議事録

2020年11月26日 総務委員会 郵便法及び信書法改正案質疑 郵便現場の労働環境の改善を

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。二〇一〇年十二月八日に、さいたま新都心郵便局員の自死事件が起きました。この事件について、本年三月三十一日、埼玉県労働局労災保険審査官が、さいたま労働基準監督署長の判断を覆して、業務上災害と認める決定をしました。

 資料をお配りしましたので、御覧ください。この件についての西日本新聞、本年三月三十一日付けの記事です。ノルマで過重業務、郵便局員を過労自殺認定と報じています。埼玉県在住の郵便局員Kさんは、二〇〇六年五月にさいたま新都心郵便局への異動を命ぜられました。この記事にもあるように、当時のさいたま新都心郵便局は郵政民営化後、職場環境が大きく変わりまして、トヨタ方式、つまり、立ち作業や、また配達に掛かる時間等を厳しく制限をするなど、取り入れていました。加えて、仕事でミスをすると、百五十人以上の職員の前でお立ち台という台に立たされて、そんな謝り方ねえだろうと上司から大声で叱責され、追及を受けるということが日常的に行われていました。また、年賀状の販売ノルマが一人七千枚から八千枚と課せられて、ノルマ達成のために自分で買い取ったり金券ショップに売ったりするいわゆる自爆営業と呼ばれることも横行していました。

 こうした郵政の職場環境の中で、Kさんは、営業成績を上げるというノルマを押し付ける圧力に精神的ストレスを重ねていきます。明るかったKさんからは笑顔が消えました。二〇〇八年二月にとうとううつ病を発症、病休と復職を三回繰り返した後、二〇一〇年十二月八日、郵便局の四階から身を投げて死亡しました。自死したその日も上司から罵声を浴びていて、その後、御遺族に対して、ありがとう、いつも、何々ちゃん、この何々ちゃんというのは妻の名前です、ごめんね、行ってきますという最後のメールを送っていました。

 実は、このさいたま新都心郵便局は私の自宅からも見えますので、事件のことは頭から離れたことはありませんし、思い出すたびに胸が締め付けられる思いです。

 御遺族は、二〇一三年十二月に日本郵便に対して損害賠償請求訴訟を起こし、様々な苦労の末、二〇一六年十月に和解が成立をしました。さらに、二〇一五年十一月に埼玉県労働基準監督署に遺族補償年金等を請求しましたが、不支給決定。さらに、二〇一七年十一月に埼玉県労働局に審査請求をしました。そして、とうとう本年三月三十一日に埼玉労働局労災保険審査官が業務上災害と認定をしました。

 この事件について、民営化後に二つの出来事、一つは達成困難なノルマが課せられたこと、二つは仕事内容、仕事量の大きな変化があったことが近接して生じていることから、業務による心理的負荷の全体評価は強、強いですね、強と判断するとして業務上災害と認定されたもので、大変重要な内容を持っていると思います。こうして日本郵政のノルマ押し付けに明確な判断が下りました。

 日本郵便、このさいたま新都心郵便局自死事件で一家の大黒柱であった夫を失った御遺族に対して、業務災害認定後、会社として面会することも謝罪することもしていません。理由は何なんですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 この社員の方が自ら命を絶たれたということは大変重く受け止めており、改めて御冥福をお祈りをいたしたいと思います。先ほど先生からも御説明がありましたとおり、二〇一六年十月に、遺憾の意を表すると、そういう旨の文言を盛り込みました和解が成立をしているということを踏まえ、本年十一月に御遺族との面会をお断りしているとの報告を受けております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今和解と言われましたが、和解したのは損害賠償請求訴訟の時点でしょう。今回、会社の業務上の責任が明確に確定した、全く違った段階じゃないですか。その認識はないんですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 確かに労災認定と和解とは別のものでありますが、労災認定の判断が和解に直ちに影響を与えるというふうには理解をしておりません。

 

