議事録

2024年5月16日 総務委員会(放送法改正・NHKのインターネット配信の必須業務化について・反対討論)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。法案についてお聞きします。

 放送番組のインターネット配信が重要となっていることは間違いありません。現在、NHKは任意業務として見逃し・同時配信と理解増進情報をネット配信で行っていますが、これらを必須業務とするならば、放送における表現の自由をより一層発展させるものにしていくことが大切だと思います。

 法案では、NHKが作る番組関連情報の業務規程と、その業務規程に沿って実施されているかどうかについて、総務大臣が学識経験者及び利害関係者の意見を聴かねばならないとしています。

 しかし、ワーキンググループの取りまとめでは、担保措置としての競争評価の仕組みは、まず、情報の提供主体であるNHKが上記の仕組みによって原案を策定し、その評価、検証を、NHK以外の第三者機関、電波監理審議会等が、NHKが必須業務としてのインターネット活用業務を開始する前など適時に、民間放送事業者、新聞社、通信社等の関係者の参加を得て実施し、エビデンスベースで、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する仕組みとすべきであるとしていました。

 総務省小笠原局長にお聞きします。

 競争評価の仕組みについて、今述べたように、ワーキンググループの取りまとめでは電波監理審議会での検証を想定していた、これ、間違いないですね。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 御指摘の競争評価の法案の仕組みにつきまして、公共放ワーキングの取りまとめにおきましてちょっと二点言及をされております。

 まず、NHKが原案を作成し、その評価、検証等を、NHK以外の第三者機関、電波監理審議会等が実施することを提言をいただきました。

 そして、競争評価のこの枠組みにつきましては、有識者会議において、利害関係者の議論を速やかに着手し、その検討結果を法案あるいはその後検討ということに反映させることという、そういった提言をいただき、現在、具体的な評価の枠組みについて、このいわゆる会議、準備会合において検討を進めていただいているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 当初、ワーキンググループの取りまとめでは、電波監理審議会での検証を想定していたということですよね。ところが、法案では、電波監理審議会に諮問するより前に総務大臣が学識経験者及び利害関係者の意見を聴く仕組みとなっており、取りまとめになかった仕組みが入りました。

 この件について、小笠原局長は衆議院の答弁で、一旦報告を頂戴した後、これも報告の御提言に基づいて設置された会合でございますが、具体的な競争評価の仕組みということについて御議論いただく場として日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合が開催され、そこの中で検討を進めていただきましたとし、競争評価の仕組みについて、ワーキンググループの議論、つまり去年の十月の時点では電波監理審議会というような場も出ていたわけでありますが、今申し上げた準備会合という場の中で改めて御議論があった結果、業務規程ということについて議論することになると、電波監理審議会のような放送事業者さんが委員として参加できない、そういったところで行うのではなくて、やはり当事者が、幅広い関係者が集まって議論する場ということ、そこのところがやはり適当ではないかという御意見が出たところでありますと、こう答弁されています。これ、議事録そのままですから間違いないと思いますね。

 で、お聞きしますが、この電波監理審議会には放送事業者さんが委員として参加できないと言われていますが、これ、なぜ電波監理審議会には放送事業者さんが委員として参加できないんですか。

【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】  お答えいたします。放送事業者は、電波法第九十九条の三第三項に規定する欠格事由に該当し、同審議会の議員になることはできないとされているものでございます。

 これは、電波監理審議会の持つ役割に鑑みまして、その公正な議決などを確保するために設けられた規定であると承知をしております。

【伊藤岳 参院議員】 今、今川局長答えていただきましたが、それでは、欠格事由として放送事業者や電気通信事業者が委員になれないのはなぜなんでしょうか。

【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】  繰り返し、一部繰り返しになりますけれども、電波監理審議会の持つ役割、これは電波及び放送に関する事務の公平かつ能率的な運営を図るというものでございまして、その公正な議決等を、議決などを確保するという観点から、そういった事業者についてはこの電波監理審議会の委員になることはできないというふうにされているものと承知しております。

