議事録

2022年5月19日 総務委員会(地方創生臨時交付金「原油価格・物価高騰対応分」/統計不正問題)

議事録

【伊藤岳 参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。政府は、四月二十六日、原油価格・物価高騰等総合緊急対策を策定をし、地方創生臨時交付金のコロナ禍における原油価格・物価高騰対応分を新たに創設をして、一兆円を財政措置するとしました。この緊急対策の中には、これまでどおりの栄養バランスや量を保った学校給食等が実施されるよう、地方創生臨時交付金を拡充、活用し、コロナ禍において物価高騰に直面する保護者の負担軽減に向けた自治体の取組を強力に促し、必要な支援を迅速に行うことが盛り込まれております。

 文科省も通知を発出し、地方創生臨時交付金の活用を、学校給食を実施する学校設置者である地方自治体に要請をしました。

 私の地元埼玉県で学校給食調理員として働く方々にお話を伺ってまいりました。学校給食から果物はなくなりました。食材もできるだけ安価なものをと、安全面が心配です。おかずも一品少なくなることもあります。自宅の食卓の品数も少なくなっているという子供たちの話もよく耳にしますということでした。物価高騰の下、子供たちの学校給食はもちろん、自宅での食事の栄養バランスと量を保っていけるよう、保護者の負担軽減に向けた支援が求められていると感じました。

 内閣府に聞きます。地方創生臨時交付金の原油価格・物価高騰対応分の活用について、学校給食の食材高騰相当分の支援のほか、給食費を時限的に引き下げるとか又は時限的に無償にするなどの支援に活用することはできますか。

 

【黒田昌義  内閣府地方創生推進室次長】 

 お答えいたします。新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金につきましては、去る四月二十六日に決定されました総合緊急対策におきまして、長引くコロナ禍で経済的に厳しい環境に置かれ、原油価格、物価高騰に直面している生活困窮者の方々や、コロナ禍の影響を大きく受けている農林水産業者や運輸交通分野を始めとする中小企業者等の負担の軽減を自治体が地域の実情に応じて実施できるよう、コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分を創設したところでございます。

 この総合緊急対策におきましては、自治体が実施する学校給食等の負担軽減など、子育て世帯の支援の取組をしっかりと後押しをしていくこととされておりまして、今委員おっしゃられました御指摘のような対応も含めまして、各自治体の判断により、この臨時交付金の対応分を活用し、学校給食等の保護者負担の軽減に向けた取組を行っていただくものと考えております。

 各自治体におかれましては、この創設しました対応分の趣旨も踏まえまして、真に生活に困っている方々への支援が行き渡るよう、限られた財源の中でできるだけ効果の高い施策を取っていただき、その使途についても公表、また説明をいただくようお願いをしているところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 今の答弁もありましたように、時限的に学校給食費を引き下げるなどにも活用できるということを確認したいと思います。

 また、今各地で認可保育所など、建設費が資材高騰により当初見込みを超えてしまって建築が立ち行かなくなるという事態が発生をしています。こうした建築資材高騰分に対する事業者支援にも活用できますか。

 

【黒田昌義  内閣府地方創生推進室次長】 

 お答えいたします。総合緊急対策におきまして創設されましたこの対応分により、自治体が、コロナ禍において原油価格、物価高騰に直面する農林水産業者、運輸交通分野を始めとする中小企業者の負担の軽減を地域の実情に応じきめ細やかに実施できるようにすることとされておりまして、具体的な対応につきましては各自治体の判断となりますが、特定の事業者に対してのみ支援を行う事業につきましては、各自治体におきまして、新型コロナウイルス感染症への対応としての必要性、また費用対効果を十分吟味した上で実施していただくことが望ましいと考えておりまして、その旨注意をさせていただいているところでございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 仕入価格高騰や燃油高騰で収益が減少した事業者、たくさんおられます。その事業者に対して、減収補填という看板では交付金は活用できないと思いますが、自治体が仕入価格高騰相当分や燃油価格高騰相当分として給付支援することはできますか。

