議事録(未定稿のため今後変更される可能性があります)
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
まず、電波法の新たな割当て方式の導入についてお聞きします。
六ギガヘルツ帯を超える高い周波数帯で価格競争、いわゆるオークションによって利用できる者を選定する制度を導入します。
この法案の対象とする六ギガヘルツ帯を超える高い周波数帯は、伝送できる情報量が大きいものの、電波距離が短いという特性があり、区域は全国区ではなく一定の広がりを持った地域で区切ったもの、通信事業者以外が参加することが想定されています。
総務省、衆議院総務委員会の答弁ではオークションの参加資格について、条件を極力少なくし、創意工夫を重視して割り当てると言われましたが、極力少なくとはどういうものですか。
【湯本博信 総務省総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
六ギガヘルツ以下の周波数帯は、比較的伝送距離が長いという特性があることから、全国的に広いエリアをカバーすることが求められる携帯電話や放送などに適しているものと考えられます。
例えば携帯電話について申し上げれば、金額の多寡だけではなく、エリアカバーの整備計画なども含めて総合的に評価し、最も優れた者に周波数を割り当てる方式を採用しているところでございます。
他方、六ギガヘルツを超える高い周波数帯は比較的利用が進んでいない一方で、周波数の逼迫解消や我が国の持続的な経済成長、競争力強化への貢献を図る上でも、今後その活用を促進していくことが重要です。
そのためには、創意工夫を重視して周波数を割り当てることが重要であることから、例えばエリアカバーやネットワーク開放に関する条件を課さないこととするなど、割当てに当たって求める条件を極力少なくして、専ら金銭の多寡で評価する価額競争を導入することとしているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 総務省の資料によりますと、事例として、スマート工業、ドローン、モビリティー、高精細映像通信に欠かせない映像用センサー技術、高い周波数帯に対応した端末に必要な技術、小型化、省電力化の部品、システムの技術の開発に携わる事業者の利用などが示されています。
また、パブリックコメントに利用規模が寄せられているなども聞いています。
二つ聞きたいと思います。
一つは、当面、具体的に想定されている事業、業種などがあるのでしょうか。そういう事業、業種などに対応して、それぞれ実施指針を作成してオークションを行うことになるんでしょうか。
二つ目、衆議院の総務委員会では、より幅広い事業者の参入による市場の活性化などの観点から、新規参入であることを定めることも想定されると答弁をされています。この新規参入については実施指針にどのように定めていくのでしょうか。ベンチャーなどとするのでしょうか。
【湯本博信 総務省総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
現在、この新たな周波数割当て方式につきまして関心を寄せている方々といたしまして、具体的には、より幅広い事業者や大小様々な主体として、具体的に、各地域のケーブル事業者であったり、鉄道事業者、またメーカーなどが関心を持っていると承知しているところでございます。
また、価額競争による割当てを行う際には、今申し上げました、より幅広い事業者や大小様々な主体が参入しやすい制度設計を検討していくこととしており、具体的には、例えば一部の周波数帯について新規参入事業者のみに参加者の資格を与えるといったことのほか、周波数の使用区域を都道府県や市区町村などの単位で設定することなどの方策を講じることが考えられます。
このように、価額競争の実施に当たりましては、多種多様な事業者が参入しやすい工夫を施すことを通じて、全国各地域における関連市場の活性化や新サービスの創出につながるよう努めてまいります。
【伊藤岳 参院議員】 参加資格について聞きます。
実施指針で示されることになる参加資格について、法案第二十七条の二十の二、二項の四号イで、第五条第三項各号に掲げる者のいずれにも該当しないことその他と規定していますが、このその他の中身は何なんでしょうか。その時々、状況を判断しながら総務省が検討していくということなんでしょうか。
【湯本博信 総務省総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
