議事録

2021年6月1日 総務委員会(NHK経営委員会の議事録開示問題・聖火リレーライブ音声消去問題) 

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。かんぽ不正販売問題を報じた「クローズアップ現代+」の番組に関わってNHK前会長を厳重注意した経営委員会の議事録の開示について、開示請求人に対し、五月七日付けでNHK会長名の文書開示判断期間延長の御連絡というものが届けられました。

 森下NHK経営委員長と前田会長にお聞きします。NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が出した二回の答申には、そもそも情報公開制度というのは、対象文書をありのままに見せることを当然の大前提、公開制度の対象となる機関自らが対象文書に手を加えることは制度上予定されていないことであり、それは対象文書の改ざんというそしりを受けかねない危険をはらむものであると記されています。

 大事な指摘で、当然のことだと思いますが、このことは否定はされませんね。まず、森下経営委員長、いかがですか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。経営委員会としては、当時の議論は非公表を前提に行っておりまして、対象文書それ自体は開示できないが、NHK情報公開規程第二十一条に基づきまして答申の趣旨を尊重し、説明責任を果たすために改めて整理、精査したものを公表したものでございます。整理、精査したものであることは請求者にその旨を付して回答しておりまして、改ざんには当たらないと考えております。

 他方、二度目の答申では、前回の対応では不十分であり、対象文書そのものを開示せよとの指摘がございましたので、現在、慎重かつ幅広く検討している段階でございます。以上、お答えしました。

 

【伊藤岳参議院議員】

 聞いていることに答えていただいていないんですが。情報制度ですね、情報公開制度の原則を否定するということでしょうか。前田会長はどう考えますか。

 

【前田晃伸日本放送協会会長】

 お答え申し上げます。NHK情報公開基準では、情報開示の求めの対象は、NHK役職員が業務上共用するものとして保有している文書としておりまして、特定した該当の文書について開示、不開示等を判断した上で、開示する場合は、原則として該当文書の閲覧又はコピーの提供を行うことといたしております。

 NHK情報公開基準並びにNHK情報公開規程にのっとって経営委員会が開示、不開示等の最終判断を行うものと承知しております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 NHKの内部の規則を情報公開制度の上に置くということなんでしょうか。これはあり得ないと思います。

 審議委員会の答申の中には次のようなことも書かれています。経営委員会を構成する経営委員は、視聴者・国民に対し、自らの経営委員としての言動については、広く説明責任を負っていると言わなければならない。特に、NHK会長に係るガバナンスの問題というような重要な運営上の問題について、各経営委員がどのような意見を持ち、どのような議論が行われ、どのような結論に達したのかについては、より強く透明性が求められることは論をまたない。議事録非公表の場でなければ各経営委員が率直な意見が言えないというような類の問題と位置付けるものではないと書かれています。

 森下経営委員長、重要な運営上の問題についての経営委員の意見についての透明性、また本件は当然公開されるべき対象であることのこの指摘についてどう受け止めますか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 回答いたします。経営委員会としては、前会長を注意したことの重要性や経営委員会の透明性という観点から、昨年二〇二〇年三月に一連の対応を詳しくまとめました経緯を公表いたしまして、議事録にも追記しております。先ほど委員御指摘のように、どのような議論が行われ、どのような結論に達したかなどについてはこの経緯の中で明らかにしております。

 他方、公表しないことを前提に発言された意見を公表すると、非公表の前提を覆すことになりますので、今後、自由な意見交換や多様な意見の表明を妨げ、経営委員会の運営に支障を来すおそれがあると考えて、一度目の答申の際には対象文書を開示しなかったものでございます。

 なお今回、先ほどお話ししましたように、二度目の答申ございますので、慎重に幅広く検討している段階でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 経緯を公表していると言うけれども、この当委員会でも何度か私、質問してきましたが、例えば番組の取材の在り方など、番組に関わる発言をしていることなど隠されていました。

 武田大臣にもお聞きをします。経営委員会の委員は国会の同意人事です。そして、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の透明性を確保するために、放送法第四十一条は議事録の作成と公表を義務付けています。

