議事録

2022年3月9日 本会議(令和4年度地方財政計画、地方税法・地方交付税法等改正案 質疑)

【伊藤岳 参議院議員】
 日本共産党の伊藤岳です。
 私は、日本共産党を代表して、二〇二二年度地方財政計画外二法案について質問します。
 初めに、ロシアの無法なウクライナ侵略に断固抗議をします。
 ロシアの軍事行動は、一般市民や原発施設をも標的とするなど、無差別となっています。国連総会緊急特別会合は、ロシアによるウクライナ侵略を国連憲章違反であると断定をし、武力行使の停止、軍の即時完全無条件撤退をロシアに求める緊急決議を圧倒的多数で採択をしました。国際的な抗議と世論が急速に広がり、日本国内でも全国の地方議会で決議が次々と上がっています。
 外務大臣、ロシアの侵略をやめさせるために、あらゆる外交努力を尽くすべきです。答弁を求めます。
 さらに、プーチン大統領が繰り返す核兵器の先制使用による威嚇は重大です。日本被団協、日本原水協や多くの団体が抗議の声を上げています。広島市議会は、全会一致の決議で、ヒロシマの心を踏みにじるもので、強い憤りを覚えるとし、長崎市議会は、同じく全会一致で、決してウクライナに長崎、広島と同じ悲劇を起こしてはならないと訴えています。
 岸田総理は、唯一の戦争被爆国であり、また、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も、ましてや、使用も、万が一にも許されるものではないと表明しました。
 破滅をもたらす核使用の威嚇を許さずに、核兵器廃絶への道を開くために、政府はどのような行動を取るのですか。外務大臣、お答えください。
 次に、コロナ感染拡大と病床確保です。
 感染拡大は収束に向かうどころか、まん延防止等重点措置を十八都道府県で延長する事態です。新規感染者は日々数万を数え、死亡者は第五波を超えています。
 深刻なのは病床の逼迫です。埼玉県では、陽性が確認された自宅療養中の十代後半の若者の容体が急変し、受入先の医療機関が見付からずに亡くなる事態が生まれています。
 新型コロナ感染対策の基幹病院として、第五波でも大きな役割を果たしてきた埼玉県立循環器・呼吸器病センターの事務局長は、感染者数の爆発的増加に比例して重症患者数が増えている、重症患者は高齢者が多い、介助が必要だし、認知症の方には更にケアが必要となる、看護師等は院内からやりくりする自転車操業で、更に重症患者が増えたら回せないと訴えています。
 岸田総理は、第五波のときを上回る新規感染者数にも対応する病床を増やす計画を整備したと言います。しかし、肝腎の医療スタッフの増員はされてこなかったのではありませんか。厚労大臣の答弁を求めます。
 二〇〇七年からの公立病院改革ガイドライン、二〇一五年からの新公立病院改革ガイドラインを通じて、全国の公立病院は再編統合などの圧力にさらされ、全国の公立病院数は二〇〇八年から二〇二〇年の間に九百四十三から八百五十三に、病床数は二十二・八万床から二十・三万床に減少しています。この流れを転換することが必要です。
 総務大臣、新たな公立病院ガイドライン策定はやめるべきです。厚労大臣、再編統合を前提にした地域医療構想は白紙に戻すべきではありませんか。答弁を求めます。
 地域のケア労働を確立し、しっかりと育てていくことは避けて通れない課題です。
 岸田総理は、介護、保育、幼稚園、学童保育等の職員の収入を三%程度、また一定の医療機関の看護職員の収入を一%程度引き上げる処遇改善を補正予算に盛り込みました。しかし、そもそも九千円や四千円程度の増額では、余りにも少な過ぎます。制度は他の職員の処遇改善にも柔軟に活用できるとされ、対象を広げれば一人当たりの改善額は減ります。到底十分な額とは言えません。
 ケア労働者の賃上げ、処遇改善は、民間、公務を含む全ての対象者の三%収入増につながるのですか。厚労大臣、少子化対策担当大臣の答弁を求めます。
 二月までに、保育、幼稚園では九百九十自治体、学童保育では七百七十八自治体が申請をしています。自治体の申請について、更なる柔軟な対応が必要です。少子化対策担当大臣の見解を伺います。
 ケア労働者の賃上げ、処遇改善は今回の補正予算の一回限りで終わりですか。厚労大臣、少子化対策担当大臣、お答えください。
 十月以降の地方負担に対しては地方交付税が措置されますが、少なくない不交付団体も処遇改善を進めています。不交付団体への財政支援を検討すべきではありませんか。来年度以降も地方の賃上げが継続する取組を支える財政支援をどのように行うのですか。総務大臣の答弁を求めます。
 二年を超えるコロナ禍の中、住民全体の奉仕者として奮闘する地方公務員の長時間労働が深刻です。
 日本自治体労働組合総連合は、第五波における過労死ラインを超える地方公務員の働き方の実態調査結果を公表しました。保健所やワクチン担当部署では、所属する職員の一か月の平均時間外労働が何と百二十八時間に達している職場や、昨年七月から九月の三か月の平均値で一人当たりの平均時間外労働が百時間に達していた職場さえある。いつ、どこで、誰に過労死が発生してもおかしくないと告発をしています。
 さらに、保健所等に応援を送り出している自治体の職場、現場でも長時間勤務が常態となっています。ある県のアンケートには、本務の業務も逼迫しているので、保健所応援が終わった後、二十時を回って県庁に戻ってきて本務の業務をしている、応援に人が取られ本務の人数が不足し、課内全員が毎日残業などの声が寄せられています。
 非現業の地方公務員については、労働基準法第三十三条第三項により、公務のために臨時の必要がある場合は、災害その他避けることのできない場合に超過勤務が命令可能とされています。ところが、この臨時の超過勤務は、この二年間、無制限、青天井となっています。
 厚労大臣、労働基準法第三十三条第三項による場合でも、過労死ラインを超えるような長時間労働は規制をされるべきではありませんか。答弁を求めます。
 上限時間を超えるような時間外勤務を必要最小限にとどめるために何より必要なのは、人員の増員と適正な配置ではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。
 自治体現場に人手不足をもたらしている原因は、国が自治体職員定数の純減を押し付けてきた集中改革プランです。プラン以降も職員定数の抑制基調がもたらされたのです。総務大臣、自公政権が推し進めた集中改革プランへの反省はありますか。
 地方自治体の職員増員は待ったなしです。地方の歳出を抑制する路線を転換して、必要な財政需要を積み上げて、人件費を始めとする一般財源総額の増額確保を行うべきです。そのためにも、地方交付税法定率の大幅な引上げを行うべきです。総務大臣の答弁を求めます。
 最後に、建設工事受注動態統計調査の不正問題です。
 国交省から検証委員会報告書、総務省からタスクフォース精査結果報告書が出されましたが、真相究明には至っていません。受注額が書き換えられ合算されてカウントされている上に、毎月の推計値を加えれば二重計上になることは誰でも分かることです。国交省の不正隠しの姿勢は深刻です。
 統計の中立性、信頼性を回復するためにも、国会での真相究明が求められることを述べ、質問といたします。
 ありがとうございました。(拍手)

