議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。建築基準法の改正案では、これまで民間や建築主事を置かない市町村の建築物に係る計画通知を民間の指定確認検査機関に開放していたものを、この度、国や都道府県、建築主事を置く市町村にまで拡大します。建築確認の公的責任を放棄し、民間がもうける場を提供するものであり、これには反対をいたします。
母子保健法の改正では、里帰り出産等における情報連携の仕組みについて、市町村が他の市町村に対し妊産婦、乳幼児、幼児の健康診査に関する情報の提供を求める場合、これら妊産婦等がかつて当該地の市町村に居住していたとの要件を廃止をします。また、提供を求めることができる情報に産後ケア事業等に関する情報を加えます。
こども家庭庁黒瀬審議官、まずお聞きします。
里帰り出産は、出産全体のどの程度を占める現状となっているのでしょうか。先ほど、長谷川委員の質問にもありましたが、全体の中の割合と、そして里帰りする方のうち、市内からどれぐらい、県内からどれぐらい、県外からどれぐらい、ちょっと細かく教えてもらえますか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 ちょっと詳細がどこまでということはあるんですけれども、ちょっとまずは手元にあるデータで申し上げますと、出産全体に占める里帰り出産の割合でございます。これ、全体に占める割合については把握をしていないんでございますけれども、令和五年度に我々でアンケート調査を行っておりまして、この結果によりますと、約五割の産婦が出産前後の時期に里帰りをしていたという結果を得てございます。
ちょっと自治体をまたがってどういう数字かというのは、ちょっと済みません、詳細が手元にございません。
【伊藤岳 参院議員】 私がちょっと聞いたというか調べたところ、今お話があったように、妊産婦の半数が里帰り出産で、そのうち約五割が住所地以外からの里帰り出産となっている。つまり、妊産婦全体の三割近くが住所地以外で出産をしているという、大きな割合だと思うんですよ。そういう中で、里帰り先の市町村がどこであっても、母子保健、産後ケアなどの情報を受けられるようにするというのは当然の措置だと思うんです。
法案は、里帰り出産等における電子的情報連携の仕組みの構築について、妊婦健診、乳幼児健診、産後ケアの情報、情報連携基盤、PMHを整備します。電子版母子手帳を原則とすることを目指すともしています。
この仕組みについて、市町村は、健康診査、産後ケア事業の対象者についての情報収集等の事務の全部又は一部を社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会に委託できるものとしています。
黒瀬審議官にお聞きします。この情報収集等の事務を、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会の二つを指定するのはなぜでしょうか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 お答え申し上げます。今般の法改正におきましては、市町村が実施する母子保健に関する事業のうち、健康診査や産後ケア事業の対象者に関する情報収集等事務、それから費用支払事務を、今御紹介いただいたように、診療報酬等支払基金及び国保連合会に委託して行わせることができるというふうにしてございます。
今後、デジタル庁が構築をいたしましたPMHですとか、あと支払基金等が管理するオンライン資格確認等システムなどの仕組みを活用することで、住民や自治体、医療機関の間で迅速な情報連携が可能となることを想定してございます。
こうした情報連携に当たりましては、現在、医療保険の審査支払業務等で医療機関も含めたシステムに関する知見が豊富な支払基金等に情報収集等の事務を委託することで関係者間でのより円滑な連携が図られると期待されることから、母子保健情報の情報収集等の事務を委託できる規定を置くものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 確認ですけれども、母子保健にしろ、予防接種にしろ、産後ケアにしろ、その情報連携はマイナンバーカードの取得とマイナポータルへの登録が前提となりますか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 まず、マイナンバーカードとの関係で申しますと、これは、マイナンバーカードはあくまでも本人認証ということでやりますので、今回、利用者として、例えば医療機関等で健診を受けますと。健診を受けたときに、それが、私が受けたのであれば、私だということが特定されるというふうにするために、ピッと、マイナンバーカードをかざす。これが、今もオンライン資格確認システムといったものがあるわけですけれども、これと非常に似通ったところがあるので、そこと共通性があるということでございます。その範囲でマイナンバーカードといったものを活用して、そこにあるそのシリアルナンバー等を活用していくことになります。
