【伊藤岳 参議院議員】
日本共産党の伊藤岳です。
NHK予算の承認案件について、我が党は、受信料負担増など国民負担増や経理などの不祥事があった場合、また、政治の圧力に屈した場合や会長が放送の自主自律を脅かす発言を行った場合などを除いて、基本的には賛成をしてまいりました。
しかし、NHK執行部は、かんぽ不正販売問題を報じた「クローズアップ現代+」、二〇一八年四月二十四日放送ですが、この番組に対する日本郵政グループからの抗議、圧力に屈服をして、予定していた第二弾の放送番組を取りやめました。しかも、ガバナンスを口実にして経営委員会が会長を呼び付けて厳重注意をしました。さらには、その際の経営委員会議事録を隠蔽し続けてきました。
日本共産党は、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法第三条及び第三十二条二項に違反する行為であると厳しく指摘し、執行部が策定し、経営委員会が了承した二〇二〇年度、二〇二一年度のNHK予算の承認には反対をさせていただきました。
その後はどうか。経営委員会は、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の二度にわたる全面開示の答申を受けながら、二〇二一年七月八日に情報公開請求者に対して、二〇一八年十月から十一月に行った三回の経営員会の議論を粗起こしした資料、議事起こしを開示しましたが、ホームページ等での公表は要旨のみで、いまだ全文を議事録として作成していません。審議委員会の二度にわたる答申があったにもかかわらず、放送の自主自律を遵守すべきNHKとして無反省極まりない態度を取り続けていると言わなければなりません。
森下経営委員長に聞きます。
開示された議事起こしには、森下経営委員長、あなたの、番組の取材も含めて極めて稚拙とか、極めて作り方の問題があるなどの発言が記されています。放送法三十二条二項で、個別の番組編集への経営委員の関与を禁じていることに違反するのではないですか。放送法の定める自主自律に違反するのではないですか。どうですか。
【森下俊三 NHK経営委員会委員長】 回答いたします。
経営委員会としましては、あくまでもガバナンスの観点から注意を行ったものであり、放送法第三十二条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識して議論しておりました。番組の編集の自由を損なうような事実はなく、執行部もそうした事実はなかったとしていると承知しております。
本件の件では、抗議のもととなった番組などについて確認する必要があり、番組などをめぐる意見や感想も含まれておりますが、あくまでもガバナンスに関する議論であることがその場で何度も強調、指摘されておりまして、具体的な制作手法などを指示することを意図した議論ではなかったと認識しております。
なお、番組本編の放送は二〇一八年四月であり、動画の公開終了や夏季特集で取り上げないなどの執行部の判断は七月から八月にかけて行われております。経営委員会に郵政側から書状が届いたのは十月であり、時系列から見ても番組介入はありません。
以上、お答えいたしました。
【伊藤岳 参議院議員】 苦しい弁明だと思いますよ。違うじゃないですか、経営委員長。ガバナンスは口実にしているだけで、放送番組の内容そのものに踏み込んでいる発言ですよ。
「クローズアップ現代+」の番組は、高齢者を巧妙にだまして契約を提携させるなど多くの国民に被害を及ぼしたかんぽ不正販売問題を放送した、これは公共放送としての役割として当然のことだったと思います。ところが、日本郵政グループの圧力に経営委員会も執行部も屈服して、放送番組を取りやめてしまいました。
経営委員長は、番組に関する発言もあったけどと弁明されますけれども、取材内容、番組作りを問題にしています。番組に関するどころか、個別の番組の編集そのものに関わる発言です。放送法第三十二条第二項で規定する、「委員は、個別の放送番組の編集について、第三条の規定に抵触する行為をしてはならない。」に明確に違反する行為ではないでしょうか。放送法も定める公共放送の根本である放送の自主自律が損なわれた大問題だと私は思います。
経営委員長、開示された議事起こしには、村田委員のこういう発言も記されていました。彼らの、彼らというのは日本郵政グループですね、彼らの本来の不満は内容にあって、番組の内容にあって、内容についてはつけないから、その手続論の小さな瑕疵のことで攻めてきているんだけれどもという発言が記載されています。