【伊藤岳参議院議員】

 不誠実ですね。埼玉県労働局が業務による心理的負荷の全体評価は強と判断したことを受け止めて、職場の改善に生かすことは必要ではないんですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 先生御指摘のとおり、埼玉県労働局から認定が出ております。決定書では、時間外労働時間数の心理的負荷の強度が中、年賀の販売目標の心理的負荷の強度が中の出来事が生じ、民営化後に二つの出来事が接近していることから、心理的負荷の全体評価は強と判断されたというように理解をしております。

 現時点、時間外労働につきましては、これまでの労基法改正も踏まえ、長時間労働の削減に努めるとともに、年賀販売につきましては個人指標の設定を取りやめるなどの改善を図ってきているところでございます。さらに、今回の決定書の内容を精査した上で、職場の改善に生かすことができないかどうか検討してまいりたいと、このように考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今改善すると言われましたが、であるならばですよ、御遺族と面会されて、自死された社員の働いていた実態や家庭の中でどんな悩みを語っていたかなどを把握して、職場の改善に生かす必要があるんじゃないですか。どうですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 先ほど申し上げましたが、二〇一六年十月に和解が成立をしているということを踏まえての、踏まえてということにはなりますが、御遺族の御意向を踏まえ、御遺族との面会につきましては、御遺族の御意向を踏まえ、真摯に対応してまいるよう、担当部署に指示をしたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 面会されるということでいいですね。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 はい。御遺族の御意向を踏まえ、担当部署にそのように指示をしたいと思います。

 

【伊藤岳参議院議員】

 衣川社長、御遺族に謝罪する気持ちはありませんか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 本件につきましては、御遺族との間で二〇一六年十月に私どもの遺憾の意を表する旨の文言を盛り込んだ和解が成立をしているということでございます。それを踏まえまして、まずは御遺族にお会いをいたしましてお話を聞かせていただきたいと、このように考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 遺憾とか、他人事の意味じゃなくて、謝罪ということをするつもりはないのかと聞いているんです。どうですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 繰り返しになりまして申し訳ございませんが、まずは御遺族とお話をさせていただきたいと、このように考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 日本郵政増田社長に聞きます。日本郵政グループの現職の方の自死者数について報告を受けていますか。

 

【増田寛也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長】

 特殊会社でございます日本郵政及び日本郵便については、毎年の衆議院予算委員会における資料要求で、当該自死者数についても資料を求められております。こうしたことで、二社における前年度の自死者数を国会の方に報告をしていると、このように聞いているところであります。

 

【伊藤岳参議院議員】

 私の手元にも、日本郵政の在職死亡や自殺者の状況の資料をいただきました。まあ公表はされないということでしたけれども。もちろん、社員の自死は必ずしも会社側が原因となったものとは限りません。しかし、悲しい事件を繰り返してはならないと思います。

 さいたま新都心郵便局にあった、先ほど紹介したお立ち台、このお立ち台という労働環境は、当時の全国の郵政職場は全て共通、強制されました。また、ノルマを押し付けるパワハラの職場環境は、かんぽ不正販売問題でも指摘をされていました。例えば、当委員会でも紹介したことがありますが、日本郵便のフロントライン・セッション一覧には、かんぽの不正販売に関わって、こう言われたという証言があります。犯罪以外なら何をやってもいいから数字を上げてこい、やり切ってこい、それがあなたの使命だと上司から強い指示もありましたという、社長への直々の訴えもあったじゃないですか。

 増田社長、ノルマ必達主義の在り方が日本郵政グループ全体に問われています。日本郵政として、さいたま新都心郵便局自死事件の労災認定をどのように受け止めていますか。

 

【増田寛也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長】

 まず、ノルマの関係でございますが、例えば年賀につきましては個人指標の設定を取りやめるなど、順次改善を図っているところでございます。そして、さいたま新都心支店での問題でございます。社員が自殺したということは大変重く受け止めておりまして、今後は、更に社員の声に真摯に向き合い、このようなことが起こらないように風通しの良い職場づくりに努めてまいります。

 

【伊藤岳参議院議員】

 社長、重く受け止めるというお話がありました。先ほど衣川社長にもお聞きしましたけれども、日本郵政グループの責任者として、御遺族への謝罪が必要だとは思いませんか。

 