今回、そのPMHにおきましても、マイナンバー等から派生をした、派生をしてひも付けられた相手のID等を活用してその本人の情報が連携をしていくといったことを想定しているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、そのマイナポータルから情報を受け取るということになるんだと思うんですよね。
自治体は民間アプリの採用も始めています。この民間アプリは、自治体が民間通信事業者に対して作成、運用を委託するものです。
二〇二二年の十一月の話ですが、こども家庭庁ができる前の、まだ厚労省時代ですが、第五回検討会が行われていました。その中では自治体向けアンケートの結果が提示されていました。その自治体アンケート見ますと、電子的な母子保健ツールを導入していない理由として、自治体側の理由として、金銭的コストの負担を挙げた自治体が七四・五%、他のシステムとの連携による業務負担の増加を挙げた自治体が六〇・九%と多かったです。
自見大臣にお聞きしますが、母子保健、予防接種等の情報連携に係るこうした自治体の金銭コストの負担、業務負担の増加、検討会で出ていたこれらの課題について、この間どのような検討がなされてきたでしょうか。
【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 お答え申し上げます。
母子保健DXの構築に当たりましては、地方公共団体の事務負担の軽減や、あるいは業務効率化を図り、子育て世代の利便性の向上に資するものとなるように、現場の地方公共団体の声もしっかりと聞いていただきながら、こども家庭庁において取組を進めていただくことが重要だと考えてございます。
【伊藤岳 参院議員】 現場では、情報連携を利用するこの利用者や医療機関の中にも不安な声が様々あります。
今日、資料をお配りしたんですが、一枚目に東京新聞の報道を載せました。
この報道の一段落目の一番、後半の部分ですが、一般社団法人乳幼児子育てサポート協会の行本充子代表が、母子手帳は体重や疾患などのプライバシーの塊、情報管理の安全性が担保されないままでは一体化は反対と訴えています。また、上から三段目の後半、最後の部分の段落ですが、自治体職員が手作業で情報を入力するため、マイナ保険証で実際起きている誤入力も懸念されるとしています。
自見大臣にお聞きします。
こうした情報管理の安全性の担保、誤入力の懸念などについて、大臣はどのように認識され、どのように対応するお考えでしょうか。
【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 お答え申し上げます。
母子保健DXの構築に当たりましては、こども家庭庁におきまして、子育て世代やあるいは地方公共団体が安心して使えるということが大切だと思います。システムの安全性をこども家庭庁においてもしっかりと確認しつつでございますが、一般論として、恐縮ですが、当然ながら情報セキュリティー対策にも万全を期することが必要であると考えてございます。
【伊藤岳 参院議員】 黒瀬審議官に具体的にお聞きします。
民間アプリで誤送付などが発生したら、これは事業者の責任になりますか、自治体の責任になりますか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 済みません、セキュリティーの全般についてちょっと御説明を申し上げたいと思いますけれども、様々な懸念がございます。セキュリティーは非常に重要な要素になってございますので、その点でいろんな間違いが起きないかという御指摘だと思います。
いろいろ間違いが起きない仕組みにするべく当然検討しているということでございまして、例えばでございますけれども、PMHにつきましても、これはそもそも確実な本人確認を実施してアクセスするといったような仕組みがもう盛り込まれておりますし、適切なアクセス制限等もされているといったこともございます。それから、そういったことで、あと、先ほど入力等についても間違いが云々という話もございましたけれども、PMHに格納される情報については各自治体内の住基システム等と連携して適切にマイナンバーとのひも付けが行われているものでありますので、本人ではない情報とのひも付け誤り等は生じないというふうに考えてございます。
また、あと、今アプリという話もございましたけれども、電子版の母子手帳アプリ、ベンダーへの対応としましては、様々なものございますけれども、今年度、例えばマイナポータル、そのアプリとおっしゃっているのが、恐らくマイナポータルからAPI連携をしてという話、その母子手帳アプリと連携をしてマイナポータルの情報が母子手帳アプリでも見られると、そういう意味のアプリだと思いますけれども、民間の母子手帳アプリ等活用した電子版手帳については、今年度、こども家庭庁で実施をします実証事業をやっておりますけれども、こちらで、御指摘の安全性など、情報セキュリティー面などの観点も含めて対応を検討することとしてございます。
