議事録

2020年3月11日 参議院本会議

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。東日本大震災から丸九年。大震災で亡くなられた方々に改めて哀悼の意をささげるとともに、御遺族の皆様に心よりお悔やみ申し上げます。被災された方々の生活となりわいの再建のために抜本的な支援が必要だと強く主張するものです。

 政府が昨日、新型コロナウイルス感染症対策として閣議決定した新型インフル特措法改正案は、内閣総理大臣の出す緊急事態宣言によって、国民の自由と人権の幅広い制限をもたらし、その歯止めが極めて曖昧なものです。拙速審議は許されません。

 安倍総理による突然の一斉休校要請などが、専門家の知見によらない政治判断として行われたことが国会質疑で明らかになりました。新型コロナウイルス対策で大事なことは、専門家の知見や科学的根拠に基づいて正確な情報をしっかりと提供し、感染拡大を予防する行動が取れるようにすることであり、苦境に立つ国民生活を守り、検査・医療対応の体制強化のために思い切った予算措置をとることです。

 ところが、政府が決定した緊急対応策の第二弾は、今年度の予備費の範囲内にとどまるもので、今の深刻な危機に対応したものとはなっていません。フリーランスの皆さんが、仕事の減少は収入減に直結するという悲痛な叫びを上げる中、当初、対応は難しいと言っていた政府も、日額四千百円の休業補償を緊急対応策に盛り込みました。しかし、これは日額最大八千三百三十円という、それ自体不十分な会社員などへの補償の更に半分程度の水準です。余りにも不十分です。

 安倍総理、なぜ日額四千百円なのでしょうか。安倍内閣はフリーランスの働き方を推奨してきたわけですから、更に引き上げることを検討してはいかがですか。この日額四千百円の補償は、休校要請に応えた場合に限られています。しかし、日本俳優連合、日本音楽家ユニオンなどは、声明で、政府の要請に沿ってイベント中止によるキャンセルを受け入れてきたが、生きる危機に瀕する事態だと訴えています。フリーランス、自営業者、演劇、音楽関係者の生活が支えられる給付制度にするべきではありませんか。総理、お答えください。

 新型コロナウイルスによって今浮き彫りになっているのは、住民の健康と暮らしを守る地域と自治体の力がどれだけ備わっているかです。安倍総理の一斉休校要請で、放課後児童クラブ、いわゆる学童保育の現場は混乱を強いられています。長期休暇に準じた開所に対応するため、職員の手配と費用の確保に関係者は奔走しています。

 さいたま市内のあるクラブでは、開所の鍵開けなどの仕事は非常勤職員には任せられないため、常勤職員が朝から出勤しなければならない。しかし、職員が不足していてシフトが組めない状況です。また、別のクラブでは、朝七時半から開所して保護者から子供を預かり、学校の受入れが始まる時間には学校に送っていく、通常の常勤職員体制では手が足りないという状況です。総理、常勤職員を始め職員を確保するための支援が必要ではありませんか。

 民間クラブでは更に深刻です。ある市の民間学童連絡協議会では、春休み以前の開所に対して、保護者の皆さんに一日千円の追加負担をやむなくお願いすることを決めたそうです。勤務時間数が相当に増える、人件費中心に試算したが、実は千円でも足りないということでした。総理、民間クラブや保護者にこうした苦労をさせてはならないと思いますが、いかがですか。

 これだけ放課後児童クラブに頼りながら、地方分権改革の下、全国どこでも子供の受ける保育内容を最低限保障するための職員の配置基準を引き下げてきた安倍内閣の責任が問われています。ただでさえ忙しい業務は過酷になり、職員の確保は一層困難となっています。この際、改めるべきではありませんか。常勤職員の増員を含む人件費、水光熱費、マスクや消毒液の確保などの費用は全て国の責任で保障すると明確に約束するべきではありませんか。

 以上、総理の答弁を求めます。

 新型コロナウイルスに対する公衆衛生、感染症対策の体制拡充が喫緊の課題となっています。感染症指定医療機関の六割が公立病院であり、地域の感染症対策にとって重要な役割を持っています。感染者がこれ以上に増えれば感染症スタッフの確保が追い付かず、受け止め切れるかどうかというのが自治体関係者の思いです。

