議事録

2020年3月18日 総務委員会(公立病院削減問題と感染症指定医療機関問題)

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。公立・公的医療機関と感染症指定医療機関の拡充について質問をいたします。新型コロナウイルス感染が広がる下、感染症指定医療機関の圧倒的部分を占める公立・公的病院の役割は決定的に重要です。高市大臣が二月二十五日に出された新型コロナウイルス感染症に係る入院医療の提供体制の整備に関する大臣書簡でも、公立病院については、感染症病床の六割を占め、感染症医療に重要な役割を果たしておりますが、各地域の実情を踏まえながら、例えば、重症者を優先的に受け入れる医療機関となるなど、その役割を果たすことが求められていますと書かれております。

 ところが、今、公立・公的医療機関四百二十四病院の名前を挙げてまでして検討、削減を迫り、このやり方に地方で大きな怒りが広がっております。今、大臣は各県、地域と情報共有を進められておりますが、是非、今日は埼玉の実情を紹介しますので、共有していただきたいと思います。

 埼玉県蕨市立病院をお訪ねしました。事務局長さんは、診療実績のデータだけで何でこんな大問題を判断するのか、しかも名前を挙げての今回のやり方はひどいと言っておられます。自分は本来怒らない人間だけどと言っていました。蕨市立病院は、市内唯一の二次救急医療機関として、急性期病床百三十床を有する病院です。今回、B、つまり診療実績が類似し、かつ隣接、自動車で移動時間二十分以内とする医療機関があると該当するとして名指しをされた病院です。さきに述べた市内唯一の二次救急医療機関としての役割とともに、市内唯一の分娩医療機関であり、近隣の中核病院との地域連携の下、土日祝日の夜間の小児救急医療と高度治療後の急性期患者の受入れを担っています。

 これらの地域的役割が削減され、機能転換されたりしたらどうなるか。救急患者の受入先が決まらずにたらい回しにされるだろう、市内で子供を産めないばかりか分娩予約も取りづらくなる、とりわけ、土日祝日の夜間の小児救急は近隣ではどこも担えないでしょう、お手上げですよと事務局長さんは言われておりました。

 この病院は、二〇〇七年の総務省が出した公立病院改革ガイドラインに基づいて策定した改革プランの一年目にして黒字に転じています。当時三億円あった累積赤字も全て解消しています。同時に、医師の勤務環境の整備にも意を払い、医師人材の確保も進めてきている病院です。厚労省は、こうした地域の実情も見ないという立場です。

 大臣、大臣書簡で述べておられる公立病院の役割について、各地域の実情を踏まえながらとは具体的にどういうことなんでしょうか。この市立病院のある地域のような実情は踏まえるべき、見るべきではないでしょうか。

 

【高市早苗総務大臣】

 厚生労働省による再検証要請についても、各地において地域の実情や公立・公的医療機関の診療実績の分析結果を踏まえつつ、将来を見据えた持続可能な医療提供体制の構築に向けた議論を尽くしていただくことを求めているんだろうと思っております。

 ただ、やはり今委員からも御紹介ありましたけれども、それぞれの地域によってまず医療のニーズが違うという問題があると思いますね。それは、高齢化が進んでいるとか、ここは子供さんが多いとか、地域によって様々なニーズがあると思います。あと、救急医療をしっかりと担っていただける病院というのもなかなか民間では見付けるのが難しいという事情もあるかと思います。

 それから、今回やっぱり感染症病床をふだんからキープしてくれている公立病院の有り難みというのもたくさんの方が実感されたと思います。

 だから、地域に応じて、それぞれの実情に応じてというのは、それぞれの地域ごとの医療ニーズ、それから、現在、本当に近接した場所に総合病院があって、それら全ての診療科があって、医療のニーズに対応してくれるんだったらそれはそれでいいんですけれども、そうでは全くない地域というのもあるわけです。ですから、地域ごとの実情に応じてということを私は常々申し上げております。

 

【伊藤岳議員】

 もう一つ例を紹介させてもらいます。さいたま市北部医療センターもお訪ねしました。この病院は、二次救急医療機関として急性期病床百五床を有し、近隣で高度医療を担う自治医大病院やさいたま日赤病院と地域連携協定を結んで、高度から急性期に移行する患者さんを受け入れています。また、高齢化が進む地域のニーズに合わせて、昨年には急性期病床五十八床を回復期病床、地域包括ケア病床に機能転換をしました。今回、A、つまり診療実績が特に少ないと、B、診療実績が類似し、かつ近接する医療機関があるに両方に該当したとして、検討、削減を名指しされた病院です。

