議事録

2023年3月23日 予算委員会(戦争の反省を踏まえて作られた放送法における政治的公平の意義)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 冒頭、ウクライナ・ゼレンスキー大統領との首脳会談に関わり、我が国のウクライナへの支援は、憲法九条を持つ国として、あくまでも非軍事の人道支援に徹するべきだということを強く訴えておきたいと思います。

 岸田内閣の放送法に対する姿勢について質問をいたします。

 放送法は、憲法第二十一条の表現の自由に基づき、一九五〇年に制定されました。放送法第一条では、放送の不偏不党、真実及び自律を国が放送局に保障して、放送による表現の自由を確保することなどを放送法の目的として定めています。第三条では番組編集の自由の保障をうたっています。制定後、放送の目的や番組編集の自由の保障については変更されていません。

 パネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)

 総理、放送法立法時の国会における法案の概要説明で、網島毅電波監理長官、当時は、政府は放送番組に対する検閲、監督は一切行わない、政府といえども放送番組の編集に対しましては干渉ができないと説明しています。この放送法立法時の法案説明については総理も認識しておられますね。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 放送法に関するその解釈、理念については、政府として一貫していると考えております。

【伊藤岳 参院議員】 政府として一貫している、放送番組の編集への介入は禁止し、あくまで自律的であるべきだという認識だと受け止めました。

 パネルにも示しましたが、放送法の法案審議の際に、当時の逓信省において放送法質疑応答録というものが作成をされています。まさに歴史的価値のある行政文書であり、公文書であります。

 放送番組の編集を自由にする理由について、こう書いています。憲法は表現の自由を保障しており、また、放送番組に政府が干渉すると放送が政府の御用機関となり、国民の自由な思想の発展を阻害し、戦争中のような恐るべき結果を生ずると明記されています。

 ここに明記されているとおり、放送が御用機関となれば、国民の自由な思想の発展が阻害され、ひいては戦争のような結果をもたらす。ここには、ラジオ放送を通じた大本営発表による虚偽の情報の下、国民が悲惨な戦争へと駆り立てられていったことへの痛切な反省と思いが込められていると思うんです。

 総理は、放送法の制定にはこうした原点があるということは御存じですよね。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 報道の自由を始め、表現の自由、これは憲法で保障された基本的人権の一つであるとともに民主主義を担保するものであり、これを最大限尊重すること、これは当然のことです。また、放送番組は放送事業者が自らの責任において編集するものであり、放送事業者が自主的、自律的に放送法を遵守することが原則と考えております。

 放送法においてこのような理念が規定されているものと承知しており、このような放送法の理念について、従来から一貫して維持されているものと理解をしております。

【伊藤岳 参院議員】 放送法の理念も一貫しているという御答弁でした。戦争への反省、痛切な思いが込められていると思うんですね。

 二〇〇七年には、BPO、放送倫理・番組向上機構が設置をされました。これは、放送事業者自らが、放送内容の誤りを発見して、自主的にその原因を調査をして、再発防止策を検討して問題を正していこうという、あくまで自律的な取組でした。

 ところが、この本来の放送番組の編集、放送の自由の、放送の表現の自由に対する圧力、介入を乱暴に行ったのが安倍政権だったと思うんです。

 パネルを用意いたしました。

 安倍総理、当時は、二〇一四年十一月十八日、これ当時の衆議院解散直前、二日前です、TBSの「NEWS23」で、アベノミクスに関する四人の街頭インタビューについて、インタビューの選び方がおかしいんじゃないですかと発言をしました。そして、今度はパネルの左側に移りますが、その後、その総理の発言を受けての自民党側の放送番組への働きかけの経過を書いています。

 先ほどのTBSの「NEWS23」の総理発言の二日後、自民党は在京テレビ局へお願い文書を発出をいたします。ここには、ゲストの選定の在り方とか、インタビューが一方的な意見に偏らないようになどを求めています。そして、パネルにもあるように、二〇一四年十一月二十六日には、テレビ朝日「報道ステーション」のプロデューサーにも文書でそのような要請が届きました。

 こうした自民党側の動きの裏では、今度パネルの右側になりますが、官邸、総務省の放送番組への働きかけが始まります。二〇一四年十一月二十六日には礒崎氏が初めて総務省に連絡をいたします。二日後の二十八日には礒崎氏と総務省との初めてのレクが行われる。その後、翌年の三月五日には安倍首相、当時、のレクが初めて持たれます。それらを受けて、二〇一五年、同年の五月十二日、参議院の総務委員会において、藤川さん、お隣にいらっしゃいますが、藤川議員の質問に答えて、高市大臣が政治的公平性に関することについて一つの番組でも判断はあり得るということを述べました。そして、翌二〇一六年二月八日には高市大臣が電波の停止もあり得る、こういうふうに発言が続いていくわけです。