 そこで、総理にお聞きします。自治体リストラの推進をやめて、地域の公衆衛生、感染症対策の体制づくりを進めるべきではありませんか。高市総務大臣は、二月の予算委員会で、公立病院は最後のとりでと答弁されました。総理、感染症対策で重大な危機的状況に直面するときに、公立・公的病院の再編統合はやめるべきではありませんか。

 次に、地方交付税法等の改正案についてです。安倍政権による地方税、消費税増税が地域の景気を後退させ、新型コロナウイルスの影響によって更に深刻化する事態が進行しています。こうした中で、地方自治体の役割が求められています。国は地方の財源確保に対する責任を果たすべきです。

 現行の地方交付税法は、地方の財源不足が一定規模を超え、それが続くのであれば、制度の改正や法定率の引上げを行うとしています。地方財源の不足はもう二十五年連続していますよ。ところが、安倍内閣は、法定率の抜本的な引上げを行わず、財源不足は国と地方で折半して賄うというやり方を続けています。法定率を抜本的に引き上げるべきではありませんか。

 今、何より必要となるのは、地域を支えるマンパワーであり、自治体職員の増員です。人件費を削れば交付税の算定が有利になる仕組みを廃止し、自治体の人員確保を後押しする交付税の仕組みに転換すべきではありませんか。

 以上、総務大臣の答弁を求めます。

 最後に、かんぽ生命不正販売問題について総務大臣に質問します。多くの利用者に被害が広がっています。政府には、日本郵政に義務付けられている金融のユニバーサルの維持が重大な事態となっているという認識はありますか。失った信用を取り戻すためには、経営責任を明確にした原因の究明、利用者の立場に立った損失の復元が必要です。日本郵政グループにその責任を果たさせるために政府はどのように是正させていくのですか。

 この不正販売問題を取り上げたNHK番組の内容に対して、森下俊三現経営委員長が批判、関与した疑惑が浮かび上がっています。放送の自主自律に係る大問題です。NHKと日本郵政グループ間の書簡、経営委員会の議事録全文を直ちに公開することが必要ではありませんか。

 以上、答弁を求めて、質問を終わります。

 

【安倍晋三内閣総理大臣】

 伊藤岳議員にお答えをいたします。フリーランス等への支援策についてお尋ねがありました。今回の臨時休校によって仕事を休まざるを得なくなった保護者の皆さんについては、新たな助成制度を創設することで、正規、非正規を問わず、休暇期間中の所得減少に対する手当てを行うこととしております。フリーランス等の方々は様々な形態があると承知していますが、雇用者とのバランスを踏まえ、業務委託契約等を締結している方については、第二弾の緊急対策により、この助成制度の対象とすることとしております。その際の補償額の水準については、これらの方々の働き方や報酬が多種多様である中で、迅速に支援を行う必要があることや、非正規雇用の方への給付とのバランスも考慮し、一日四千百円を定額で支給することとしています。

 また、フリーランスの方々も含め、感染拡大によって休職や休業に直面し、生活に困難を生じている方については、返済免除要件付きの個人向け緊急小口資金の特例を創設し、生活立て直しを支援いたします。さらに、全国の中小・小規模事業者の皆さんにしっかりと事業を継承していただけるよう、個人事業主を含め、実質無利子、無担保の融資を行うなど、総額一・六兆円規模の強力な資金繰り支援を行ってまいります。

 休校要請に伴う放課後児童クラブへの支援についてお尋ねがありました。今回の休校要請に際して、共働き家庭など留守家庭の小学生を対象とする放課後児童クラブについては、感染の予防に留意した上で、原則として、引き続き開所いただくこととし、長期休暇などに準じて午前中から開所をお願いをしているところです。その際、放課後児童クラブの運営に当たって必要となる人材を確保するために、小学校の教職員にも協力をお願いするとともに、人件費を含め追加的に発生する経費については全て国が負担をすることとしているところです。引き続き、現場の実態をよく踏まえながら、国として必要な支援を行ってまいります。

 放課後児童クラブの職員の配置基準についてお尋ねがありました。放課後児童クラブに従事する者の資格と員数については、生徒数の非常に少ない学校などにおいて放課後児童クラブの人材確保が困難となるといった地方からの要請を踏まえ、さきの通常国会で成立をした地方分権一括法において、従うべき基準から参酌すべき基準に変更し、地域の実情に応じた運営を可能としたところです。同時に、サービスの質もしっかりと確保するという観点から、職員に対する研修や処遇改善等の取組を支援しているところです。