 院長先生とお会いしました。地域連携については上から一律に決められるものではない、地域の実情を知らずに削減検討を迫る役人はとんでもないと思うと一喝されていました。診療実績についても、ある一か月分のデータだけを見て多いとか少ないとか判断するのはおかしい、そのときの特別な事情もあるのだからと指摘し、採用したデータの一・五倍に救急医療受入れが増えていることなども紹介されておりました。

 厚労省はこうした地域の実情も見ないのでしょうか。どの地方自治体もそれぞれの公立病院の役割を明確にして、同じ医療圏内の地域連携など議論を積み上げてきています。その実情を無視して地域の到達点を上から突き崩して、公立・公的病院の地域的役割を土足で踏み込んでしまうのが、今回の四百二十四病院名を挙げての病院、病床削減のやり方だと私は思います。大臣、この医療センターのある地域のように、公立病院の役割を明確にして、しかも医療圏内の地域連携などの議論を積み上げてきている到達点、これ、どう思われますか。尊重されるべきではないでしょうか。

 

【高市早苗総務大臣】

 厚生労働省によるリストが公表をされましたが、あれは何か全国一律の基準によって分析を行ったもので、その結果が公立病院の将来に向けた方向性を機械的に決定するものではないというふうに聞いております。

 やはり、今患者数の減少ですとか医師不足など非常に厳しい状況の中にあって、公立病院が適切に役割を果たして、持続可能な医療提供体制が確保されるように、効率的で効果的な経営にも努めていく必要があると思います。

 今後は、それぞれの地域において、先ほど申し上げましたが、地域医療構想調整会議での議論が進められてまいります。各地方団体におかれましては、病院が将来担うべき役割ということについて、地域の実情をしっかりと踏まえながら議論を尽くしていただくことが重要だと考えております。

 

【伊藤岳議員】

 是非、総務省としても、地域の医療体制の確保においては、地域の主張する地域の判断を尊重していただきたいと思っています。厚労省にお聞きします。感染症指定医療機関についてですが、感染症病床の六割は公立病院が占めているという話が先ほどありましたが、公的病院も合わせるとどのくらいになりますか。

 

【迫井政府参考人】

 御答弁申し上げます。御質問の平成三十一年四月一日現在でございますけれども、特定感染症指定医療機関、第一種及び第二種の感染症指定医療機関全体のうち、公立病院及び公的病院が占める割合は、感染症病床全体の九割以上となってございます。

 

【伊藤岳議員】

 九割以上、まさに感染症医療において公立・公的病院の果たす役割は本当に大きいものがあると思います。前回のこの当委員会でも取り上げましたが、総務省は二〇一七年に、感染症対策に関する行政評価・監視、国際的に脅威となる感染症への対応を中心としてという勧告を厚労省に対して出しています。総務省、なぜこの行政評価を行うことになったんでしょうか。

 

【白岩政府参考人】

 お答え申し上げます。感染症対策に関する行政評価・監視は、平成二十八年当時、海外でエボラ出血熱やMERSが発生、流行し、十分な注意が必要な状況であったこと、国境を越えた人や物資の移動がより一層迅速、大量となり、感染症は世界規模で拡散しやすい状況などが背景としてあったことから、我が国の水際対策や国内の蔓延対策の実情について調査を行ったものでございます。

 

【伊藤岳議員】

 その行政評価の結果、診療体制等の実態の把握をすること、改善措置を行うことを勧告をしています。厚労省、この行政評価、総務省の行政評価を受けて、実態をどう把握されましたか。また、何をどう改善をしているでしょうか。

 

【吉永政府参考人】

 お答え申し上げます。平成二十九年の十二月十五日に行政評価・監視に関する勧告をいただいてございます。その勧告を受けた直後から、平成三十年一月一日時点におきます、全国四百を超えます感染症指定医療機関、千八百床以上の感染症病床に関する診療体制につきまして実態調査を行ったところでございます。具体的な調査内容としては、各都道府県の感染症指定医療機関におきます感染症病床数、また、感染症患者等に対する医師などの人数、体制、施設設備の整備の状況などについてでございます。

 この調査結果につきましては、その集計あるいは分析につきまして、現在、専門家の御意見を踏まえつつ精査を行っているところでございます。今後、報告が取りまとまり次第、必要な体制強化を図ってまいりたいと考えてございます。

 

【伊藤岳議員】

 行政評価を受けたのが二〇一七年の末ですよね。なぜこんなに時間が掛かっているんですか。

 

