学運営の在り方や経営の実情にかみ合ったものになるかどうかという点では非常に懸念を感じるということを指摘をしておきたいと思います。
文科省関連の質問はここまでですので、御退席いただくよう、委員長、お取り計らいお願いします。
【伊藤岳 参院議員】 次に、自治体情報システムの標準化、ガバメントクラウドの利用等による自治体負担への対応について聞いていきたいと思います。
特定移行支援システムの該当見込みが一月末時点で、先ほどの礒委員の質問にもありましたが、二千九百九十九システム、五百五十四団体、約三割の自治体となっています。今後、更に増えることが想定されています。一月二十四日の総務省事務連絡、旧内簡では、標準準拠システムの利用に伴うガバメントクラウドの利用料及び関連する費用については、所定額を、あっ、所要額を一般行政経費単独に計上し、普通交付税においてガバメントクラウドへの移行状況に応じた措置を講ずるとしています。
総務省にお聞きします。
二〇二五年度の地方財政対策、地方財政計画に向けて総務省は、デジタル庁から二〇二五年度の自治体情報システムのガバメントクラウド利用料について、約四百五十円との、四百五十億円との見積りを受けて、現在、七月末の普通交付税大綱の策定に向けて普通交付税の算定について検討を進めており、内容としては、固定費を措置した上で、その上で自治体が利用するシステムの数、人口の数などを算定要素とするとお聞きしましたが、このとおりでよろしいでしょうか。
【須藤明裕 総務省大臣官房審議官】 お答えいたします。
ガバメントクラウド利用料及び関連する費用については、デジタル庁で把握した移行状況等を踏まえ、令和七年度から地方交付税措置を講じることとしております。措置額につきましては、デジタル庁で把握した状況等を踏まえ、四百五十億円程度と見込んでおります。
具体的な算定方法は現在検討中ですが、普通交付税において自治体ごとのガバメントクラウドへの移行状況に応じた措置を講じることとしており、デジタル庁と連携して適切に算定してまいります。
【伊藤岳 参院議員】 情報システムの活用は自治体業務と一体のものですから、交付税分を超えて利用し過ぎるから控えられるというものではないと思うんですね。
場合によっては、様々な給付金の支給など、国の施策によって利用が大きく増えることもあり得ます。見込み分を超えることは当然あり得ると思うんです。
もう一点、総務省に聞きます。
この一月の総務省事務連絡では、標準準拠システムへの移行に伴うシステム運営経費の増加分について地方交付税措置を講ずるとしています。増加分について交付税措置を講ずる。総務省は、増加分についてデジタル庁から標準準拠システムへの移行に伴うシステム運営経費の増加分の見込みとして約百億円とデジタル庁から見積りを受けていると。その算定については人口による包括算定で検討していると聞いていますが、この事実も確認したいと思います。
【須藤明裕 総務省大臣官房審議官】 お答えいたします。標準準拠システムへの移行に伴って機能が増強されること等によるソフトウェア借料等の増加分については、デジタル庁が把握している状況を踏まえ、普通交付税措置を講じることとしております。
措置額につきましては、デジタル庁が把握している状況を踏まえ、百億円程度と見込んでおります。
算定方法でございますが、単位費用により標準的な経費を措置することとしており、具体的な費目としては、人口を測定単位とする包括算定経費に計上をしております。
【伊藤岳 参院議員】 デジタル庁、これ百億円、間違いないですかね。
【楠 正憲 デジタル庁統括官】 はい、そのとおりでございます。
【伊藤岳 参院議員】 穂坂デジタル副大臣に来ていただきました。
副大臣にお聞きします。
一月二十九日に、中核市市長会、先ほども話題が出ましたが、緊急要望をしています。この中で、標準仕様書の要件数が平均で一・二倍、一部は三倍以上に増えており、最高さっき五・七倍という話がありましたけれども、それに伴って開発、保守費が大幅に肥大化したことが明らかになったと指摘をしています。
穂坂副大臣にお聞きしますが、こうした仕様書の要件数の増加による開発、保守費の肥大化について、デジタル庁としてはそのように認識はしておりますか。