 経営委員会の意見について透明性が十分に確保されるべきではないかと思いますが、大臣の見解を伺います。

 

【武田良太総務大臣】

 NHK経営委員会の議事録につきましては、経営の透明性を確保する観点から、放送法第四十一条に基づき、経営委員会の定めるところにより、作成、公表を行うこととされております。国民・視聴者の受信料で成り立つ公共放送として、NHK経営委員会においては、こうした放送法の趣旨にのっとり、引き続き自律的に経営の透明性の確保に努めていただきたいと考えます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今大臣も述べられましたけれども、NHKにあっては、経営委員会の透明性、絶対確保されなきゃならないという見地を貫いていただきたいと思うんです。

 議事録開示について議論された経営委員会の議事録もまた、議事要旨だけで開示をされていません。経営委員会議事要旨には、例えば、今後の経営委員会運営について、二月四日に出されたNHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申について報告を行い、次回以降の経営委員会で継続して対応を検討することを確認した、今後の経営委員会運営については、対応方針決定後、公表予定などと記載されているだけであります。中身が分かりません。

 森下経営委員長、議事録の開示について議論された議事録もまた開示されていないことは、議事録の作成、公表を遅延なくと定めた放送法、放送法第四十一条に抵触するのではありませんか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。基本的に、一回目の答申のときもそうでありますが、最終的に一回目のときから四回議論をいたしました。結論を出した後で、その議事録を全部公表をしております。

 今回の場合は二月から検討を始めておりますが、三月に新人の、新しい委員も入りまして、現在検討中でございますが、最終的に結論を出した段階では全ての議事録を公表するということでございます。

 そういった意味では、途中段階では、委員会は十二名の合議制でありますので、しっかりと十分な議論を行うということが必要でありまして、途中の段階で公表すると、視聴者・国民の皆様に無用な混乱を来すおそれも考えられるということでありまして、先ほどお話ししましたように、最終的には結論が公表する段階で全ての議事録を公表するということでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 答申を受けて既に八回も経営委員会が開催されているんですよね。約四か月です。逐次開示すべきだと思います。一体、どんな形で開示するのですか。また要旨だけですか。答申の指摘を繰り返すだけではないですか。どうお考えですか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。これは一回目の答申のときの議事録を見ていただければ分かると思いますが、通常の、どういう議論があったかということが明確になるような議事録でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 当委員会で私、経営委員会議事運営規則の制定から五次にわたる改正全ての公表を求めていましたが、いつ公表されますか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。前回、この経営委員会の議事運営規則についていろいろ議論がございましたので、放送法に基づいて定めている内規でありまして、制定された当初から、当時の経営委員会の決定により非公表としてきております。ただ、今回の問題に関する国会での御議論、御指摘などを踏まえまして、昨年五月、二〇二〇年の五月十二日の経営委員会で改正を決議し、経営委員会の透明性の向上のため公表をいたしました。

 

【伊藤岳参議院議員】

 て公表されていないですよね、まだね。五次にわたる改正全て公表していないでしょう。それを聞いているんですが。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。元々、先ほどお話ししましたように、経営委員会議事運営規則は放送法に基づいて自主的に定めている内規でございまして、策定された当時から、当時の経営委員会の決定により非公表としてきたものでございます。そういったことで、以前のものについては公表を差し控えさせていただいております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 議事録も開示しない、議事運営規則も明かさない、公共放送であるNHKとして本当に私、重大だと思います。

 大臣にお聞きします。NHK予算、決算の審議に当たっては、視聴者・国民の信頼に支えられる公共放送として、予算執行の適切さとともに、放送法にのっとり、放送の自主自律が確保されてきたかどうかをしっかり審議すべきであると考えますが、大臣、どう考えますか。

 

