【伊藤岳議員】
日本共産党の伊藤岳です。日本共産党を代表して、地方税法、地方交付税法の改正案に対する反対討論を行います。
討論に入る前に申し上げます。本法案を含め、政府が今国会に提出したものは、今回の新型コロナウイルス危機を前提としたものではありません。この深刻な状況から住民の健康と暮らしを守る法改正に抜本的に改めて、出し直すべきです。
その上で、本法案について述べます。安倍内閣は、消費税の増税を強行し、社会保障制度を連続して改悪する一方で、自治体リストラの推進と地方財源の抑制を進めてきました。こうしたことで、住民福祉の向上を図るという地方自治体の最も重要な役割を果たしていく力は弱められてきたのです。また、安倍政権は、国の政策に地方自治体を誘導するために、地方交付税や地方税の性格をゆがめてきました。本改正案はこうしたやり方を踏襲したものです。コロナ危機から住民を守るという点でも逆行したものであり、反対です。
以下、具体的な問題点を指摘します。まず、地方交付税による自治体リストラの推進です。まち・ひと・しごと創生事業費の算定では、行革努力分の指標を立てて、人件費や一般会計からの繰出金などを削減すれば地方交付税の算定が有利となる仕組みを入れています。一般会計の繰出金の削減は、高過ぎる国民健康保険料、保険税の一層引上げにつながり、貧困と格差は更に深刻になります。また、公立病院の経営悪化を招き、健康で安心して暮らせる地域の土台を崩壊させるものです。
次に、地域社会再生事業費の財源として、本来、地方の財源である法人事業税を特別法人事業税として国が取り上げて充てるとしています。これは、地方税の拡充による地方自治の前進という点からの逆行です。
また、企業版ふるさと納税の拡充、延長についてです。従来の損金算入に税額控除を上乗せして寄附を募る制度は、企業と地方自治体の癒着を生むおそれがあると当初から指摘をされてきました。ところが、その癒着を防ぐ仕組みもないままに、控除額を更に拡大するものです。政府が進める地方創生事業に企業の寄附を募るやり方は、自治体間の税収の奪い合いを助長し、地方税の原則をゆがめるものです。自治体事業を企業の丸抱えとする制度の拡充、延長は容認できません。
さらに、森林環境譲与税の見直しは、災害対応を強調していますが、その譲与基準は森林整備の必要性に対応したものではありません。森林整備の財源は、逆進性の高い森林環境税ではなく、国の一般会計での森林予算の増額や地方交付税によって保障されるべきです。
地方の財源不足を国と地方で折半するルールの継続は、財源不足に対する国の責任を投げ捨てるものです。地方交付税の法定率を抜本的に引き上げ、地方交付税の持つ二つの役割である財源保障機能と財源調整機能を十分に発揮させて、地方財源確保に対する国の責任を果たすべきではないでしょうか。
こうした自治体リストラの推進、地方財源の抑制路線は、今回の新型コロナウイルスの対処という点でも深刻な影響を落としています。リストラ推進、地方財源の削減路線は、根本から見直すべきです。
安倍総理が政治判断として唐突に打ち出した全校一斉休校要請によって、小中学校や高校、特別支援学校、そして原則開所とされた放課後児童クラブ、いわゆる学童保育や放課後デイの現場には大きな混乱がもたらされましたが、学校関係者や保護者、指導員らによる懸命な努力が尽くされてきました。
政府に求められていることは、地域の実情を把握する各自治体の力がしっかりと発揮できるように支援することです。何よりも、学校、保育園、幼稚園、介護などの現場を支えるマンパワーが安定的に確保されるようにするために、地方自治体が必要な部署に職員を増員配置し、その育成のための十分で継続的な財政措置を行うべきです。
さらに、地域の公衆衛生、感染症対策の体制強化への転換が必要ではないでしょうか。地域の公衆衛生に重要な役割を持つ保健所は、九〇年代初めには全国で八百五十二か所を数えましたが、二〇一九年には四百七十二か所、半分近くまで減少しています。職員総数も、約三万四千人から約二万八千人に減り、とりわけ医師の数は四割以上も減っています。保健所に対する財政措置は、一九八〇年代から九〇年代にかけて、順次、当時の厚生労働省の補助金から交付税措置へと一般財源化され、二〇〇〇年代の地方分権改革以降、権限移譲の対象とされる中で再編されてきました。
新型コロナウイルスへの対処では、各地の保健所に大きな負担が今掛かっています。現場は、帰国者・接触者相談センターとしての電話相談、PCR検査のための病院への患者の輸送の手配、採取した検体の輸送、感染者の行動履歴調査と濃厚接触者の特定など多忙を極め、まさに悲鳴が上がっています。保健所の体制強化は喫緊の課題ではないでしょうか。
感染症指定医療機関を始め地域の公的・公立病院の体制の強化も重要です。埼玉県では、十一の感染症指定医療機関と七十床の感染病床を確保していましたが、新型コロナウイルスの感染が広がる中、今、入院患者の受入先として県内百二十医療機関を調査するなど、必死の努力を展開しています。昨年九月に厚労省が発表した公立・公的医療機関の再編統合の病院リストは直ちに白紙撤回し、公衆衛生、感染症医療体制の体制強化に大きく力を注ぐべきです。そのためのしっかりとした財政措置を構築すべきであります。
新型コロナウイルスの感染は引き続き拡大し、年度末を迎える中、資金繰りに直面する中小零細企業の悲痛な声が今渦巻いています。埼玉県狭山市のあるバス会社は、学生の送迎バスやゴルフ場の運行バスの三月の予約のうち、何と九五%がキャンセルとなりました。月の売上げが前年比百五十万円の減となっています。社長さんは、融資だけでなく、助成金や補助をと訴えておられます。また、飯能市の飲食業の方は、コロナが出てからお客さんがゼロの日が週二回くらい、このままでは廃業を考えなければならないと嘆いておられます。自粛要請などの影響によって深刻な苦境に立たされている国民の生活を絶対に守らなければならないのではないでしょうか。
専門家の知見や科学的根拠に基づく正確な情報の提供によって、感染拡大を防ぐ行動を周知徹底すること、国民の生活を守り抜き、検査・医療体制の体制を早期に確立するために、思い切った予算措置すべきであることを申し述べて、討論といたします。