議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
タクシー運転手の賃上げとライドシェアについて質問します。
交通政策審議会答申では、タクシーは、鉄道、バス等とともに、我が国の地域公共交通を形成する重要な交通機関であると明記をされています。
地域公共交通の重要な交通機関には、移動を必要とするときに地域住民を安全、確実に運ぶことが何より求められます。安全、確実な運行に対する事業者や地方公共団体などの責任は重大であり、それを監督する国交省の役割は重大だと思います。
斉藤鉄夫国土交通大臣、移動が必要な地域住民を安全、確実に運ぶ地域公共交通を持続させるためには、運行に直接関わる、携わるタクシー運転手を健康で健全な労働者として成り立たせ、またその再生産を保障することが必要だと思うんです。タクシー運転手の賃金引上げ、長時間勤務の是正に対する大臣の基本認識をお答えください。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 タクシーは大切な地域公共交通でございます。地域における移動の足を確保するため、その担い手であるタクシードライバーの確保が喫緊の課題であると認識しております。
ドライバーの確保に当たっては、適正な労働時間が担保されると同時に、適正な賃金が支払われることが重要です。
国土交通省としては、タクシーの運賃改定申請への迅速な対応などを行っており、既に九三%の地域が新たな運賃となっております。こうした取組によりまして、コロナ禍の影響により昨年三月までの間大きく減少していたドライバーの数がこの一年間では増加に転じております。また、今月からはタクシードライバーにも時間外労働の上限規制が開始されています。
これらによりまして、タクシードライバーの処遇の改善に引き続き取り組んでまいります。
【伊藤岳 参院議員】 三月七日の参議院予算委員会で、タクシー運転手の賃下げという事態が放置されたままである埼玉のタクシー事業者の事例を紹介し、大臣に対応を求めました。
別のこんな事例もあります。東京の事例です。賃金体系を二〇二三年七月に改定した事業所、これ江戸川区の飛鳥交通第六ですが、月間営業収入、税抜き営収掛ける〇・九五の額を営業収入とする。つまり、廃止されたカード決済手数料、運転手持分相当分を減額するということで賃下げが生じています。大臣、これ御存じでしょうか。
廃止されたカード決済手数料、運転手持分相当を減額するという賃金改定、これ余りに悪質ではないですか。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 その事実は私把握しておりませんけれども、もし事実とすれば問題だと思います。
【伊藤岳 参院議員】 是非、把握して対応していただきたいと思うんです。
これ、廃止されたカード決済手数料、運転手持分の相当を減額するという賃金改定のやり方について、大臣、今把握していないという話でしたけれども、こんなひどい事例が出ている中で、国交省は運転手の賃上げを強調していますよね。その一方で、現場では賃上げにそぐわない実態がある。
これ、この際、タクシー運転手の賃金体系の実態調査などに国交省として乗り出す必要があるんではないですか。どうですか。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 タクシー運転手の処遇が改善されるべきだと、改善をしていかなくてはなりませんけれども、今そういう形でその調査をするかどうかは別にいたしまして、このタクシー運転手の処遇については国土交通省としてもしっかり見守っていきたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 積極的な対応をお願いしたいと思うんですよ。
同じく三月七日の予算委員会で、アプリによる配車の導入で、アプリ系列タクシー事業者への優先的な配車などの事例を紹介しました。大臣はこれについて、パブリックコメントでもそういうお声が来ていることは確かと答弁されました。
そこで、大臣にお聞きします。
では、国交省としては、アプリによる優先配車、アプリによる配車が運用される中で、行き先が遠距離となる場合の乗客についてはアプリ系列タクシー事業者へ優先的に配車がされる、こういう実態があるということはお認めになるということですね。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 委員御指摘のような配車方法が行われているかどうかは承知しておりませんが、一般論として、利用者の近くに空車のタクシーがあるにもかかわらず、正当な理由なく遠い場所にいる別のタクシーが配車されるなど、利用者の利便を阻害するような配車が行われるということは適切ではないと、このように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 そういう事例があるということは国交省まで届いているということですよね、声が。それは届いているかどうか。どうですか。