放送番組の内容を問題にするこれ発言じゃないですか。
【森下俊三 NHK経営委員会委員長】 お答えいたします。
二〇一八年十月に届いた郵政三社からの書状には、NHKが公式ツイッターで掲載した動画、これは七月七日と七月十日の二件ありますが、この動画では、何ら具体的事実の摘示はなく、あたかも両者が詐欺、押売などの犯罪的営業を組織ぐるみでやっているかのような印象を与えると記載されていたため、番組やSNS動画について意見や感想を述べ合ったものでありまして、具体的な制作手法などについて指示したものではありません。
なお、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申の中でも指摘されているとおり、当時の会長に関わるガバナンスに問題があったか否か、会長に何らかの対応を求めるべきか否かに関する議論が中心となっていると、そういうように個人情報保護審議委員会でも指摘されているとおりであります。
先ほど回答いたしましたように、番組本編の放送は十二月、二〇一八年四月でありまして、動画の公開終了や夏季特集で取り上げないなどの執行部の判断は七月から八月にかけて行われています。経営委員会に郵政側からの書状が届いたのは十月でありまして、先ほどお話ししましたように、時系列から見て、番組介入はありません。
以上、お答えいたしました。
【伊藤岳 参議院議員】
先ほど、金子大臣、ほかの議員の質問に対して、もう随分過去の番組なのに、番組の個別に関わることは発言できませんと言われました。森下経営委員長の発言、おかしいと思いますよ。大臣もそう言っているんだから。
審議委員会の二度にわたる答申では、経営委員会議事録の全面開示を求めています。答申の中ではどう書いているか。経営委員会を構成する経営委員は、視聴者・国民に対し、自らの経営委員としての言動については広く説明責任を負っていると言わなければならない、特に、NHK会長に係るガバナンスの問題というような重要な運営上の問題について、各経営委員がどのような意見を持ち、どのような議論が行われ、どのような結論に達したのかについては、より強く透明性が求められることは論をまたないと述べられています。
経営委員長、もう一度聞きます。審議委員会の答申に沿って経営委員会議事録を全面開示すべきではないですか。答えだけ、イエスかノーか。
【森下俊三 NHK経営委員会委員長】 お答えいたします。
経営委員会といたしましては、審議委員会からの二度目の答申を重く受け止めまして、昨年二月から七月まで、十回にわたって慎重に幅広く様々なケースについて検討を重ねてまいりました。
その結果、非公表を前提とした議論も開示することは極めて異例の対応でありますが、経営委員会が役員の職務の執行の監督という極めて重要な権限行使として会長を指示、注意したという特異な事例であることから、開示することを決めました。
NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申のとおり、情報公開制度に基づいて開示することを昨年七月に経営委員会で決定し、請求者に対しては全部開示を行っております。
以上、お答えいたしました。
【伊藤岳 参議院議員】 答申が求めているのは議事録の全面開示ですよ。
前田会長に聞きます。開示された議事起こしによっても、経営委員会の中で個別の放送番組に関与する発言があった、放送の自主自律が損なわれたということは明白ではないですか。会長の認識はいかがですか。会長は、経営委員会議事録は全面開示すべきと思われませんか。どうですか。
【前田晃伸 NHK会長】 私が着任する前のことでございますが、少なくとも私が引継ぎで聞いた限りでは、番組に介入されたというような事実はなかったということでございました。
また、議事録の開示につきましては、これは経営委員会において判断するものだと考えております。
【伊藤岳 参議院議員】
会長、逃げちゃ駄目だと思います。きっちり意見言ってもらいたい。
大臣にも聞きます。NHKの最高意思決定機関である経営委員会の透明性を確保するために、放送法第四十一条は議事録の作成と公表を義務付けています。しかも、経営委員会が会長を厳重注意したという議事でした。大臣、経営委員会議事録の全面開示を大臣として求めるべきじゃないですか。
【金子恭之 総務大臣】 お答え申し上げます。
NHK経営委員会の議事録については、放送法第四十一条に基づき、経営委員会の定めるところにより作成、公表を行うこととされているため、個別の議事録の取扱いについては、経営委員会において自律的に判断すべきものと考えております。
