議事録

2022年5月20日 地方創生デジタル特別委員会(構造改革特区法案/稼ぐ大学の問題点)

議事録

【伊藤岳 参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。法案は、内閣総理大臣が認定した構造改革特区区域において、地方公共団体、民間事業者等が国立大学法人の所有する土地等を活用して革新的研究開発の社会実装に係る施設を整備する場合、当該土地等の貸付けに係る文部科学大臣の認可について届出で可能とする措置を講ずるものです。

 土地等の貸付けの事例として、政府は、スタートアップ企業が入居する地域のイノベーション拠点施設や再生可能エネルギー、最新テクノロジーを導入した商業施設などを挙げています。届出にすれば、こうした民間事業者の新たな事業の追加や拡充が容易となります。貸し付けた土地等の賃料で国立大学法人を運営する外部資金を獲得しようというものです。

 それでは、国立大学法人の運営はどのように成り立っているのでしょうか。

 文科省にお聞きします。国立大学法人の経常収支の推移、運営費交付金と外部資金等の金額の推移、また、その割合の推移を示してください。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 お答え申し上げます。国立大学法人等、全体の経常収益につきましては、平成十七年度決算において二兆四千九百六十三億円であったものが、令和二年度決算においては三兆二千六百七十三億円となっております。

 その内訳は、運営費交付金収益につきましては、平成十七年度決算において一兆千四百五十一億円であったものが、令和二年度決算においては一兆三百五十一億円になっております。それから、補助金収益、受託研究収益、寄附金収益等を含む外部資金等につきましては、平成十七年度決算において二千六十億円であったものが、令和二年度決算におきましては五千四百二十一億円になっているところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 今示していただきましたけれども、運営費交付金は独立行政法人化された二〇〇五年と比べて一千百億円減額をされている、そして経常収益全体に占める割合も四六%から三二%、一四%低くなっている。一方、外部資金は三千三百六十一億円増額、割合も八%から一七%へと高くなっているということだと思います。

 運営費交付金は額も割合も減っているということですね。文科省、どうですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 運営費交付金につきましては、平成……(発言する者あり)はい。法人化して以降減少しておりましたが、平成二十七年度以降は同額程度維持しているところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 まあ要するに減っているということです、法人化して。それで、じゃ、その運営費交付金を減らしてきたのはなぜなのですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 国立大学法人運営費交付金、平成十六年度の法人化以降減少しておりましたが、先ほど申し上げましたとおり、平成二十七年度以降、同額程度を確保しております。

 各年度の予算額につきましては、その時々の社会経済情勢や財政事情を踏まえつつ、個々の事業の必要性等を勘案して決定されているものと考えておりまして、財政構造改革などの厳しい財政状況の中において各年度の事情で決定されておりますが、先ほど申し上げましたとおり、平成二十七年度以降は同額程度確保しているという状況でございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 財政状況の厳しさと言われましたけれども、じゃ、文科省、お聞きします。国立大学法人の研究や教育に必要な費用は国費で賄うということが基本ではないですか。どうですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 お答え申し上げます。各国立大学は、運営費交付金と授業料収入等の自己収入を合わせた予算の範囲で、それぞれの経営判断に基づいて教育研究活動を実施いたしております。

 国立大学法人運営費交付金は、国立大学が人材の確保や教育研究環境の整備を行うために不可欠な基盤的経費であり、その確保は重要であると考えております。

 令和四年度予算では一兆七百八十六億円を計上し、その中で各大学の基盤的な教育研究活動に活用できる基幹運営費交付金は、実質対前年度十四億円の増額を確保しているところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 ちょっと端的にお聞きしている、聞きたいんですけど、聞いたのは、国立大学法人の教育研究に必要な費用は国費で賄うことが基本だと、文科省はこういう見解ではないんですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 国立大学が人材の確保や教育研究環境の整備を行うための不可欠な基盤的経費が運営費交付金であると考えております。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 不可欠なという話がありました。国立大学法人が本来の業務、つまり教育研究活動、教育研究活動に専念できるようにするためには、運営費交付金をふさわしく拡充をして、国が責任を果たすことが必要だと思います。

