議事録

2020年2月12日 参議院国際経済・外交に関する調査会(海洋資源・エネルギーの確保など海洋の利活用及び開発の在り方〈水産資源の管理と保護〉について)

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。三人の参考人の皆さん、今日はありがとうございました。

 時間の関係もありまして、今日は、沿岸漁業に絞って、小松先生の貴重な捕鯨の問題もありましたけれども、沿岸漁業に絞ってお聞きをしたいと思います。

 今もお話がありました漁業権の問題についてですが、小松参考人は漁業権ということについて古いというお言葉があったと思いますが、国連の例えば食糧農業機関、FAOなどが出した提言には、小規模、伝統的漁業への特別な配慮の必要性というのが明記をされていますが、この提言との関係で、この漁業権という、先ほど古いという話がありましたけれども、ちょっとこれは矛盾するんじゃないかと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

 

【小松正之参考人】

 小規模漁業に配慮する、それから島嶼国の漁業ですね、同じようなものですけれども、これは国連の至る所にそういう決議があります。

 ただ、やっぱり重要なのは資源の持続性でありまして、まず持続性を確保して、どのぐらい捕れるのかということに配慮、一番の考慮点、配慮点を置くべきであります。それから、小規模な漁業者にとっても、さっき言ったような許認可ですね、許可制でもって、本当にやる気のある人と、それから、何というんですか、今後とも、やる気のある人と将来やる人には適合すると思います。

 それから、全漁連が反対しているのは、ITQを導入するとむしろ、何というんですか、私有化が進むと、資源の私有化が進むということで反対していますけれども、韓国だとかアメリカだとか、それから先進国のノルウェーだとかもそうですけど、沿岸漁業の移動性のないアワビだとかサザエだとか海藻類の方が、むしろその漁業権よりは個別漁獲割当ての方がしっくりなじむというケースがあって、それで沿岸漁業も、そっちの方がむしろ力強くやる気のある人を中心に地元の人が残っていくと。

 問題は、ノルウェーの場合は、漁業者が今度、沿岸も含めてもうかり過ぎて、オスロに出ていって今度は別の職業に就きたいというようなところがありまして、加工だとか地域の人は、漁師さん方に出ていくのを待ってくれと止めているような状態。これは、まあ言ってみればうれしい悩みですけど、そういううれしい悩みのような状態にやっていきたいと。

 簡単に言うと、大胆に言うと、このまま漁業権を突っ走っていって、あと十年、二十年たったらどうなるかといったら、多分悲惨な状況になると思います。結局、漁業権で何が起こってきたかといったら、衰退、衰退、衰退なので、もう私は、もう変える、遅いくらいだと。外国の考え方を一回やってみろと、一年でも二年でもですね、と思います。

 

【伊藤岳議員】

 御意見ありがとうございます。私自身としては小規模漁業の今後が非常に心配になっておりましてお聞きしましたが、国連は、二〇三〇年までの持続可能な開発目標、SDGsの実現にも貢献するとして、二〇一八年には小農の権利宣言も採択しましたし、家族農業の十年もスタートしました。

 国連のCFS、世界食料保障委員会専門家ハイレベルパネル報告を見ましても、世界の漁業の九〇%が小規模漁業だと。国及び地方機関は、適切な計画、また権利と資源の承認と割当てについて、小規模漁業者への支援を特に重視すると打ち出して、小規模漁業強化に国連自身としてはかじを切っているような感じがいたします。

 先ほど小松参考人にお聞きしたので、今度は片野さん、さかなクンに、参考人にお聞きしたいんですが、こうした国際的な視点から、例えば大西洋マグロのときのような、資源を毀損する大規模な漁業から沿岸漁業を守るということが重要だと思いますが、こういう国際的な視点から御見識があれば伺いたいと思いますが。

 

