議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。私は、日本共産党を代表して、デジタル規制改革推進一括法案について質問いたします。
冒頭、マイナンバー法等改正案の採決の強行に強く抗議するものです。
自治体のコンビニ交付サービスにおける戸籍証明書や住民票、印鑑登録証明書の誤交付、七千三百十二件ものマイナ保険証への別人情報のひも付け、公金受取口座への他人のマイナンバーの誤登録、さらにはマイナポイント事業での別人付与など、マイナンバーカードをめぐる誤交付、誤登録は更に広がり続けています。マイナンバーカードのメリットどころか、国民の不信と不安が高まっています。
河野大臣、トラブルの全体像や原因が明らかになるまで運用は停止すべきではないですか。答弁を求めます。
マイナンバーカードでは資格確認ができないということが明らかとなり、政府はようやく総点検の実施を表明しました。構造的な欠陥を抱えたシステムであることは明白です。政府が行うとする総点検の中で、全ての個人情報が正しくマイナンバーにひも付けられているかが突き止められるのですか。デジタル大臣、厚労大臣の明確な答弁を求めます。
昨年十二月以降、マイナ保険証の別人ひも付けで、新たに確認した件数、うち他人が閲覧した件数は何件ですか。厚労大臣にお聞きします。
六月二日までの報告で、総務省は、新たなマイナポイント事業での別人付与について、更に何自治体、何件を把握したのですか。総務大臣、お答えください。
デジタル社会が進展する中、国民の暮らしはデジタル技術の活用と無縁には成り立ちません。だからこそ、デジタル技術を活用するその主役は国民であり、個人情報の保護や生存権、財産権などがしっかりと保障されなければなりません。そうではありませんか、デジタル大臣。また、地方自治体の施策は、住民の意思に基づき自治体が自ら決めるという、住民自治と団体自治にのっとったデジタル技術の活用が前提となるのではありませんか、総務大臣。それぞれお答えください。
政府がマイナンバー法等改正案に続いて国会に提出したデジタル規制改革推進一括法案は、各府省の立法、行政機関の仕組みを、デジタル臨時行政調査会が定めたデジタル原則に従ったものへと変え、アナログ規制を撤廃してデジタル技術に置き換えていくものです。しかし、この間のマイナンバーカードをめぐるトラブルを通じて、岸田政権が推進するデジタル化の問題点が明らかになりました。
政府は、マイナ保険証の別人ひも付けの原因は保険者による入力ミスだと繰り返します。しかし、被保険者情報をマイナンバーにひも付けるためには人間が介在せざるを得ないことは明らかで、入力ミスが当然想定されます。政府は、マイナ保険証の利用に当たり、健康保険のオンライン資格確認システムの整備を進め、全国約三千四百の健康保険者が保有する全ての被保険者情報をマイナンバーとひも付け、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会が管理するサーバーへ登録する作業を本格稼働に向けて急がせました。この時点で、被保険者情報のマイナンバーへのひも付けに誤登録が起きているのではないのですか。それはあり得ないと断言できますか。厚労大臣の答弁を求めます。
オンライン資格確認への登録を行う際、保険者が保有する被保険者情報の個人のマイナンバーを特定するために、J―LISが管理する住基ネットで検索する必要があります。被保険者が提出した情報にマイナンバーの記載がない場合や記載された番号が正しくない場合は、氏名、住所、生年月日、性別で検索を掛ける必要があります。しかし、氏名でいえば、同姓同名や、漢字表記と読みが一致しない、外字があるなど複雑多様です。住所の検索も、丁目や大字、小字、建物名の表記など完全に一致しなければ結果が表示されません。結局、複数の氏名が表記されることになったのではありませんか。政府は今後、氏名は漢字と仮名で検索し、五情報全てで特定するとしますが、複数氏名が表記されることなく完全な一致で確保されると言い切れるのですか。厚労大臣の答弁を求めます。
マイナンバーの十二桁の数字を入力し、一つの数字でも間違いがあった場合エラーが表示されるチェックデジットについて、既に個人に割り振られた番号の中には一定数の割合でエラーチェックができない場合があるとの専門家の指摘があります。この指摘を否定できますか。総務大臣の答弁を求めます。