【鶴田浩久君 国土交通省物流・自動車局長】 様々なお声を聞くように努めておりますが、今御指摘にあったようなことにつきましては具体的には承知していないところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 この間、私が事例紹介して、大臣はそういうお声は届いているって言ったんですよね。今日ちょっと違う答弁ですが。
今の話では、そういう事例、つまりアプリが、アプリ配車によって遠距離という目的地を入れたお客さんに優先的な配車がアプリ系列会社にされるとか、そういう声は聞いていないということですか。もう一度。
【鶴田浩久君 国土交通省物流・自動車局長】 少なくとも私のところにはそういったお声は届いていない状況でございます。
【伊藤岳 参院議員】 じゃ、こういう事例御存じでしょうか、大臣。
大臣、最近タクシー利用したことは余りないでしょうかね、お立場上。最近アプリを使ってタクシーを呼びますと、こうなるんですよ。あるアプリでタクシーを呼びますと、最近、このアプリの機能が更新されていまして、まずスマホの画面に目的地をタップして入力してくださいって出るんです。目的地をタップして入力してくださいって出てくるんです。これ御存じないですか。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 最近タクシー使ったことございます。警護の人と一緒にタクシーに乗っております。
そのときに、私自身、アプリを使ったことはないんですけれども、今、アプリの種類によっては、行き先もそのときに入れるというアプリがあるというふうに認識しております。
【伊藤岳 参院議員】 つまりね、これ、大臣、何を語っているかといいますと、行き先を入力させるんです。それによって、行き先が遠距離の場合にはそのアプリの系列タクシー会社にこの配車が優先されるというような仕組みができているんですよ。ここは是非しっかり見ていただきたい、監視していただきたいというふうに思うんですね。
こうなると、地域公共交通を担う同じタクシーの運転手でも、アプリ系列の会社の運転手とそうじゃない運転手の間に仕事の量が違ってきます。手取り賃金も違ってきます。こういうことになるんですね。
大臣、このアプリ系列の事業者が自分たちの事業展開の都合に合わせてこうして運転手の仕事量とか賃金をコントロールする事態になっている、これ適切だと考えますか。
【鶴田浩久君 国土交通省物流・自動車局長】 アプリを用いてタクシーの実車率を向上させると、そういう意味でアプリにも一定の意味があると考えております。
【伊藤岳 参院議員】 私も一定の意味がないとは言っていないんです。実際、仕事量や賃金がコントロールされてきているということを、これをどう考えるかということなんですよ。
じゃ、別な事例も併せてちょっと聞いて、併せて答えていただきたいんですが、これ、アプリによる配車というのが始まってから、私、駅前でタクシーを待っている方にちょっとお声聞いてきたんです、何駅かで。結構あるのが、利用する高齢者から、駅前で待っていても三十分以上一台も来ない。で、とうとう具合が悪くなって交番に運ばれたというお年寄りもいるんですよ。あともう一つ、お年寄りが路上で手を挙げてもタクシーが止まってくれない、これ多いんですね。
なぜこういうものが起きているかといいますと、これタクシー事業者に聞きました。そうすると、アプリの会社から、おたくのタクシー会社でアプリ専用車両の運行を何台か用意しなさいと言われているそうなんですよ、アプリ専用の車を。そのアプリ専用の車には、常時このダッシュボードのところに回送中というボードを立てるんだそうです。つまり、こう手挙げしても止まらない。私、回送中なんですよと。だから、アプリ専用車両が増えてきて、手挙げても止まらないというタクシーが増えているんですよ。で、そのアプリ専用車は駅には行かないそうです。つまり、駅で待っているお客さんには対応しないんだそうですよ。アプリだけ。
