【伊藤岳参議院議員】
私は、日本共産党の伊藤岳です。日本共産党を代表し、地方財政計画外二法案について関係大臣に質問いたします。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十年がたちました。大震災で亡くなられた方々に心よりの哀悼をささげます。また、被災された皆さんに深くお見舞いを申し上げます。
まず、総務省接待問題についてです。東北新社との会食でも、NTTとの会食でも、関わった総務省幹部職員は当初、倫理規程に反する接待はなかったと答弁していました。ところが、それを覆す事実が次から次へと明らかになり、答弁の虚偽が明らかになりました。この間の総務省の内部調査がずさん極まりないものであったことを総務大臣は認めますか。
接待問題は官僚だけでないことも明るみに出てきました。総務大臣、副大臣、政務官の任にあった政治家が、在任中あるいは退任後に頻繁にNTTからの接待を受けていたと報じられました。指摘を受けた政治家から、会食した事実、NTT側に費用を負担してもらっていた事実を認める発言が次々と出されています。
武田総務大臣は、昨日と一昨日の予算委員会でNTTとの会食の有無を問われましたが、国民から疑念を招くような会食はないとの答弁を繰り返し、会食の有無については答えませんでした。虚偽答弁が明らかになる前の官僚の言い回しと全く同じではありませんか。その官僚の姿勢を厳しく批判したのは、武田大臣、あなたではなかったですか。事実をありのままに明らかにすることを拒む大臣の下で、まともな真相究明など望むべくもありません。武田大臣、NTTとの会食の有無と回数、時期、費用負担などを明確に答えるべきです。
総務省では、二〇一九年にも重大な問題がありました。かんぽ生命保険の不正販売をめぐり、当時の総務事務次官が、行政処分を受ける側である日本郵政株式会社に処分の検討状況などを情報漏えいしていたのです。この件で事務次官は処分され、その際に総務審議官に昇進したのが谷脇康彦氏でした。
ところが、その谷脇氏は、まさにこの時期に、NTTや東北新社との意見交換なる高額接待を繰り返していたのです。武田大臣、総務省はかんぽ事件から一体何を教訓としたのですか。関係業者との癒着という闇が放置されてきたではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。
今朝、総務省は、東北新社子会社の衛星放送基幹事業認定取消しの方針を発表しました。外資比率を誤って申請したとのことですが、なぜ不正申請がまかり通ったのか。接待で行政がゆがめられた疑いがいよいよ濃くなってきました。事実関係の解明なしに国民の信頼回復はありません。総務省における調査に信頼が置けない以上、国会がその役割を果たさなければなりません。総務省は、誠実に国会の求めに応じ、真実を隠すことなく明らかにすべきです。総務大臣、いかがですか。
東北新社の社長や菅正剛氏、NTT関係者などの国会招致、真相究明の集中審議を強く求めるものです。
コロナ禍は、地方行財政の在り方について抜本的な見直しを求めています。感染拡大を今度こそ抑え込むために、PCR検査の徹底実施、公衆衛生体制と医療体制の確立が急務です。保健所削減、公立・公的病院を再編統合してきたことの弊害が明らかになったのではありませんか。厚生労働大臣の答弁を求めます。
総務大臣、住民の命と暮らしを支え、ケア労働に手厚く、貧困と格差を是正する地方行政に今こそ転換するべきではありませんか。生活保護制度は、コロナ禍の中、最後のセーフティーネットとして注目されています。
ところが今、就労支援などの名の下、パソナなどの民間派遣事業者が地方自治体と委託契約を結んだケースワーク業務の中で、不当な運用が見られることは重大です。ある政令指定都市では、生活保護の受給者が支援によって就職し、保護廃止となった場合、一人当たり六万円の委託料に加算される特約条項が盛り込まれています。成果に応じて事業者への報酬が追加されるこうした仕組みが、生活保護受給者への管理の強化、意に反する強引な就職支援につながる危険性を強めています。実際に、民間職員が、何でもいいから求職活動をしろと強要する、求職活動をしなければ保護が受けられなくなるなどの強い言葉で利用者に実質的な指導を行う事例も確認されていることは看過できません。