 

【黒田昌義  内閣府地方創生推進室次長】 

 お答えいたします。先ほどの繰り返しになりますが、この新設をしました対応分、これによりまして、長引くコロナ禍で大変苦労されております農林水産事業者、運輸交通分野を始めとする中小企業者の負担の軽減策、これにつきましては、地域の実情に応じまして、各自治体の判断で御指摘のような対応も含めて御活用いただくことは可能でございます。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 活用できると確認をいたしました。金子大臣にお聞きします。今紹介した緊急対策には、福祉灯油等への特別交付税措置が昨年度に続きまして二〇二二年度も盛り込まれました。地方自治体の実態に応えた財政措置を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

【金子恭之 総務大臣】

 伊藤委員にお答え申し上げます。原油価格の高騰によって生じる課題というのは地域によって様々であり、自治体がそれぞれの地域の実情に応じて対策を講じることが重要であります。このため、伊藤委員御指摘のとおり、令和三年度に引き続きまして、令和四年度においても、自治体が行う生活困窮者等に対する灯油購入の助成などの原油価格高騰対策に要する経費につきまして特別交付税措置を講じることとしております。

 特別交付税の算定に当たっては、自治体が講じる様々な対策の内容を丁寧にお伺いをし、実態を踏まえた算定を行うことによりまして、原油価格高騰対策に取り組む自治体をしっかりと支援してまいります。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 地方創生臨時交付金の二〇二一年度地方単独事業分の今年度への繰越分もあります。今回創設された原油価格・物価高騰対応分と併せて地方創生臨時交付金の活用について、地方自治体への周知徹底を図っていただきたいと思います。

 それでは、統計不正問題について伺います。繊維統計、毎月勤労統計の不正に続いて、今回の建設工事受注動態統計の不正が起きました。そのたびごとに統計委員会は二度と統計不正を起こさないと再発防止策を立て、取り組んでこられました。

 毎月勤労統計の不正を受けまして、統計委員長宛てに、当時のね、当時の統計委員長宛てに経済統計学会から声明が出されました。統計行政そのものの在り方を根底から揺るがす深刻な問題であることから、その対応を誤れば我が国の公的統計の将来はない、それは同時に、日本の統計に対する国際社会からの信用の喪失をも意味するとまで書かれております。

 椿統計委員長にお聞きします。今紹介した声明にある、その対応を誤れば我が国の公的統計の将来はないと、こういう指摘だった。それだけれども、基幹統計の不正事案が繰り返されている。この事態についてどう受け止めていますか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 ただいま御指摘のように、様々な不適切事案の発生を受けて、公的統計の信頼確保というのは大きな問題となります。この統計委員会自体の提案に基づいて政府による各種の取組が行われている途上に今回の案件がまた起こったというふうに承知しております。

 私自身も、統計作成プロセス診断のように、第三者が各府省の診断を行うという昨年十月に試行を開始した取組、こういうものにも大きな期待を寄せておりました。その途上で今回のような問題が発生したということは非常に遺憾なことで、統計の品質確保という公的統計の最も基本的かつ重要な課題が改めて浮き彫りになったことは明らかだと思います。

 統計委員会の今般の事案を受けて設置した特別検討チームにおいても、検証委員会の報告書、タスクフォースの報告書の精査、あるいは毎月勤労統計調査の事案を受けた対策実施状況の確認のためのヒアリングなどを行いましたし、五月十三日に国交省から公表された遡及改定検討会議の報告書などにつきましても今後ヒアリングを行ってまいります。