【穂坂泰 デジタル副大臣】 ありがとうございます。
標準システムにつきましては、こちらの方から標準的な仕様書を出しております。それについて、増加しているしていないについては、今のところまだ把握はしていないところであります。
ただ、今出てきている金額に関しては、しっかりと見積書を精査するなど、様々なコミュニケーションを取りながら進めているところであります。
【伊藤岳 参院議員】 事実確認急いでいただきたいと思うんですが。
冨樫総務副大臣にお聞きします。
今紹介したように、中核市市長会が指摘する仕様書の要件数の増加による開発、保守費の肥大化については、標準準拠システムへの移行に伴うシステム運用経費の増加分ということでみなして交付税算定の対象となるということでいいでしょうか。どうですか。
【冨樫博之 総務副大臣】 中核市市長会を始め、多くの自治体から標準準拠システムへの移行後の運用経費が移行前と比べて大幅に増加する旨の声を伺っており、先日、デジタル行財政改革会議においても、石破総理から、運用経費問題も含めた取組について加速、深化させるよう指示があったところでもあります。
総務省として、この問題は非常に大きな問題と認識をしております。
また、標準化に伴うシステムの運用経費の削減については、デジタル庁を中心に今後各種の取組に対応を検討していくものと認識をしております。総務省としても、自治体を支援する立場から、自治体の実態を適切に伝えるなどしてデジタル庁の取組に協力をしてまいります。
【伊藤岳 参院議員】 交付税算定措置の対象になるということだと思います。
中核市市長会の緊急要望の中ではこうあります。
国策である標準化のために肥大化したシステムの開発、保守費を自治体が運用経費として負担せざるを得ないことが見込まれる状況となっており、自治体の財政に将来にわたり大きな影響を与えるというふうに書かれています。これ、重要な指摘だと思うんです。
楠統括官は衆議院の審議の中で、二十の基幹業務の標準化の遅れについて問われて、社会保障分野が特に遅れていると、施策に寄り添って取り組まれたところが社会保障分野では多いので、上乗せの給付であったり横出しの給付であったり、住民記録などと比べると非常に特色のある分野で、それは技術的な話だけではなく、そもそも住民サービスの根幹に関わるところが非常に多いと、これ大事な答弁されていると思うんですね。
で、楠統括官、また副大臣にもちょっとお聞きしたいんですが、社会保障分野のシステムについての自治体ごとの上乗せ、横出しについては自治体の創意工夫を十分に尊重すべきではないかと思いますが、お考えどうですか、それぞれ。
【楠 正憲 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
自治体基幹業務システムの統一・標準化の取組につきまして、これ、そもそも趣旨として、自治体が情報システムを個別に開発することによる人的、財政的負担を軽減し、地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるようにするとともに、新たなサービスの迅速な展開を可能とする、これを目指しているというところでございます。
そのため、標準化対象事務につきましては、情報システムによる処理の内容が各自治体において共通し、かつ、統一的な基準に適合する情報システムを利用して処理することが住民の利便性の向上及び自治体の行政運営の効率化に寄与する事務であるかと、こういった観点から選定をしているというところでございます。
また、自治体の行う独自施策のうち、パラメーターの変更によって実現可能であるもの、これは標準機能又は標準オプション機能として位置付けております。国の調査又は自治体からの提案により、この独自施策をパターン化した結果、標準的な機能として実装可能なもの、うち費用対効果が極めて小さいものを除いたものに関しては、これも同様に標準オプション機能として位置付けることとしておりまして、各制度所管省庁が策定をする標準仕様の中には自治体独自施策も一定含まれているというふうに認識をしております。
また、標準仕様に含まれない独自施策について、標準準拠システムとは別のシステムを構築して実施することを妨げるものではなく、自治体の自主性を尊重しながら、基幹業務システムの統一標準化を進めてまいりたいというふうに考えております。