 新型コロナウイルス対策に伴う放課後児童クラブの費用負担についてお尋ねがありました。放課後児童クラブについては、感染の予防に留意した上で、原則として、引き続き開所いただくこととしておりますが、その際の人件費や水道光熱費、マスクや消毒液など、追加的に発生する費用については、全て国が負担することとしております。さらに、マスクの確保については、需給両面からの対策に取り組んでいるところです。

 公立・公的病院の再編についてお尋ねがありました。少子高齢化による人口減少や厳しい財政状況の中でも、各自治体では地域の感染症対策にとって重要な役割を果たしている感染症指定医療機関の整備など、その体制確保に取り組んでいただいており、国としても引き続き必要な支援を行ってまいります。

 また、地域医療構想は、地域の医療ニーズに合わせ、効率的で質の高い地域医療提供体制の確保を目指し取り組むものですが、地域の医療機関が担うべき役割や在り方などを機械的に決めるものではありません。公立・公的医療機関については、ほとんどの感染症病床を担い、感染症対策において重要な役割を果たしていただいていると承知しております。このような機能や役割も含め、それぞれの地域において必要とされる医療提供体制の議論を深めていただきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

 

【高市早苗総務大臣】

 伊藤岳議員からは、まず法定率の引上げについてお尋ねがありました。令和二年度の地方財政対策においては、前年度を〇・七兆円上回る一般財源総額を確保する中で、地方交付税については〇・四兆円増の十六・六兆円としております。法定率の引上げについては、国、地方とも厳しい財政状況であることから、容易ではございませんが、今後とも、法定率の見直しなどによる交付税総額の安定的確保について粘り強く主張し、政府部内で十分に議論をしてまいります。

 次に、人件費の交付税算定についてお尋ねがありました。地方交付税の算定においては、これまで職員数削減率などの指標を用いて行政改革の取組を算定に反映してきました。令和二年度においては、児童虐待防止対策の強化を進めていることや技術職員の充実を図ることなどを踏まえ、職員数削減率及び人件費削減率を用いた算定を廃止いたします。また、令和二年度地方財政計画において、職員数を増加した上で、地方交付税の算定においても単位費用の積算に職員数の増を反映しています。

 次に、日本郵政に義務付けられている金融のユニバーサル維持への認識についてお尋ねがございました。今回、日本郵政グループが顧客本位のサービスを提供できていなかったことは大変残念です。こうした中にあっても、金融を含む郵政事業は、国民生活に必要不可欠なユニバーサルサービスとして、今後も全国で安定的に提供され続けることが重要であり、日本郵政グループにおいて健全な経営に努めることにより、その責務を果たしていくことが必要です。日本郵政グループには、顧客第一の基本に立ち返り、不利益を受けた顧客の権利回復や再発防止策を速やかに実施するとともに、ユニバーサルサービスの確保を含め、健全な経営に取り組んでいただきたいと考えています。

 次に、日本郵政グループに責任を果たさせるための是正についてお尋ねがありました。総務省は、昨年十二月二十七日、日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社に対し行政処分を行い、一月三十一日には業務改善計画の提出を受けました。業務改善計画には不利益を受けた顧客の権利回復や再発防止策などが含まれており、業務改善計画を着実に実施することで、失われた国民の皆様の信頼を一歩一歩着実に回復していただくことが何よりも大事と考えております。今後、日本郵政グループからは、業務改善計画の進捗状況などについて、四半期ごとの定期的な報告が行われることとなっており、総務省として、日本郵政グループがユニバーサルサービスの確保を含む責務を適切に果たすことができるよう必要な監督を行ってまいります。

 最後に、NHK経営委員会の議事録の公開についてお尋ねがございました。NHK経営委員会の議事録の公開については、経営の透明性を確保する観点から、放送法第四十一条に基づき、経営委員会の定めるところにより、作成、公表を行うこととされています。本件については、昨年十月の経営委員会で議論が行われ、議事経過を公表し、その内容を議事録に反映したと承知しておりますが、国民・視聴者の皆様の受信料で成り立つ公共放送として透明性確保は重要であり、NHKにおいて説明責任を適切に果たしていただきたいと考えております。