【金子恭之 総務大臣】
伊藤議員からの御質問にお答え申し上げます。
まず、新たな公立病院ガイドラインの策定について御質問いただきました。
公立病院の経営を強化し、地域に必要な医療提供体制を確保するため、有識者検討会で御議論いただきながら、今年度末までに新たなガイドラインを策定する予定ですが、公立病院の病床削減、統廃合を前提とすることは考えておりません。このことについて、地方三団体には、昨年十二月に、地域医療確保に関する国と地方の協議の場において説明をし、御理解を得たところです。
 次に、処遇改善に係る財政支援について御質問いただきました。
 令和四年十月から令和五年三月までの処遇改善に係る地方負担については、不交付団体を含め、普通交付税の算定において処遇改善分を反映することとしております。
 令和五年度以降については、公的価格評価検討委員会の中間整理に基づく検討を踏まえ、総務省としても適切に対応してまいります。
 次に、時間外勤務と人員について御質問いただきました。
 時間外勤務については、必要最小限にとどめるとともに、上限規制を適切に運用する必要があります。上限を超える場合には、業務量の削減や業務の効率化、人員の適切、適正な配置等に取り組むことが必要と考えます。
 定員管理に関しましては、行政の合理化、能率化や、将来にわたる安定的な行政サービスの提供体制確保という考え方に立ち、各自治体において取り組むことが重要と考えております。
 次に、集中改革プランへの認識について御質問いただきました。
 平成十七年からの五年間、自治体に対し集中改革プランによる取組を要請し、その後もしばらくは職員数が減少していましたが、平成二十八年以降は横ばいから微増傾向となっております。
 各自治体においては、行政の合理化、能率化を図りつつ、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理の推進に取り組んでいただいているものと認識をしております。
 最後に、一般財源総額の確保と交付税率の引上げについて御質問いただきました。
 令和四年度の地方財政計画においては、保健師の増員など、職員数を約五千人の増とした上で、一般財源総額について令和三年度を上回る額を確保いたしました。
 今後とも、基本方針二〇二一に沿って、地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額をしっかりと確保してまいります。
 なお、交付税率の引上げについては、現在、国、地方共に厳しい財政状況にあるため、容易ではありませんが、今後も交付税率の見直し等により地方交付税総額を安定的に確保できるよう、粘り強く主張し、政府部内で十分に議論してまいります。
  
【林芳正 外務大臣】
ロシアによる侵略や核兵器による威嚇を止めさせる行動についてお尋ねがございました。
今回のロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、厳しく非難をします。
 ロシアが核抑止力部隊の態勢を引き上げたことについては、情勢の更なる不安定化につながりかねない危険な行動であると認識しています。
 我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないということを様々な国際場裏において強く訴えてまいります。