【増田寛也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長】

 この関係については、御遺族の関係につきましては、先ほど日本郵便の社長がお答えしたとおりでございまして、今回、社として御遺族の方々と和解をしました経緯、そして御遺族の御意向を踏まえて、真摯に対応してまいりたいと、このように考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ちょっと角度を変えます。かんぽ不正販売問題への対応はどうなっているでしょうか。日本郵便にお聞きします。かんぽ不正販売問題で、日本郵政グループが、日本郵便が実施した人事処分についてというのを公表しております。それによりますと、募集人千八人、管理者三百二十一人に対して人事処分を行った。募集人千八人のうち、懲戒解雇は二十五人、停職は十二人。

 一方、管理者三百二十一人のうち、懲戒解雇はゼロ、停職は二人、あとは戒告、訓戒、注意にとどまっている。これ、データは間違いないですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

今先生から御指摘のありましたとおりで間違いございません。

 

【伊藤岳参議院議員】

 現場からはどういう声が上がったでしょうか。保険販売で不正を認定された社員への処分は進んでいる一方で、不正を後押ししたりした管理者の処分が全く進んでいない、こういう不満の声が出ていると聞きました。実際に、高齢者や多数の顧客を苦しめる誤った営業手法を伝えてきた幹部や管理職への厳しい処分は皆無に等しいじゃないですか。

 増田社長、あなたは社内向け雑誌、郵政十月号にメッセージを寄せられて、こう述べていますね。信頼回復活動に愚直に取り組んでいく、社員の皆さんが誇りを持てる日本郵政グループへの変革に全身全霊で取り組んでいく。

 しかし、ところが、かんぽ不正販売問題では誤った営業手法を伝えた幹部や管理職への処分が進んでいない。一方、業務上災害で命を落とされた社員への御遺族に謝罪すらしない。こんな会社に日本郵政の社員の皆さんが誇りを持てるんでしょうか。

 先ほど紹介した西日本新聞の記事の最後には、さいたま新都心郵便局自死事件の御遺族がこう述べています。かんぽ不正販売問題でも、過酷な営業ノルマがあったことに、九年前と、つまり夫が自死した九年前と何も変わっていない、今度こそ社員を大切にする会社に変わってほしいと訴えている。

 この願いを真摯に受け止めてほしい。増田社長、どう思いますか。

 

【増田寛也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長】

 まず、処分の関係でございますが、こちらにつきましては、日本郵便、そしてかんぽ生命の方で今現在行っている途中でございまして、御指摘の点も含めて、いずれにしても事実関係を踏まえた上で適正な処分を行っていきたいと、このように思います。

 そして、さいたま新都心の事案につきましては、私も大変この事案、重く受け止めなければならないというふうに考えておりまして、こうしたことを含めて、実際には、その後、かんぽの不正問題等も発生をしたということもございますので、その上で、新しい社として生まれ変わるように、その中には、我がグループの経営理念として、お客様と社員の幸せを目指すと、こういう表現が経営理念の中にも書かれておりますので、そうした経営理念を胸に刻んで、これからの会社の立て直し、更に邁進していきたいと、このように考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今の、増田社長は、かんぽ不正問題とさいたま新都心事件の自死事件の関連も言われました。先ほど、面会はされるというお話がありましたけれども、まずは面会をされて、そしてよくお話を聞いて、御遺族とも向き合っていただきたいし、そして、かんぽ不正問題の適切な処分、厳格な処分もきっちり進めていただきたい。そうしなければ、今、日本郵政で働く社員の皆さんが幸せな職場だとこれ実感できないと思います。改めて、このことを強く求めておきたいと思います。

 それでは、郵便法及び信書便法改正案の質問に入りたいと思います。

 本改正案では、通常郵便物の配達頻度を、週六日以上配達を週五日以上配達に緩和をします。送達日数を、原則三日以内に送達を原則四日以内に送達に緩和します。総務省は、この改正案の背景に、郵便事業の人手不足は深刻化していることがあるとしています。離職者も多く、有効求人倍率も二〇一九年度が三・八〇倍、年度平均が一・五五倍で、二倍以上の人手不足になっているとしています。

