議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
偽変造マイナンバーカードの詐欺被害についてお聞きします。
マイナンバーカードを偽変造し、そのカードを身分証明書にして契約者に成り済ました第三者が、携帯電話の機種を変更して乗っ取って電子マネーやクレジットカード情報などを盗み取る、いわゆるSIMスワップ詐欺と言われる手口が相次いでいます。本人の知らないところで高額な商品が購入される被害も出ています。また、これとは別にマイナンバーカードの偽造現場も摘発をされました。
個人情報保護委員会は、事業者向けガイドラインで、個人番号の悪用や漏えいがあった場合、個人の権利利益の侵害を招きかねないと警告をしています。重大な問題だと思います。
十五日の本会議で河野大臣は、マイナンバーカードの券面確認はアナログな目視に頼らざるを得ないことからデジタル技術の活用を進めると述べられました。その後、十七日のデジタル庁、総務省連名で発出された事務連絡では、マイナンバーカードの券面においては偽変造対策が施されておりますと、目視による本人確認の留意点を事業者に示しました。
まず、この目視確認について確認をしていきたいと思います。
特殊インク、パールインクが施され、マイナちゃんマークの背景の色が見る角度によって二色に変化して見え、偽変造が困難等とデジタル庁は説明してきました。
この目視におけるそれ以上の対策は、その後何か検討されたり施されたんでしょうか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
大きくは三つ、今の、マイナちゃんの色が変わるというやつと、それから御言及がなかったところでいえば、マイナンバーを印刷しているところの印刷に特殊技術を使っているというもの、三つ取られてございます。現在、今すぐ採用できるそれ以外の券面偽造、もう一つは写真の周辺がぼやかして出ておりまして、これも、偽造をいたしますと写真の周辺のぼやきがきれいに出なくなりますといったようなところはございますけれども、現在、特に次期カードでも券面のデザインの検討をさせていただいているところでございます。
ほかにも何か、券面上、目視のために採用できる技術があるかどうかについては、引き続き専門家の意見を聞きながら検討してまいりたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、現時点では偽変造が発覚したカードと変更はないということだと思います。
今、村上統括官も見る角度と言われましたけど、私もやってみましたけど、かなりの職人技だと思いませんか。どうですか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
申し訳ございません、主観も入りますので、難しいか難しくないかというのは人によって意見が変わると思いますが、多少ちょっと色が変わるところを、うまく斜めに倒せば緑に見えるんですけれども、やや難しいところが人によってあるという御意見が、そういう御批判があること自体は承知してございます。
【伊藤岳 参院議員】 人によってあるというか、大方の人によってあるんじゃないかと私は思いますが。つまり、要するに、目視による確認というのは、目を凝らして偽造かどうか頑張って見てくださいという極めてアナログなお願いなんですよね。そして、カードが本物かどうか見抜くその技量に委ねるということになると思うんです。
村上統括官にお聞きします。
目視による本人確認は、これ確認ですが、万全とは言えませんよね。安全とは言い切れない、言えなくなったということですよね。どうですか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
申し訳ございません、安全対策に常に万全はないと思いますので、一般論として申し上げて、それが十分かどうかは人によって御見解が異なろうかと思いますが、いずれにせよ、そういう意味でも、私どもとしまして、やはりチップを是非読み取ってほしいというところに、先ほど移行期という議論もございましたけれども、アナログから脱していき、できるだけICチップの方で確実に本人確認をしていただきたいという方に積極的に後押しをしてまいりたいというふうに考えてございます。
【伊藤岳 参院議員】 もうこういう詐欺被害が出ている下で、マイナンバーカードの利用を一旦止めるということは検討しなかったんでしょうか。
【河野太郎 デジタル大臣】 先ほどから答弁しておりますように、今回は、まず本人確認の手順が店舗で違っていたというのが最大の問題でございます。
ICチップを読み出していただければ、今ICチップの偽造は起きておりませんので確実に本人確認をすることができますので、この件でマイナンバーカードをどうにかするということは全く考えておりません。
