議事録

2020年5月14日 総務委員会(電気通信事業法改正案・地方創生臨時交付金について)

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。法案についてお聞きします。現行法で、ユニバーサルサービスの提供に当たっては、自社設備による提供が義務付けられているところを、今回の改正案では、総務大臣の認可を受けた場合には他の電気通信事業者の電気通信設備を用いて電話の役務を提供できることとするとしています。NTT法においては、電話のサービスのあまねく日本全国における適切、公平、安定的な提供を義務付けています。電気通信事業法においては、基礎的電気通信役務、ユニバーサルサービスとして、固定電話、公衆電話、緊急通報を規定しています。

 大臣は、衆議院の委員会質疑でも、ユニバーサルサービスの規定、位置付けは変わらないと答弁されました。大臣、今後、人口減少が進む中での住民の暮らしの維持や頻発する災害への対応などを考えたら、このユニバーサルサービスの位置付けはなお一層大事になってくるのではないでしょうか。御認識はいかがですか。

 

【高市早苗総務大臣】

 加入電話は、国民の皆様の日常生活や社会経済活動における基幹的な通信手段でございます。警察や消防への緊急通報手段としても重要な役割を果たしています。人口減少や災害の頻発といった、今、伊藤委員から御指摘があった現在の社会状況というものを踏まえましても、ユニバーサルサービスとしての位置付けは引き続き重要だと認識をしております。

 

【伊藤岳議員】

 今、大事な、位置付けは大事になっていると大臣の答弁がありましたが、例外的に他者設備の利用を認めるということですが、今回の改正によって、この大事なユニバーサルサービス、固定電話などのサービスがですね、国民は自分のところが他社の携帯電話事業者によってつながれることになるのかどうかは分かりません。当然、これまで同様のサービスが提供されると考えていると思います。

 総務省、他者設備利用の対象区域の範囲や基準について、つまり、どれぐらいの地域、何地域ぐらいで、何世帯ぐらいで現時点で想定しているのか、限定的、抑制的なものになるのかどうか、お聞きしたいと思います。

 

【谷脇康彦政府参考人】

 お答え申し上げます。今回の改正では、電話の役務をあまねく目的業務区域において適切、公平かつ安定的に提供することを確保するために必要があると認められる場合に限って、総務大臣の認可を得た上で他者設備を利用した電話の提供を認めることとしております。

 具体的には、現行のメタル回線による電話の提供が極めて不経済となる場合として、今後、省令において、地理的条件が悪く、かつ利用者が特にまばらな地域を指定し、他者設備の利用を認めるということを想定しております。委員御指摘の指定の詳細につきましては、現在検討中でございます。例えば、山村振興法、離島振興法、半島振興法などの指定地域の中から一定面積当たりの利用者数が特に少ない地域を指定することが考えられるところでございますけれども、具体的な数値等については現行ではまだこれから検討していく段階ということでございます。

 

【伊藤岳議員】

 他者設備利用の場合でも、現在の電話と同等のユニバーサルサービスの水準が確保されることが必要です。例えば、先ほど来お話がありました現行の固定電話を利用して提供されている付随サービスがあります。自治体が提供する見守りサービスなどがありますが、こうしたサービスの利用可能性についても、利用者の立場に立った改善の取組を講じていくことが必要ではないでしょうか。

 仮に他者設備の利用によってこれらのサービスが利用できない可能性が生じる場合には、利用者に対する十分な説明、代替手段の確保等を行うことが必要ではないでしょうか。

 総務省、先ほどNTTにこうした点を要請するという話がありましたが、この代替手段とは一体どんなものを想定しているのか、水準、ユニバーサルサービスの水準が維持されるのかどうか、どんな方針持っているのか、お聞きしたいと思います。

 

【谷脇康彦政府参考人】

 お答え申し上げます。委員御指摘のいわゆる見守りサービスのうちで、アナログ電話回線を利用したものについては、ワイヤレス固定電話の導入により利用できなくなる可能性があります。

 このため、NTT東西に対しましては、ワイヤレス固定電話の導入に当たり、自治体や利用者に対して十分な説明を行うとともに、自治体と協議し、必要に応じて自治体による見守りサービスの継続提供を確保するための代替手段を提案するよう求めてまいりたいと考えております。その代替手段でございますけれども、例えば見守りサービスの場合でございますと、アナログ電話回線以外にも、携帯電話回線、あるいはインターネットを活用したものなどもございます。こういったものが代替する手段となってくるものと理解しております。