 郵政職場にとって大事なことは、労働者を大切にして職場環境を良くしていくことです。そのためには、給料を上げて、労働条件を改善して、人手不足も解消して、働きがいのある、先ほど増田社長も言われた幸せを感じられる展望ある職場づくりを進めることだと思います。

 武田総務大臣にお聞きします。今回の法改正は、労働者の賃金や労働時間の改善、人手不足の解消につながるのでしょうか。いかがですか。

 

【武田良太総務大臣】

 まず、賃金についてでありますけれども、これは日本郵政グループにおいて労使交渉を通じて適切に対応するべきものだと、このように考えております。今回の法改正におきまして、普通郵便物について、週六日の配達が週五日となることにより土曜日の配達業務がまずは休止となります。また、送達日数が緩和されることにより深夜の区分業務も不要となることから、多くの土曜日の配達担当者及び深夜帯の勤務者の再配置が可能となることから、長時間労働や人手不足の改善に資することになると考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今大臣から、土日の配達業務が中止になる、送達日数が緩和される、深夜の区分業務が不要になる、こうしたことを通じて労働環境の改善につながる、人手不足の改善につながるという話がありました。

 衣川社長にお聞きします。今回の法改正によって、労働者の賃金、労働時間の改善、人手不足の解消を具体的にはどのように行っていくんですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 お答え申し上げます。今回の改正によりまして平日に業務に従事する社員が増えるであろう、あるいは昼間帯に業務に従事する社員が増えるであろうというように見込んでおります。

 あわせまして、今回の改正によりまして、勤務時間帯等のシフトが可能となる要員の一部を、人手不足の中で現在超過勤務あるいは休日出勤等で対応することを余儀なくされております業務に再配置をすることによりまして、超過勤務や休日出勤等を更に減らし、働き方改革を行っていきたいと、そのように考えております。今回の改正の結果といたしまして、将来にわたり郵便サービスを安定的に提供することができるような仕組みを築いていきたいと考えてございますが、これは社員にとっても雇用の確保や賃金の改善に資することになると、このように考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 翌日配達をなくして送達日数を緩和したり、土曜配達をなくして配達頻度を緩和することが、どのように給料を上げて、労働時間を改善できて、人員を増やすことができるのか、もうちょっと具体的に会社に示してほしいと思うし、幾つかお聞きしたいと思います。

 私、先日、日本郵便の現場で働く労働者の皆さんからお話を伺う機会がありました。口をそろえて言われていたことは、この間、職員数が削られて非正規社員の比率が増やされてきたから現場の仕事がきつくなったということです。また、郵政民営化後、定員管理ではなくなったことから、正規社員が非正規社員に置き換えられ人員を埋め合わせてきたともお話をされていました。ある配達に従事する社員の方は、こう言っていました。郵便物の量が減ったといっても一人一人の配達エリアは変わらないわけで、一日の走行距離などは変わりません。今でも昼休みをまともに取れていないのが現実です。人手が増えないと仕事の量やきつさは変わりませんとおっしゃっておりました。今回の法改正を通じて、人員、特に正規の雇用を増やしていくことにつなげていくことが大変重要だとお話を伺って感じました。

 日本郵便、正社員の平均賃金についてお聞きします。民間企業は正社員の平均賃金は上がっていますが、日本郵便は下がっています。二〇一七年度は正社員の平均賃金三十・四万円、三十万四千円でしたが、二〇一八年度、そして二〇一九年度の日本郵便の正社員の平均賃金を示してください。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 今先生から御指摘がございましたとおり、私どもが郵便局活性化委員会に提出をさせていただいております資料によりますと、二〇一七年度は月額の平均賃金が三十・四万円ということでございます。