【伊藤岳 参院議員】 つまり、利害関係や利益相反というのがあるということだと思うんですね。

 放送法の第十章雑則、第百七十八条、これ、意見の聴取の第二項ですが、こう書いてあります。

 電波監理審議会は、前項の場合のほか、前条第一項各号、括弧、第四号を除く、の規定により諮問を受けた場合において必要があると認めるときは、意見の聴取を行うことができるとされています。

 小笠原局長、この電波監理審議会という場で幅広い関係者の意見、放送事業者などの意見を聴取できる仕組みになっているのではないかと思いますが、これではなぜ駄目なんですか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 今、電波監理審議会の仕組みの趣旨については、基盤局長から御説明申し上げたとおりでございます。

 そして、本法案の定めた仕組みということの趣旨ということでございますが、番組関連情報の業務規程については、放送の二元体制を含むメディアの多元性、これを確保するため、NHK以外の放送事業者等の事業者との公正競争の確保に支障が生じないことを要件の一つとしております。

 こうした趣旨に鑑みますと、放送事業者や新聞社等の利害関係者への意見聴取ということを総務大臣に義務付けた上で、その具体的な方法については、先ほど申し上げたような、有識者等の御意見、あるいはそのときの競争状況を踏まえて、利害関係者の関与の在り方を含め、機動的に設計、運用できるような仕組みとすることが適当と考えております。

 一方、今の電波監理審議会につきましては、規則の制定や行政処分ということに関わり、関係者から中立性あるいは公正性が求められる、電波監理審議会、公正性が求められる仕組みとなっております。

 したがいまして、ちょっと今回、本法案で定める公正競争の評価の仕組みということについては、電波監理審議会とは別建ての仕組みということを考えて措置するものでございます。

 現時点においては、利害関係者には、単に意見の聴取ということにとどまらず、競争評価の判断を行う会議体の構成員として参加いただくことが重要と考えており、その具体的な仕組みについて、現在、日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合において、その具体的、具体化に向けた検討をしていただいているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 少々早口で聞き取れなかったところもあるんですが、小笠原局長は衆議院の答弁でこう言っています。競争評価の性質上、これを判断するとなると、利害関係者からの意見を聴くことがどうしても必要となります。つまり、競争評価をする上では利害関係者の意見を聴くことがどうしても必要だと言っているんですが、この答弁は間違いないですか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 御指摘のとおりでございます。

【伊藤岳 参院議員】 つまり、利害関係者がその利害関係について意見を申し述べる、意見を言える、そういう場を設ける必要がある、どうしてもつくる必要があるということで、電波監理審議会とは別の場をつくった、それが今回の法案のみそだと私思うんですよ。

 利害関係者が、利害関係者の立場から大臣にNHKの業務規程や定期的評価について直接に意見を言う場は、当然、放送法上これまではなかったことだと思いますが、間違いないか。これ、極めて異例という理解でよろしいですか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 委員が御指摘いただいているのは、電波監理審議会からちょっと、電波監理審議会の仕組みとは別にこうした仕組みを設けたことについて、ほかにちょっと仕組みがあったのかという御質問というふうに理解をいたしますが、他の審議会の在り方全てについてちょっと網羅的に把握していることではございませんが、本法案におきましては、その趣旨、すなわち放送の二元体制を含むメディアの多元性を確保し、公正な競争を担保することを目的として、総務大臣による学識経験者及び利害関係者の意見聴取と、これを踏まえた勧告、命令といったような、その前提とした電波監理審への諮問の機会を設けると、そういう仕組みを取っているところでございます。

 すなわち、本法案の趣旨ということに照らして必要な措置ということを御提案させていただいているということでございます。

【伊藤岳 参院議員】 いろいろ言われましたけど、これまで放送法上はこういう規定はなかった、これ極めて異例な規定だということはお認めになったと思います。

 そもそも、ワーキンググループの取りまとめではこうなっていました。NHK以外の第三者機関、電波監理審議会等が、民間放送事業者、新聞社、通信社等の関係者の参加を得て実施をし、エビデンスベースで、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する仕組みとすべきである。