【伊藤岳 参院議員】 これまでと同様にマイナンバーカードの利用を続けるということですね。
デジタル庁にお聞きします。
つまり、政府や警察が被害を認知していないだけで、目視による本人確認によって同様の偽変造マイナンバーカードによる詐欺被害が既に起きている可能性があるんではないですか。絶対ないと言い切れますか。
【河野太郎 デジタル大臣】 マイナンバーカードを偽造して、例えば携帯電話を購入したというケースはあろうかと思います。それはもう免許証などでも起きておりますし、保険証では写真がありませんから偽造し放題だった。これを、ICチップを読み取っていただくことで本人確認を厳格にする。これはもう犯収法でもICチップの読み取りにしていただこうということで、厳格な本人確認が導入できるように積極的にマイナンバーカードを活用していきたいと思っております。
【伊藤岳 参院議員】 では、そのICチップの読み取り、ICチップとその読み取りアプリについてお聞きします。
本会議で大臣は、厳重な不正行為対策が講じられたICチップを読み取ることで確実な本人確認を推進していくことが重要として、既にあるパソコン用カード読み取りアプリを周知するとともに、自ら、つまりデジタル庁自らスマホ用カード読み取りアプリを開発する必要性などについて検討を進めると答弁されました。
その後の事務連絡では、事業者にICチップに記録された券面情報を読み出して確認することを求め、事業者において利用可能なソフトウエア、これJ―LISが無償提供しているものを周知したと知らせています。
デジタル庁にお聞きします。
既にあるパソコン用カード読み取りアプリとは何ですか。事務連絡にあったこの無償配布しているJ―LISのソフトウエアのことを指すんでしょうか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
今御指摘になりました本会議で御答弁をさせていただいたパソコン用カード読み取りアプリというのは、御指摘のJ―LISが提供しているパソコン用のカード読み取りソフトウエアのことでございます。
これにつきましては、このソフトを使用するに当たって、事業者の側でパソコンに加えてカードリーダーまで用意する必要があると。もちろん、これでも対策はしていただけるわけでございますが、やはりスマホの読み取り機能を使っていただければこうしたものなく読み取っていただけますので、スマホでも読み取れるようなアプリを追加的に開発することを検討しているということを御説明をし、また、これらの積極的なチップの読み取りを推奨する事務連絡をさせて各所にお願いをさせていただいたところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、J―LISのソフトウエアではいろいろ複雑さもあるので、十分でもないので、スマホのカード読み取りアプリを開発、検討したいということだと受け止めました。
この開発する必要性などについての検討ということですが、現在の検討状況、現況を教えてほしいと思います。ヒアリングは始まったんでしょうか。どういう対象の方々から何を聞き取るんでしょうか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
現在、デジタル庁では、その開発の必要性も含めて検討を進める中で、特に犯収法でありますとか携帯電話不正利用防止法等に規定されている対面での本人確認を実施している事業者、具体的には銀行でありますとか携帯キャリアでありますとか古物商の皆さんへのヒアリング等を進めさせていただいてございます。
その中で、スマホアプリが実際に有効であるかどうかとか、どういう機能があれば更にこれらの事業者が使いやすいであるかどうかとか、それらの事業者の事業の特性を踏まえた個人情報保護の観点等々についてよく実情を把握をした上で開発、検討を進めてまいりたいということで、今話を伺っているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 今、事業者などから聞いているということですが、デジタル庁のその聞き取りの方針は何なんでしょうか。アプリ開発のコスト面のことを主に聞くのか、どうしたら安全が担保されるということを聞くのか、どういう立場で聞いているんでしょうか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
御指摘の中ではどうすれば安全にという部分だと思いますが、加えて、やはりアプリはどういう機能を持っているべきかどうかというところもございますので、コストも考えていないわけではございませんが、どちらかというと、どういう機能を持ったソフトでどう安全に使えるかというところを中心に、業務の実態からまずは伺っているというところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 このスマホ用にせよ、既にあるパソコン用にせよ、マイナンバーカードをICチップ、マイナンバーカードのICチップを読み取るアプリがどんどん広がるということは、券面四情報と写真を読み取る場面が広がります。