民間職員によるケースワーク業務のこうした危険性について、厚生労働大臣はどう認識していますか。
生活保護のケースワーク業務の外部委託は、自民党が二〇一二年総選挙マニフェストで、生活保護政策についても自助、自立を基本に、ケースワーカーを民間に委託と掲げ、パソナ会長の竹中平蔵氏が産業競争力会議で雇用の規制緩和を広げるべきと強く要望し、安倍政権の下、二〇一九年十二月に政府が閣議決定をして持ち込まれたものです。まさに、政府、自民党、民間派遣業者、三者が一体となり、公的サービスの市場化の旗の下で推し進められてきたものです。菅総理は、生活保護は国民の権利だと答弁しました。しかし、こうした事態は、その言明に逆行するものではないですか。国民の基本的権利であり、国が責任を持ち、地方自治体と力を合わせて運営すべき生活保護制度が民間事業者によって実質的に切り崩される事態は直ちに改めるべきです。厚生労働大臣の答弁を求めます。
正規のケースワーカーの人員体制の後退は、ケースワーカー一人当たりの受持ち世帯数を極端に増やしました。厚生労働大臣、正規職員を中心としたケースワーカーなどの職員増を図るべきではありませんか。そもそも、地方から人手と財源を奪ってきたのは、自治体職員の定数削減を迫る集中改革プランや、地方交付税削減をもたらした三位一体改革を推進してきた自民・公明政権です。総務大臣、その反省はありますか。
コロナ禍で求められていることは、国と地方自治体が果たすべき公的役割を民間に投げ出す在り方を根本から転換して、住民生活を支える公的基盤を再構築することではありませんか。厚生労働大臣、総務大臣の答弁を求めます。
最後に、地方財政についてです。昨年来のコロナ禍で政府の対応が小出し、後手後手になる中、地方自治体は、補正予算を組み、財政調整基金を取り崩すなど懸命な努力を続けています。コロナ禍に対応する地方自治体の財源確保、貧困と格差の是正に向けた地方税財政への転換が求められます。
財政制度等審議会は、来年度の地方財政について、新型コロナ対応を名目とする安易な歳出拡大は許容しないとして、社会保障関係費の自然増を抑制して、地方の歳出水準を前年度と実質同額に抑え込む方向で歳出改革を貫くとしました。
総務大臣、こうした実質同水準ルールは取り払って、コロナ禍の下、地方自治体が必要とする費用や社会保障費の自然増などの財政需要額をしっかりと反映するべきではありませんか。財源不足を地方債の特例発行に頼るやり方をどこまで続けるのですか。地方交付税の法定率の抜本的な引上げを求めます。以上を述べて、質問といたします。
【武田良太総務大臣】
伊藤議員からの御質問にお答えをいたします。まず、国家公務員倫理法違反の疑いのある事案の調査について御質問をいただきました。二月二十四日付けで調査報告書を提出した後に新たに倫理法に違反する疑いがある会食が判明したことは事実であり、深刻に受け止めております。結果として総務省における聞き取り調査ができていなかった部分があったものであり、現在省内で行っている倫理法違反の疑いのある事案の調査については、検事経験のある弁護士の方にも新たに参加していただき、常に第三者のチェックをいただきながら、正確に、かつ徹底的に真相究明を行っております。
次に、NTTとの会食の有無について御質問をいただきました。個別の事案一つ一つにお答えするのは控えさせていただきますけれども、私は、国民の皆さんから疑念を抱かれるような会食や会合、応じたことはございません。引き続き国民の皆様からの疑念を招くことないように自らを律し、職務に励んでまいります。
次に、かんぽ生命保険の不正販売問題に関して前総務事務次官が懲戒処分を受けた際の教訓について御質問をいただきました。令和元年十二月二十日に行われた前事務次官への懲戒処分を受け、当時の高市総務大臣からは、国家国民の最大の利益を追求するために行政は常に公正公平であるよう訓示を行っていたところであります。しかしながら、今般、幹部職員において倫理法に違反する利害関係者との会食等が判明したことは事実であり、深刻に受け止めております。今回のような疑念を招く事態が二度と起こらないように、私が先頭に立って、しっかりとした検証を行った上でコンプライアンスを徹底的に確保し、国民の信頼回復に努めてまいる所存であります。
