議事録

2020年6月3日 国際経済・外交に関する調査会(我が国が海洋立国として国際社会を牽引するための取り組みと役割)

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。参考人のお三方、本日は、お忙しい中、御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 まず、多々見市長に伺います。市長の先ほどのお話とはちょっとずれるかもしれませんが、先ほど住民を守り抜くという市長の決意を伺いました。今般の新型コロナウイルスの感染症対策では、海を通じて人や物の移動の中でいかに感染を防ぐかも重要な課題として浮かび上がってきたと思います。例えば、舞鶴の近くには大阪検疫所の出張所もありますが、新型コロナウイルス感染症を水際で防止して、造船に関わる人々の命、また住民の命を守るという点で、検疫体制の強化ですとか港湾BCPですとか、どんな対策が求められていると今お感じになっているか、御意見を伺えればと思います。

 

【舞鶴市長 多々見良三参考人】

 クルーズ船が年に三十隻ほど来ますので、そういう意味では、物の出入り、コンテナ貨物も入ってきますので、大阪検疫所の舞鶴出張所で対応してもらっています。現在、コロナによる影響はどうかということですけど、北部地域、我々の住んでいる北部地域はほとんど感染者がいません。舞鶴市も感染者いまだにゼロです。そういった意味では、いろんな、各地でコロナの影響が出ているのは現実で、対応を迫られているということはよく承知していますけれども、地域によってばらつきがあるので、他の地域で非常に、横浜などの、ダイヤモンド・プリンセスが来た、ああいうところでの対応が一つの参考となって、将来何か起こったときこういう体制で行くぞという、そういう準備をしておくということが必要だと思っております。

 現在のところは船が入ってきませんので、人が乗っているのは、そういった意味では、具体的な対応はまだ迫られていませんけれども、いずれ、そういうシステムはきちっと、起こったときにはこうすると。基本的に、災害等は一度起こらないと、起こる前にきちっと対応できているというのは基本ないのが現実です。一度起こって痛い目に遭って、その次、今度のときは絶対に防ぐぞという、これが災害対応ですので、そういった意味では、他の地域での教訓を舞鶴の方の港でも生かしてもらえるような、そういう体制づくりをしていただきたいと思っています。

 

【伊藤岳参議院議員】

 事が起きたときの対策、御一緒に考えていければと思っております。

 次に、藤本参考人に伺います。今回、コロナ禍で、例えばマスクの輸入がストップするなど、人件費が安い海外に生産拠点を移して、海外に頼ったばかりというリスクもあらわになったと思います。先ほどお話あったように、造船業の場合は、生産は国内がほとんど。つまり、生産が国内で行われれば、ドックの周りに部品を作る関連会社ができたり、そこで働く人々が増えてくれば、その人々の胃袋を支える飲食業ですとか、クリーニング、理髪、商店などができてくるということになると思いますが、もしまた感染症が海外で蔓延しても、商品も国内で作っているから修理や生産がストップしないで済むということにもなると思います。

 こうした国内生産がほとんどという造船業のメリット、造船業を国内で行ってきて感じるメリットというのをお聞かせいただければと思いますが。

 

【東京大学大学院経済学研究科教授 藤井隆宏参考人】

 やはり、日本は八〇年代ぐらいまでワンセット主義で何でも日本で作るというやり方でやってきたので、その後、九〇年代から賃金二十分の一の中国が出てきて一気に持っていかれたわけですけれども、ただ、作っていた記憶が残っているというか、設計情報は日本にまだ残っています。ですから、やろうと思えば、やっぱり国内代替生産ができる能力は日本はまだいろんなもので強いと思うんですね。

 ですから、そこはまず生かしていく、つまり国内代替生産能力をいざというときに持てるようにしておくということが大事なんですが。ただ、この際もう全部日本に戻しちゃおうという考え方がありますが、僕はそれには余り賛成しておりません。それは貿易の否定でありまして、要するに、平時においては、やはり自然体で、競争力ファーストで物を作ると。その結果として、やっぱり中国にお願いしようとかASEANにお願いしようというものが出てくるのであれば当然だと思います。

 だから、ふだんは自然体でグローバルサプライチェーンを維持、維持というか発展させるということはいいと思っています。いざというときに、急速に国内代替生産を含めコンパクトなローカルサプライチェーンに戻せるという、今回、それが戻せたものと戻せなかったものがあって、ちょっとマスクは急に需要が増えたので、これはしようがないと思いますが、やはりほかも、そういった意味ではやりようがあったんじゃないかというものが幾つかありますね。ですから、かといって、あつものに懲りて何とかで、もうローカルにシュリンクしちゃおうというのは、私は賛成ではありません。やはり、ごく自然にやっていった結果のグローバルサプライチェーンは維持すべきであって、ただしと、平時においてはそれであるが、緊急時においては急速に要するに災害モードにスイッチできるという、このフレキシブルなサプライチェーン、グローバル、ローカルサプライチェーンをつくるのがこれからの課題じゃないかと思っています。多分、造船もそういうことじゃないかなというふうに想像しております。

 

【伊藤岳参議院議員】

 ありがとうございました。上田参考人と多々見市長にちょっと最後お伺いしたいんですが、今の話とも関わるんですが、先ほどの上田参考人のお話でも、造船業というのは本当に地域と一体で町をつくってきたということを感じました。

 先ほど来出ているJMUの舞鶴からの撤退、約三百人が配置転換ということになるんでしょうかね。こういう地域とともに生きてきた造船業がこういう事態になることについて、今回の事態から感じている問題意識ですとか教訓ですとか、それぞれ造船業界の立場と市長さんの立場という両方からお伺いできればと思います。お願いします。