岸田政権のマイナ保険証への一体化とは、制度自体に構造的な欠陥があり、それが被保険者の保険医療を受ける権利を妨げ、国民の命に関わる問題であっても、未知の課題にはトライ・アンド・エラーで果敢に取り組むといういわゆるアジャイル方式で推進するとするものなのですか。厚労大臣の答弁を求めます。
二〇二二年十月十三日、河野大臣は現行保険証を二〇二四年秋に廃止することを表明しました。廃止表明を報じた新聞各紙は、大臣は、保険証があるからみんなマイナンバーカードを持たないと頻繁に口にしたとしています。河野大臣、この発言は事実ですか。デジタル化のためには、まずは現行の紙の保険証の存在そのものをなぎ払ってしまえということですか。答弁を求めます。
政府の医療DX推進本部は、医療分野のデジタル化を進める工程表を決定し、岸田総理は、医療界や産業界と一丸となって取り組むと述べています。マイナ保険証への一体化は、保健医療情報の利活用に道を開き、企業のもうけの種とするためではないのですか。厚労大臣の答弁を求めます。
本法案は、デジタル庁が設けるデジタル法制局が、各府省の法令についてデジタル原則への適合性をチェックするとしています。デジタル法制局によるチェックがなぜ必要なのですか。具体的には何をチェックするのですか。デジタル大臣、お答えください。
地方自治体の条例や規則等の策定、個別施策に影響を与えるのではありませんか。地方分権の観点からも、規制の見直しを地方自治体に強要、強制することなどあり得ないのではありませんか。総務大臣の見解を伺います。
アナログ規制の見直しは政省令の改正や運用で進んでいます。児童福祉法施行令では、児童福祉施設と家庭的保育施設への実地検査義務はリモートで可能となりました。児童の安全は絶対に確保されると断言できるのですか。こども政策担当大臣の答弁を求めます。
インターネットを利用した公示送達では、スコアリングやプロファイリング、目的外利用などの危険性に対する対策、送達内容の閲覧に対するセキュリティー対策はどのように進んでいますか。法務大臣に答弁を求めます。
デジタル技術の発展を国の行政組織と地方自治体の施策に生かしていくことが求められています。そのためには、安全対策や個人情報とプライバシーの保護などについての十分な対策が行われ、地方自治体の自主的な判断が保障されることが必要です。集中的に期限を区切った中で強引なデジタル化を進めるべきではありません。マイナンバーカードをめぐるトラブルを教訓とすべきであることを指摘し、十分な審議を求めて、質問といたします。(拍手)
【河野太郎 デジタル大臣】 まず、マイナンバーカードの関係の事案対応についてお尋ねがありました。
コンビニ交付サービスでの誤交付については、システムの不具合によるものであり、開発事業者に対し、システム運用を停止した徹底的な再点検を要請しました。その他の事案は、システムの不具合が原因ではなく、現時点において運用を中止する必要はないと考えます。
国民の皆様の不安解消のため、新たなミスを抑制し、既存のミスを点検することは不可欠であり、既存データの総点検を行うとともに、新規データの誤登録防止策を徹底いたします。
次に、デジタル社会における個人情報や人権保障の認識についてのお尋ねがありました。
デジタル社会において、国民の幸福な生活を実現し、生存権、財産権など憲法で保障された基本的人権を最大限尊重することは当然であり、それらの旨は個人情報の保護と併せてデジタル社会形成基本法において定められております。デジタル庁としても、デジタル社会形成基本法に従い、社会全体のデジタル化に向けた取組を進めてまいります。
次に、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する私の発言についてのお尋ねがありました。
マイナンバーカードの活用により、服薬情報や健診結果など患者本人の健康、医療データに基づいたより良い医療を受けていただくことが可能になるほか、医療機関側にとっても事務コスト削減など多くのメリットがあります。こうした現行の健康保険証にはないメリットを国民の皆様に広く享受いただくため、マイナンバーカードの利用を基本するという考え方をこれまで御説明してきており、御指摘は当たりません。
最後に、いわゆるデジタル法制局の取組についてのお尋ねがありました。
デジタル庁において、デジタル原則を統一的に解釈し、ベストプラクティスを集約、共有する必要があることから、デジタル法制局の取組として、各府省における点検と併せてデジタル庁においても新規法令等のデジタル原則への適合性を確認する必要があると考えております。