次に、調査に関する情報の公開について御質問をいただきました。一連の事案については、国会からの求めに応じてこれまでも誠心誠意御対応し、御説明差し上げているところであります。また、現在省内で行っている倫理法違反の疑いのある事案の調査については、検事経験のある弁護士の方にも参加いただき、常に第三者のチェックをいただきながら正確に、かつ徹底的に真相究明を進めてまいりますが、その調査結果については、国会の求めに応じて真摯に対応してまいります。加えて、行政がゆがめられたのではないかとの疑念に応えるべく立ち上げる検証委員会については、国会での御指摘も踏まえ、検事経験者を含む第三者の有識者で構成することとしており、客観的かつ公正に検証いただけるよう、具体的な検証内容や方法につきましても、有識者の御意見を伺いながら準備を進めてまいります。この結果についても、国会の求めに応じて真摯に対応してまいります。
次に、地方行政の在り方について御質問をいただきました。総務省としては、社会経済環境の変化に対応し、質の高い公共サービスを引き続き効率的、効果的に提供するためには、地方公共団体における業務の在り方を不断に見直すことが重要と考えております。
地方公共団体においては、行政需要の変化に合わせて、例えば、総職員数が減少基調で推移する中、児童相談所等の職員や防災担当職員等は増加させるなど、必要な措置を講じてきたものと承知をいたしております。総務省としては、今後とも、地方公共団体における的確な行政運営に資するよう、必要な支援に努めてまいります。
次に、集中改革プラン及び三位一体の改革への認識についての御質問をいただきました。平成十七年からの五年間、簡素で効率的な行政の実現を図る観点から、職員数の削減目標を掲げ、地方公共団体に対し、集中改革プランによる取組を要請してまいりました。この間、総職員数が減少する中でも、警察や消防、防災関係職員等は増員されるなど、めり張りのある人員配置を行われてまいりました。プラン終了後も、総職員数の減少基調は続きましたが、行政の合理化、能率化を図るとともに、行政課題に的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理の推進に取り組んでいただいたと認識をいたしております。
三位一体の改革は、かねてより地方から要望があった三兆円の税源移譲の実現による地方の自主財源の強化、補助金改革による地方の自由度の拡大を目指して行ったものであります。改革においては、結果として地方交付税の削減が急激に行われたこともあり、特に財政力の弱い団体には厳しいとの声もあったと認識しておりますが、全体として見れば、地方の自立や地方分権の進展に資するものであり、分権改革の実現に向けた大きな前進であったと認識をいたしております。
次に、地方公共団体の公的役割について御質問をいただきました。今般の新型コロナウイルス感染症への対策を含め、多様化し増大する住民ニーズに的確に対応することは、地方公共団体の重要な役割であります。人口減少や厳しい財政状況など経営資源が制約される中で地方公共団体が持続可能な形で住民サービスを提供していくためには、民間委託などを活用しながら業務改革を進め、職員でなければできない業務により注力できる環境を整えていくことが重要であります。このような認識の下、各地方公共団体においては、どのようなサービス提供の方法がより効果的、効率的か、地域の実情を踏まえて判断いただき、その役割を適切に果たしていくことが求められると考えております。
次に、地方財政計画の財政需要について御質問をいただきました。新型コロナウイルス感染症への対応については、ほとんどの事業を全額国費対応とするとともに、地方団体の判断によって自由度高く地方単独事業に取り組むことができる財源として地方創生臨時交付金が措置されております。その上で、令和三年度の地方財政計画において、社会保障関係費の自然増などを踏まえ、標準的な行政サービスの提供に必要な経費を計上し、一般財源総額について、水準超経費を除く交付団体ベースで、実質前年度を〇・二兆円上回る六十二兆円を確保しております。今後とも、地方財政計画に必要な歳出を適切に計上し、地方の安定的な財政運営に必要な一般財源総額を適切に確保してまいります。