 このチームにおいて、今回のヒアリングにおいて課題の抽出を行う、また今般の事案を踏まえて、基幹統計調査の特に集計プロセス、プロセスの問題に焦点を置いて、再発防止、未然防止に努めてまいりたいというふうに考えているところです。公的統計全体の品質向上や重大リスク案件の未然防止につきましては、統計委員会としては全力を尽くしてまいりたいと考えているところです。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 今、統計委員長も重大リスク案件と言われましたけれども、今回の国交省の案件は、文字どおり、ここまで来たかという驚くべき案件でした。

 国交省は、令和二年、二〇二〇年十月に統計委員会評価分科会に対して提出した資料の中に、足し上げて合算処理をしていることを示す資料を混入させました。国交省の検証委員会報告書では、このことについて、本件合算処理を評価分科会に参考資料として提出して報告したことにし、同部会において審議を経たとの説明ができるようにしようと企図した形跡が認められるとされました。

 公的統計の将来どころか、国交省はここまで来たかという事案だったと思います。統計委員長として、今回の事案、どう考えていますか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 お尋ねの点につきましては、国交省の検証委員会の報告書の中でも非常に厳しい評価が行われていると承知しております。こういった対応が行われたことは誠に不適切でして、残念としか申し上げられない状況でございます。

 今回の事案を踏まえて、こうしたことが再発しないような実効性のある対策というのが、講じていくことは大変重要と考えております。先ほどから申し上げております品質向上の検討チームにおきましては、事案の発生原因まで遡る、そして精査を行う、政府統計全体の課題を抽出する、そして品質優先の組織文化の形成、特に人間系の誤りというものを不正にしないという、そういう風通しの良い職場環境の醸成などにも踏み込んだ検討を進めておるところです。

 いずれにせよ、統計委員会としても、政府統計全体が品質の高い統計を安定的に作成することができる仕組みの確立ということを目指してまいりたいと思っております。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 今回の国交省の不正事案が議論されているさなかに、さらに、建築着工統計の作成に必要な工事費の調査において、毎月業者に配付している調査票が最大一年超えて配付されていないという事態も生じました。つまり、二〇二一年一月以降の調査が実施されていなかった。しかも、合算処理が行われていることを統計委員会評価分科会に承認されたかのように装うために取り繕っていたその時期と重なります。つまり、不正をごまかそうとしていたために調査票の配付等が間に合わなかったのではないか、そのことによって別の公的統計の調査の遅れまで生んでしまったのではないかということでなかったかと思います。

 この点、統計委員長、どういう認識を持っていますか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 今御指摘の評価分科会の件でございますけれども、これは、実は私、当時その評価分科会の会長であった当事者でございます。基本的には、私がそれを承諾したという形になっているということです。ただし、実は今回、いろいろな精査の中で私自身も知ったところですけれども、統計委員会、例えば担当室と国土交通省の間にはやはり相当大きな隔たりがあって、やり取りがあったというふうにも承知しているところです。

 当日の審議事項に追加された施工統計調査の見直しに関連して、受注動態統計調査など他の統計調査への影響に関係する参考資料があったということを担当室から説明を、事前に説明を受けて、私はその配付を承諾したんですけれども、基本的に今のようなことがある種の議員指摘のようなプロセスの中で行われてきているという、そういうこと自体の問題を強く認識しておりますので、その再発防止については全力を努めてまいりたい、統計委員会として仕組みの確立をも目指したいと思っております。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 絶対に繰り返してはいけないと思いますけれども、どうしてもこの件、解せないんです。先ほど椿統計委員長が、評価分科会の責任者やっていた時期だという話がありました。この国交省が提出した資料、この統計不正を取り繕おうとたくらんだ提出資料ですね、当初、評価分科会は今回の評価分科会の審議事項ではないと受取をかなり拒んでいました。最終的に資料を受け取って配付を許可し、しかも、当日、説明時間余り取らないでもらいたいと説明することまで許されました。なぜ許されたのか、よく理解できないんです。