スマホやパソコンから四情報や写真が漏えいする可能性が広がるということを意味するんではないでしょうか。どうですか、認識は。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
まず、読み取る局面が広がるというのは、裏を返せばマイナンバーカードの利用局面が広がるということで、それ自身は我々は進めるべきことと考えてございます。
片方で、その利用する局の、局面で、個人の方々の許諾のない読み取りでありますとか、偽造で模した読み取りであるとか、そういったことはあってはならないというふうに考えてございます。
現在、ICチップから個人情報を読み取るところにつきましては本人の許諾がなければ読めませんというところと、それから、読み出しで、ICチップから読み出して間違った個人情報を読み出した等の前例はございませんので、引き続きしっかりと、ICチップから本人の許諾を得た上で個人情報を読み取り、マイナンバーカードの本人確認機能を正しく使っていただくということで、引き続き普及啓発も含めて努めてまいりたいと考えてございます。
【伊藤岳 参院議員】 その事業者がそれを読み取ったときに読み取った内容を保存するだとか、また、その開発されたアプリがですよ、これプログラミングに関する知識があればアプリを解析して設定変更をすることは可能だと思うんですが、そういう犯罪につながる危険性はどういうふうに認識していますか。
【村上敬亮 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。
まず、そもそも四情報を取得することを目的としてお使いになられる現場もございますので、そういったものに対する機能はきちっと担保する一方で、読み取りアプリそのものは今仕様を開発検討中でございますので、まだ最終決定してございませんけれども、このカードで読み取って確認をするという部分について、アプリの側には四情報は残さない、いうような方向で検討しようと思ってございます。
その辺も含めて、まずは業務の実態をよく踏まえて、使い勝手との両立も併せて、よくよく今後検討してまいりたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 でも、先ほど言ったように、改造も、改造することも可能だと思うんですね。
大臣にお聞きします。
これまでお聞きしてきたように、今デジタル庁の現在の対応では、結局、現段階ではイタチごっこになってしまうのではないかと私は思うんです。マイナンバーカードの安全、安心と言ってまいりましたが、それはもう今の時点では言い切れない。
大臣、今マイナンバーカードから個人番号の悪用や漏えいがもう起きているわけですから、マイナンバーカードの利用はまず一旦中止すべきではないかと思いますが、もう一度どうですか、お聞きします。
【河野太郎 デジタル大臣】 伊藤委員は、じゃ、健康保険証をコピーしてお渡しするのが本人確認だと言いたいのでしょうか。
今、日本で一番確実に本人確認ができるのが、マイナンバーカードのICチップから情報を読み出していただいて本人確認をするのが一番厳格に本人確認ができるわけで、これをやめてしまったら今以上に偽造が横行することになるわけです。
委員がおっしゃるように、健康保険証がいい、だから健康保険証を出してコピーを取ってもらってそれで本人確認をするなんということをやっていたら、同じような偽造案件はどんどん増えていきます。だからこそ、マイナンバーカードのICチップからきちんと情報を読み出してください、これが現時点で偽造もされていない一番の厳格な本人確認だと言っているわけで、それをやめろと言うんだったら、じゃ、どうやって本人確認を厳格にやれとおっしゃるのか、まずそれを言ってください。
【伊藤岳 参院議員】 まあそんなに声を大きくしないでくださいよ。
私聞いているのは、何もそのICチップで読み取る本人確認をやめろと言っているんじゃないんです。今、現に漏えい事件が起きているんだから、一旦止めるということは考えないのかと聞いているんですよ。それを、大きな声で大臣から言われてですよ。おかしいです、それ。
もう一度答えますか。
【長谷川岳 委員長】 大臣、穏やかに、私から言うのもなんでございますが、穏やかによろしくお願いいたします。
【河野太郎 デジタル大臣】 穏やかに申しますと、一旦止めたら本人確認ができないわけで、携帯電話の販売を含め、様々、個人情報、個人、個人というか本人確認を必要としているものが止まったら経済活動も止まってしまいますので、一度止めろとおっしゃるんだったら、じゃ、その間どうするのかという代替案をお示しをいただかなければ、これは到底議論にはならないというふうに思います。