【穂坂泰 デジタル副大臣】 ありがとうございます。
今統括官の方から話があったとおり、自治体の自主性というものは阻害しないというふうに考えております。あくまでこの統一的な基準に適合する情報システムを利用して処理することが住民の利便性の向上及び自治体の行政運営の効率化に寄与する事務ということで今回仕様を作ったところであります。
【伊藤岳 参院議員】 ありがとうございます。社会保障分野の上乗せ、横出し部分、自治体の創意を尊重したいということだったと思います。
冨樫副大臣にちょっとお聞きしたいんですが、今話題になったこの社会保障分野の上乗せ、横出しは、自治体がそれこそ身近な、住民に寄り添って行ってきた施策だと思うんです。それぞれの自治体の業務とは不可分の部分だと思うんですよ。
もちろんガバメントクラウドに載せるか否かは自治体の判断ですが、国策である標準化のために肥大化したシステムの開発、保守費、上乗せ、横出しの部分も含めてね、というこの中核市市長会の先ほどの指摘にも該当するものだと思うんですよ。
そこで、副大臣にお聞きしますが、標準準拠システムへの移行に伴うシステム運営費については、自治体の経費負担の増加の全体状況をしっかりと把握すべきではないかと思うんです。そして、システム経費、運営経費の増加分の全体を財政措置の対象とすべきではないか、上乗せ、横出し分も含めてね。そのことについてお答えいただきたい。
【冨樫博之 総務副大臣】 先ほど答弁をさせていただいたとおりでありまして、委員御指摘の運用経費問題は、全国的に非常に大きな課題と認識をしております。
デジタル庁と連携をし、地方の実情を丁寧に伺いながら、しっかりと対応してまいりたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 しっかりという言葉の中に、国策である標準化のために肥大化した増加分全てしっかり見るんだということを改めて強く求めて、自治体の懸念を広げちゃいけないということを申し述べて、質問を終わります。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党を代表して、第十五次地方分権一括法案に反対の討論を行います。
本法案による改正事項には、申請や手続における利用者の負担軽減や行政事務の効率化につながるものが含まれていますが、以下の点については問題があり、反対とするものです。
第一に、地方独立行政法人法と産業競争力強化法の改正です。
本法案は、公立大学法人が大学発ベンチャーに投資、支援を行う認定ベンチャーキャピタルファンド等への出資することを可能とします。同制度による出資は先行して国立大学法人で行われており、政府出資に支えられた官民イノベーションプログラムの二〇二三年度末時点の実績では、投資額八十六・三億円に対して百五十二・二億円の回収額で、回収率はプラスとしています。
しかし、これは、IPOやMアンドAにより利益を得たエグジット案件、いわゆる結果の出たケースだけの数字であり、エグジット案件を含めた投資先会社数二百二十六社のうち約二一%の結果にすぎません。既に清算した会社も五社あり、約七億円の投資が未回収となっています。情勢の変化次第では、今後、投資結果がマイナスとなる可能性もあります。
政府は、国立大学法人に対して、運営費交付金に依存することなく、企業投資等による稼ぐ大学運営を押し付けてきました。地方独立行政法人法、産業競争力強化法の改正は、これを公立大学法人にも強く促すものであり、反対です。
第二は、マイナンバー法の改正です。
マイナンバーは、元々、社会保障制度、税制、災害対策の三分野に限定して利用するとしていましたが、これまでの改正でそれ以外の分野でも利用を可能とし、本法案はその対象を更に拡大するものです。
マイナポータルを通して各種手続等を行うとしていますが、マイナポータルでは、世帯・戸籍情報、健康・医療、年金関係、一部の国家資格などで既に様々な個人情報がひも付き、確認できるようになっています。マイナンバーカードと暗証番号が入手されれば、こうした情報が一気に流出し、情報漏えいの危険性が更に高まることになります。
以上述べて、討論といたします。