議事録

2024年12月23日 地方創生デジタル社会特別委員会(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律の改正〈ガバクラ法〉」/保険証廃止を決めた3大臣協議/反対討論)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。地方公共団体情報システムの標準化への移行期間についてお聞きします。

 地方自治体の情報システムの管理運営は、自治体業務の効率化や災害時などへの備えの必要もあり、各自治体が行い、近隣自治体や県などの単位での共同クラウドを構築するなどの努力が重ねられてきました。各自治体のクラウドが現在の姿に至るまでには、それぞれの経緯があり、年月が掛かっています。

 平大臣、地方公共団体の情報システムの標準準拠システムへの移行を原則二〇二五年度までに移行完了するという目標は、いつ、どのような根拠で決められましたか。

【平将明 デジタル大臣】 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症対応を踏まえ、行政のデジタル化を加速するため、二〇二〇年十二月に閣議決定をされたデジタル・ガバメント実行計画において、国、地方を通じたデジタル化を今後五年間で進めることとされ、地方公共団体の情報システムの標準化についても二〇二五年度を目標とすることとされたものでございます。

【伊藤岳 参院議員】 政府が実行計画で決めれば粛々と二〇二五年度末に向けて進むというものではありません。いざ本格的に自治体、ベンダーが標準化に向き合ってみると、二〇二五年度までには二十業務標準化は困難だという自治体が次々と出てきています。十月末時点では四百団体が移行困難となっています。

 平大臣、四百団体が減ることはあるのか、それとも今後増えるのか、どうですか。

【平将明 デジタル大臣】 標準準拠システムへの移行の難易度が極めて高く、二〇二五年度末までの移行が難しいと考えられるシステムについては、昨年十月時点の状況を今年三月に公表したところでございます。その後、様々な事情により標準準拠システムへの移行が二〇二六年度以降とならざるを得ないことが具体化したシステムの状況について把握を進めているところでございます。

 現在の数字は精査中ではありますが、今年十月末時点でおおむね二千百システム、全体の約六%程度、当該システムを有する団体数はおおむね四百団体、全自治体の二割程度になると見込んでいます。

 事業者のリソース逼迫等を理由にして二〇二六年度以降の移行とならざるを得ないシステムが増加する可能性はありますが、現時点で今後の見込みをお伝えすることは難しく、今後も引き続き各自治体、事業者の状況を丁寧に確認をしていきたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 今後、移行困難な団体が増えることは避けられないという答弁でした。システム数で僅か六%という話もありましたが、政府は当面、二十業務全てが標準化され、ガバメントクラウドへ載ってこそ情報の利活用の基盤となるとしてきたわけです。六%程度だから大したことないと過小に見せようとするのはやめるべきだと思います。

 デジタル庁と総務省は、今年九月、富士通と富士通Japanが、標準化移行契約協議中の自治体に対して、二〇二五年度までの移行が困難であると伝えたことを明らかにしました。関係する自治体は三百団体に上るといいます。富士通と富士通Japanは、自治体システム全般に関する安定した品質確保を前提に、地方公共団体情報システム標準化事業を確実に移行するために必要となるリソースを充足させることが困難となったと言っています。

 平大臣、これは富士通と富士通Japanだけに限った問題ではありません。政府は、リソース確保が困難となることを想定しなかったのでしょうか。原則五年間で完了という目標は変えていないが、これ妥当なのでしょうか。

【平将明 デジタル大臣】 原則二〇二五年度末までに標準準拠システムへの移行を目指すとの目標を掲げたことにより、多くのシステムが期限までに移行できるよう、ベンダーの選定や移行スケジュールの確定へ向けた作業が着実に進捗をしていると認識をしています。

 また、富士通の移行計画の見直しについては、自治体のシステム全般において障害案件が複数発生をし、品質確保プロセスの確立、品質改善への注力が必要なことなど、個別の事情もあったものと承知をしています。

 二〇二五年度末の移行期限まで約一年三か月となる中で、移行期限を一律に見直すことは、既に取組を進めている自治体及び事業者に混乱を与えることになることから、考えておりません。他方で、様々な事情により標準準拠システムへの移行が二〇二六年度以降とならざるを得ないことが具体化したシステムも一部あると認識しており、個別に丁寧に把握をしながら取組を進めてまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 この間の実態、事態を見ますと、政府は、二十業務を所管する各省庁が標準仕様書を作成すれば、その後は自治体とベンダー事業者がうまくやっていくだろうという安易な想定があったのではないかと私思います。富士通と富士通Japanが自治体システム全般に関する安定した品質確保を前提にとしている点は、私、非常に重要だと思うんですよ。完了時期までの達成ありきでは、安定した品質確保が揺らぐ危険性があります。政府は、安定した品質の確保を図れるかどうかという点からも、移行の必要性、妥当性を真剣に検討するべきだと私思います。