【伊藤岳 参院議員】 一旦止めたときの代替案は、これまでやってきたように、健康保険証での確認だとか免許証の確認でできると思いますよ。
まあ、次に移ります。
十五日に会計検査院が公表した調査報告書、マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況についての、この報告書についてお聞きします。
調査報告書は、千二百五十八機能の調査をしたところ、マイナンバーシステム千二百五十八機能のうち、自治体で利用五〇%以上が三十二機能、これ三%です。九七%の機能が五〇%以下の利用でした。また、約三九%の四百八十五機能が利用ゼロでした。
デジタル庁楠統括官にお聞きします。
この自治体に活用されない、されていないという調査結果、どう受け止めましたか。
【楠正憲 デジタル庁統括官】 委員御指摘のように、今般公表された会計検査院の報告書におきまして、自治体の情報照会件数そのものは毎年増加している一方で、一部の自治体や事務手続において情報照会が低調になっているものがあるというふうに承知をしております。
この原因について、検査院の報告書によりますと、情報連携を実施していない自治体に尋ねた結果としては、業務フローの見直しが未了であったり、また添付書類を提出してもらった方が効率的であるといった回答があったというふうに承知をしております。また、そのほかにも、自治体では転入者についてのみマイナンバー情報照会が必要な手続がありまして、件数が少ないことからなかなかシステム対応が進んでいないといった事情も想定されるところでございます。
そのため、各自治体の事情を丁寧に把握をして対応を検討することが必要であるというふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】 報告書の中に新潟の事例が出ていました。お読みになったと思います。
この新潟県の担当者はその後取材に答えて、設計上マイナシステムで入手できるのは必要書類の情報の一部だけで、システムを使ったとしても、紙で書類を受け付ける窓口業務はなくならない、従来の窓口業務に加え、システム対応の作業が純増することになってしまうと言っています。
楠統括官、この設計上マイナシステムで入手できるのは必要書類の情報の一部だけ、従来の窓口業務に加え、システム対応の作業が純増するということ、これはどのように理解していますか。そのように受け止めていますか。
【楠正憲 デジタル庁統括官】 ちょっと、その部分を、報告書を正確に読んでいないので推定となってしまいますけれども、特に都道府県におきましては、市区町村と違って住民基本台帳を持っていないというところが大きく状況が異なりますので、マイナンバーの情報照会である情報提供ネットワークシステムにおいては、いわゆる基本四情報であったり世帯の情報が取れない。そうすると、結局そういった情報を添付書類なりほかの手段で入手しなければならないということは、殊、都道府県が町村の事務を代行している場合等において想定され得るものというふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】 河野大臣にお聞きします。穏やかにお願いいたします。
今聞いてきたこうしたマイナンバーシステムが自治体に現場で十分機能していないという実態が事実あるのは、多様な自治体業務の中には、中にマイナンバーシステムの利用が適している業務とそうでない業務というのがあるからではないかと私は思うんです。自治体は、それぞれの自治体が持つ特徴に合わせてマイナンバーシステムを使う業務かどうかを判断している、便利であれば使うし、不便、非効率であれば使わない。
デジタル庁は、一律にどのような業務においても現時点でマイナンバーシステムを使わせるのではなく、自治体の判断によく耳を傾けて、自治体の自主性を尊重すべきではないかと私は思うんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
【河野太郎 デジタル大臣】 はい。マイナンバーは全ての日本で住民票のある方にもう振られていて、国、自治体、このマイナンバーを使った様々な事務をやっているわけでございますが、今回、会計検査院から御指摘ありましたように、自治体の中には、例えば、転入者に限って情報照会をしなければいけないような事務、そして、転入者の数が少ない場合には、これはシステムを使わずに今までの業務フローでやった方が早いということがある、これはもう承知をしているわけでございますので、これから関係省庁と連携をして、マイナンバーシステムを使った方が自治体にとっても便利になるようなものについては整備を粛々と進めてまいりたいというふうに思っております。
【伊藤岳 参院議員】 はい。終わりますが、是非自治体の意見をよく聞いていただきたい、自主性を尊重していただきたいと思います。ありがとうございました。