議事録

2023年5月23日 総務委員会(マイナンバーカード申請時に障がい者を排除するような対応問題・LGBT への対応問題)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 相次ぐ住民票等のコンビニにおける誤交付、マイナ保険証の別人ひも付けなど、マイナンバーカードを利用したサービスにおいて利用者、国民に被害が拡大をしています。マイナンバーカードに対する国民の信頼は大きく揺らいでいます。

 埼玉県保険医協会では、マイナ保険証の別人ひも付けの報道後、会員開業医に対して緊急アンケート調査を行いまして、十九日にその結果を公表いたしました。健康保険証の存続について聞いたところ、保険証を存続すべきと答えた病院は八五%で、保険証の廃止に賛成は僅か四%にすぎませんでした。

 十七日の日、地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会で行われた参考人質疑では、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の家平悟事務局長が発言をされました。今日は、その中からお聞きをしたいと思います。

 障害を持つ方がマイナ保険証を取得しようとカードを申請したところ、顔写真の背後に車椅子のヘッドレストが写っていたので却下された、全盲で、病気のため黒目がない人でも、黒目が写ってないので撮り直しとなったなどの事例があったと陳述をされました。

 松本総務大臣、総務省は、ホームページなどで正面、無帽、無背景が適切な撮影としていますが、それはなぜですか。

【松本剛明 総務大臣】 御案内のとおり、マイナンバーカードは、様々な場面において安全、確実に本人確認ができる顔写真付きの本人確認書類であります。

 顔写真が確実に本人であることを確認するために、目や耳、鼻や輪郭が判別できるよう、正面、無帽、無背景の写真を適切な規格の写真と定めているところでありまして、これは運転免許証やパスポートといった一般的な顔写真付き証明書においても同様の取扱いであるというふうに承知をいたしております。

 一方で、障害のある方や寝たきりの方など、やむを得ない理由により規格に合った写真、正面、無帽、無背景ということですけど、これを撮影できない場合には、申請書の氏名欄に理由を記載し送付していただくか、コールセンターに連絡していただくことで使用可能としているところでございます。こうした顔写真の取扱いについては、本年三月に、自治体に対し具体的な例も示しつつ、改めて周知を行いました。例示には、使用可能な写真として、車椅子が映り込んでいるケースなども含まれているところでございます。

 先月行った自治体向けの説明会においても周知を行ったところですが、今後もカードを円滑に取得するための課題に取り組み、環境整備を進めたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 今、申請書で受理をするということがようやく検討されたということですが、つまり、はなから、最初の段階からは障害を持つ方のことなど考えていなかった、申請から排除してきたと言われても仕方がない対応だったと思います。

 もう一つ伺います。

 障害を持つ方がマイナンバーカードを申請する際に、福祉事業者の移動支援を受けたり成年後見人や福祉事業所職員の援助を受けたりする場合、本人の自己負担が発生します。

 大臣、障害者の自己負担が発生してカードの申請に困難があるという実態について、総務省としては障害を持つ当事者団体から意見の聴取や調査などは行いましたか。もし行ったのであれば、実施の事実経過やその結果を教えてください。

【松本剛明 総務大臣】 デジタル庁、総務省、厚労省の三省庁で進めてきたマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会のワーキンググループで、昨年十二月に関係団体からのヒアリングを行いました。ヒアリングでは、障害者の関係団体の方から、役所に出向くための支援が重要ではないかといった意見も頂戴をしたところです。

 この点、居宅介護等の障害福祉サービスについては、障害者が公的手続のために官公署を訪れる場合等の移動中の介護として利用することが可能であると承知をしております。

 また、省庁などに出向くことが難しい方もいらっしゃることから、二月に公表された中間取りまとめでは、カードの取得に課題がある方に向けた環境整備について方向性が示されたところであり、総務省ではその具体化に取り組んでいるところでございます。

 例えば、病気や身体の障害等やむを得ない理由により申請者が庁舎等に出向くことが困難な場合に、本人確認書類に基づいて代理人への交付を可能とするなど、代理交付の仕組みについて幅広く活用しやすくなるよう、事務処理要領の改訂を行って、活用できるケースの拡充、明確化などを行ったところであります。

 代理人を頼める方がいない場合であってもマイナンバーカードを円滑に取得していただけるよう、市町村職員が施設等に出張し、申請時に本人確認を行うことにより、後日、市町村から郵送によりカードを交付することが可能となる出張申請受付を推進し、費用については国費による支援を行うこととしております。

 総務省といたしましては、関係省庁と連携しつつ、取得に課題がある方についても円滑にカードが取得していただけるよう、環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 ヒアリングやったと言いますけれども、マイナンバーカードの申請に当たって自己負担が生じている障害者の方、これへの対応がなされていないじゃないですか。

 障害者の権利条約では、私たちのことを私たち抜きで決めないでを合い言葉にして制定されました。障害者差別解消法では、当該障害者の社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない、配慮しなきゃならないと、行政機関等の法的義務を定めています。今回のマイナンバー法案の策定に当たって、障害を持つ当事者団体の声をまともに聞いた対応というふうにはなっていないと思います。

 この間、マイナンバーカードの世帯全員の取得などを条件に学校給食費を無償化する、マイナンバーカードの取得を条件に住民票などのコンビニ交付の手数料を引き下げる、また、高齢者のタクシー利用を助成する制度の補助率を高めるなどなどの事例が全国の地方自治体で広がりました。私は、当委員会でも大変な大きな問題だと指摘をしてまいりました。

 家平悟参考人はこう言っています。障害を持つ方がマイナンバーカードの申請に困難を伴う状況に置かれている中で、カードの取得を条件にして行政サービスを受けられる人を特定されたら、ただでさえ重い負担を強いられている障害者とその家族が更なる不利益を被ることになると述べられました。

