議事録

2020年6月4日 総務委員会 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案(電話リレー法案)

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。私は、先日、全日本ろうあ連盟の皆さんと懇談をし、本法案への意見を伺ってまいりました。参考人として本委員会に出席して直接意見表明することを希望されていたことを大臣にもお伝えをしておきたいと思います。

 連盟から伺った意見は、今日配付資料として皆さんにもお配りしました。是非お目通しをいただきたいと思います。さて、本法案は衆議院で修正されて、総務大臣が基本方針を定める際、聴覚障害者等その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じるとされました。

 まず、修正案提出者と大臣にお聞きをいたします。修正案提出者に山花、本村両議員、御出席ありがとうございます。本法案のように国の基本方針等を策定する際に障害者の意見を反映させるための措置を講じると明記した法律や基本計画は、ほかにどんな例があるでしょうか。

 

【本村伸子衆議院議員】

 お答えいたします。国の基本方針等を作成する際に障害者の意見を反映させるための措置を講ずると明記している法律の例として、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律がございます。

 なお、本修正は、障害者の権利に関する条約第四条第三項の趣旨に沿うものと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ありがとうございました。御紹介あったように、今、これまでに四つの法律があったということです。

 先ほどの全日本ろうあ連盟の配付資料の中でも紹介されていますが、障害者権利条約で、私たちのことを私たち抜きで決めないでという考え方が盛り込まれ、障害者基本法にも、障害者その他の関係者の意見を聞き、その意見を尊重するよう努めなければならないということが盛り込まれました。また、個別法でも、国の基本方針や基本計画の策定に今回同様の規定が入ってきています。私は今回の修正は非常に大きな一歩だと思っております。

 そこで、修正提案者にお聞きしますが、障害者の意見を反映させるための措置の明記は、パブリックコメントを通じた意見の反映とどう違うと考えておられますか。

 

【山花郁夫衆議院議員】

 パブリックコメントの制度は、政令とか省令を制定しようとする際に、その原案を作成した後にそれを公表して、広く国民から意見とか情報を募集するという手続でございます。

 一方、今回修正で追加した聴覚障害者等の意見を反映させるための措置として、修正案提出者として想定しておりますのは、原案を作成する段階で、この段階で聴覚障害者や聴覚障害者団体等の関係者の構成員の方々から、そういった方々を含む会議でこういったものを開催するであるとか、あるいはこうした方々からヒアリングを行うと、こういうことでございます。これによって、基本方針の作成過程の早い段階から聴覚障害者等が関与することが可能となりまして、当事者の意見をより適切に反映させることができるのではないかと期待をいたしております。なお、障害者差別解消推進法で既にそうした運用がされていると承知をいたしております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ありがとうございました。この大きく前進をした障害者の政策及び計画に係る意思決定の過程への関与を文字どおり実行に移して、電話リレーサービスの施策を充実させていきたいと思います。

 大臣、先ほど横沢議員の質問にも少しお触れになりましたけれども、こうした障害者の意見を反映させるため、大臣として具体的にはどのような措置を考えておられますか、お聞かせください。

 

【高市早苗総務大臣】

 この衆議院で修正をしていただきました点も含めて本法律案をお認めいただきましたら、本法案に基づいて基本方針を策定する際に、パブリックコメントも行いますけれども、障害者の方々、そしてまた関係する様々な方々、また電話提供事業者、有識者の方など、そして今日の審議の中で様々課題を指摘していただきましたから、もう少し幅広に関係する方を私は今考えておるのですが、多くの方に御参加をいただき、ヒアリングを実施させていただきたいと存じます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 聴覚障害者の皆さんなどの意見をよく聞き取って生かしていただきたいと思います。山花、本村議員、もしお忙しいようでしたら退席されても結構でございますが、おいでいただけるようでしたら一緒に議論に参加していただければと思います。

 聴覚障害者の皆さんは、仕事に就けず収入が極めて少ないという状態に置かれています。東京都が二〇一八年に実施した福祉保健基礎調査によると、仕事をしていないと回答した聴覚障害者が七一・六%、年間収入額、これ生活保護費は除きますが、年間収入額が二百万未満と回答した人が五五・三%いらっしゃいました。

 厚労省、仕事に就けず収入が極めて少ない聴覚障害者の雇用を促進していく上で、どういう対応が検討されていますか。

 

【達谷窟庸野政府参考人】

 お答え申し上げます。聴覚障害者の雇用促進策につきましては、ハローワークにおける障害者の特性や希望に応じたきめ細やかな職業相談・紹介に加えまして、雇用保険二事業に基づく障害者の雇入れに関します助成金の支給や、障害者雇用納付金制度に基づきます音声認識ソフト等の就労支援機器の導入や、手話通訳、要約筆記等担当者の委嘱に係る助成金の支給などを行っているところでございます。

 今後とも、こうした取組を通じまして、聴覚障害者の方のお一人お一人が希望や能力に応じて生き生きと活躍できる社会を実現してまいりたいというふうに考えてございます。

 

【伊藤岳参議院議員】

 私、昨年、埼玉県内の障害者団体の方々と懇談をしました。障害者の法定雇用率を引き上げるために障害種別に目標を持ってほしいなどの要望も伺いました。聴覚障害者の七割が仕事をしていないと答えているのも、背景にはこうした雇用の問題が存在していると思います。聴覚障害者の雇用の促進を強く要望しておきたいと思います。

 聴覚障害者の方々が電話を利用するに当たっては、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのいわゆる通信機器が必要となります。