 政府は今週中にも、国、地方デジタル、ごめんなさい、国・地方デジタル共通基盤の整備・運用に関する基本方針を閣議決定するとしています。移行困難システムを特定移行支援システムに改めて、二〇二六年度以降に移行完了を目指す団体もおおむね二〇三〇年度までには完了するとしています。

 平大臣、この特定移行支援システムへの支援とは具体的に何をするのでしょうか。これまで行ってきた移行支援とは何が違うのでしょうか。

【平将明 デジタル大臣】 標準準拠システムへの移行期限については、地方公共団体情報システム標準化基本方針において、原則二〇二五年度末を目指すこととしています。一方で、様々な事情により二〇二六年度以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステムも一部あると認識をしており、そのようなシステムについてもおおむね五年以内に標準準拠システムへ移行できるよう、積極的に支援をしていきたいと考えております。

 具体的には、現行システムの事業者の撤退等により次期事業者の選定に至っていない自治体に関する事業者情報の提供、また、標準化PMO、プロジェクト・マネジメント・オフィスといいますが、標準化PMOツール上での速やかな回答等の制度所管官庁からの助言の充実、総務省においては、総務省において検討されているデジタル基盤改革支援基金の設置年限の延長によって標準準拠システムへの移行を支援をしていきます。

 住民サービスに影響を及ぼさないように円滑かつ安全に移行を行うことが重要だと考えており、引き続き丁寧に個別対応をしていきたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 実質は、当初の五年間に五年間プラスして倍の十年間にするということです。千七百八十八団体もの情報システムの標準化には無理ないのか、根本的に検証すべきだということを指摘をしておきたいと思います。

 総務省にお聞きします。

 総務省は、自治体から二十業務の標準化に必要な財源不足分を悉皆的に聞き取っています。今回、補正予算には百九十四億円が追加されましたが、標準化に至る事業額が膨らんでいるのはなぜでしょうか。

【新田一郎 総務省大臣官房審議官】 お答え申し上げます。

 御指摘ありましたように、今般の補正予算においては、全ての自治体に対して移行経費に係る調査をいたしまして、その結果を踏まえ、また、基金の設置年限が現時点では令和七年度末となってございますので、こういったことも勘案をいたしまして、また、物価高騰の影響等もございます、こういったことを踏まえて百九十四億円を今回補正予算で追加をさせていただいたものでございます。

 なお、地方自治体における移行作業は令和七年度末に向けて本格化をいたします。その過程で移行経費は更に変動する可能性がございますので、今後とも、標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行に向けて、自治体の御意見を丁寧に聞いて必要な対応に努めてまいります。

【伊藤岳 参院議員】 標準化に関する財源確保は国が責任を持って行うことを強く求めます。

 重点計画や標準化の基本方針では、システムの所有から利用へと強調し、二十業務に係る情報システムの標準化については、短期的には狭義の標準化にとどまる場合もあるが、共通SaaS利用を目指し、その実現のための前提となる基盤を整備している取組と言えると、これは基本方針でそうしております。

 この間の答弁見ますと、このSaaSを利用する推進理由は、情報利用の便利さだとか、アプリの、接続して利用することによる情報利用の利便性の向上だとかなどを答弁されて、あとコスト削減にも有利ということを言っておられますが、平大臣、この政府が進めている自治体情報システムの標準化、共通化は元々機能面のカスタマイズの抑制を前提にしていますが、共通SaaSの利用では、重点計画が強調するように、業務をシステムに合わせるという方向が一層強まって、自治体独自の施策や事業については排除されてしまうのではないでしょうか、どうですか。

【平将明 デジタル大臣】 そもそも、ガバメントクラウドに乗ってきてくださいとか今回のこのSaaS是非使ってくださいというのは、各自治体がオンプレサーバーで維持をし、そこで自分たちでソフトウェアを開発をし、さらにサイバー攻撃からも防御をしというのは、それぞれ、千七百を超える自治体がそれぞれデジタルのシステムの担当者を置いてサイバーセキュリティーの担当者を置いてやるのは、もうサステナブルじゃないという基本的な考え方があります。

 なので、ガバメントクラウドだしSaaSを使ってくださいということで、これ中小企業も全く同じなんですが、そういった中で自治体がSaaSなりデジタルガバメント、ガバメントクラウドを使うことによってコストを抑えて安全性が高い世界最高水準のサービスが使えますので、そちらにリソースを割かない分、本当に必要な自治体の独自のサービスがあるんであれば、それは独自で開発をしていただければいいんではないかと思います。