具体的には、七項目の代表的なアナログ規制に該当するアナログ行為を求める場合があると解される規定、フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規定、その他デジタル原則に適合した運用を阻害するおそれがあると判断される規定について確認を行うことを考えております。
【加藤勝信 厚生労働大臣】 伊藤岳議員の御質問にお答えをいたします。
マイナンバーカードと健康保険証のひも付けの総点検についてお尋ねがありました。
オンライン資格確認については、加入者本人、事業主、保険者など、データ登録の様々な段階で生じ得る誤りに対処できることが重要であります。
このため、新規に登録されるデータの正確性を担保するための対策に加え、既に登録済みのデータ全体のチェックを行うため、七月末までに全保険者において本来の方法と異なる事務処理の点検を行うほか、五情報でJ―LIS照会を行い、誤りの疑いがあるものについて本人に送付することなどによる確認を行うこととしております。システムに対する国民の皆様の信頼を確保し、オンライン資格確認のメリットを実感していただけるよう、こうした取組を徹底してまいります。
誤登録の件数についてお尋ねがありました。
オンライン資格確認において、別の方の資格情報がひも付いて登録された事案として、昨年十一月末までに確認された件数を本年二月に公表したところであります。その後、別の方の薬剤情報等が閲覧された事案は新たに一件、保険者から公表されました。
現在、全保険者に対して登録済みデータ全体の点検作業を求めており、昨年十二月からこの点検作業前までの事案について、保険者による事実確認や情報閲覧の有無について、社会保険診療報酬支払基金などによるアクセスログ等の確認を行った上で、六月中を目途にしつつ、できるだけ早期に公表できるように集計を進めることとしています。
誤登録問題が起きた時期についてお尋ねがありました。
オンライン資格確認については、本格運用開始前の令和二年十二月時点で、保険者から登録した個人番号に誤りがある事案が約三・五万件あり、データの正確性に課題があったことなどを踏まえ、これを公表した上で、本格運用の開始時期を遅らせ、既登録データのチェックや誤入力のシステム的なチェックの導入により、登録データの正確性の確保に努めてきたところであります。
令和三年十月の本格運用開始後も、システム的なチェックや保険者による自主的なチェックにより正確なデータが登録されてない事案が確認されたことから、これを公表するとともに、今般、新規に登録されるデータの正確性を担保するための対策に加え、既に登録済みのデータ全体のチェックを行うこととするなど、更なる対策を講じたところであります。
五情報によるJ―LIS照会についてお尋ねがありました。
オンライン資格確認等システムに保険者が誤ったデータを登録する余地がないよう、今月から、資格取得届への被保険者の個人番号等の記載義務を法令上明確化し、資格取得届に個人番号の記載がなく、やむを得ず保険者がJ―LIS照会をする場合にも、必ず五情報で照会を行うことで、照会の結果、複数の候補が表示される余地がないようにするとともに、五情報が一致しない場合は、データ登録をせずに本人に確認することとしております。こうした取組を通じて、保険者による登録データの正確性の確保を図ってまいります。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化に向けた姿勢についてお尋ねがありました。
マイナンバーカードによる受診は、御自身の健康、医療に関するデータに基づいてより良い医療を受けられるようになるなど、多くのメリットがあります。そのためには、データが正確に登録され、医療現場で安心、安全に御利用いただけるものでなければなりません。
オンライン資格確認については、人の作業が介在する仕組みである以上、何らかの誤りが生じ得ることを前提として、登録データの正確性確保のための取組や、表示された情報に疑義がある場合の対応を確立するといった取組を通じて信頼の確保に努めてまいります。
医療DXにおけるマイナンバーカードと健康保険証の一体化の目的についてお尋ねがありました。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認は、医療DXの基盤であり、今後、オンライン資格確認等システムを拡充し、全国医療情報プラットフォームを構築することとしております。
医療DXは、切れ目なくより質の高い医療の効率的な提供などを通じて、国民の更なる健康増進、健康促進を図るものであり、企業をもうけさせる目的という御指摘は当たりません。