 国立大学法人経営ハンドブックというのがあるのを知りまして、見ましたけれども、このハンドブックの中にも、基本的にその基盤的活動の財源を公財政支援に依存しと明確に書かれています。その国立大学法人の運営費交付金が削減されてきて、その一方で、国立大学法人の資産運用などで外部資金を獲得しようと、こういうことが迫られてきたという姿になっているのだと思います。

 しかも、国立大学法人の運営費交付金を二〇一七年度以降、毎年削減する算定ルールが作られた中では、人件費や水光熱費等、最も基幹的経費に充てる基幹運営費交付金も毎年百億円ずつ減額し続けられています。これでは、国立大学法人は一層外部資金を獲得するということにせき立てられていくことになると思います。そして、今回の法改正が出てきた。つまり、外部資金を獲得を更に頑張れ、今回の土地等の貸付けの規制緩和だと思います。

 外部資金の獲得の今後について、文科省は、令和元年、二〇一九年六月に、国立大学法人の目指すべき姿と取り組むべき方向性を示した国立大学改革方針を公表しています。

 これ見ますと、中長期の経済成長を実現する持続的なイノベーションを創出するという観点から、大学を運営することから経営する、経営する方向性を明確にと打ち出して、強靱な国立大学を支える基盤の強化に向けた規制緩和と体制整備を挙げて、その中で、外部資金の獲得強化及び積極的な資産活用のための規制緩和策の検討などが列挙されています。

 文科省に聞きます。この大学を運営することから経営する方向性はなぜ必要になったんですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 お答え申し上げます。国立大学は、その責任ある経営体制の確立、裁量の拡大等により、競争的環境の中で活力に富み、個性豊かな魅力ある大学となることを目的として、平成十六年度に法人化されました。近年では、我が国及び世界の持続可能な発展のため、国立大学が知の創出拠点として、新領域、融合分野など新たな研究領域の開拓、新しい時代を担う人材育成、世界が直面する社会課題の解決などを図りつつ、学問の進展やイノベーションの創出に貢献することへの期待が高まっていると考えております。

 国立大学が社会からの期待に応えていくためには、教育研究活動の成果を広く社会にアピールし、民間企業との共同研究や寄附金の拡大など、社会全体からの支援を受け、その期待に対し目に見える形で応えるという好循環を形成していくことが重要であると考えております。

 こういった観点から、文部科学省におきましては、これまで、外部資金の獲得強化の観点から資産活用のための規制緩和を実施するなど、大学の経営力の強化を促してきたところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 教育研究の成果を上げると言いながらですよ、その教育研究に当たる大学法人が、国立大学法人が外部資金の獲得に血道を上げなきゃいけない。これ、大学法人の在り方としていいんでしょうか。

 そもそも、国立大学法人の土地等の貸付けは、法人の目的及び業務の範囲を踏まえて、業務を行うに当たり必要とされている場合に限定されていました。具体例としては、福利厚生として、民間が運営する食堂をキャンパス内に設置する場合などでありました。

 国立大学法人の土地等は、現に教育研究に利用している資産及び将来的に利用計画のある資産として国から出資をされ、運営費は公的資金によって支えられている。したがって、その活用は国立大学法人法第二十二条一項の本来的業務及びそれに附帯する業務の範囲内とされてきました。その後、国立大学法人法の二〇一六年の改正で、国立大学法人の財政基盤の強化が必要になったとして、法人の業務とは関係なくても土地等の貸付けが可能とされました。そして、文部科学大臣の認可が必要とされました。

 文科省、この二〇一六年の法律の改正で、土地等の貸付けについて文部科学大臣の認可を必要とした理由は何ですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 お答え申し上げます。国立大学法人が所有する土地等について第三者への貸付けの際に認可を必要としておりますのは、当該貸付けにより、教育研究活動の実施に支障が生じないこと、法人の財産を毀損するおそれがないこと、公益を損なうおそれがないこと等を事前に確認するためでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 なのに、文部科学大臣の認可を届出で可能とすることは、国の関与が及ばずに事実上ノーチェックとなるのではないですか。どうですか。