【武田良太総務大臣】

 国会で御審議いただく具体的な事項については、政府として答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、NHK予算、決算については、総務大臣の意見を付した上で国会に提出され、御審議いただいており、こうした枠組みを通じて十分にチェックされることが重要であると考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 経営委員会が日本郵政グループ側の番組への抗議について、これを視聴者対応とすり替えて、NHKの自主自律を脅かすNHK前会長への厳重注意を行ったんです。そして、二〇一八年十月のこの出来事でしたが、この事実が報道で明らかになったのが約一年後、二〇一九年の九月、つまり約一年間、視聴者・国民に隠されていた、その下で二〇一九年予算は審議されることになってしまいました。

 大臣、このことは、NHK予算の正確な審議に重大な影響を与えたんではないでしょうか。大臣。

 

【吉田博史情報流通行政局長】

 経営委員会議事録の取扱いにつきましては、放送法の規定に基づき経営委員会において定めることとされております。NHK予算、決算につきましては、今も大臣からもありましたとおり、総務大臣の意見を付した上で国会に提出され、御審議いただいております。こうした枠組みを通じて十分にチェックされることが重要であると考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 いや、だから、違うんですよ。だから、隠されていたんだから隠されていたことについて大臣の意見も言えないじゃないかということを聞いているんですよ。重大な影響を与えていないですか。もう一度聞きます。

 

【吉田博史情報流通行政局長】

 経営委員会の議事録の取扱いにつきましては、放送法の規定に基づき経営委員会において定めることとされております。NHKの予算、決算につきましては、その時々でNHKにおいて内部の手続を経た上で提出されたものにつきまして、私どもとして、大臣の意見を付した上で国会に提出しているものでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 大臣、もう一度聞きます。公共放送であるNHKの予算は、大臣意見が付され、国会で承認を受ける案件です。二〇一九年度予算の審議の時点では、NHKが放送法に反する会長への厳重注意を行っていたという事実を隠していた。視聴者・国民にも国会議員にも示されていなかった。これは、国会も、総務大臣、あなた自身も欺くものだと思いませんか。

 

【吉田博史情報流通行政局長】

 その時々におきまして、予算、NHKの予算、決算につきましては、NHKの内部の手続を経て提出されているものでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 森下経営委員長、NHK予算及び決算に対する国会の審議にNHKの経営姿勢に直接関わる事実を隠したことについて、反省はないんですか。

 

【森下俊三日本放送協会経営委員会委員長】

 お答えいたします。この非公表にしたことにつきましては、会長を注意したという重要な事項でございましたので、その後、これは公表してやるべきだったということで、公表をいたしております。ただ、執行部から何度も御説明ありましたように、業務の執行に影響を与えたということはないという回答をいただいておるというように思いますので、そういった意味では影響はなかったというふうに考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 いや、私たち国会議員に隠されていたんです。これ、重大な影響だと思いますよ。正確な審議できないです。これ、強く指摘をしておきたいと思います。また引き続きこの問題は追及していきますので、よろしくお願いします。

 次の質問に移ります。資料を御覧をいただきたいと思います。先ほど芳賀議員も質問されましたし、以前の委員会では立憲の吉田議員もこの問題について質問されました。聖火中継、音声が途切れた三十秒、NHK、異論を排除と報じた記事であります。四月一日に行われた長野市内の聖火リレーのNHKの中継、聖火リレーライブストリーミング特設サイトにおいて、オリンピックに反対の抗議の声が中継に入り込んだ際、中継映像から三十秒間音声が消えました。音声が消えた件には人が介在していたことが立憲、吉田議員の質問の際に明らかになりました。

 NHKに聞きます。この長野市の聖火リレー中継で中継映像から音声を消した件で、様々な状況に応じて判断して対応したと答えていますが、様々な状況というのは何なんですか。先ほど副会長はランナーの思いと言われましたが、ランナーの思いといいますが、国民の意見、思いは消すとの判断だったんですね。どうですか。

 

【正籬 聡日本放送協会副会長】

 NHKの聖火リレーライブストリーミング特設サイトですけれども、一人一人の聖火ランナーの姿をライブでお伝えするだけでなく、御指摘ありましたランナーの方々の思いもインタビューをして丁寧に伝えることを目的に実施しております。その趣旨に照らしまして、聖火ランナー走行中の映像や音声については、走っているランナーの方々への配慮を考えて対応いたしました。