【吉永政府参考人】

 評価につきましては、先ほど若干触れさせていただきましたが、都道府県等を通じまして、全国四百を超える感染症指定医療機関、千八百床以上の感染症病床を対象としておりまして、その調査項目も多く、また、都道府県を通じて各医療機関からの回答も取りまとめていたため一定の期間を要していたところでございます。

 また、いただいた回答につきましてもばらつきがある部分がございまして、再調査等も行っておるところでございます。その上で、専門家の御意見なども聞きながら分析を進めているところでございます。そういったことから、現時点でまだ報告がまとまっていないという状況でございます。

 

【伊藤岳議員】

 二年以上掛かるというのはどうも納得し難いのでありますが、その現時点で、の調査の中で、何か見えてきているものはありますか。

 

【吉永政府参考人】

 現時点でこの状況をどう考えるかというところはまだまとまっている状況ではございませんけれども、総務省からの勧告の中でるる触れられた点につきまして、現行の配置基準でありますとか詳細な手引でありますとか、そういったものが実際に有効なものか、又は現実に即しているものか、その辺りにつきましても精査をしながら必要な体制の維持を行っていくということだろうと思ってございます。

 

【伊藤岳議員】

 総務省のこの行政評価の中で、体制、医師の、医療の体制不足等により、指定病床数どおりの患者等の受入れを危惧する指定医療機関が二三%だと報告されています。なぜ危惧するのかの理由として、一、二、例を紹介しますと、医療スタッフの配置について他の医療機関との協議が調っていない、また、現在の医療体制では一人程度しか受け入れることができないなどなどの医療機関の声が上がっています。そして、勧告の中で、総務省は、受入れ、診療体制の実効性が未確保と指摘をしています。

 総務省にお聞きいたしますが、感染症指定医療機関の医療スタッフは未確保という認識なんですね。

 

【白岩政府参考人】

 御指摘の勧告の箇所についてでございますが、平成二十八年当時の調査結果に基づいて、そのときの、その時点における事実関係から申し上げれば、そのときの状態はそういう結論であったということだと思います。

 

【伊藤岳議員】

 現在もそう変わっていないんだと思います。産経新聞の十四日付けの記事で、こういう記事がありました。埼玉県に関わる記事ですが、新型コロナウイルスの感染拡大に備えるために入院患者の受入先として県内百二十医療機関を調査していることを明らかにした、現在、感染症指定医療機関の、埼玉十一病院七十床ですが、この十一病院七十床しかなく、医療受入れ体制を広げることが課題となっていると報じています。感染症指定医療機関だけでは足りなくなる、これ、埼玉だけではなく全国どこでも言えることだと思います。

 ところが、先ほど、総務省の勧告にもあるように、感染症指定医療機関の医療スタッフが未確保という状況があります。そういう中で、感染症医療機関の拡充を急ぐことの重要性は今まさに浮き彫りになっていると思うんです。

 総務省は、全都道府県と政令指定都市との窓口担当者を付けて、地域病院との情報共有などをしておりますが、大臣、この中で何が大事と感じ、また、何をしようと今思われているのか、聞かせていただきたいと思います。

 

【高市早苗総務大臣】

 二点ございました。一番急いだのは、緊急を要していた、とりわけ医療機関用のマスクの供給不足でございました。十日に取りまとめられた第二弾の緊急対応策にこのマスクの供給対策が盛り込まれておりまして、これに基づいて、総務省と厚生労働省と経済産業省で協力をして、都道府県を通じて必要な医療機関に優先配付を行う体制を構築しました。まずは各省庁が保有するマスク二百五十万枚を拠出いただいて、本日、三月十八日までに医療機関に配付するということになりました。これに加えて、増産と輸入拡大を通じて国で確保する千五百万枚のマスクについても、来週以降、順次医療機関に配付することとなっております。

 また、第二弾の緊急対応策に盛り込まれている二千万枚の再利用可能な布製マスク、これについても三省が連携して取り組んでいます。それから、三月十日に国と地方の協議の場が開催されましたので、全国市長会、町村会の代表者の先生も来ておられましたので、私の方から、もしも市町村の備蓄マスクに余裕がある自治体があった場合、このときには何とか医療機関や介護施設に対してマスクの提供で御協力をお願いするという旨を申し上げ、また、十二日には地方公共団体に協力依頼を周知する事務連絡を発出しました。