最後に、臨時財政対策債と交付税率の引上げについて御質問をいただきました。地方財政の健全化のためには、本来的には、臨時財政対策債のような特例債になるべく頼らない財務体質を確立することが重要と考えております。このため、地方税等の歳入の増加に努めるとともに、効率的な行財政運営により、めり張りを付けて歳出構造を見直すことで財源不足を縮小し、臨時財政対策債の発行抑制に努めてまいります。また、地方交付税については、今後とも、交付税率の見直しなど制度的な対応の議論を行ってまいります。
【田村憲久厚生労働大臣】
伊藤岳議員にお答えいたします。公衆衛生体制、医療提供体制の在り方についてお尋ねがありました。保健所については、各自治体の判断により、地域の実情を踏まえながら必要な体制の確保を行っていただいているところでありますが、市町村との役割分担の明確化やその機能強化を進める中で、結果として集約化が進んでいるものと承知をいたしております。一方で、今般の新型コロナウイルス感染症に係る保健所の対応状況を踏まえ、地方財政計画に基づき、保健所において感染症対応業務に従事する保健師を令和三年度から二年かけて約九百名増員させることとされたほか、都道府県単位での専門人材派遣の仕組みの活用や自治体間の職員の応援派遣の調整等も推進することとしており、引き続き各保健所の体制整備を支援してまいります。また、今般の対応では、地域の医療提供体制の確保に向け、公立・公的医療機関を始め多くの医療機関において、感染症患者の受入れや一般の患者への対応など重要な役割を果たしていただいています。今後、高齢者が急増する二〇二五年、また、更なる高齢化の進展と現役世代急減による労働力の制約が強まる二〇四〇年を見据えつつ、今般のような事態に機動的に対応できるよう備えるためには、地域の実情を踏まえながら、病床の機能分化、連携を進めていくことが重要と考えています。引き続き自治体等と緊密に連携しながら、必要な公衆衛生体制及び医療提供体制の確保に向けた取組を進めてまいります。
次に、生活保護受給者への就労支援についてお尋ねがありました。生活保護受給者への就労支援事業は、生活保護法上、事業を適切、公正、中立かつ効率的に実施することができる者に委託することができるとされており、こうした規定に基づき、各自治体において適切に事業を実施していただくべきものと認識しています。
厚生労働省としては、各自治体に実施状況等の評価、検証を行うこと等を求めており、自治体の情報交換などを通じ、事業の適正かつ効果的な実施を図ってまいります。
生活保護業務の民間委託についてお尋ねがありました。生活保護のケースワーク業務は、国民の権利に深く関係する業務であるとともに、業務に当たっては高度な専門性が求められるものであり、生活保護受給者の生活に深く関わり、公権力の行使に当たる業務については自治体職員が行うことが必要と考えています。他方、ケースワーカーが真に必要な業務に重点化できるよう、ケースワーカーの業務負担軽減は重要な課題です。現行制度で外部委託が可能な業務の範囲について現在整理を進めているところであり、取りまとめた上で自治体に周知していきたいと考えております。
ケースワーカーの増員についてのお尋ねがありました。生活保護制度は、最低生活の保障を行うとともに生活保護受給者の自立の助長を行うことを目的としており、これを担うケースワーカーについて、生活保護の受給世帯に応じて適切な配置がなされることが重要であります。このため、社会福祉法で定める被保護世帯の標準数に応じたケースワーカーの人数の配置に必要な交付税措置を行っています。都道府県等に対する事務監査において常時標準数を満たしていない福祉事務所を把握した場合は、ケースワーカーの充足について指導するなど、引き続きケースワーカーの適切な配置を促してまいります。
民間委託の在り方についてお尋ねがありました。公権力の行使に当たる業務などについては、国と地方自治体の職員が担うことが必要である一方、厳しい財政事情の中で、引き続き良質かつ低廉な行政サービスを提供するという観点から、民間委託等の業務改革に取り組むことも重要と考えております。
生活保護業務においても、ケースワーカーが真に必要な業務に重点化し、ケースワーカーの質を高めることができるよう、業務効率化等に引き続き取り組んでまいります。