 私ども、毎年昇給を実施しておりますので、個々の社員の賃金が下がっているということではないと考えておりますが、平均賃金の推移といたしましては、二〇一八年度は三十・三万円、二〇一九年度は三十・一万円と、このようになってございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 この平均賃金が、今言われたように三十・四万円、三十・三万円、三十・一万円と年々下がっている。ここ、大変大事なところだと、大事な問題だと思います。そこで、衣川社長、日本郵便としてはこの平均賃金の数字を上げていく意向ですか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 お答えを申し上げます。人力依存度の高い郵政事業にとりまして、社員は事業活動を行う上での源泉でございます。社員の能力を最大限に引き出すためには、社員の労働条件の改善は非常に重要なことであると認識をしてございます。

 これまで、毎年昇給を実施しておりまして、個々の社員の賃金が下がっているということではないと理解をしておりますが、今後とも会社の経営状況等を踏まえつつ各種労働条件の改善に取り組んでいきたいと、このように考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 平均賃金を上げていく、こういう意向だということでよろしいですね。もう一度。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 平均賃金自体は、社員構成によっていろんなバリエーションがあると考えてございます。私どもとしましては、今後とも会社の経営状況等を踏まえつつ各種労働条件の改善に取り組んでいくと、こういうことでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 日本郵便にお聞きします。超過勤務時間の短縮についてです。衆議院の総務委員会の答弁の中で、今回の法改正を通じて一人一か月平均で約一割の超過勤務時間の縮減が見込まれるとしていますが、この積算根拠を示してください。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 超過勤務の縮減につきましては、その郵便局の置かれている地域性の違いなどによりまして状況が大きく異なると考えられますことから、一概に申し上げるのは難しいところがございますけれども、今回の郵便サービスの見直しに当たりましては、少なくとも現在、郵便物の配達のために土曜日に出勤している社員に係る超勤時間の縮減は見込めるものといたしまして、土曜日の超勤時間の割合に相当する約一割程度の縮減が可能と考えたものでございます。

 なお、土曜日の配達の取りやめによりまして、当然翌週の月曜日の業務量が増加することが見込まれるところでございますけれども、これらの業務量の増加につきましては、主として社員をあらかじめ増配置することにより吸収してまいる予定でございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今も言われましたけれども、一般的に考えて、土曜日が休みになっても郵便物や荷物の量は変わらないわけで、その分の配達は翌週の月曜日に回ってくるということになる。今、増員でという話がありましたが、本当にこの一人当たりの一割縮減につながるかどうかというのは、是非、疑問だし、これはてなマークです、より検討を進めて、文字どおり一人一人の超過勤務時間の縮減、短縮につながるように検討、実施をしていただきたいと思います。

 日本郵便に聞きます。先ほど来、小林議員に対する答弁やほかの議員の答弁でもありましたけれども、もう一度確認します。今回の法改正により土曜日配達が休止になることによって、先ほど四万七千人と言われたと思いますが、どれぐらいの労働者がシフトされるのか、もう一度確認です、教えてください。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 土曜日の配達からシフト可能となる要員につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、一部人手不足により超過勤務や休日出勤等で対応している郵便分野に残る者もございますけれども、主に成長が見込める荷分野へ再配達することを予定しているところでございます。

 どの程度の、どの業務にどの程度の再配達を、再配置を行うかにつきましては、荷物の増加の状況、社員の意向など、個々の郵便局の状況を踏まえまして、確定、実施することとしているところでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 郵便配達業務から荷物分野に移ることがあるというお話でしたが、つまり、これまで二輪のバイクで配達していた労働者の方が四輪自動車に切り替わる、また、軽い郵便物の配達をしていた方が重い物もある荷物の配達に切り替わる、こういうことが起こり得るということですか。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 土曜日からの要員のシフト、それから深夜帯からの要員のシフトにつきましては、実際のこれらの再配置を行うに当たりましては、あらかじめ本人の意向を確認するなど、丁寧に対応することとしているところでございます。