 なのにですよ、それをひっくり返して、利害関係者の意見を事前に、事前にです、大臣が聴くことを必須とする規定を法定することになります。電波監理審議会とは別の会議体をつくる、そこまでして利害関係者の意見を優先する仕組みをつくるということだと思うんです。

 もう一つお聞きします。

 本法案では、総務大臣が学識経験者及び利害関係者の意見を聴いた後、業務規程や定期的評価が適合していないことが明らかだと判断した場合、総務大臣が電波監理審議会に諮問、答申の上、NHKに変更について勧告、命令することができるとしていると思います。

 小笠原局長に聞きます。

 総務大臣が、公正な競争が確保されていない、すなわち民業を圧迫しているなどと大臣が判断した場合、総務大臣が電波監理審議会に諮問、答申するということは、これ必ずやらなきゃいけない必須の事項になりますか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 今御指摘のところは、今言及ありましたとおり、改正後の放送法の二十条の四第六項及び第七項で、業務規程を変更すべき旨の勧告及び命令を行うことができるという規定というふうに理解いたしますが、これらの行政処分につきましては、その公正性及び客観性を担保するため、同法百七十七条第一項におきまして、総務大臣は電波監理審議会に諮問しなければならないというふうに規定しているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 必ず、必ず大臣は諮問しなきゃいけない。

 じゃ、大臣が、民業を圧迫している、この競争、公正な競争が確保されていないと判断をして電波監理審議会に諮問したものの、電波監理審議会の議論の結果、公正な競争が確保されていますよと、民業を圧迫しているとまで言えませんよという答申が出た場合には、大臣はどうしなきゃいけないんですか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 ただいまの御質問につきましては、業務規程に関する総務大臣の判断と電波監理審議会の答申が異なった場合の対応に関する御質問というふうに理解をいたしますが、具体的な事例を離れましたこうした仮定に基づく御質問ということについては、ちょっとお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ一方、今回放送法が、業務規程の変更の勧告あるいは命令につきましては電波監理審議会に諮問しなければならないというふうな規定されている趣旨を踏まえれば、こういった審議会の答申を尊重しつつ対応していくということになるのではないかというふうに考えているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 ちょっと答弁曖昧ですね。

 法文では、電波監理審議会に諮問の上、大臣は勧告、命令できると。これ、法文だけ読むと、諮問さえすれば大臣は独自の判断で命令、勧告できるとも読めるんですが、ちょっと今局長の答弁曖昧でしたよ。

 もし、大臣の判断と、もう一度聞きますよ、大臣の判断と電監審の判断が違った場合、大臣はどうしなきゃいけないんですか。もう一度明確に答えてください。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 ちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、やはりちょっと今の具体的な事例を離れて、違った場合はどうなるかという、そういう仮定の質問ということにはちょっとお答えを差し控えていただきますが、ちょっと今申し上げましたとおり、まさに今委員御指摘のとおり、放送法の今回の改正案に電波監理審議会の答申に従わなければならないという趣旨の、という規定はちょっとないところではございますが、ただ、先ほど、ちょっと繰り返しになって恐縮ですが、この業務規程の変更や勧告や命令について電波監理審議会の諮問しなければならないというふうに規定されているところでございますので、その趣旨に従ったちょっと運用ということをしてまいることになるというふうに考えます。

【伊藤岳 参院議員】 大臣が従わなきゃいけないという規定はないと言われました。これ重大だと思いますね。

 それで、確かに、諮問した上でとなっていますけれども、これではちょっと非常に危惧の念を拭えません。だから、利害関係者から必ず意見を聴くための仕組みをつくったということだと私思うんですよ。わざわざその仕組み、大臣が関与する仕組みをこれなぜ入れるんですか。

【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 ちょっと繰り返しになって恐縮でございますが、ちょっと、今回の法案の趣旨は、メディアの、放送の二元制ということを含むメディアの多元性の確保ということ、そのための措置ということでございます。

 一方、先ほど委員からも言及ございましたとおり、NHKの自主性を尊重するという観点から、こうした行政処分の発動ということについては慎重に対応する必要もあるということであります。