【片野歩参考人】

 その沿岸漁業なんですけど、例えば北欧の漁業に当てはめると、北欧の漁業も中心は沿岸漁業で、小型の漁業が主体なんですね。

 先ほど、私、プレゼンで申し上げましたけれども、特に魚の資源が少ないときは、とにかく沿岸漁業を守る、沿岸漁業に漁獲枠の配当を多くする。

 先ほど来FAOの話がありますけど、そうなっているんで、ですから、北欧型というか、特に漁獲枠制度をがっちりやるということは、沿岸漁業の方にはプラスなことはあってマイナスのことは全然ないということをまず理解していただきたいのと、あと、一番大事なことは何かというと、資源の持続性なので、資源が持続性であれば、持続的であれば沿岸だろうが沖合だろうがうまく回転するんですが、今のやり方ですとどうしてもやっぱり、その漁業者の方々にお任せすると、漁業者はやっぱりたくさん捕るというのが仕事なので、どうしても捕り過ぎが発生しやすいというような問題が発生していると思います。ですから、繰り返しますけど、北欧型とか海外の資源管理というのは沿岸にとても優しい仕組みになっております。以上です。

 

【さかなクン参考人】

 先ほども申し上げたんですが、アフリカのセネガルに伺ったときに、タコつぼでタコ、タコ資源を増やす、そして日本のカキ垂下式養殖を取り入れてカキの増加を図ることを実際セネガルの方々が行われていて、実際に本当に増えてきていることも見せていただきました。ですので、日本も本当に、海外で行われていること、例えば、今日、片野先生にも学ばせていただきました、目合いを大きくして小さいお魚を大切に守る取組とか、ちゃんと資源量をしっかりと科学的に見て、小松先生学ばせていただきましたように、科学的な視点で水産資源を守るということは本当に大切だなということを強く今日は学ばせていただきました。

 また、私、千葉県の館山市に暮らしているんですが、館山では、様々な漁法が行われている中、定置網漁がたくさん館山市の各地で行われています。定置網漁は、一度魚が網に入ってきても、群れ全体の二割ぐらいが網の奥まで進んで、その二割から三割ぐらいの魚を漁師さんが毎朝漁獲されているということでありまして、非常に定置網漁というのは、魚を捕り過ぎず、そして、広大な網ですので稚魚が育成する場にもなったり、非常に環境に優しい漁法と言われています。

 しかし、そんな優しい漁法と言われる定置網でも、漁師さんがお仕事をどのぐらいされているかというと、実はもうほぼ毎日、館山市では市場が休みの日というのが第一と第三の土曜日しかありませんので、実質月に二回しか休みがありません。

 ですので、漁師さんはそれだけ毎日私たちにおいしい魚を提供するために頑張っていらっしゃるんですが、漁師さんが頑張ってくださると、努力量が増えますと、水産資源もちょっと心配なところもありますので、できましたら海も漁師さんももう少し休んでいただく時間をつくっていただけたらというのが個人的に思うところであります。漁師さんにはちょっと怒られそうなんですけど。

 

【伊藤岳議員】

 片野参考人にもう一つお伺いします。先ほど、ノルウェーの沿岸漁業を守るという非常に貴重なお話をお聞きしたんですけれども、ノルウェーのように漁業者自身が規制方法やIQを決める、若しくは最低でも漁業者が同意するということが私は必要だと思うんですが、その点いかがでしょうか。

 

【片野歩参考人】

 まさにおっしゃるとおりで、もちろん同意することが大事で、そのためには正しい情報を提供すると皆さんは最終的には分かります。

 あと一つ付け加えで、沿岸漁業に北欧型の資源管理をやって成功した例が、まさに小松先生が新潟でホッコク、甘エビをやった例がいい例で、沿岸の籠漁、甘エビの籠漁に対して、船に漁獲枠を割り当ててやったら結局小さいエビを捕らなくなったり、夏場のとき、多分、禁漁期間を設けていたときにはそれが意味がなくて、取り払って、好きなときに甘エビを捕るようになったら、甘エビのサイズもでかくなって、あとは、その水揚げ金額も大幅に増えて黒字を実現しているとか、実際やってみると、問題点というか、そんなに懸念することがないというのがよく見られますし、是非、ホッコクアカエビの新潟の籠漁のケースをちょっと調べていただくと安心されるかなというふうに私は思います。以上です。

 

【伊藤岳議員】

 時間になりました。ありがとうございました。質問を終わります。