 

【森田正信  文部科学省大臣官房審議官】

 お答え申し上げます。今回の法案での規制緩和につきましては、適用対象が民間事業者が革新的な研究開発を行う場合等でございまして、国立大学法人の本来業務とも親和性が高く、土地等の利用用途や方法について法人における予見可能性が高いことから、大学の教育研究に支障を生じさせるおそれが低いこと、それから、構造改革特区の認定時に契約書のひな形等を提出させることによって法人業務への支障や財産の毀損等が生じるおそれがないことを外形的に確認できることから、今回、事前認可を不要とするものでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 先ほども別な方の答弁でもあったけど、是正勧告するような事態も起きるということあるわけでしょう。不適切な土地利用が増加する懸念は拭えないと思います。

 最後に、野田大臣にお聞きします。公的資金から出資された土地等の貸付けを届出で可能とするという改正は、国立大学法人の運営の在り方、経常収支の在り方などに深く関わってきます。国立大学法人法を改正するのではなく、構造改革特区法の特例措置とすることにしたのはなぜでしょうか。

 

【野田聖子  内閣府特命担当大臣(地方創生)】

 お答えいたします。イノベーションを創出して地域の活性化を図るため、必要に応じて大学とも力を合わせながら、民間企業等の研究開発成果の迅速な社会実装や適時を捉えた事業実施が必要であります。

 一方で、国立大学法人の土地等の貸付けについては、貸付けの内容が適正かどうかについてできるだけ慎重に判断することが引き続き重要とされています。御指摘のとおりです。このため、まず構造改革特区において特区計画の認定を受けるという条件の下で、事前届けをもって土地等の貸付けができることといたしました。

 不適切な貸付けが行われないようにしっかりと対処した上で、本特例措置により地域のイノベーション創出を図り、地域活性化を促してまいりたいと考えています。

 

【伊藤岳 参議院議員】

時間ですので終わりますが、私は、国立大学法人法として提案をして、文部科学大臣の出席の下で審議するべき案件だと思います。そのことを指摘して、質問を終わりたいと思います。

 

以下反対討論

【伊藤岳 参議院議員】

私は、日本共産党を代表して、構造改革特区法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。

 反対の主な理由は、本法案が、特区内において地方公共団体、民間事業者等が国立大学法人が所有する土地等を活用して革新的研究開発の社会実装に係る施設を整備する場合、当該土地等の貸出しに係る文部科学大臣の認可を届出とすることです。

 政府は、スタートアップ企業が入居するイノベーション拠点施設や、地域のイノベーション拠点施設や、再生可能エネルギー、最新テクノロジーを導入した商業施設などを事例に挙げています。しかし、それらは現行の認可制度で可能です。これを届出にすれば、新たな事業の追加や拡充が容易となり、国の関与も及びません。事実上のノーチェックとなってしまいます。

 国立大学法人の運営交付金は削減され続け、その一方、国立大学法人には資産運用などの自己資金獲得が迫られてきました。国民の共有財産であり、教育研究のためにこそ使われるべき国立大学法人の資産をもうけの道具としてはならないと思います。国は、運営費交付金の拡充こそ行うべきであり、その責任を放棄することは許されません。

 なお、職能開発短期大学校からの大学への編入学の道を開く特例措置については、地域で物づくりに関わる技術者や技術者を目指す若者らがより高度な知識や技術を習得する機会につながることから、反対はしません。しかし、編入学は学校制度の根幹に関わることであり、制度上の担保と外部評価の仕組みを検討して、特区ではなく全国統一の対応を目指すべきだと思います。

 二〇〇二年に成立し、五年ごとの延長と追加措置を重ねてきた構造改革特区法は、地方発の形を取りながら、その実際は業界の要望や政府の施策の実験的試行のツールとなってきました。構造改革特区法の延長は必要ありません。

 国立大学法人や学校制度の在り方に係る問題を含め、真に必要な規制緩和については根拠法の改正で措置されるべきです。以上述べて、討論といたします。