 大臣、障害を持つ方が行政サービスから排除されるような仕組み、そうした地域コミュニティーにしてよいのでしょうか。

【松本剛明 総務大臣】 先ほども御答弁申し上げましたように、まず、障害を持つ方がマイナンバーカードの申請に困難を伴う状況を、できるだけ、課題に取り組むことによって円滑に取得いただけるような環境整備に取り組んでいるところでございます。

 それに加えて、行政サービスについてでございますが、私どもとしては、自治体に対してカードを取得していない方に対する特定のサービスを停止するように要請したことはないわけでありますが、その上で、マイナンバーカードを保有されている方にどのようなサービスを提供するか、これはそれぞれ各施策の制度を所管する方が御判断をするところであろうかというふうに思いますが、保有されていない方への対応をどうするかについても当該サービスを提供しようとする各省庁や自治体において適切に判断されるものと考えておりまして、例えば健康保険証につきましては、何らかの事情でマイナンバーカードを取得できていない方が保険診療を受けられるようにするために、御本人に申請いただきますが、資格確認書を交付するなどの対応策を講じることとしているところでございます。

 先ほども申しましたように、総務省としては、取得に課題がある方について円滑にカードが取得していただけるよう、環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 マイナンバーカード取得を条件にして行政サービスが特定される。先ほど大臣、地方の問題だと言われましたけど、私はマイナンバーカードを所管する総務省の責任だと思いますよ。

 次に、ジェンダー平等との関係でお聞きします。

 現行の保険証は、トランスジェンダーの当事者からの要望を踏まえて、二〇一二年、二〇一七年、厚生労働省の通知で、性別欄は裏面に記載をされて、表面には通称名のみが表記されることが可能とされています。ところが、現行保険証からマイナ保険証に変わりますと、こうした配慮はありません。

 大串デジタル担当副大臣にお聞きします。

 現行の保険証の廃止、マイナ保険証の開始に当たって、こうしたトランスジェンダーの当事者からの要望については検討されましたか。

【大串正樹 デジタル副大臣】 マイナンバーカードの券面に性別の記載があることについては、カード創設当初にLGBTの皆様から御心配の声をいただいたため、カード交付時に性別欄をマスキングするカードケースを配布することとしております。また、マイナンバーカードを健康保険証として利用する場合、患者の方が病院等に設置されている専用端末にマイナンバーカードをかざすこととなりますが、病院の職員など本人以外の者がカードを受け取ることはなく、その券面を見ることがないように配慮した設計としております。

【伊藤岳 参院議員】 トランスジェンダーの当事者の方からは、マスキングしていても、病院に行ったら、マイナ保険証に記載の戸籍上のフルネームで呼ばれて周囲から好奇の視線にさらされたという切実な思いが吐露されています。

 マイナンバーカードの住所、性別や個人番号、券面から削除を検討という、読売オンラインの記事などがあります。大串副大臣、こうしたマイナンバーカードの券面記載状況の削除、この検討の必要性をお認めになりますか。

【大串正樹 デジタル副大臣】 マイナンバー法では、マイナンバーカードには氏名、住所、生年月日、性別の四情報を記載し、本人の写真を表示すると規定されております。マイナンバーカードは広く本人確認書類として活用されるものであるため、本人を特定するための情報としてこれらを券面記載事項としているのでありますが、御指摘の点も含め、券面に何を記載すべきかについて様々な議論があることは承知しております。

 現在発行しているカードは、今後、順次有効期限を迎えていきますけれども、次世代のカードを設計するに当たっては、カードの券面記載事項について、様々な関係者の御意見も丁寧にお伺いしながら検討を進めてまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 検討が必要だというふうにお認めになったと思います。

 総理も、二月の衆議院の予算委員会で、LGBTの方々への配慮を行うことは重要だと、マイナンバーカードへの氏名、性別の表記方法についてどのような工夫ができるかを含め丁寧に検討をしてまいりますと答弁しています。是非、検討が必要だと思うんですね。

 マイナンバーカードの券面記載事項は法定されていますが、券面記載事項の変更には法改正が必要ですか。

【大串正樹 デジタル副大臣】 マイナンバー法では、マイナンバーカードには氏名、住所、生年月日、性別の四情報及び個人番号を記載し、本人の写真を表示すると規定されております。したがって、これらの券面記載事項を変更するにはマイナンバー法の改正が必要となります。

【伊藤岳 参院議員】 マイナンバーカードの氏名や性別の券面表記について検討が必要だとお認めになりました。その認識であるならば、今回、マイナンバー法が提出されていますが、その策定の過程の中で真剣な検討を行い、反映すべきではなかったでしょうか。しかも、マイナンバーカードによる本人確認などのマイナンバーカードの運用の姿が今とは全く違ってしまう姿になってしまう見当になるじゃありませんか。そうした検討すべき事項があると認識している法案をなぜ提出するのか。出し直すべきだと私は思います。

 最後に、松本大臣にお聞きします。

 マイナンバーカードの券面記載において、性別欄は裏面に記載され、表面には通称名のみを表記するなどの配慮について、マイナンバーカードの申請を所管する総務省は検討してきましたか。

【松本剛明 総務大臣】 マイナンバーカードの券面記載事項について、今、大串副大臣からも御説明をさせていただいたかというふうに思いますけれども、本人確認のためのカードであるという観点、そして御指摘の件もございます。重要な事項が券面に記載をされているというふうに理解をしておりますけれども、関係者の御意見を伺いながら丁寧に検討をしてまいりたいと考えております。デジタル庁とも協力をして、関係者の御意見も踏まえつつ、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 はい。検討はこれからでは困ります。マイナンバーカード普及ありきはやめて、現行保険証は残すべきだと訴えて、質問を終わります。