価額競争における参加資格につきましては、価額競争の実施に関する指針において定めることとなりますが、新規参入であることについては、例えば、一部の周波数帯について、これまで携帯電話用の周波数の割当てを受けてない者のみが価額競争に参加できることとするといったようなことが考えられるところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 法案では、オークションの参加について大小様々な主体を想定しています。諸外国で行われてきたオークションでは、一定資本力もある通信事業者の価額競争の下で金額が高騰し、事業自体が立ち行かなくなる事態などが生じてきました。
この法案が想定する小規模事業者にとって、価額が高騰すれば競り勝てない、若しくは事業の実現性も危ぶまれるという事態になってしまうのではないでしょうか。
この価額高騰、事業者が過剰な負担とならないための設計はどのように行われているのですか。
【湯本博信 総務省総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
価額競争のデメリットとしては、落札価格の高騰等が考えられるところでございまして、デメリットへの対応策を併せて検討することが必要であるとの考え方の下に、これまでも丁寧に検討を進めてきたところでございます。
落札価格の高騰への対応策について、総務省の有識者会議におきましては、例えば、過剰な競争を避けるための十分な周波数枠の確保、落札可能な周波数幅の上限として、いわゆる周波数キャップの設定といった方法が有効であることが示され、実際に諸外国のオークションにおきましても、こうした方策が取られた事例があると承知しているところでございます。
本法案が成立した暁には、こうした有識者会議の議論を踏まえるとともに、諸外国における周波数オークションでの取組状況も参考にしながら、本法案に基づく価額競争のための指針におきまして、デメリットへの対応策を適切に講じてまいりたいと考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 周波数帯の幅の確保などを言われましたが、オークションとなれば、結局は金額の多寡が物を言うのではないでしょうか。
総務省は、オークションを実施していくために事前にニーズ調査をすると言っています。このニーズ調査については、法案で規定されているんですか。高周波帯の利用ニーズについてどのようにつかんでいかれるのでしょうか、示してください。
【湯本博信 総務省総合通信基盤局長】 お答え申し上げます。
価額競争により割り当てられる周波数が、周波数の使用区域、実施時期につきましては、総務大臣が、対象とする周波数の特性やニーズなどを踏まえて、価額競争の実施に関する指針におきまして、個別具体的に定めることとしております。
そのため、本法案が成立した暁には、価額競争の対象とする周波数のニーズを把握するため、割当てを希望する周波数の幅や区域などを中心とした調査を丁寧に実施し、その結果を指針に適切に反映してまいります。
この点につきましては、特に法案に具体的に記載がございませんが、あわせまして、私どもといたしましては、指針の策定に当たりましては幅広い方々の意見を収集できるよう、例えばでございますけれども、行政手続法に基づく意見公募手続や様々な広報活動、そういったものも併せて実施してまいりたいと考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 先ほど来いろいろ聞いてきましたが、ニーズなどを踏まえて実施指針で定める、まあ実施指針で定めるということを言われます。そして、この実施指針を策定していく過程についての法律の規定はない。そして、時々の判断で実施していくと、まあ総務省が判断して決めていくと、実施指針を、ということだと思うんですよ。
で、大臣にお聞きします。
こうなるとですよ、オークションと言いますが、実際には、政府がその時々の判断で作る実施指針に左右されるものとなってしまう、総務省が割当てを見越して条件を付けていく、実施指針によってどのような競争になるかが左右されるものになっていくのではないでしょうか。大臣、どうですか。
【村上誠一郎 総務大臣】 今回の価額競争は、六ギガヘルツを超える高い周波数の活用を促進するために導入するものであります。高い周波数の活用を促進することにより、例えばスマート農業や遠隔医療などのサービスの早期の実現化が期待されております。
また、これによりデジタル技術へのニーズが高まり、全国各地域の課題解決が持続的な発展にも大きく貢献することが期待されております。