 したがいまして、こういったメディアの多元性という非常に重要なことに関わる制度であること、そして一方、NHKのこの自主性の尊重ということも極めて重要なことであること、そういったことを踏まえてちょっと今回の放送法案に盛り込みました措置ということを提案させていただいているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 大臣がですよ、電波監理審議会の答申していかなきゃいけないんだったら、そのまま電波監理審議会に諮問して、電波監理審議会が利害関係者から意見を聴いて答申すればいいということになると私思うんですよ。

 これ、質問にはしませんが、こうした仕組みは、電波監理審議会が独立して審議、調査をする上でもこれ圧力となる危険性があると思いますよ。審議会の形骸化につながるおそれがあるのではないかということも指摘をしておきたいと思います。

 この法案の提出までの経過見ましても、ワーキンググループの取りまとめの直前に自民党の情報通信戦略調査会が提言を出しました。この提言を丸のみする形でワーキンググループのまとめが、取りまとめが出されました。そして、法案の中にも、理解促進情報を番組関連情報として、公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されるなどの要件を入れた業務規程の策定、公表等を義務付け、その実施状況を定期的に評価すること等を義務付けています。

 大臣に最後お聞きします。本法案によって必須業務となるNHKのネット配信は、公共放送としてのNHKの自主自律に基づいて実施されることが必要だと思います。大臣が業界関係者らの意見を聴いたとしても、その言い分を一律に是として判断するのではなくて、NHKの自主自律を尊重して判断する必要があります。大臣の責務は非常に重いと思います。大臣、その御認識はおありですか。

【松本剛明 総務大臣】 今局長からも御答弁申し上げましたとおり、本法案におきましては、NHKに対する業務規程の変更の勧告や命令については、公正な競争の確保に支障が生じないことが確保されることなどの要件に適合しないことが明らかな場合などに、有識者の方々などや利害関係者のお話も聴いて、また、電波監理審議会に諮問し、公正中立な立場で判断いただいて答申をいただいて実施をするものであると思っておりますが、いずれにしましても、NHKの自主性を尊重する観点から、これらの措置の発動については慎重に対応してまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 大臣としての責務をしっかり果たしていただくことを求めて、質問を終わります。

 

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党を代表して、放送法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。

 本法案は、NHKがネット配信を必須業務化するに当たり、番組関連情報について、民間放送事業者等が行うネット配信等との公正な競争の確保に支障を生じないもの、すなわち民業圧迫にならないなどの要件を含んだ業務規程の策定と、配信内容が民業圧迫となっていないかどうかを定期的に検証報告することをNHKに義務付けるとともに、総務大臣は、競争事業者などの利害関係者から意見を聴き、検証を判断し、業務規程の勧告、命令ができるものとするものです。

 NHKがネット業務をどの範囲で実施するかは、NHKが公共放送として国民の利益を最大限に保障する方向で自ら検討すべきことです。NHKのネット配信の必須業務化について議論してきた公共放送ワーキンググループでは、現在のNHKのネット配信事業がどれだけ民業圧迫となっているかという根拠は示されませんでした。根拠が不明確であるのに、NHKのネット業務の範囲に制限を掛け、競合する利害関係者である業界の利益を優先するものにほかなりません。

 利害関係者が電波監理審議会の委員になれないことは当然です。しかし、電波監理審議会が利害関係者を含め広く意見を聴くことは現行法でも可能です。本法案は、電波監理審議会とは別に、利害関係者が利害関係者の立場として総務大臣に要望を訴え、総務大臣がそれを聴く場をつくるということにほかなりません。

 しかも、今日の審議の中で、電波監理審議会の答申とそごがあった場合でも、大臣は電波監理審議会の答申に従うと明言がなされなかったことは重大です。電波監理審議会の審議、調査が形骸化するおそれも拭えません。

 総務大臣が利害関係者の意見に基づいて検証、判断して、業務規程について勧告、命令ができるとすることは、NHK及びNHKの放送番組に対する権力の介入につながりかねません。

 以上を述べて、討論とします。