 マスクについてはここまで取り組んできたんですが、今私が一番大事で頑張らなきゃいけないと思っていることや、なおかつ地方から声が寄せられているのは、医療機関、医療機能の強化でございます。これは、やっぱり医療体制、ここが崩壊してしまうと重症化して亡くなってしまう患者さんが出てしまう。それから、院内感染対策、これもしっかりやらないと通院されている免疫力の弱い状況の患者さんにうつってしまう。そういう意味では、今は医療機関の体制強化ということに特に関心を強く持ち、厚生労働省とも協力をしながら取り組んでいこうと思っております。

 なお、この件については、かなり早い時期に政府の官邸でやっている対策本部の場で私からも、これから三段階の治療が必要だと思われると。まず最初は酸素の吸入、それから挿管、次にECMO、要は人工心肺、あれを使わなきゃいけないという人があちこちで出てきた場合に備えて、全国各地、どこにあってもそういう医療が受けられる準備を進めていただきたい旨を発言いたしました。厚生労働大臣も聞いていてくださったので、そういう治療体制の強化というのが必要だと考えております。

 

【伊藤岳議員】

 非常にマスク、大事なことだと思います。医療体制の、医療機能の拡充というのも大事だと思いますが。そこで、公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検討等の厚労省通知が出されていますが、その中に、私の調べでは、感染症指定医療機関も検討、削減の対象になっているのが五十三施設、七百六十七病床が入っています。今お聞きしてきたように、感染症医療機関の役割が本当に増してきている中で、この公立・公的医療機関の削減、検討の方針はもはや意味をなさなくなっているんじゃないでしょうか。間尺に合わなくなっているんじゃないでしょうか。

 大臣、この公立・公的医療機関の削減、検討の方針は、大臣所感で述べられた大臣の思いとも違う方向ではないかと思うんですが、いかがお考えですか。

 

【高市早苗総務大臣】

 総務省としましては、公立病院がへき地における医療や感染症を始め、救急、小児医療、周産期医療など不採算、あと特殊部門に係る医療も提供する重要な役割を担っていると考えております。非常に地域医療の中で公立病院というのは重要だということでございます。だからこそ、国と地方の協議の場も立ち上げましたし、今後は、やはり地域の実情を十分に把握しながら、この会議も活用しながら、地域医療の持続可能性の確保に向けた取組が進むように私どもは取り組んでまいりたいと思っております。

 

【伊藤岳議員】

 大臣は、公立病院は最後のとりでという発言もされていますが、是非その立場で当たっていただきたいと思うんです。私、この厚労省の出した通知、公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検討については、もう今や白紙撤回をするべきだと思っております。そして、さらに、公立・公的医療機関、特に感染症医療の体制などは拡充を図るべきだと思っております。

 大臣、公立病院、特に感染症指定医療機関の拡充へ更なる厚い財政措置をとるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。先ほど埼玉の例でも紹介しましたように、これから感染症の入院患者の受入先を広げなきゃいけないというふうに県レベルで考えています。そのためには、医療スタッフの確保、又は病院の個室化などが必要だと思います。そういう点を支援する財政措置をとるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

【高市早苗総務大臣】

 既に有症患者が入院することができる病床整備に係る備品購入をまず支援するということについては第一弾の緊急対応策で決まりましたので、地方が負担しなければいけないものについて、特別交付税措置、措置率〇・八ということで措置することを決めております。さらに、来年度からは過疎地など経営条件の厳しい地域における二次救急や災害時などの拠点となる中核的な公立病院に対する特別交付税措置を創設することといたしております。また、周産期、小児医療などに対する特別交付税措置も拡充することといたしております。

 

【伊藤岳議員】

 今後、地域での検討が進んでいくと思います。感染症の入院患者の受入先を広げていくという検討が進んでいくと思いますが、それらに是非対応した方針を随時検討していただくということでよろしいでしょうか。

 

【高市早苗総務大臣】

 感染症に対する地財措置ということで、今回のコロナウイルスに限って言いますと、やはり政府で対応策が出て、ここに係る地方負担に対して手厚い特別交付税措置を講ずるということで、第一弾についても先ほど申し上げたことをやりましたし、第二弾についても有症患者の受入れ可能な感染症病床以外の病床を確保するために要する空床補償経費というものを支援するということにいたしました。その事態、実態に応じて、事態の変化や実態に応じて適切に対応してまいります。

 

【伊藤岳議員】

 地方交付税の在り方を切り替えて、公立病院等感染症指定医療機関の拡充に充ててほしいということを最後に要望しまして、質問を終わります。