こうした電波の有効利用につながるよう、法案が成立した暁には、価額競争の具体的な実施方法についてしっかりと検討していきたいと、そういうふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】 法案が決まった暁にはと言われますが、今見えないんですよね。新たな割当て方式で電波の有効利用になるとしていますが、六ギガヘルツ帯の事業内容は、結局、総務省の今後の判断、今後作られる実施指針のそれ次第だと、国の意向次第だということだと思います。
次に、放送法の受信者保護規律の整備についてお聞きします。
民放の責務、放送法第九十二条は、基幹放送の受信に係る事業者の責務として、特定地上基幹放送事業について、事業者、ごめんなさい、特定基幹放送事業者及び基幹放送局提供事業者は、その基幹放送局を用いて行われる基幹放送に係る放送対象地域において、当該基幹放送があまねく受信できるように努めるものとするとされ、難視聴解消の努力義務とされています。
しかし、現状も、放送が局地的に受信できない地域で、自治体がギャップフィラーを設置したり、住民による共聴施設が設置されたりしてきています。共聴施設が必要となる地域では、視聴者が、アンテナ設置時の負担、設備投資、改修や維持管理費を負担しながら視聴しています。こうした負担について、住民により重くのしかかっています。
総務省はどのようにこれ認識しているでしょうか。また、どう対策されるべきと考えていますか。
【豊嶋基暢 総務省情報流通行政局長】 お答えいたします。
地上波テレビにつきましては、地理的あるいは地形的な要因等により、放送事業者の電波のみによって全地域を放送するということには限界がございまして、委員御指摘になられました難視聴地域におきましては共聴施設などによって視聴環境を確保しているというのが実情でございます。
また、これらの設備につきましては、老朽化や人口減少あるいは高齢化が進んでいる中で、その設備の更新や運営に困難が生じてきている地域もあるものというふうに認識をしているところでございます。
こうした状況を踏まえまして、総務省では、共聴施設について伝送路の光化などの高度化を伴う改修やケーブルテレビなどへの代替に対する財政支援を実施をしているところでございます。
総務省としては、視聴者にとって過度な負担とならないようにこうした支援を継続しつつ、地域の放送受信環境が維持されるよう不断に取組を進めてまいる所存でございます。
【伊藤岳 参院議員】 私の地元埼玉県でも難視聴地域があります。埼玉県の小鹿野町では、地デジ移行を機に、住民が負担する共聴施設の組合でNHKと民放の放送を受信しています。
国はこの共聴組合の赤字分について自治体が補填した額の半分を特別交付税措置していますが、それでも、小鹿野町の場合の、小鹿野町の共聴組合の場合ですね、住民の負担額は年間一世帯当たり六千円から一万二千円にも上ります。大半が高齢者世帯ですから、この地域の方にとってとても重い負担です。
大臣、共聴施設がなくても、そもそも放送が受信できていれば、しなくていい住民負担ではないでしょうか。総務省は、住民にこうした負担が掛かっていることをそのままにするんでしょうか。大臣、どうですか。
【村上誠一郎 総務大臣】 地域によりまして、人口の著しい減少といった放送を取り巻く環境の変化の中で、小規模な、一部の小規模な中継局につきましては放送事業者による維持更新が困難になってきているものと認識しております。
しかしながら、現状の規律では、放送事業者の中継局の維持更新は努力義務であります。仮に放送事業者が中継局を廃止した場合、その中継局による放送が急に見られなくなる事態が生ずる可能性があります。
このため、本法案によりまして、放送事業者がやむを得ず中継局を廃止する際には、受信者が放送番組を引き続き視聴できるようにする措置を講ずることを努力義務として導入することとしたものであります。
具体的には、放送事業者が中継局を廃止する際に、その影響を受ける受信者に対してケーブルテレビや配信サービスなどによる代替措置を講ずることを新たな努力義務とするとともに、その実施内容に係る公表義務を課すこととしております。
【伊藤岳 参院議員】 大臣、お聞きしたこと答えていただいていないんですが、この住民負担をそのままにするんですかということなんですね。辺地であることで住民負担を求められてきているんです。現状のまま、これ保護されないまま放置するんですかということをお聞きしています。
もう一つ大臣に聞きます。