【後藤茂之 厚生労働大臣】
伊藤岳議員の御質問にお答えいたします。
 新型コロナウイルスに係る医療人材の確保についてお尋ねがありました。
 厚生労働省として、昨年夏の感染状況を踏まえ、全国で前回のピーク時の一・三倍の受入れ病床を確保するとともに、医療人材についても、全国で約二千の医療機関から医師約三千人、看護師約三千人の派遣体制を整えていただいています。
 また、重症化率は低いものの、感染力や拡大速度が顕著であるオミクロン株への対応として、国が必要な医療人材を支援し、東京と大阪に追加で約一千床の臨時の医療施設を確保するとともに、感染者が継続して療養を行う高齢者施設の医療体制を強化するため医療人材の派遣を支援するなどの取組を行っており、今後とも必要な医療人材の確保に努めてまいります。
 地域医療構想についてお尋ねがありました。
 地域医療構想については、人口構造の変化を踏まえつつ、地域の医療ニーズに応じた医療体制を確保するために取り組むものであります。病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえ、地方自治体等としっかり意思疎通を図りながら、引き続き取組を進めてまいります。
 ケア労働者の賃上げの内容についてお尋ねがありました。
 今般、新しい資本主義を起動するための分配戦略として、介護などの現場で働く方々について、公営施設で働く施設職員も含め、給与の引上げのための措置を講じます。今回の措置は、各事業所等において、他の職種にも一定の処遇改善を行うことができるよう柔軟な運用を認めることとしています。こうしたことから各職員の処遇改善にはばらつきが生じますが、こうした点を含め、混乱なく実施できるよう丁寧に説明をしてまいります。
 ケア労働者の今後の賃上げについてお尋ねがありました。
 介護等に従事する方々の勤務環境や処遇の改善は大変重要な課題であると認識しており、これまでの取組に加え、先ほど申し上げたとおり、今般、介護などの現場で働く方々の給与の引上げを行います。引上げに当たっては、それが継続的なものとなるよう、補正予算により二月に前倒しして実施した上で、本年十月以降については報酬改定等により措置することとしています。
 今後の具体的な処遇改善の方向性については、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されるかといった観点から検討をしてまいります。
 地方公務員の長時間労働についてお尋ねがありました。
 労働基準法第三十三条第三項において、公務のための臨時の必要がある場合には、非現業の官公署に勤務する職員については、三六協定を締結することなく時間外・休日労働を行わせることができることとされています。一方で、コロナ禍が長引く中で、過労死等を防止し、職員の健康を確保していくことが地方公務員においても極めて重要になっています。
 このため、総務省において、条例等により上限規制を設けるよう自治体に対し通知による助言を行っているほか、勤務時間の適切な把握や時間外勤務の要因分析などを踏まえた時間外勤務縮減対策の実施、医師による面接指導の効果的な実施といった制度を実効的に運用するための留意点について自治体に通知しているものと承知しています。
 労働政策を所管する厚生労働省としても、コロナ禍においても働く皆様の健康確保が重要であるとの観点から、各自治体においてこうした取組が着実に実施されることが重要であると考えています。

【野田聖子 内閣府子ども子育て担当大臣】
今回の処遇改善における対象者の収入増についてお尋ねがありました。
今回の令和三年度補正予算による処遇改善は、昨年十一月の経済対策において、民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、保育士等、幼稚園教諭を対象に、収入を三%程度、月額九千円引き上げるための措置を実施するとされたことを踏まえ、私立、公立を問わず措置したものです。
 処遇改善の補助額の算定に当たっては、保育所等では公定価格上の配置基準に基づいて、放課後児童クラブでは放課後児童支援員等の職員数に基づいて、それぞれ常勤換算の職員数により算定する一方で、補助金の算定対象でない職員についても、柔軟な配分により一定の処遇改善を行うことを可能としています。
 このため、各職員個人の改善額にはばらつきが生じ得るところであり、引き続き、事業者や地方自治体に対して丁寧に説明してまいります。
 次に、自治体から国への申請受付についてお尋ねがありました。
 今般の保育士、幼稚園教諭等の処遇改善に関する補助金の市町村から国への交付申請に当たっては、管内の施設における処遇改善の実施見込みを基に概算による申請を行うことも可能としていることや、また、令和四年度に令和三年度分も含めて交付申請を行うことも可能であることなどについて、地方自治体に重ねて周知を行っているところです。引き続き、市町村による交付申請を促してまいります。
 次に、今後の処遇改善についてお尋ねがありました。
 今回の保育士等の処遇改善については、本年二月から九月までの間は令和三年度補正予算で対応することとしています。
 また、本年十月以降については、賃上げ効果が継続的、継続されるよう、令和四年度当初予算案において、収入を三%程度、月額九千円引き上げるための措置を、公定価格の見直し等により講じることとしています。
 その後の具体的な処遇改善の方向性については、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、職種ごとに仕事の内容に比して適正な水準まで賃金が引き上がり、必要な人材が確保されるかといった観点から、関係大臣と連携し、検討してまいります。