 

【伊藤岳議員】

 他者設備利用の対象区域が限定的、抑制的なものになるのかどうか、ユニバーサルサービスの水準が維持されるのか、まだまだ不明な点が残ります。

 また、NTTがユニバーサルサービス維持のための設備投資を縮小させていくことへの歯止めとなるのか、これも総務省の判断に任されることに、つまり省令に委ねられることになります。NTTの加入電話の収支は三百六十一億円の赤字という話が先ほど言われましたけれども、光サービス事業などの利益もありまして、全体の収支はNTT東で二千億円の黒字、NTT西で一千億円の黒字と聞いています。また、条件不利地域においてNTT東西が電話網を維持するためのコストを補填するために他の事業者に負担を求めるユニバーサルサービス交付金制度も設けられており、今年は六十億円がNTTに入ります。

 こうした中で、NTT東西への収益優先で電話メタル回線の撤退を前提とするのではなくて、利用者へのユニバーサルサービスの水準の確保こそ徹底されるべきだと私は思います。

 もちろん企業の経済活動は守られなきゃいけませんが、最も守るべきは利用者、ユニバーサルのサービスだということを指摘をしておきたいと思います。

 次に、新型コロナ対応で地方創生臨時交付金についてお聞きをします。まず、交付対象についてです。地方単独事業については、幾つかの交付対象外の項目を挙げています。その中で、職員の人件費が対象外の項目に挙がっていますが、正規職員の給与には充てられないと聞きました。

 では、新型コロナウイルス感染症対応のために地方公共団体が臨時・非常勤として配属した職員の人件費や正規職員の手当、また、公衆衛生や医療提供体制の整備の一環で臨時・非常勤として配置した職員の人件費に地方創生臨時交付金、適用できますか。

 

【長谷川周夫政府参考人】

 お答え申し上げます。本交付金は、地域の実情に応じた自治体独自の取組の財源に柔軟に充てていただくために、高い自由度で活用することができる仕組みとしております。御指摘のようなケースなど、感染症対策のための体制拡充に必要となる臨時的な職員の人件費についても本交付金を御活用いただけることとしているところでございます。

 

【伊藤岳議員】

 適用できると確認をしました。関連して、通告はしなかったんですが、大臣に一つ確認したいことがあります。今、内閣府から適用できると答弁がありましたが、そうは言っても、地方からは、地方創生臨時交付金の地方単独分の、地方単独事業分については交付限度額がありますから、その中から人件費にとはなかなか難しいという声が上がっています。

 新型コロナウイルス感染症対策で必要となった人件費分は、今年度の特別交付税で措置することに当然なると思うのですが、この点、どうでしょうか。

 

【高市早苗総務大臣】

 まず、私の方で、総務省の方で所管をしております特別定額給付金などに係る人件費、特に、臨時職員の方を採用していただいたり、この間から、期せずしてマイナンバーカードの暗証番号を忘れてしまったというような方々が再設定のために窓口に行かれまして、やむを得ず夜間の開庁ですとか土日の勤務などをお願いいたしております。その分の人件費の追加分ですね、こういったことも含めて全額国費といたしております。

 また、地方創生臨時交付金に係るものにつきましては、制度設計が内閣府でございますが、できるだけ地方自治体が自由に使えるものにしてくださるということでございますので、地方行政を所管する立場といたしましては、本当に今の感染状況に応じて、それぞれの自治体が一番使いたいものに使えると、あわせて、人件費などについてもお困りになることのないような使い方ができる、そういう対応をしていただきたいと切に希望いたしております。

 

【伊藤岳議員】

 大臣に今後検討していただきたいのは、限度額がありますから、その限度額だと協力金などで終わっちゃっているという声も聞きます。是非今年度の特別交付税で措置するということも検討していただきたいと思います。

 地方創生臨時交付金の地方単独事業分、地方公共団体が実施する家賃補償などの事業分ですが、第一次提出として五月二十九日十二時厳守となっています。五月二十九日の提出期限以降も地方単独事業分の増額、変更はできますか。

 

【長谷川周夫政府参考人】

 お答え申し上げます。本交付金につきましては、今お話ありましたように、五月一日に第一次の交付金限度額をお示ししたところでございまして、今月二十九日までにその第一次交付限度額に対応した実施計画を自治体の方に作成、提出していただき、手続を進めることとしております。