 議員御指摘の荷物の業務を希望しない社員がある場合には、基本的には深夜帯で、深夜帯におきます速達などの業務や、あるいは昼間帯の業務に再配置することを想定しておりますけれども、いずれにいたしましても丁寧に対応してまいることとしております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 いや、ちょっと聞いていることに答えてほしいんですが、二輪バイクで配達していた人が四輪自動車に乗り換えることもある、軽い郵便物の配達をしていた人が重い物もある荷物の配達に切り替わることもあるということですよね。そこだけ確認したいんです。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 繰り返しになりますけれども、本人の意向等も確認しながら丁寧に対応するということでございます。本人の御了解が取れれば議員御指摘のようなシフトも当然あり得るというふうに考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 起こり得るということでありました。もう一つ聞きます。翌日配達を廃止することで、これも確認ですが、先ほど五千六百人が他の分野にシフトされると言われましたでしょうか。もう一度確認です。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 深夜帯から昼間帯へシフト可能となる要員につきましては、議員御指摘のとおりの数字を先ほど申し上げたところでございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 翌日配達の廃止、つまり深夜の仕分作業がなくなりますから、深夜仕分作業、区分け作業に関わっていた五千六百人が他の分野にシフトされる。その五千六百人のうち一定数は昼間の時間帯での配達区分の作業になると思います。同時にまた、一定数は荷物などの分野に移ることになると思います。

 この昼間の配達区分の作業になる方、これまで夜勤の手当が出ていましたが、この夜勤の手当はできなくなりますが、この夜勤相当分の手当は維持されるのかどうか。

 また、荷物の分野に移る方、先ほど希望をよく聞いてということがありましたが、行きたくないという方の希望は聞き入れられるということでいいんですね。

 

【諫山親日本郵政(株)常務執行役】

 深夜帯から昼間帯へシフト可能となる要員につきましては五千六百人を想定しておりますけれども、実際にどの業務にどの程度の再配置を行うことになるかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、あらかじめ本人の意向を確認するなど、丁寧に対応していくこととしております。

 深夜帯から昼間帯にシフトする場合におきましては、夜勤手当が支給されなくなることにつきまして丁寧に説明を行い、引き続き深夜帯の勤務を希望する社員につきましては深夜帯における荷物や速達等の業務へ再配置するなど、丁寧に対応してまいります。さらに、荷物の業務を希望しない社員につきましても深夜帯における速達等の業務や昼間帯の業務への再配置を想定しておりますけれども、いずれにいたしましても丁寧に対応してまいりたいというふうに考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 いずれにしても、手当が減ったり内勤の方が外勤に回るということが起こり得るということだったと思います。

 そこで、大臣にお聞きします。労働者の今言われたシフト、再配置によって、これまでの業務内容とは全く違う、言わば事実上の転職のようになってしまう人も出てくると思われます。今答弁があったように、手当が減る人も出てくる、労働条件が引き下がる人が少なくなく出てくるのではないかと思われます。

 こういう事態は本改正の、本法改正の趣旨に逆行するんではないかと思いますが、大臣、認識どうですか。

 

【武田良太総務大臣】

 一概に逆行するとは言えないと私は思います。しっかりとそうした働く方々への思いやりを持って、全員で力を合わせていけばいいんじゃないかと思いますよ。

 

【伊藤岳参議院議員】

 先ほど大臣は、今回の法改正を通じて労働環境や人手不足の改善に資するんだというふうに言われました。是非、今後注視をしていただいて、この本法改正の趣旨に逆行するような事態には、起こらないようにしていただきたいというふうに思います。

 先ほど現場の労働者の方からお話を伺ったという話をしましたが、こういう話がありました。夜勤が日勤、夜勤から日勤に行くとなれば、仕事の内容は異なるし、ましてや内勤から外勤、外勤から内勤へのシフトとなれば、もう違う職場に行くようなもの。また、別の方は、これ銀座郵便局の方ですが、銀座郵便局は、深夜帯百五十七人、そして、うち百十四人が非正規で深夜帯の荷物区分をやられているそうですが、時給が高くて、ので深夜勤務をしているが、週四日入ってもようやく月二十万ちょっとというのが実態ですと。夜勤をしたくてやっているんじゃありません。やらないと生活できないからです。昼間に行くといっても、行けと言われても、賃金が安くて、とてもじゃないが暮らしが成り立たないという声もありました。