 しかも、四月十四日の当委員会の答弁で、国交省の強い要請があったという答弁がありました。その強い要請とは一体どのような内容だったんでしょうか。なぜ統計委員長は、今回、資料の提出を受け入れてしまったんでしょうか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 先ほど申し上げましたように、これ統計委員会の委員長ないしは統計委員会の組織として承諾したのではなくて、評価分科会長の私が、この議案というもの、その資料と参考資料の添付というものを許したということをまず申し上げます。そのときに、基本的に、元々の審議事項、議案事項ではなかったということも承知しております。

 いずれにせよ、そのようなことに関して、それを承諾したということについて、これももちろん国土交通省から説明を受けて承諾したのではなくて、総務省統計委員会の事務局からこういう議案が追加があったという形で承諾したということです。

 今回、私自身も、先ほど申し上げましたように、私、総務省の中の精査の中で総務省統計委員会担当室と国土交通省の間でその種のやり取りがあったということを初めて承知したところです。一応、事実の経過でございますけど、以上、補足させていただきました。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 事実の経過、分かりました。しかし、統計委員長、審議事項ではない資料の受取、配付の判断がされたわけです。公正が求められる統計委員会として、これ許されたものだったと、今、どう考えていますか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 これも先ほど少し申し上げましたけれども、本来の審議事項というのは、当日は文部科学省の審議とそれから国土交通省の施工統計等調査の審議と承知しております。その資料が本体の資料であって、今般の事案に関係しているものは参考資料として出ていたもの、したがって説明も受けてはいないという状況のものなんですけれども、こういうものと、こういうものであった、参考資料であったという一判断の下で、私自身が、それを付けることは特に問題ないでしょう、議案の進行には関係ないでしょうということを申し上げたところです。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 審議事項ではない、参考資料だ、認めた、この点もしっかりと分析、総括してもらいたいと私思います。どうしてもこれは解せない、私としては解せません。

 統計をつかさどる統計委員会としての基本姿勢が、そういうところ問われているんじゃないかと思います。審議事項ではなかったわけですから、きっぱり、当初、しかも拒んでいたわけですから、受取を、その姿勢を貫くべきだったと私は思います。強く指摘しておきたいと思います。

 毎月勤労統計の不正の後、統計委員会は二〇一九年に建議を出されました。誤りを発見された際の連絡ルールを定める組織内情報共有ルールを求めています。国交省もルールを定めましたが、そのルールが機能せずに、建設工事受注統計の不正が発覚しました。

 統計委員長、この組織内情報共有ルールが生かされなかったこと、どのようにお考えでしょうか。

 

【椿広計 統計委員会委員長】

 この統計委員会の建議を踏まえて国土交通省において策定されたルール自体が機能しなかったということは、まず大変に残念なことと申し上げます。

 統計委員会の特別検討チームで、幹部研修などを通じて、誤り発見後の対応ルール、誤りを不正にしないための発見後の対応ルールというものの浸透、徹底させることに加えて、誤りを発見、報告した者に不利益が生じない環境づくりが必要であるというふうに認識しているところです。こういったことが組織内で共有されることを通じて、先ほど申し上げました品質優先の組織文化ないしは誤りを不正としない風通しの良い組織環境というものの醸成というものに踏み込んだ検討を行っているところです。

 引き続き、統計委員会としては、実効性のある再発防止策、未然防止策を起案することに向けて議論を進めてまいりたいと思います。

 

【伊藤岳 参議院議員】

 先ほど取り上げました統計不正を取り繕おうとした国交省の資料の提出ですね、先ほど、統計委員長、参考資料だから、審議の時間もオーバーするわけじゃないから認められたという話ありましたけれども、結局、これ国交省の企てだったんです、今分かっていることは。ですから、そういうことがなぜ起きてしまったのか、あの判断が正しかったのかどうか、やっぱりしっかり総括もしていただきたいし、今後の改善に生かしていただきたいというふうに思います。時間が参りました。以上で質問を終わります。