改正案は、中継地上基幹放送局をやむを得ず廃止するときは、当該中継地上基幹放送局を用いた基幹放送を受信できなくなる地域において、当該基幹放送に係る放送番組を引き続き視聴することができるようにするための措置を講じるよう努めること、九十二条第二項と、中継局廃止に起因する受信者保護規定を放送事業者などに求めるものです。
そこで聞きます。中継局廃止に起因するとは言えないと、民間放送局が判断してしまってですよ、新たに住民負担が生じる地域が増えるということにはなりませんか。そういうことは起こらないと言い切れますか。大臣、どうですか。
【豊嶋基暢 総務省情報流通行政局長】 お答えをいたします。
先ほど大臣からも答弁がございましたけれども、今回の改正によりまして、中継局を廃止する場合には、その受信環境を維持するための措置を講ずる義務を新たに設けたものでございます。これによりまして、放送局の中継局を万が一廃止をするような際には、そのための代替措置をしっかり講ずるということの法律上の根拠ができますので、これに従って適切に対処をしてまいることになると思います。
あわせまして、その実効性を確保する観点から、その具体的な手続、進め方につきましては、総務省におきましても、実施に当たってのガイドラインの策定、あるいは、この廃止の事業を実際に進めるに当たっては、各地域におきまして放送事業者で調整する場が設けられてございますので、そこの場に総務省が参加するとともに、実施を、実際に当たっては総務省も様々な形で助言をすることによって適切な手続の遂行ということを確保してまいりたいというふうに考えております。
【村上誠一郎 総務大臣】 今、局長の答弁どおりでありまして、そのような内容に沿って総務省も関与していきたいと、そのように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 局長も大臣も明確に言われないんですが、新たに住民負担が生じる地域は増えないと言い切れますか。もう一度答えてください、大臣。
【豊嶋基暢 総務省情報流通行政局長】 繰り返しになりますけれども、今回の改正法に基づきまして、廃止をする場合におきましてはその地域において引き続き放送番組を視聴できる措置を講ずるという規定を新たに設けましたので、これに伴いまして、当該地域の視聴者、受信者の視聴環境の維持ということに努めることが可能となるものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 まあ努める努力なんですよね。だから、民放の判断により、新たに住民負担が生じる地域が増えかねないということですよ。既に住民負担となっている地域の負担も現状のまま保護されない。以上指摘して、質問を終わりたいと思います。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】
私は、日本共産党を代表し、電波法及び放送法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対の理由は、本法案が六ギガヘルツ以上の高い周波数帯における新たな周波数割当て方式としてオークション方式を導入することです。
企業が電波を利用するときに適切な経済的価値を置くこと自体は合理的です。しかし、本法案のオークションによる新たな割当て方式は、複数の市区町村など一定の広がりを持った地域ごとに、携帯電話事業者以外にも大小様々な主体で行うことを想定しているとしていますが、実際に参加できる事業者は、高い落札額の価額競争に耐えられる事業者に限定されかねません。
また、地域を限った高周波帯の割当てであっても、公共性に対する考慮が求められます。従来の比較審査方式で条件とされる整備計画や通信網の開放などを事業者に求めることが必要です。総務省は、高い周波数帯の活用にそぐわないことを理由にこれを排除し、今後、総務省令等で条件を具体化するとしています。
これは、政府の政治的判断に白紙委任するものであり、国民の共通財産である電波の公共的な利用に反すると言わざるを得ません。
次に、地上基幹放送事業者が中継局を廃止する際に、ケーブルテレビや配信によって放送番組を引き続き視聴できるようにするための措置を講じる努力義務の追加です。
現行法は、電波の送信によって基幹放送があまねく受信できるように努めるものとされています。
中継局の廃止は、その地域に住む視聴者、国民に受信方法の変更を新たに迫るものです。中継局の廃止の判断基準は示されておらず、事業者の経営判断に委ねられます。中継局を廃止した際の代替措置も努力義務でしかありません。質問でもただしたように、代替措置への移行の担保も十分ではありません。これでは、事業者の責務の緩和でしかありません。
以上、討論といたします。