 

【日本造船工業会副会長 上田孝参考人】

 いま先生がおっしゃるとおりのことなんですが、地域とともに歩んできました。歩んでおります。それは事実です。しかし、我々、造船工業会に属している十七社は全部私企業でございまして、先ほど来出ている中手がオーナー会社が多い、大手は上場会社が多いんですけれど、私どもは上場会社なんですけれども、やっぱり私企業である限り最終的には利益を出さなきゃいかぬと。御存じのとおり、利益を発表している造船会社は、二〇一九年度の数字は七社中一社だけです、造船で利益が出ている会社は。その一社は、内航船といいまして、国内の、瀬戸内を含めて国内を動いている船を造っておられるメーカーさんです。あとは全部赤字です。その赤字の要因はいろいろあるんですが、その赤字要因はいろいろあるんです。その中で自分たちでやるべきことをやらなきゃいかぬと思っています、これは私企業ですから当たり前なんです。でも、それを超えた、イコールフッティングにっていないところとの競争をしなきゃいかぬと、それは余りにも我々はつらいんです。先ほど来、受注残一・二年と申し上げましたけど、本当につらいんです、これ。このつらさを何とか一時的にでも、船はなくならない、貿易なくならないとすれば、必ずどこかで挽回できるんです。ただ、足下、コロナもあれば、全部止まっちゃったと、受注残一・二年だと、ということは、各社ここから減産に入り、ひょっとしたら舞鶴市長のおっしゃるようなレベルのことがもっと起こるかもしれないという、そこまで来ているんではないかと思います。

 であれば、この瞬間は、我々、自助努力します。それはもう間違いなくやるべきです。ただし、そこに何か国のサポートを頂戴できれば、それは本当に、この瞬間をしのぐという意味では大事ではないかと、そして、未来に必ずつなげてまいります。その辺り御理解いただければ幸いでございます。

 

【舞鶴市長 多々見良三参考人】

 この度の件で社長が舞鶴に来られて、私はこういうことを言いました。私は、毎年本社に出向いていますよと、いきなりこの話は何なんですかと言いました。造船業が景気がいいとは一つも思っていませんと。でも、こんな状態になるくらいだったら、もうちょっと早めに言ったらどうですかと言いました。

 そういう中で、私がいろいろと御指導いただいている国会議員の先生方に話をしましたが、国会議員の先生方の中で造船業がここまで危機的な状況であるということを知っている方は少ないということを感じました。まさに国営企業と民間企業と全部同じにせいとは言いませんけれども、どれだけ頑張ってもハンディがあり過ぎて闘えないところはもう少し国が力を入れてやる、そのためには、ここに国土交通省の資料がありますけれども、海事局の作った資料は、海事産業将来像検討会と、このデータがあるんです。これは、いろいろ海事局の人は考えていただいていますけれども、これを実現するのは国会議員の先生方だと思うんです。是非とも手伝えるところは手伝っていただきたいということで、地元は、まさに地元の企業が頑張っていただくように、しょっちゅう御用聞きに行っています、何すればいいですかと聞いていますけれども、一度も相談がなかったことが残念で仕方ありません。

 是非とも国会議員の先生方に、海洋国家日本における造船業をどう考えるのか、そんなのよそから買ったらいいんだというふうに国が決めるんならそれはそこで諦めざるを得ませんけど、そうあるべきと思う方は少ないと思いますので、是非これを機会に考えていただきたいと思います。

 

【伊藤岳参議院議員】

 貴重な意見ありがとうございました。時間です。終わります。

 

 

(以下、意見表明)

【伊藤岳参議院議員】

 日本共産党の伊藤岳です。海洋基本法が制定されて十年以上が経過し、海洋をめぐる情勢にも新しい事態が生じました。コロナ急拡大という事態もありました。海洋をめぐる様々な問題が顕在化する中で、海洋政策の枠組みをつくり、対応することが求められていると思いました。本調査会を通じて学んだこと、私、四点述べさせていただきます。

 一つは、海洋を通じて人、物が移動する中で、いかにこの感染から我が国を防ぐかという課題についてです。私、一回目の質問で港湾BCPのことを取り上げたんですが、余り認識が薄いなという感じをいたしました。いざというときのために、この港湾BCPの強化、また検疫体制の強化などは、これから国際コンテナ・バルク戦略港湾政策の中で、貨物船の往来も増加する中で非常に重要だということを一つは感じました。

 第二に感じたのは、漁業、特に沿岸漁業を守っていくという問題についてです。参考人の意見を伺って、大西洋マグロのように、資源を毀損する大規模な漁業から頑張っている沿岸漁業をどう守るかというのは重要な課題だと思いました。SDGsが叫ばれていますけれども、国連の機関も小農、小漁業の権利宣言も採択している中で、この点は重要な課題だというふうに思います。

 第三に、海洋再生エネルギーに思い切って研究をシフトしていくということの重要性を学ばせていただきました。特に、参考人の意見からは、海洋再生エネルギー発電事業の実施に関して必要な協議の場を設けるということに対して、市民参画が重要だと、有効だという意見も伺いましたし、長崎の五島市で営業運転され始めた洋上浮体式風力発電設備がそういう市民参加の実践の一つだという御指摘もあったことを学ばせていただきました。こうした点を今後生かしていきたいと。

 最後、第四に、今日の議題でもあります造船事業。一件たりとも潰さない、必要な補填を国がしっかり行うということの重要性を感じました。特に、造船業が国内生産を起点に地域と一体に町づくりをしているというこの努力を大いにやっぱり政治が光当てて、援助を強めていくべきだということを感じました。以上四点申し述べて、意見表明といたします。