今後とも、国民の皆様の御理解をいただいた上で、医療DXの実現に向けて、関係者一丸となって取り組んでまいります。
【松本剛明 総務大臣】 伊藤議員から四点御質問いただきました。
まず、マイナポイント事業が別人に付与される事案を把握している件数について御答弁申し上げます。
これまで公表している九十七自治体百二十一件の事案以外の事案を把握するため、全自治体に対して、六月二日を報告期限として調査を実施しておりまして、現在、その結果について取りまとめているところでございます。
全自治体に対する調査でもあり、確認、取りまとめに一定の時間をいただきたいと思いますが、速やかに取りまとめを行い、公表に向けた作業を進めてまいります。
次に、地方自治体におけるデジタル技術の活用について申し上げます。
地方行政のデジタル化は、迅速かつ正確で効率的な行政サービスを提供し、住民の多様なニーズにきめ細やかに応えることに資するものです。また、業務の効率化が図られ、職員が、対面が望ましい業務や、地域の実情を踏まえて創意工夫をより発揮すべき企画立案業務などに注力できる環境を整えるものです。
このように、デジタル技術の活用は、住民の利便性の向上や行政運営の効率化とともに、人々に寄り添い未来を開く地域の行政につながるものであり、地方の自主性、自立性を高め、地方自治の本旨を尊重しながら進められるものと認識しております。
次に、マイナンバーのチェックデジットについて申し上げます。
マイナンバーの十二桁のうち一桁の数字は、入力の誤りを防止するための検査用数字であるチェックデジットとしております。これは、マイナンバーとして存在しない番号を入力する誤りを機械的に検出するための仕組みの一つです。全ての誤りを検出できるものではありませんが、作業上生じやすい誤りを防止する仕組みとして有効と考えております。
マイナンバーの誤入力の防止については、例えば住民基本台帳事務においてはシステム上のエラーチェックの措置なども講じております。それぞれの事務に応じて正確性を確保する仕組みを構築していくことが重要と考えます。
最後に、デジタル原則への適合性の点検の対象について申し上げます。
いわゆるデジタル法制局の取組によるデジタル原則への適合性の点検については、国の法令等を対象としており、自治体の条例や規則等については取組の対象とされていないものと認識しております。
デジタル原則は、地域のDX推進の参考になるものかと思われ、各自治体におけるアナログ規制の見直しについては、デジタル庁から必要な助言、情報提供が行われ、引き続き適切に対応されていくものと考えております。
【小倉將信 内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)】 児童福祉施設等への実地検査についてお尋ねがございました。
保育所等の児童福祉施設等に対する検査につきましては、保育所等の保育内容や保育環境を適切に確保する観点から大変重要と考えております。
このため、保育等の質を確保するとともに検査の実効性を更に高める観点から、先般の政令改正において、実地検査を原則とした上で、効果的かつ効率的な検査が行えるよう、一定の要件を満たした場合においては実地によらない方法での検査を可能とするとともに、不適切事案等が発生した自治体では全ての保育所等に実地検査を行うことや、検査の実施率の定期的な把握、公表を行うことなど、検査の実施率向上のための取組を行うことといたしました。
あわせて、保育所等に対する検査の体制強化を自治体に対して依頼するとともに、令和五年度の地方交付税措置を拡充したほか、自治体、保育所双方の事務負担の軽減に資するよう、自治体における好事例の把握、横展開を行っているところであり、国としては、引き続き、自治体による保育所等への検査の実施を後押しをし、検査の実効性をしっかりと確保してまいります。
【齋藤健 法務大臣】 伊藤岳議員にお答え申し上げます。
インターネットを利用した公示送達におけるセキュリティー対策等についてお尋ねがありました。
お尋ねは、昨年五月に成立をした民事訴訟法等の一部を改正する法律において導入された裁判所におけるインターネットを利用した公示送達についてのものと理解しましたが、当該公示送達についてのシステム開発は最高裁判所において行われることになっています。そのため、法務大臣としてお尋ねについて詳細をお答えすることは困難ですが、最高裁判所においては、公示日から四年以内の法律の施行に向けてセキュリティー対策等を含めて検討がされているところであり、現時点においてはまだその内容は定まっていないものと承知をいたしております。