【伊藤岳議員】
日本共産党の伊藤岳です。地方創生応援税制、いわゆる企業版ふるさと納税の拡充、延長について質問をいたします。企業版ふるさと納税は、地方自治体が行う地方創生の取組に対する企業の寄附について法人関係税の税額控除などを行う仕組みです。この企業版ふるさと納税の拡充、延長が今回提起をされています。
改正のポイントは、税額控除の割合を、現行の三割、法人住民税二割、法人事業税一割からその倍の六割にまで引き上げて、当初からある損金算入の三割と合わせて全体としては九割の負担軽減とすること、そして適用期限を五年間延長することにあります。
企業版ふるさと納税について、今回、拡充、延長する理由は何ですか。内閣府、お答えください。
【辻庄市政府参考人】
お答え申し上げます。今般の税制改正におきまして、ただいま委員から御紹介のありましたとおり、制度の拡充を図ったところでございます。これによりまして、地方公共団体にとりましては、従来、計画策定等に要していた労力を事業の企画立案や企業とのパートナーシップの構築等に注ぐことができるようになること、企業にとっては負担が最小化することといった効果を見込んでおるところでございます。
今回の改正は、こうしたことによりまして、地方への資金の流れを飛躍的に高めることで、地方公共団体による更なる制度の活用や、地方創生事業への企業の参画をより一層促進することを目的としているものでございます。
【伊藤岳議員】
内閣府が昨年五月に実施したアンケートでは、制度活用のハードルに関して、企業側の回答では、実質負担に見合うPR効果が得られないが一番多かった。一方で、自治体側の意見では、メリットの説明がしにくいが一番多かった。つまり、この意見に応えて控除割合を引き上げるということでいいですか。
【辻庄市政府参考人】
ただいま御指摘のとおり、アンケートでの企業や地方公共団体の声にも応えたものでございますけれども、そのほか、地方六団体あるいは経済団体からの御要望や、何より、地方への資金の流れを飛躍的に高めることで、地方公共団体による更なる制度の活用や地方創生事業への更なる企業の参画を促進することを目的に税額控除割合の引上げ等の改正を行ったものでございます。
【伊藤岳議員】
企業版ふるさと納税、この三年間で三千百三十件、六十五億七千七百万円ということで、地方財政全体の中では規模は決して大きくはありません。また、総務省が進めている個人版のふるさと納税に比べれば、現状では桁が違うという状況にあります。しかし、本来の寄附というのは、得があるかどうかでするというものではないのではないでしょうか。PR効果が負担金額に見合わないと言われて税額控除を引き上げて使ってもらうというのは、本末転倒だと私は思います。ましてや、立地自治体に企業が払うべき税額を事実上寄附先の自治体に移転させる制度です。日頃行政サービスを提供している立地自治体は、当然いい顔はしないと思います。地方税の原則をねじ曲げたいびつな寄附制度ではないかと思います。企業版ふるさと納税では、制度の創設時から政令で経済的利益の供与を禁止をしてきました。しかし、実効性には疑問の声が上がっていました。
今回の拡充に伴って、この経済的利益の供与を禁止するというこの規制は、強化はされるんでしょうか。
【辻庄市政府参考人】
ただいま御指摘いただきました経済的利益の供与の禁止規定でございますけれども、これは、寄附を受ける地方公共団体と寄附を行う企業の癒着につながらないよう、内閣府令において規定しておるものでございます。今般の税制改正後においても、引き続き企業から地方公共団体への健全な寄附が行われるよう、この規定を堅持することといたしております。加えまして、今回の制度改正と併せまして、本規定に地方公共団体が違反した場合には地方再生計画の認定を取り消すことができる旨を、地方再生基本方針、これは閣議決定しておるものでございますけれども、この基本方針において明確化することとしたいと考えております。
【伊藤岳議員】
現行の禁止規定は極めて限定的だと思います。今、認定を取り消すという話がありましたけれども、そんなあからさまに明確な違反をする企業があるでしょうか。あからさまに寄附の対価であることを明示している場合しか該当しない。
そもそも、経済的利益を供与してはならないという地方再生法第十三条ですね、基本方針やQアンドAに違反していないかを誰がチェックしているんでしょうか。常時、恒常的に監視している機関があるのですか。
【辻庄市政府参考人】
経済的利益の供与を禁止する規定も含めまして、地方公共団体におきましては、法令を遵守した上で適切な行政の運営を行われるものと考えておるところでございます。