 オリンピックに対しての開催の是非について様々な意見があること、それについて、ニュースや番組等では再三取り上げております。意見が分かれる問題について多角的に伝えていくというのは我々の役目だと思っていまして、引き続き、そうした姿勢で臨んでいきたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 では、聞きます。この間の聖火リレー中継で、ほかに音声を消した例はありますか。

 

【正籬 聡日本放送協会副会長】

 御指摘の四月一日長野市での事例以降は、音声を消去した事例はないと。ありません。

 

【伊藤岳参議院議員】

 つまり、聖火リレー中継映像から音声を消したのは、今回のオリンピックに反対などのオリンピック開催に抗議する声だけだったということなんですよ。様々な状況に応じてじゃなくて、オリンピック開催に抗議する声に判断をしたということではないですか。

 二〇二一年国内放送番組編集の基本計画の中に、東京五輪開催の機運を高める編成という項目があって、その中に聖火リレーが位置付けられています。聖火リレーライブストリーミングを主管するのは東京オリパラ実施本部で間違いないですか。

 

【正籬 聡日本放送協会副会長】

 お答えいたします。聖火リレーのライブストリーミング特設サイトですけれども、NHKの二〇二〇東京オリンピック・パラリンピック実施本部が主管しております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 聖火リレー中継映像から音声を消す判断は、なぜ即座に判断できたのか疑問です。聖火リレー中継において東京五輪開催の機運を高めるための具体的な対応についてこの実施本部でも議論されていて、その中でオリンピック反対の音声が入らないようなことも検討されていたのではないでしょうか。どうですか。

 

【正籬 聡日本放送協会副会長】

 個別の編集判断についてはお答えを差し控えますが、私が放送総局長でありますので、私の責任で対応しているということでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 時間が来たので終わりますが、五輪開催の機運を高めるという旗の下、ライブ中継のさなかに国民の中に存在する意見、声を消去してしまう、これは公共放送がやることかと思います。公共放送の役割放棄、また存在意義が問われる問題だということを指摘して、質問を終わりたいと思います。

 

 

(以下反対討論)

【伊藤岳参議院議員】

 私は、日本共産党を代表して、NHK二〇一七年度決算には賛成、二〇一八年度及び二〇一九年度決算には反対の討論を行います。

 NHK決算では、当該年度の予算の執行状況とともに、NHKの経営姿勢が視聴者・国民の信頼に支えられる公共放送として、放送法にのっとり、国家権力からの独立、放送の自主自律などの基本姿勢を貫くものであるかどうかが問われます。

 二〇一八年十月二十三日、NHK経営委員会が当時の上田良一会長を厳重注意するという事態が発生しました。これは、かんぽ不正販売問題を報じた同年四月の「クローズアップ現代+」に対する日本郵政グループからの抗議に対して、NHK執行部が予定していた第二弾の放送番組を取りやめ、しかも経営委員会が日本郵政グループの不当な介入を視聴者対応とすり替えて、会長のガバナンスの問題という形で行ったものです。ところが、当該議事録は公表されず、この事実が明らかになったのは厳重注意から約一年後の二〇一九年九月の報道でした。放送法に背を向けて経営委員会が議事録を非公表とし、視聴者・国民、そして国会にも隠され続けていることは極めて重大と言わなければなりません。

 日本共産党は二〇一八年度のNHK予算には賛成しました。しかし、その決算期において、経営委員会が、経営委員は個別の放送番組に干渉してはならないと定める放送法に違反して、NHK会長に厳重注意を、しかも秘密裏に行っていたことは極めて深刻な問題です。二〇一八年度NHK決算には反対とするものです。

 一九年度決算期には、この問題が国会でも繰り返し取り上げられてきました。しかし、NHK会長への厳重注意の議事録公開に背を向け、NHKに対する視聴者・国民の信頼を揺るがす事態を生んだ執行部、経営委員会の責任は明確にされていません。二〇一九年度決算についても反対です。以上で討論とします。