 ここにも出てきましたテレビ朝日の「報道ステーション」の当時コメンテーターを務めていた古賀茂明さんが、当時の模様をこの間新聞などで回想を述べておられます。うちの番組のプロデューサー、つまり「報道ステーション」のプロデューサーにも十一月二十六日に自民党から文書が送られてきた、この十一月二十六日という日は、礒崎首相補佐官、当時が総務省に最初に電話をした日と同じ日だ、自民党と礒崎さんとの動きがシンクロしている、官邸と自民党とがいかに一緒にやっていたのかが分かる、こう述べています。

 総理に伺いたい。

 このパネルに示したように、官邸と総務省の放送番組への働きかけ、一方で自民党の放送番組への働きかけ、この一連の流れ、これ完全に一致しているんではありませんか。どう思いますか。

【松本剛明 総務大臣】 自民党のことについては、政府の一員としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、御指摘のありました……(発言する者あり)

【末松信介 委員長】 静粛にしてください。

【松本剛明 総務大臣】 一連の動きということでございますが、一つ一つ申し上げることはできませんが、幾つか確認をされたこと、確認できていないことについて既に御報告を申し上げたとおりでございまして、この流れを私どもとして確認を全てさせていただいたのではないということを申し上げなければならないということをお伝えをしたいと思います。

 その上で、先ほど総理からも御答弁申し上げましたとおり、放送行政として一貫して政府としては変えることなく、表現の自由、国民の権利を保障する放送法に従って行政を行ってきたものというふうに承知をいたしております。

【伊藤岳 参院議員】 答えられないんだったら出てこないで結構ですよ。

 私、聞いているのは、その官邸と総務省の動きと自民党の動きが一致しているでしょうと聞いているんです、言っているんです。総理はどうですか。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 これ、日にちは同じ日であります。それ以上のことは承知しておりません。

【伊藤岳 参院議員】 重要なことを言っていただきました。全く同じ日なんですよ。流れ一致しているんですよ。流れが一致しているんです。(発言する者あり)いや、連携しているかどうか言っているんじゃない。一致しているということを言っているんです。一致しています。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 私が申し上げたのは……(発言する者あり)

【末松信介 委員長】 補足答弁を認めます。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 日付が一致しているということを申し上げただけであります。

【末松信介 委員長】 補足の答弁ですから、御理解ください。

【伊藤岳 参院議員】 官邸、総務省とこの自民党とのこの働きかけ、軌を一にした働きかけの中で、この年の総選挙での選挙報道番組はどうなったか。選挙報道番組の放送時間が大幅に縮小したんですよ。NHKの「ニュースウオッチ9」は、通常、選挙となれば三時間報道番組となっていましたが、二時間になりました。テレ朝の「報道ステーション」は、六時間の放送番組の枠を取っていましたが、三時間に減りました。これ、放送を語る会の調べで明らかです。減少しているんですよ。

 解散・総選挙の直前の二〇一四年十一月二十八日に最初の礒崎レクが行われた、パネルにありました。その後、一連のレクの中で礒崎首相補佐官はどう発言していたか。この件は俺と総理が二人で決める話だ、俺の顔を潰すようなことになればただじゃ済まないぞ、首が飛ぶぞと、乱暴極まりない恫喝するような言い方で詰め寄っていました。そして、二〇一五年三月、安倍総理へのレクで、安倍総理、当時は、政治的公平性の観点から見て現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべきだと発言しているんです。

 今度は松本総務大臣に聞きます。あなた、出番です。

 安倍総理が放送番組について発言した二〇一五年三月五日のレクについて、昨日発表された総務省の調査、精査によりますと、出席者とされる方々が、レクはあった、記憶しているなどと認めている。大臣、これ間違いないですね。(発言する者あり)

【末松信介 委員長】  答弁を。

【松本剛明 総務大臣】 よろしいんでしょうか、答弁して。いや、御注意という話だったものですから。失礼いたしました。

 まず、いずれも、今御紹介をいただいた件ですが、礒崎補佐官との関係も、面談があったということで、私どもとしても、照会をいただいて、照会にお答えをしたということは確認をされてきているところでございますけれども、日にちであるとか回数については詳しくは確認できていないことを申し上げなければならないというふうに思っております。

 その上で、今、安倍総理へのレクということでございますが、礒崎元総理補佐官から安倍元総理へのレクについては、礒崎元総理補佐官と同席したとされる元総理秘書官の二名の方に聞き取りを行った結果、レクはあったと記憶しているなど認識が一致していることから、レクはあったと、安倍総理へのレクはあったと考えられるが、その内容について、日にちや発言内容などについては正確性が確認はできていないということでございます。