 こうなってくると、物を言わぬ退職勧奨になってくるんではないかと思います。こうした声をよく聞いて、労働者のシフト、再配置によって労働条件が引き下がらないように、そしてまた、労働条件が引き下がることなどによって人手不足が生じないように対応していただきたいと思いますが、衣川社長、その決意、お聞かせください。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 今回の改正により、先生御指摘のとおり、深夜帯から昼間帯へのシフト等が発生をする、来るということでございますが、要員の再配置につきましては時間を掛けて、御意向も聞きながら丁寧に対応してまいりたいと、このように考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 丁寧に対応する。労働条件が引き下がって退職勧奨になるということがないように、しっかりそこ対応していただきたいと、これは強く求めておきたいと思います。

 最後に、ユニバーサルサービスに関わってお聞きします。大臣、今回の法改正により、先ほど来お話があるように、郵便のユニバーサルサービスの水準は低下することになります。この改正に当たって、条件不利地域や、また障害をお持ちの方々などの意見は聞いたのでしょうか。また、法施行後に条件不利地域や障害者の方々の意見を聞く予定などはありますか。

 

【武田良太総務大臣】

 今回の法改正に関する内容を議論しました情報通信審議会におきまして、論点整理案と答申案の二回、パブリックコメントを広く募集いたしましたが、その対象には条件不利地域にお住まいの方や障害をお持ちの方も含まれていると、このように認識しております。

 また、法施行後におきまして、条件不利地域や障害者の方々を含む国民、利用者の皆様には、日本郵便とも連携し、今般のサービス見直しの内容等について丁寧に周知、説明を図ってまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 衣川社長、同じようなことをお聞きします。法改正に当たって、法の改正の実施後、条件の不利地域の方や障害者の方々に意見を聞くという予定などありますか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 情報通信審議会の中で既にパブリックコメントが行われているということでございますので、当社として改めて御意見を伺うことは考えてございませんが、郵便サービスの見直しの実施に当たりましては、総務省の御指導をいただきながら、丁寧に周知、対応をしてまいりたいと、このように考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 パブコメの話もありましたけど、私も見ましたけれども、条件不利地域の方、障害者の方に全く聞いていないとは言いません。しかし、本当にごく僅かだと思います。今回のユニバーサルサービスの低下によって一番不利を被る方々の、地域の方々、障害をお持ちの方々の声を聞くというのは本当に大事なことだと思います。

 ユニバーサルサービスを担う者として、まず国民の声を聞くことが基本姿勢として貫かれる必要があると思いますが、国民の声を今後も聞いていく基本姿勢、衣川社長、どうでしょうか。

 

【衣川和秀日本郵政(株)取締役】

 私ども、お客様本位のサービスということでございますので、いろんな局面を通じてお客様の声をきちんと聞いて、できる限りの対応をしていきたいと、このように考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 是非、法施行後、条件不利地域の方、障害者の方々などの意見を聞く機会を設けていただきたい、強く求めたいと思います。

 さて、これまで歴代の総務大臣は、ユニバーサルサービスの維持についていろいろ答弁をされてきました。高市大臣は二〇一五年六月四日の総務委員会で、文書による通信手段であります信書の送達という事業は、国民の思想、表現の自由に密接な関わりを持っておりますし、大変重要な分野でございます。また、基本的な通信手段としてきっちりユニバーサルサービスを確保することで憲法で保障された通信の秘密を保護するという観点がございますと憲法との関連でも答弁をされました。また、今日おられます片山虎之助大臣、当時の、二〇〇二年の総務委員会で、やはりしっかりしたユニバーサルサービスという点は、これはナショナルスタンダードとしても守ってもらわなきゃいかぬというのが我々の考えでございますと答弁をされていました。

 武田大臣、郵便のユニバーサルサービスの維持についての武田大臣の決意を聞かせてください。

 

【武田良太総務大臣】

 今回のこの法改正をもって、しっかりとした業務の見直しをまずは行っていただくことが重要だと思いますし、我々としても郵便事業への監督責任というものをしっかりと果たしていきたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 終わります。