ですので、そういったセキュリティー面については我々としても万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 そうはいっても、様々、システム、続いて、ほかのシステムでも誤登録、誤送付が生まれています。このシステムでこうした問題が起きないとは限りません。
過去のシステムで、結局、安全性の担保などについてはベンダー任せ、ベンダーへのお願いベースというのがありました。是非、国が強力なイニシアチブを発揮していただきたいと、大臣にも強くお願いをしておきたいと思います。
最後に、母子手帳の電子化についてお聞きをしたいと思います。
こども家庭庁は、母子保健DXの推進として、電子版母子健康手帳を原則とすることを目指し、課題と対応を整理するとしています。
この電子版母子手帳を原則とするというのはどういう意味でしょうか。いずれ現在の紙の母子健康手帳は廃止するということですか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 今御紹介ございました、その原則とするという表現でございます。これは、昨年十二月のデジタル行財政改革中間取りまとめにおきまして電子版の母子健康手帳を原則とすることを目指すというふうにされてございまして、今年度、課題と対応を整理した上で、二〇二五年度にガイドラインを発出、二〇二六年度以降の普及につなげることとしてございます。
こちらでございますけれども、実証事業におきまして、母親、様々な問題がございます、課題がございますので実証を整理していくわけでございますけれども、今、済みません、紙との関係、今の母子手帳との関係という御質問でございますけれども、今原則とするとされたものは、現時点で、少なくともその電子版母子健康手帳を義務化するということを想定しているものではございません。例えば、デジタル機器を利用しない方への対応、それから災害時、停電時の情報共有等の課題、あるいは現在の母子健康手帳について手元に残したり子供に受け継いだりしやすいといった紙ならではの良さがあるといった指摘、こういったこともあることを踏まえますと、その紙の手帳の位置付けについては関係者の声を聞きながら丁寧な議論が必要だと考えてございますので、そういった趣旨であるというふうに御理解いただければと思います。
【伊藤岳 参院議員】 その今後の丁寧な議論のために、今日はママの声をお伝えしたいと思うんです。私の娘もママになりました。先ほども、よちよち歩く赤ん坊の姿が送られてきました。うちの娘のママの声も含めてお伝えします。
今日、もう一枚資料をお配りしました。これ、国内最大級のママ向け情報サイト、ママスタというのがありまして、そのママスタの母子手帳の電子化をどう思うかのアンケート結果を公表したものなんです。
この棒グラフありますように、進む母子手帳の電子化、利用したい、それとも紙のままがいい。これ、紙の手帳のままがいいというのが七〇・八%で断トツなんですね。
その理由が下の記事のところに書いています。三行目ですかね、スマホの容量がなくなったとき、なくしたときなど、アップデートできなかったらかなり不便。その二つ下、初期化して消えてしまったらショックだから。で、その後、手書きの良さを残したいといって、こう書いているんです。健診に行った日、胎動を感じた日、何げない日、子供たちが生まれてからの気持ちをちゃんとそのときの文字で残したい、で、その数行後ですか、大きくなった我が子に母子手帳を渡したいからという声などが記されています。我が家も母子手帳を我が子に渡しました、もう日記のように書いてありますが。
自見大臣、こうしたママたちの思いと声、率直な感想をお聞きしたいと思います。どうぞ。
【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 お孫さんの御誕生、おめでとうございます。
母子手帳におきましてはこども家庭庁において検討されるものではありますが、その上で申し上げますと、デジタル機器を利用しない方への対応や、災害時また停電時の情報共有等の課題、また、現在の紙の母子手帳において、こちら、御紹介いただいたところにも書いてございますが、手元に残したり子供に受け継いだりしやすいといった声があるということも認識してございます。私も小児科医として働いているときに、母子手帳一つ一つにお母様たちの言葉がたくさん書かれてあって、お父様も含めて、きずなというものも感じた、そういった経験もございます。
紙の、電子手帳の位置付けについては、今後、関係者の声を聞きながら、こども家庭庁において丁寧に議論を進めていくことが大変重要だと考えてございますが、当事者の御意見そして思いというものを大切にしながら、これらの施策がこども家庭庁において進めていっていただけるものと期待をしております。