また、内閣府におきましては、この制度の適用を受けるに際して地方再生計画の認定を行うわけですけれども、その認定の際に、経済的利益の供与を禁止する規定に抵触するおそれのある事業があったような場合には、地方公共団体に確認し、規定に抵触することがないよう、事業の見直し等をお願いするといったことも行っておるところでございます。
加えて、もちろん本制度固有の監視機関を有しているわけではございませんけれども、一般的には、地方議会あるいは地方公共団体の監査を通じてチェック機能が働くものと考えておるところでございます。
【伊藤岳議員】
長々答えてもらったけれども、常時監視している機関があるのかないか、そこ答えてください。
【辻庄市政府参考人】
本制度固有の監視機関があるわけではございませんけれども、繰り返しになりますが、地方議会や公共団体の監査を通じたチェック機能は働くものと考えております。
【伊藤岳議員】
これ、全く性善説に基づいてやっているようなものですね。寄附金、寄附企業の一覧表を見ていますと、非公表となっているものがかなりあります。寄附企業が非公表とする理由は何だと認識していますか。
【辻庄市政府参考人】
御指摘のとおり、非公表という企業もあるところでございますけれども、企業が寄附をしたことを非公表とした理由といたしましては、寄附をしたことを公表することによって他の地方公共団体からも寄附を求められることを防ぎたい等の理由があるというふうに承知してございます。
【伊藤岳議員】
今後、企業名や寄附額等の公表は義務付けられることになりますか。
【辻庄市政府参考人】
今、非公表とするこんな理由があるというふうに申し上げましたけれども、これも一定の合理性があるのではないかと思っておりまして、企業名や寄附額の公表を一律に義務付けることは現在のところ考えておらないところでございます。
【伊藤岳議員】
企業が寄附をしたという事実そのものが、つまり関係者以外に知る方法がないということですよね。ということであれば、納税者である住民からしてみると、企業と自治体の癒着などを確かめようがない。先ほどチェックする機関がないという話もあったけれども、ばれなければそれで済んでしまうという仕組みです。これでは癒着を防ぐ仕組みは何もないといっても同然だと思います。
先ほど地方議会のチェックという話がありましたが、住民の代表である地方議会はどこまでチェックできる仕組みになっているんでしょうか。地方再生法では、認定された地域再生計画にどのような地方再生の関連事業が盛り込まれるのか、地方議会に提示される仕組みになっているでしょうか。
【辻庄市政府参考人】
企業名や寄附額を公表するか否かという点は、一義的には地方公共団体が判断するものと考えますけれども、こうした企業名や寄附額の開示に関しましては、地方議会での予算や決算の審査の過程で、地方公共団体が説明責任を果たすという観点から地方公共団体で検討され、適切に対応していただけるものというふうに考えておるところでございます。
【伊藤岳議員】
企業名の公表まで行かなくても、関連事業が盛り込まれているのかどうかとか、これは地方議会に提示される仕組みになっていますかというのを聞いているんですが、いかがですか。
【辻庄市政府参考人】
事業を……あっ、認定された事業、申し訳ございません。地方再生計画そのものを議会にお諮りするかどうかは地方公共団体の御判断でございまして、一律にそういう仕組みになっているわけではございません。
【伊藤岳議員】
さっき、あなた、地方議会がチェックすると言われたじゃないですか。それ、事実とさっきのは違いますか、先ほどの答弁は。
【辻庄市政府参考人】
例えば、寄附がございますれば決算においてその寄附金収入が歳入として上がってくるわけでございまして、そうしたことから、議会の方でこれは何かとか、そういった形でチェックしていただくことになろうかと思います。
【伊藤岳議員】
いやいや、だって、寄附金収入がその他で一くくりになって議会に提出されたら分からないでしょう。先ほど地方議会でチェックすることになっていると思うと言われたのは、違うんじゃないんですか。もう一度答えてください。
【辻庄市政府参考人】
申し訳ございません。その歳入の内訳が、申し訳ございません、どのようになっておるかはちょっと自治体によっては違うと思いますけれども、そういった歳入を見てチェックするような仕組みになっておるんではないかと思います。
【伊藤岳議員】
答えになっていないんですが。要するに、地方議会がチェックするようにはならないということですよ。先ほど答弁で、寄附したことが知られるとほかの自治体にも頼まれるからというような話がありましたが、まさに頼まれたら断りづらいという、企業の側が感じるプレッシャーもあると思います。また、日頃から公共事業など仕事を受ける関係にある企業が、自治体から頼まれてあっさり断れるかという問題もあると思います。次に仕事を取るときに不利にならないか不安に思う企業もあるのではないかと思います。自治体も、寄附を頼もうと思えば、ふだん縁のある企業にお願いすることにならざるを得ないんじゃないでしょうか。既に現行制度を利用している企業も、多くは寄附先自治体と何らかの形で利害関係を有しているところが多いです。