総務省としては、今般のNHK予算に付した大臣意見において指摘したとおり、NHKにおいては、国民・視聴者の受信料で成り立つ公共放送として、放送法の趣旨を踏まえて引き続き経営の透明性の確保に努めていただきたいと考えております。
【伊藤岳 参議院議員】
事は放送の自主自律に関わる大問題なんです。改めて強く経営委員会議事録の全面開示を求めておきたいと思います。
新しいNHKに向けたスリムで強靱な経営体制の中では、訪問によらない営業で契約収納費の大幅削減を挙げています。
前田会長にお聞きします。訪問による営業において、受信契約の内容をだまして契約を締結させたり、深夜に訪問して執拗に契約を迫ったり、恫喝して脅すなど、強引な契約勧誘手法に国民の批判が殺到しています。会長はこの国民の批判についてどのように受け止めていますか。
【前田晃伸 NHK会長】 ただいま御指摘のありましたような手法による訪問営業は、私は不適切だと思っております。そういうこともありまして、訪問によらない営業に切替えを決意したわけでございます。
【伊藤岳 参議院議員】
当然、不適切です。だから訪問によらない営業に切り替えるって、ここはちょっと私、認識が違うと思うんです。
強引な勧誘、契約手法の背景には一体何があるか。NHKが二〇〇九年に受信契約や受信料収納において法人委託営業にかじを切りました。法人に委託をすれば、当然営業成績を上げるためにノルマ主義に陥りやすい。実際に、法人のスタッフが歩合を上げようと過大なノルマによる強引な勧誘、契約手法が横行し、NHKの信頼を揺るがす事態となったということだと思います。要は、本来の訪問による営業の在り方から逸脱した結果が国民の批判を生んだんです。
先ほど来これ議論になっていますが、私、訪問一般を否定するのは、これは違うと思うんです。一方で、個人委託契約の地域スタッフさん、メイトさんは、訪問により受信料制度の理解を得る丁寧な、本当に親切な努力を続けてこられました。
私は、地域スタッフが加盟する全受労という労働組合の皆さんの話を伺いました。こう言っていました。私たち地域スタッフは、国民の中にNHKへの物すごい不信がある中で私たちは公共放送の意義や受信料制度の意義などを語って語って受信契約をつないできました、私たちの存在がなければ間違いなく今後受信契約も収納率も下がる一方だと思います、NHKの今後が心配だと言われていました。
会長、こうした地域スタッフの声をどう受け止めますか。受信契約や受信料収納に際しては、公共放送の意義、受信料制度の意義をこれまで以上に丁寧に説明を行って、受信契約の締結や受信料の支払に国民・視聴者の理解が得られように努めることなしには、まあ営業経費は下がるかもしれない、しかし、受信契約も受信料収納率も下がっていく、維持することは難しいんではないですか、どうですか。
【前田晃伸 NHK会長】 お答え申し上げます。
巡回訪問型の営業のいろんな問題点はたくさんございましたので、それだけに頼るというやり方を変えようということでございまして、まず最初に法人委託は基本的にはやめるということにしました。それ以外にも、個人の方で長いこと営業をやっていただいている方もおられますので、その方々のお仕事については評価をいたしております。評価をいたしておりますが、ただ、その手法だけでこれからずっと支払率が維持されるかというと、それは必ずしもそうではないと思います。
いろんな工夫が必要だと思いますので、この営業のやり方を抜本的に見直して、いろんなことをやろうということでございます。
【伊藤岳 参議院議員】 今、会長から地域スタッフの方の努力は評価しているという大事な答弁ありました。
当初、最高時五千八百人いた個人委託契約の地域スタッフ、二〇〇九年からの法人委託化のあおりで現在八百六十九人。先ほど、小沢議員の質問に対して、その個人委託契約の地域スタッフ、二〇二三年度末をもって契約が終了し、代替業務に移行するという考え方が述べられました。
会長、聞きます。
この地域スタッフという方は全くなくなるんですか。希望者、地域スタッフとして誇りを持って続けていきたいという、この現在八百六十九人いる方々、希望があれば地域スタッフとして残すおつもりですか。
【松崎和義 NHK理事】 お答え申し上げます。
現行の地域スタッフの制度につきましては、二〇二三年度末で終了をする予定にしております。先ほど申し上げましたけれども、二〇二四年度以降の業務につきましては、現在検討を進めているところでございますが、未収となっている受信料を回収する業務等を中心とした代替業務を想定をしているところでございます。