【伊藤岳 参院議員】 大臣、こうしたママたちの声、無視できないですよね。是非、一歩進んで、母子健康手帳は残すべきだという声に応えていきたい、検討したいということをもう一度言ってもらえないでしょうか。
【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 所管外ではございますが、どの政策におきましても当事者の声を大切にするということは非常に重要だと認識してございます。
【伊藤岳 参院議員】 ありがとうございました。孫の誕生も祝っていただきまして、ありがとうございます。
こども家庭庁にお聞きしますが、この母子保健DX推進という中に記されている、課題と対応を整理とありますが、この課題と対応を整理というのは、どんな課題で、どう何を対応するということでしょうか。
【黒瀬敏文 こども家庭庁長官官房審議官】 お答え申し上げます。
この母子手帳の、母子健康手帳の関係についての課題等でございますけれども、母子健康手帳については、今年度こども家庭庁で実施する実証事業におきまして、母親や母親以外の保護者と子供の情報共有や管理の在り方に加えまして、電子化された母子健康手帳が最低限持つべき機能ですとか、災害時、停電時の情報共有への対応や、手元に残したり子供に受け継いだりしやすいといった紙の良さを踏まえた今後の紙の母子健康手帳の位置付け等、それからあと、また個人情報保護の観点からも様々な法的な検討も必要となってございますので、そうしたことを課題として認識をしているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 先ほど紹介したママスタの記事は、ちょっと先ほどお配りしたやつのには載っていないんですが、こう結んでいるんです。アプリを利用することで簡単、便利になることはたくさんあります、しかし一方で、手書きの母子手帳を使いたいと考えている人もいるでしょう、紙とアプリのどちらも選択できる、又は併用できるような制度が求められているのではないでしょうかというふうに結んでいるんですね。
ここにあるように、紙とアプリのどちらでも選択できる、併用できるような制度、先ほど大臣も所管外と言いながらぎりぎりの答弁はしていただいたと思いますけれども、是非こうしたママたちの声にしっかり国として応えていただきたい、パパの声も含めてですけど、応えていただきたいというふうに思います。
デジタルへの対応が難しい方はもちろんですが、こうした母子健康手帳を使いたい方、アプリ一択を迫るべきではないと、現行の母子健康手帳は残すべきだと訴えて、質問を終わります。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】 私は、会派を代表して、第十四次地方分権一括法案に対する反対の討論を行います。
反対する理由は、建築基準法の改正は、行政による建築確認の安全確保を大きく後退させ、建築確認に対する公的責任を果たすものとはなっていないからです。
建築基準法の改正案は、国や都道府県、建築主事を置く市町村の建築物に係る計画通知を民間の指定確認検査機関に開放するものです。
一九九八年の法改正で指定確認検査機関による建築確認が導入され、民間が建築主となる建築物や建築主事を置かない市町村が建築主となる建築物を対象に民間による建築確認が開放されました。建築確認に民間の力を活用することを全面的に否定するものではありません。しかし、その際にも、最終的な安全確認は行政が責任を持つべきです。
法改正以降、指定確認検査機関は増加する一方で、確認件数は大きく減少しています。その結果、限られた建築物に対する確認検査を獲得するために検査スピードや手数料で競い合う中、二〇〇五年十一月の耐震強度偽装事件など、マンションなどの耐震強度不足、データの改ざん、手抜き工事等の見逃し事件が起こっています。
法案は、国等が建築主となる公共工事までも民間に委ねるもので、これでは行政による建築確認の安全確保は更に後退することになり、建築確認に対する公的責任は果たせなくなります。
また、反対ではありませんが、母子保健法の改正案には懸念が、重大な懸念があります。
里帰り先の市町村がどこであっても、母子保健サービスや産後ケアサービスを速やかに確実に受けることができるようにすることは必要なことです。
同時に、本改正案は、市町村が、健康診査、産後ケア事業の対象者に係る情報収集等事務を社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会に業務委託することを可能とするものです。PMHという、利用者、自治体、医療機関の間の情報を情報連携基盤によって連携するものですが、プライバシー侵害や情報の誤送信、漏えいなどの危険性があると言わざるを得ません。
以上述べて、討論といたします。