 しかし、今指摘したように、聴覚障害者の雇用の問題が解決をされていません。収入が極めて少ないという現状の中では一定の支援策が求められているのではないでしょうか。

 厚労省、衆議院の総務委員会の場で橋本副大臣が障害者の自立と社会参加の促進に向けて各般の施策の充実に努めてまいりますと答弁をされておりました。具体的には何をされるんでしょうか。また、通信機器の購入支援は検討されていますか。

 

【橋本泰宏政府参考人】

 厚生労働省におきましては、障害者等の日常生活上の便宜を図るための用具につきまして、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業の中で、日常生活用具給付等事業というものを実施いたしております。この事業の対象となる用具につきまして、この用具の製作、改良又は開発に当たって、障害に関する専門的な知識や技術を要するものであって、日常生活品として一般に普及していないものなどの要件がございまして、具体的な品目は市町村の方で定めております。

 聴覚障害者向けの用具で見ますと、例えば、聴覚障害者用屋内信号装置などが給付対象になっている場合が多うございます。今御指摘ございましたようなタブレットやスマートフォンなどの通信機器でございますが、今私申し上げました一般に普及していないものという考え方になかなか一致、合致しないということで、障害者以外の方々との公平性の観点ということもございますので、日常生活用具給付等事業の支給対象にはしていないということでございます。

 この事業であれ、ほかの、他の事業であれ、やはり今申し上げたような考え方というものもございますので、慎重に考えるべきものというふうに考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 今御紹介のあった日常生活に関わる施策以外の施策の検討が求められているというふうに思います。

 今法案により開始される電話リレーサービスは、手話や文字による情報と音声情報とを通訳するオペレーターを経由して相手先に電話を掛けるものです。聴覚障害者の日常生活、社会生活は革命的に変わっていくと思います。電話リレーサービスに係るワーキンググループで、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターの石原茂樹さんが熊本地震のときに手話通訳の支援に入った際の経験談を紹介されていました。現地で日本財団が現在行っている電話リレーサービスの実施を受けた七十代、八十代の聾唖者の方々が、例えば、福岡の兄弟に電話してみたいとか、親類に電話をしてみたいといって、次々とその場で電話リレーサービスを使い始めたそうです。大変感激したというお話をされていました。地震の恐怖に襲われていた聾唖者の方々が生まれて初めて使用した電話から伝わってくる兄弟や親戚の励ましにどれほど元気をもらったかと、様子が目に浮かぶようでした。まさに電話リレーサービスが聴覚障害者の生活を変え、社会参加を広げていく実例だと私は感じました。

 こうした聴覚障害者の社会参加を保障していくためには、通訳オペレーター、特に手話通訳士の養成や研修は決定的だと私思います。ワーキンググループの議論では、手話通訳士の年齢構成を見ると、二十代が〇・八%、三十代が六・七%、合わせても七・五%、若年層が圧倒的に少ないと指摘をされていました。

 厚労省、若年層の手話通訳士の養成について何を行っていきますか。

 

【橋本泰宏政府参考人】

 手話通訳士の年齢層を見てみますと、今委員から御指摘いただきましたように、二十歳代や三十歳代の方が少なくて、四十歳代以上の比較的高齢の方が多くなっておりまして、これにつきましては、厚労省におきましても一つの課題として認識をいたしております。

 このため、私どもといたしましては、若い方に手話通訳士等の普及を図るということを目的といたしまして、平成三十年度からでございますけれども、五年間で大学等で手話通訳者の養成研修をモデル的に実施する事業に取り組んでいるところでございます。この事業等を通じまして、手話通訳士を目指す若い方々の広がりというものをもっともっと大きくしていきまして、あわせて、今後、総務省とも連携しながら、オペレーターの仕事の魅力を高めていくなど、より多くの若い方々に手話通訳の担い手となっていただけるような方策というものを進めてまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 この点では、国の責任、私、取られていると思います。次のようなこともあります。ワーキンググループの議論では、手話通訳士試験の合格率は毎年平均で一四・六%だそうです。私、驚きました。しかも、手話通訳士養成カリキュラムなどがないと指摘をされています。

 厚労省、手話通訳士の養成のため、厚労省としての課題と対策をどう考えているのか、教えてください。

 

【橋本泰宏政府参考人】

 近年の手話通訳士の試験におきましては、受験者数が年間約千人程度であるのに対しまして合格者数は年間約百人程度ということになってございまして、私どもといたしましても、より多くの方々に手話通訳士試験に合格することができる技量を身に付けていただくということが手話通訳士の養成に当たっての課題というふうに認識をしております。

 このため、厚労省といたしましては、この合格率の向上に向けた取組といたしまして、受験者に対する過去の実技試験についての解説教材の配布、あるいは手話通訳士の資格取得に向けた知識や技能の習得を図るための研修の実施、こういった取組を今行っているところでございまして、これらの取組の検証も行いながら、引き続き手話通訳士の養成を進めてまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 同じくワーキンググループの議論では、手話通訳士の場合、看護師などと違って、現任研修、現場の研修ですね、これが保障されていないという指摘もありました。

 厚労省、この点ではどういう検討と対策を持っていますか。

 

【橋本泰宏政府参考人】

 昨年の三月に開催されました電話リレーサービスに係るワーキンググループの第三回会合におきまして、出席された委員の方から、手話通訳士に対する現任研修の機会が保障されてないというふうな旨の御発言もあったというふうに承知いたしております。

 私どもといたしましては、一つは、司法とか高等教育機関等の専門分野で求められている知識や技術の向上を図るための手話通訳士現任研修の実施ということが一つ、それからもう一つ、昨年度から手話通訳士試験合格者に対しまして手話通訳士としての知識や技術を維持向上させるためのフォローアップ講座を新たに開催しているところでございまして、今後ともこういったことを通じまして手話通訳士の質の確保に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 サービスの一層の充実を求めて、質問を終わります。ありがとうございました。