【伊藤岳 参議院議員】
先ほど会長が言われた地域スタッフの役割評価しているというのをね、そこを踏まえて考えていただきたい。
会長に聞きます。
先ほど地域スタッフの方の声を紹介されましたが、地域スタッフの方が削減されていく中で、どのように受信契約や受信料収納増の目標、やろうとしているんでしょうか。
訪問営業を廃止してしまって、地域スタッフを少なくしていって、どのように国民・視聴者への理解を得ていくおつもりですか。どうやって受信契約や受信料収納を維持し上げていくおつもりですか。
【前田晃伸 NHK会長】 お答え申し上げます。
訪問によらない営業への転換では、視聴者の皆様に、NHKの存在を十分に御理解いただいた上で、納得して受信料をお支払いいただくことが重要だと考えております。
このために、インターネットやSNSなどデジタルでの接点の活用や、日本郵便の特別宛て所配達郵便などを通じ、公共放送の役割や受信料制度の意義を御説明して御理解いただく活動を強化してまいります。また、ケーブルテレビなどとの連携の強化や、受信契約の手続サイトであります受信料の窓口の利便性の向上などによる契約の促進、既に契約をいただいている視聴者との関係の強化にも取組を進めております。
こうした活動全体を通じて、支払率八〇%台の維持に努めるとともに、事業運営に必要な受信料収入を確保してまいります。
【伊藤岳 参議院議員】
業者などが、またインターネットなどが、受信料制度の意義なんか語れないと思います。やっぱり、地域スタッフというのは重要な役割を果たしてきたんですから。
時間ですので終わりますが、大臣、最後に大臣の見解、一言お願いできますか、この問題で。
【金子恭之 総務大臣】 見解といいますのは、最後の、この受信料についてということですね。
今、いろいろお話、会長からお話がありました。いずれにしましても、NHKにおいて、受信料の適切かつ公平な負担の徹底に向けて、引き続き国民・視聴者の皆様の御理解を得ながら、受信料の支払率の向上にしっかりと取り組んでいただきたいと考えております。
【伊藤岳 参議院議員】 終わります。
以下、委員会討論
私は、日本共産党を代表し、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求める件、いわゆるNHK二〇二二年度予算の承認に対して反対の討論を行います。
日本共産党は、NHKのかんぽ生命不正販売に関する「クローズアップ現代+」の報道をめぐって、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈して第二弾の放送を取りやめ、さらに経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法第三条及び三十二条二項に違反する行為であると指摘をしてきました。しかも、経営委員会は、放送法第四十一条に反して、会長を厳重注意した議事録の公開にも背を向けてきました。こうした下、我が党は、二〇二〇年度、二〇二一年度のNHK予算の承認に反対しました。
昨年七月、経営委員会は、議事起こしを情報公開請求者などに対して開示しました。そこには、日本郵政からの圧力に屈する経営委員会の対応が生々しく記されていました。しかし、いまだに全文を議事録として作成、公表しておりません。放送の自主自律を遵守せず、視聴者・国民への説明責任も放棄したNHKの対応に国民の信頼は揺らいだままです。こうした下で、執行部が編成し、経営委員会が議決をした予算を承認することはできません。
さらに、経費の削減ありきで、訪問によらない営業活動への移行を掲げ、営業活動の大幅な縮小を図ろうとすることは重大です。訪問営業とは、本来、公共放送や受信料制度の役割を丁寧に説明し、NHKに対する視聴者・国民に促す重要な役割を持つものです。
ところが、二〇〇九年以降、NHKは訪問営業を法人委託へとかじを切りました。委託先のスタッフは契約数の増加のノルマを課せられ、強引な勧誘や契約者をだますような手法が横行し、国民から強い批判が殺到しました。丁寧な説明をないがしろにした委託法人の営業がNHKへの信頼を揺るがす事態となっています。これを改め、本来の姿に立ち返ることが求められています。営業活動の縮小では、NHKへの国民の理解は得られないばかりか、受信料収入への悪影響も懸念されます。
最後に、視聴者・国民の代表としての自覚と、放送法を遵守する経営委員会に改革することを強く求め、反対討論とします。