例えば、西日本のある自治体ですが、対象事業に寄附している企業、公表されている分だけ見ても、入札事業者や過去に仕事を請け負ったことのある会社が大半を占めています。中には、地方創生関係の企画提案そのものを請け負っている会社もあります。非公表とされた企業の中に、もっと自治体や個別の事業との関係の深い企業が含まれていたとしても、外の人は誰も分からないんです。企業版ふるさと納税は内閣府所管の制度でありますが、地方自治体を担当する総務大臣にお聞きしたいと思います。こうした地方自治体と事実上の特定企業が地方再生事業に金を出すことを通じて非常に密接に結び付いていく。元々の寄附税制では三割の算金損入がありました。これに税額控除を加えていけば、地方自治体と企業との癒着が生まれる危険が大きくなるのではないかという懸念の声があります。さらに、今回の改正では控除額を更に広げるわけで、寄附額の九割も負担軽減となれば、地方自治体と企業との関係を制度を通じて変質させてしまう危険が大きくなるのではないでしょうか。大臣の見解、伺いたいと思います。
【高市早苗総務大臣】
地方公共団体が企業と連携することによりまして、非常に優れた地方創生の事例も生まれてきております。地方創生担当大臣賞を取られたような幾つかの事例を私も拝見して、これはすばらしいなと、社会的に意義のある貢献を企業がされているなと感動したものもたくさんございます。志ある企業によって、地方への寄附や地方創生の取組への積極的な関与を促して、地方への資金の流れというものを飛躍的に高めるという点では、私は意義のある制度だと思っております。
それから、癒着という話が出ましたけれども、この税制の適用がある寄附かどうかにかかわらず、企業から寄附を受けた場合にその企業との間で適切な関係を保つというのはこれは当たり前のことで、地方公共団体自ら留意するということは必要であると思います。また、法的根拠という意味で申し上げても、この地域再生施行規則ですね、地域再生法の施行規則、内閣府令になりますけれども、寄附を行う法人に対して寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与してはならない、地方公共団体にしっかりとくぎを刺しておりますので、これはやっぱり地方公共団体として矜持を持って守っていただかなければならないことであると思います。この税制そのものの意義を否定するものにはならないと考えております。
【伊藤岳議員】
もちろん、大臣、全ての企業が悪いと言っているわけではないです、癒着の可能性があると言ったわけじゃありません。ただ、先ほど来の議論の中で、地方議会、地方行政でチェックする仕組みはこのままだとないというふうに思うんですが、そこはそのように思われますよね、どうですか。大臣としてはどうですか。
【高市早苗総務大臣】
ちょっと、私が直接所管するものではないものですから軽々にお答えもできませんけれども、しかし、このような企業から寄附を受ける形で地方創生をやっていくと、実際に事業が始まるわけでございますから、ここは地方議会の方でもしっかりとチェックをしていただきたいと期待をいたします。
【伊藤岳議員】
是非そういう仕組みも必要だと思うんですね。また、個人版のふるさと納税と同様に、地方税を事実上移転をするもの、つまり、本来立地自治体に払うべき税を寄附先の自治体に税を払う、移転をすることになります。仮に今回の拡充、延長で企業版ふるさと納税が広がったとしても、それは地方税の奪い合いが激化したということだけのことで、それぞれの地方の税が潤うということにはならないと思うんです。先ほど飛躍的にという内閣府の話がありましたが、いや、飛躍的も何も潤わないです、税の奪い合いだけなので。
大臣、地方税制の在り方として、こういう問題を抱えたものではないかと思うのですが、感想いかがでしょうか。
【高市早苗総務大臣】
地方税におきましては、これはもう応益課税の考え方というのが重要でございます。これは税額控除額の上限、法人住民税、法人事業税共に税額を二〇%ということでございますけれども、これは維持することとしておりますので、地方税制として問題があると私は考えておりません。
【伊藤岳議員】
時間になりました。今回いろいろ議論してきましたけれども、やっぱり地方自治体と企業の癒着のおそれを一層に広げることになるという懸念は拭えません。引き続きただしてまいりたいと思います。以上で質問を終わります。