【伊藤岳 参院議員】 共通SaaSでは自治体のカスタマイズが排除されていくことになるという懸念は、一層私は大きく持っています。

 政府は、情報システムの共通基盤によって最適化された行政、有事の際にも対応できる強靱な行政、トータルコストが最小化された行政の実現を目指すとしていますが、団体自治と住民自治が最大限尊重されることが重要で、地方自治の侵害があってはならないと強く指摘をしておきたいと思います。

 さて、前回の当委員会で、二〇二二年十月十三日の三大臣協議について私お聞きしました。現行保険証を二〇二四年秋に廃止することをデジタル、厚労、総務の三大臣協議によって決めた事実を、河野大臣は国会で繰り返し答弁してきました。ところが、先日の当委員会で平大臣に、この三大臣協議についてはどのような引継ぎがあったのか聞くと、そのような会議はなかったという旨の答弁でした。

 調べてみましたが、令和五年の六月九日の当委員会で、河野前大臣はこう言っています。「二〇二四年秋に保険証の廃止を目指すこととし、十月十三日にこの方針を関係閣僚と確認した上で発表したものでございます。」、「関係閣僚というのは、健康保険事業を所管する厚生労働大臣とマイナンバーカードの発行、交付及び管理を所管する総務大臣でございます。」と、はっきり答弁しています。

 大臣、この事実をごまかそうとしているんですか。

【平将明 デジタル大臣】 質問通告ありませんでしたが、三大臣会合とおっしゃられたので、そういう記録はありませんと、関係閣僚間で逐一協議をしていたということであります。あの前回答弁したとおりでございます。

【伊藤岳 参院議員】 つまり、その三大臣の閣僚で協議したということは認められるんですね。

【平将明 デジタル大臣】 関係閣僚で逐一協議をしたということでございます。

【伊藤岳 参院議員】 だから、河野前大臣は、関係閣僚は、総務も含めた、デジタル、総務、厚労の三大臣だと言っているんですよ、その協議だと言っているんです。それはそうなんでしょう、大臣。そこを認めてくださいよ。

【平将明 デジタル大臣】 三大臣もあるでしょうし、そのほかの大臣もあるんだろうと思います。関係閣僚で逐一協議をしたということであって、三大臣閣僚会議といったものがあったわけではありません。

【伊藤岳 参院議員】 はい、まとめます。

 まあ言葉のあやだと思うんですけど、だから、協議はあったということですね、ごまかしちゃいけないと。大体、この保険証、マイナ保険証一本化という重大な方針変更したんですから、極めて重大な、ごまかすような発言はやめていただきたいということを指摘します。

 

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】 私は、日本共産党を代表して、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律の一部改正案について、反対討論を行います。

 本法案は、公共情報システムの整備、運用を行おうとするとき、国の行政機関等に対してはクラウドサービスの利用検討の義務を、また地方公共団体等に対しては利用検討の努力義務を課すものです。

 反対理由の第一は、本法案は、データの取扱い、自治体等との関係など、重要な規定についての法的な規律事項は設けておらず、国の裁量が大きく影響を及ぼすからです。

 国が推進する自治体情報システムの標準化、共通化では、自治体カスタマイズは抑制が前提とされ、国の定めたひな形に自治体の業務を制限するなど、地方自治を侵害する重大な問題があります。本法案はこれを更に強力に進めるもので、千七百を超える自治体の個々の多様な意向が十分に反映されず、重要事項の決定や変更なども国が定める基本方針や契約によって一層推し進められることになります。重点計画や基本方針が推奨する共通SaaS利用によって、自治体のカスタマイズは排除されかねません。ガバメントクラウドの利用が先にありきで、地方自治を制約し、後退させることは認められません。

 情報漏えいの危険が拡大することも重大です。大量の情報を集約し連携することは、一方で大量の情報漏えいの懸念を高めるものとなります。

 第二に、地方自治体の負担増、行政サービスの後退の問題です。

 政府は、金銭保管の仕組みを導入し、デジタル庁が一括契約することで利用料の低減を図るとしています。しかし、デジタル庁が実施した先行事業検証の中間報告でも、現行のシステムよりランニングコストの負担額が増えています。

 また、クラウドサービスを提供する事業者はアマゾンウェブサービス一社の寡占状況であり、支払はドル建て円払いで、為替変動も大きく影響してきます。

 国のガバメントクラウドにおいても、自治体情報システムの標準化、共通化においても、運用経費等の削減根拠は明確ではなく、やってみなければ分からないというのが実態です。自治体の負担増、独自施策の廃止など、行政サービスを後退させることにもつながりかねません。

 以上述べて、討論といたします。