大臣、これでは、地域公共交通といいますが、アプリ会社の都合で運用される、その結果、高齢者を始めとする交通弱者、やっぱり真の交通弱者が更に移動困難に追いやられることにはなりませんか。どうお考えですか。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 タクシーの利用方法につきましては、事前予約なしで駅や病院などのタクシー乗り場で乗車する場合や、流しのタクシーに乗車する場合のほか、事前に電話や配車アプリで予約して乗車する場合など、利用者のニーズに応じて多様な手段が用意されておりますし、多様な利用が可能な状況でなければいけないと私も思います。
今般実施する自家用車活用事業は、タクシーが不足する地域、時期、時間帯において、その不足分を補って移動手段の供給量を確保するものであり、先ほど申し上げた多様なタクシー利用方法が全体として可能になると考えております。
多様なタクシーの利用方法が共存するといいましょうか、利用可能なようなタクシー業界であった方がいいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 ちょっと、大臣、今認識が現状に追い付いていないと思います。
私、この質問のために、何度もこの間、数日間、数日間というか何週間もタクシー会社へ電話しました。で、必ず言われるのが、アプリの配車があって、一台もお回しできるタクシーはありません、こういう回答が返ってくるんですよ。
是非、現状、今の最新の状況をつかんでいただきたいと。今申し上げましたように、アプリによってタクシーの運転手の仕事量や賃金や、またその本当の交通弱者のところに配車できないという事態が現に生まれているんです。ここを是非国交省としてよく見ていただきたいと思うんですね。
大臣は、地域の自家用車、ドライバーの活用、日本版ライドシェアについて、タクシーの不足を補完する範囲内で実施するとか、時間の限定などを言っていますが、これによって増えるタクシーの車両は、やっぱりアプリ会社の募集において参加するアプリ車両が圧倒的になります。運転手も地域や時間を限定されることになります。当然、運転手の乗務時間は限られます。大臣、そのような認識で間違いないですよね。アプリで契約した乗務員、ライドシェアで契約した乗務員、タクシー乗務員は、勤務する時間は非常に限定される。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 今回の自家用車活用事業、これは、ドライバーの健康状態、勤務状態、全体として管理されなければなりません。タクシー会社の管理の下でそのような、いわゆる雇用者としてやっていただくことになります。全体としてその健康状態についても管理されている、そういう下での制度だと、このように思っております。
【伊藤岳 参院議員】 一般のタクシーの運転手とアプリで経営するタクシーの運転手がタクシー会社に併存することになりますね。
で、アプリで契約しているタクシーの乗務員の健康チェックというのは、これはタクシー会社が行うんですか。どのようにやるんですか。
他の勤務をして、そしてアプリで乗車する人もいると思うんです。その勤務時間の把握なんかはどうなんですか。
【鶴田浩久君 国土交通省物流・自動車局長】 アプリのドライバーというのは、今、自家用車活用事業で雇用されるドライバーということだと思いますけれども、その事業におきましては、道路運送法七十八条の三号の許可基準におきまして、タクシー事業者に対して、輸送の安全上支障のないよう、自家用車ドライバーの他業、ほかの業務での勤務時間を把握すること、また、ドライバーの点呼、指導監督、研修が実施される体制が確立されていること、これらを定めているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、他業での勤務時間も把握する、把握さえすれば乗れちゃうんですよね。これ、非常にこれ、事故の件数を増大させるものだと思いますよ。
そして、最後に聞きたいのは、六月から、先ほど議論になっている六月に向けての議論です。
タクシー会社以外の事業者によるライドシェア解禁、これ国交省は認めるんですか、本当に。どうですか。
【斉藤鉄夫 国土交通大臣】 はい。じゃ、簡単に。タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法制度につきましては、今般のタクシー事業の規制緩和、自家用有償旅客運送制度の改革、四月より制度を開始した自家用車活用事業の実施効果を実証した、検証した上で六月に向けて議論することとしており、決まった方針はありません。
【伊藤岳 参院議員】 終わりますが、タクシーの管理下で安全担保すると言っていたんですが、こんなタクシー事業者、タクシー会社以外の事業者に任せるようなことになったら大変だと思います。指摘して、質問を終わります。