日本共産党の伊藤岳議員は10日の参院予算委員会で、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故の早急な原因究明を求めるとともに、国民の命を守るために全国の公共インフラの点検や維持・管理や予算配分を根本から見直すよう迫りました。
下水道管の腐食
同事故は下水道管の腐食が原因だと指摘されています。下水道法施行規則は「腐食するおそれが大きいもの」を「下水の流路の高低差が著しい箇所」と「伏越(ふせこし)室の壁その他」の二つに限定し、下水道法施行令は点検を「5年に1回以上の適切な頻度で行う」としています。
伊藤氏は事故現場の下水道管路は、いずれの対象にも該当せず、県の法定点検の対象外だと指摘。下水道管路全体を対象にしていれば事故は防げたとして同法に基づく点検・調査基準の見直しを求めました。
さらに、事故を受けた「有識者委員会」への提出資料で、道路陥没件数が下水道管路敷設後36~40年で119件、41~45年で250件、46~50年で511件、51~55年で557件と、40年経過後に急増している実態を突き付けました。
中野洋昌国土交通相は下水道管路敷設後約40年が経過すると道路陥没件数が急増すると2007年から把握していたと答弁。伊藤氏が、政府はそれを知りながら「下水道管の標準耐用年数は50年」と言い続けてきたのは大問題だと批判し、「『50年耐用』を改めるのか」と迫ると、石破茂首相は「軽々に言えない」などとして応じませんでした。
伊藤氏は、15年に開かれた国交省の社会資本整備審議会の分科会で「施設の老朽化は、静かに、しかし確実に進行しているが、それに対応する下水道担当職員は減少」「下水道担当職員が5人未満の地方公共団体が約500存在するなど、管理体制は脆弱(ぜいじゃく)」だと指摘されていたと強調。「05年度に3万7618人いた職員が10年度は3万347人まで減少し、15年の下水道法改正以降も減り続けている。公共インフラの老朽化危機が見えていた中でも減らしてきた」と批判しました。
職員不足明らか
また、「5年に1回以上の法定点検で異常が見つかっても対策がとれていない。23年度までの点検で、速やかな措置が必要な状態と判定された管渠(かんきょ)8.1㎞のうち4.5㎞が対策がとられていない」と告発。職員の不足は明らかだと指摘しました。石破茂首相は「この職種だけが減っているわけではない」と開き直りました。
さらに伊藤氏は、公共インフラの維持・管理、老朽化対策を支援する防災・安全交付金が、24年度の自治体要求額1兆4000億円に対し、国の配分額は8563億円にすぎず、交付金の対象は点検、改築で修繕は対象外だと指摘。「修繕は各自治体の独立採算で、住民の負担に跳ね返る」と批判しました。
その上で、内閣府の試算では、54年度までの老朽公共インフラの更新に土木インフラだけで399兆円必要だとして、「軍事費は8.7兆円に増やす一方、国民の命や安全を守る公共インフラの老朽化は置き去りにする政治の転換を求める」と迫りました。
【2025年3月12日(水)付 しんぶん赤旗・写真=しんぶん赤旗、伊藤岳事務所】

(写真)石破茂首相と中野国交相に迫る伊藤議員。(左から)石破茂首相、加藤勝信財務相、中野洋昌国土交通、伊藤岳議員=10日、参院予算委

下水道の常勤職員推移