 第二次提出につきまして、現時点でそのスケジュール等についてまだはっきりしたことは申し上げられないわけでありますが、第一次から追加された交付限度額をお示しして、当該限度額に対応した実施計画を提出していただく手続を予定しておりまして、この中で、当初の実施計画で記載された事業内容の変更あるいは事業費の増額を行うことにつきましても柔軟に対応してまいりたいと考えているところでございます。

 

【伊藤岳議員】

 増額、変更できると確認いたしました。

 問題は、交付金を急いで地方公共団体の元に届けることだと思います。地方創生臨時交付金の第一次提出分の交付方法について、地方公共団体が策定する実施計画に掲載された事業に対し、交付限度額を上限として交付金を交付としています。

 内閣府、これでは実施計画の策定、審査、交付と時間が費やされ、交付がかなり遅れるのではないか、交付はいつ頃を見込んでいるのか、また、その後、第二次提出分の交付はいつ頃を見込んでいますか。

 

【長谷川周夫政府参考人】

 本交付金につきましては、第一次につきましては、先ほど五月二十九日に実施計画の提出の締切りとさせていただいておりますことを申し上げましたが、六月中には各自治体から提出のあった実施計画の確認結果をお知らせした上で、速やかに交付決定ができればというふうに考えております。なお、令和二年度の自治体のそれぞれの予算に計上がある事業でありましたら、四月一日に遡って適用できるという仕組みにしておりますので、実質的に、自治体が今申し上げた交付決定より前に開始した事業でも使えるということにさせていただいております。

 また、第二次の提出のスケジュールについてのお尋ねがございました。先ほど申し上げましたように、今まだちょっとはっきりしたこと申し上げられないんですが、これ、関係府省庁の執行状況、これは国庫補助事業の地方負担分が中心となっておりますので、関係府省庁の執行状況を踏まえた上で、できる限り円滑な事業執行ができるよう交付手続を進めることにしてまいりたいというふうに考えております。

 

【伊藤岳議員】

 第一次分については六月中の決定という話でしたが、つまり、地方に届くのは七月、八月になってしまうということ。これから二か月も先ですよね。第二次提出分に至ってはまだ見通しが立たない。それまで地方公共団体には歯を食いしばって頑張ってくださいというのは、これ余りにも遅いと思います。

 そこで、提案をしたい。急いで届けるというのならば、概算払や外形標準でまずは地方公共団体に交付をするとか、事後審査を取り入れるべきだと思います。検討をいただきたいと思います。全国知事会は、当初の総額では不足することが明らかになってきている上、今般の緊急事態宣言の延長により更に必要額が増額することから、交付金の飛躍的増額を行うことを提言をしています。

 埼玉県の川口市は、市の単独事業として、小規模事業者に対して一律十万円の給付を決めました。予算総額が十五億円だそうです。市長さんは、もらえる人ともらえない人が出るなど、差が生まれるのはよくない。弱者、頑張っている人を激励したいと言っておられました。川口市はさらに、中堅事業者に一律二十万円の給付を検討しているそうで、総額五十億円を超える規模のコロナ対応での財政措置となる見込みです。ところが、川口市への地方創生臨時交付金の交付限度額は十億二千七百万円。つまり、既に実施している一律十万円の給付の十五億円にすら満たない額なんですね。

 お隣の蕨市、総額二億七千万円を超える財政措置を先日補正予算で決められましたが、ここの交付限度額は一億八千万円、つまり一億円足らないんです。市長さんは、今回、相当思い切った補正を組んだけれども、それでも、第二波、第三波の補正を組まなければならなくなると思う、国にはそれに見合う交付金をお願いしたいと言われていました。困っている人をすぐ目の前にした自治体首長さんの思いが伝わってくる話だとお聞きしました。

 今日は、内閣府大塚副大臣に来ていただいていますが、副大臣、一兆円の地方創生臨時交付金では地方公共団体が申請したい規模には程遠いという認識はありますか。

 

【大塚拓内閣府副大臣】

 これ、伊藤先生も私も埼玉なわけですけれども、元々この臨時交付金の話が出てきたときには、恐らくここまでコロナの影響が経済に大きく広がっていくということがまだ見え切っていない段階で地方から御要望があり、我々としても、リーマン・ショックのときにやった臨時交付金の仕組みというのは非常に有効だったということで、そのときの予算規模一兆円ということを一つ参考に決めさせていただいたということがございます。