【伊藤岳 参院議員】 レクがあった、ここだけ確認したいんです。

 パネル用意いたしました。その当時のレクの模様を書いた行政文書ですね。ここに、先ほど紹介したような安倍総理の生々しい発言も出てきます。政治的公平の観点から見て現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべきだ、「JAPANデビュー」は明らかにおかしいなどのこの発言が出てきます。

 総務大臣は、内容の正確さは確認中という話、さっきありましたけれども、この総理、当時の安倍総理の生々しい発言、これ総理に今度伺いますが、これ放送番組に対する干渉そのものだと思いませんか。放送法の第一条、第三条に反するんではありませんか。どうですか。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 御指摘の行政文書も含め、今総務省で精査していると承知をしております。精査した上でなければ、内容について私は何か申し上げることを控えます。

【伊藤岳 参院議員】 精査終わったと言っていますよね。この乱暴な発言は放送番組に対する干渉そのものだと思います。

 二〇一四年以降の放送の表現の自由への圧力、介入、具体的には今紹介してきたようなテレビ局の放送番組への圧力、介入は、自民党の側と官邸、総務省の側と双方から進められてきた。レクがあったということもお認めになりました。これ、はっきりと浮き彫りになったのではないでしょうか。そして、二〇一六年二月の政府の統一見解へとつながるんだと思います。

 ちょうどこの時期に、もう一つ重要な経過が動いていました。内閣の広報室が、テレビのニュース、情報番組の出演者の発言について詳細に文字起こしまでして、番組の発言を詳細に調べていたということが発覚しました。当時のしんぶん赤旗が情報開示で入手したもので、週刊誌なども取り上げていました。平日の七番組、土日の四番組、まあ「NEWS23」とか「ミヤネ屋」とか、もうよく知られた名前が、番組名がずらりと並んでいます。

 松野官房長官に確認します。

 この内閣広報室がテレビのニュース、情報番組の出演者の発言の調査を行っていた、これは事実ですね。そして、先ほどパネルで紹介した、官邸、総務省、自民党が放送番組に働きかけていた時期、二〇一四年、二〇一五年頃も行われていましたね。どうですか。

【松野博一 内閣官房長官】 お答えをいたします。

 内閣広報室においては、世論の動向を把握することにより内閣の重要政策に関する広報に資することを目的として報道番組の記録の作成を行っているものと承知をしております。

【伊藤岳 参院議員】 じゃ、何であの文字起こし、詳細にしなきゃいけないんですか。

【松野博一 内閣官房長官】 繰り返しとなり恐縮でございますが、世論の動向を把握することにより内閣の重要政策に関する広報に資することを目的としているということでございます。

【伊藤岳 参院議員】 その調査の結果、放送番組に働きかけたことはありませんか。

【松野博一 内閣官房長官】 お答えをいたします。

 内閣広報室によって行われている御指摘の事案に関しましては、あくまで内閣の広報に資することを目的としているものでございます。

【伊藤岳 参院議員】 そう言われますけれども、先ほどパネルに示した官邸と総務省の放送番組への働きかけの時期、自民党の放送番組への働きかけの時期、そして内閣広報室のこのテレビ局の調査、完全にシンクロしているんですよ。一致しているんですよ。

 総理に伺います。

 あなたの岸田内閣でもこの調査はまだやっているんですか。

【松野博一 内閣官房長官】 岸田内閣においても同様のことを行っております。

【伊藤岳 参院議員】 総理、どうしてやっているんですか。

【岸田文雄 内閣総理大臣】 先ほど官房長官からお答えしたように、世論の動向を把握するためと承知をしております。

【伊藤岳 参院議員】 世論の動向の把握、調査しているだけだと言いますけれども、一つの番組だけでも政治的公平性を判断して停波もあり得るという内閣の調査ですよ。その内閣が個別の番組名を挙げて調査することに問題があると思います。

 放送事業者を萎縮させることにはならないでしょうか。また、内閣の重要政策に関する調査という名の下に、一つ一つの番組をチェックして、安保法制などのときの政権の重要政策に反対する者をピックアップして排除していくなどの検閲、監督につながることはないでしょうか。内閣広報室が行っているテレビニュースの、テレビのニュース番組、情報番組の調査をやめるべきだ、どうですか。

【松野博一 内閣官房長官】 お答えをさせていただきます。

 繰り返しになりますけれども、内閣広報室によって行われているこういった番組に関するものは、内閣の重要政策に関する広報に資することを目的としているものでございまして、特に問題があるとは考えておりません。

【伊藤岳 参院議員】 放送による表現の自由は憲法第二十一条によって保障され、放送法は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保する」としています。

 不偏不党、真実及び自律の保障は放送事業者や番組制作者に課せられた義務ではない、これらの原則を守るように求められているのは政府などの公権力であるということをしっかりと胸に刻むべきだと思います。政府がこれらの放送法の規定に依拠して、放送番組の内容に介入することは断じて許されないということを述べて、質問を終わります。