 ただ、その後、経済への影響も大きく広がっていき、そしてまた、当初は協力金、給付金、支援金といったような定額のお金を交付をしていくと、給付をしていくという仕組みは想定をされていなかったわけでありますけれども、東京都さんがそれを始められるということもあって、周辺、我々も、周辺の自治体のところでもそういうことをやはり対応していかなきゃいけないんでないかということで、そういった、当初想定していなかった資金需要というのが自治体で出てきたというのもこれまた事実だろうというふうに思っております。

 基本的には、この臨時交付金は、その地域の実情に最も通じている首長さんが自分の地域の実情に合わせた最も効果的な使い方、自由度、柔軟性のある使い方ができるようにということで確保をしているお金でありますので、その中でそういった給付金のようなもの、協力金のようなものが、必要な地域の自治体の首長さんは、そういったところに優先的に充てられるでしょうし、そうでないところに充てていくところもあるわけでございます。

 こういったこと、今、第一次、一次補正の分について、今までお話がありましたように、五月二十九までに実施計画をいただいて配分をしていくと。その中で、地方自治体側からも大きく増やしてほしいと、こういう御要望もいただいております。また、与党の方でもそうした議論が進んでいるというふうに承知をしているところでございますので、申し上げておきたいのは、今、第二次補正予算を組むかどうかということを、我々としては指示を受けているわけではありませんので、はっきりしたことを申し上げることはできないんですが、そういう時代の中で進んでいるということはよく承知した上でいろいろ検討していきたいと、このように思っております。

 

【伊藤岳議員】

 昨日の埼玉新聞でも、大塚副大臣の地元の飯能市で倒産が起きたという報道もありました。やっぱり本当に、今、地方の自治体の首長さんがやろうとしている事業に、これ一兆円では足りないと思います。私どもは、二倍の規模に、更に五倍程度に規模を引き上げる必要があると思っています。

 副大臣、もう一度聞きますが、追加の地方創生臨時交付金の実施、これもう直ちに内部で検討を開始していただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

 

【大塚拓内閣府副大臣】

 これ、どういう形で予算を使っていくか、二次補正を組むか組まないかということを私明言する権限をここで持っておりませんので、そこははっきり申し上げることはできませんが、そうした様々なニーズがあるということもよく承知しておりますし、与党でもそうした議論がしっかり進んでいるということもよく承知をした上で、政府としてもしっかり対応していきたいと、このように思っております。

 

【伊藤岳議員】

 是非直ちに内部で検討を始めていただきたいし、総務大臣も含めて、内閣の中で検討を急ぐようにお願いをしておきたいと思います。是非、地方自治体の思いを、困っている人の窮状を受け止めていただきたい、このことを強く訴えて、時間ですので質問終わります。

 

 

【以下、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改定する法律案に対する反対討論】

 

【伊藤岳議員】

 日本共産党を代表して、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改定する法律案に対して、反対の討論を行います。

 NTT法は、NTT東西に対して電話のサービスのあまねく日本全国における適切、公平、安定的な提供を義務付けており、電気通信事業法では、固定電話、公衆電話、緊急通報をユニバーサルサービスの対象役務としています。国民生活に欠かせない通信の確保を揺るがすことがあってはなりません。とりわけ、人口減少が進行する中で、地域住民の生活を支えるという点からも、また全国各地を襲う大規模自然災害から住民の命を守るという点からも、通信のユニバーサルサービスの維持は一層重要です。

 本法案は、固定電話のユニバーサルサービスについて、他の電気通信事業者の電気通信設備を利用した役務提供を例外的に可能とするものですが、その場合でも固定電話と同水準の安定なサービスの提供が確保されることが当然求められます。

 他者設備を用いて電話サービスの役務を適切、公平、安定的に提供することを確保するため、情報通信審議会でも多くの条件が示されました。しかし、それらは総務省令と今後の対応に委ねられています。利用者にとってユニバーサルサービス提供水準が維持されていくことが明確にはなっていない下で本法案に賛成することはできません。また、対象区域が限定的、抑制的なものとなる中、NTTがユニバーサルサービス維持のための設備投資を縮小させていくことへの歯止めとなるのかも総務省の判断に任されることになります。

 NTT東西の収益優先でメタル回線撤退を前提とするのでなく、利用者に対するユニバーサルサービスの提供水準の確保こそ徹底されるべきであります。

 なお、外国法人等に対する法執行の実効性の強化については、利用者保護につながるものであり、賛成であることを加えて述べて、討論とします。