議事録

2020年2月5日 参議院国際経済・外交に関する調査会(我が国の海洋政策について)

【伊藤岳議員】

 日本共産党の伊藤岳です。海洋基本法が制定をされて十二年以上が経過し、海洋をめぐる情勢にも新しい事態が生じています。海洋をめぐる様々な問題が顕在化する中で、海洋政策の枠組みをつくり、対応することが求められていると思います。

 新型コロナウイルスの感染の深刻な広がりも、海洋をめぐる情勢の新しい事態の一つです。海洋を通じた人、物の移動の中で、いかに感染を防ぐかは、大きな課題となっているんではないでしょうか。新型肺炎感染の男性が乗船したクルーズ船、横浜港にというニュースが一昨日配信され、昨日は、クルーズ船、三千五百人検疫、着岸せず船内待機と報じられました。先ほど行われた加藤厚生労働大臣の会見では、十人の感染を確認、潜伏期間を考慮して、今日を起点とし、十四日間を念頭に船内にいていただくとお話をされていました。東京新聞によると、医師や看護師を含む十数人体制で乗船し、健康状態の確認を進めていると報じていますが、クルーズ船の中に今、検疫官は何人入っているのか、今日御出席の参考人、分かる方いらっしゃいますか。

 

【鶴保庸介会長】

厚生労働省はいませんよね。

 

【伊藤岳議員】

 はい、分からないということですね。海洋基本法の第三期海洋基本計画の中で、港湾BCP、感染症の蔓延などの危機的事象が発生後に行う具体的な対応、また、平時に行うマネジメント活動などを示した文書を策定することを決めていると思います。

この港湾BCPの中には、検疫官の体制などは含まれてはいないのですか。

 

【石井昌平政府参考人】

 お答え申し上げます。手元にはちょっと資料がございませんので、お答えすることが今難しい状況でございます。

 

【伊藤岳議員】

 検疫官の体制は含まれていますか、このBCPの中に。

 

【石井昌平政府参考人】

 恐れ入ります。その体制について、我々としては分かりません。

 

【伊藤岳議員】

 これは第三期海洋基本計画の中に書かれていることですから、是非これはしっかり調べて、対処していただく必要があると思います。新型インフルエンザ、また二〇一四年のエボラ出血熱など、検疫官の不足が指摘されてきました。

 当時の報道を見ると、成田、横浜港などの重点拠点に検疫官を集中させて水際検疫を強化、一方、貨物船は検疫強化港以外の入港が認められたため、拠点以外のチェック体制が手薄になる事態が生まれたと報じられています。

 今回の新型コロナウイルスの事態も踏まえて、検疫官の大幅増員が必要ではないかと思います。また、総合海洋政策推進事務局に厚労省からの派遣をしていただく必要があるのではないかと思います。港湾BCPの充実強化を求めておきたいと思います。

 横浜港客船入港予定では、今回の問題になったダイヤモンド・プリンセスが今後、二月だけでも四回の入港の予定となっています。今回の感染源となっている地域を航路に含むクルーズ船は二月だけでも日本にどれぐらい寄港することになっていますか。

 

【鶴保庸介会長】

 分かる範囲でお答えください。国土交通省でしょうね。

 

【石井昌平政府参考人】

 現時点、手元に資料がございません。

 

【伊藤岳議員】

 そうですか。国際コンテナ・バルク戦略港湾政策、先ほど説明がありましたが、貨物船の往来も増加し、また大型化をしていると思います。これは、海洋基本法に海洋産業の振興及び国際競争力の強化が盛り込まれ、国策として港湾、物流基盤の強化が急速に進めてきたからだと思います。

 まあ、これは聞いても、じゃ分からないということだと思いますけれども、貨物船の今後の入港予定なども、是非調べて対処をしていただきたいと思います。このままでは過去同様、いや、過去以上に検疫官不足が深刻な事態を招くことになるのではないかと思います。

 海外渡航者は年々増加しています。今年はオリンピックも控えています。国際コンテナ・バルク戦略港湾政策の下、貨物船の往来と大型化も年々進んでおります。それなのに、検疫所や感染症研究所の予算が増えてはいない。検疫体制の抜本的な強化を是非求めていただきたい。港湾BCPの充実を改めてお願いをしておきたいと思います。

 次に、海洋ごみの問題について伺います。海洋基本法に基づいて二〇一八年に閣議決定された第三期海洋基本計画の海洋環境の維持・保全の項では、マイクロプラスチックを含めた海洋ごみの削減に向け、回収処理や発生抑制対策と書いてありますが、少し具体的に説明を願えますか。

 

【小野洋政府参考人】

 海洋プラスチックごみ問題でございますけれども、その解決のためにはグローバルな取組が必要でございますけれども、いろんな対策の中でまず発生抑制というのがございます。これはやはり元を絶つということでございまして、例えばワンウエーのできるだけ使い捨てのプラスチックで絶対に必要だというもの以外については削減していくという取組でまず元を絶つということがございます。

 それから、ごみとして出てきたものについては、できるだけリサイクルをすると。リユース、リサイクルをして何回も使っていくと。それでもまた出てきたものについては、廃棄物処理をきちっとやってごみが海に出ないようにすると。それでもまた海に出たものについては、できるだけその海岸に打ち上げられたようなもの、あるいは海底に堆積しているものを回収するというような様々ライフサイクル全体にわたる対策を推進するということでございます。

 

【伊藤岳議員】

 第三期海洋基本計画のこの項の説明の中で、一次的マイクロプラスチックの発生抑制対策の中で、米国など諸外国が製造や販売を規制しているのに対して日本は自主規制だと書かれていますが、これは間違いないですか。

 

【小野洋政府参考人】

 はい。間違いございません。

 

【伊藤岳議員】

 ここにも見られるように、日本のプラごみの発生抑制対策は企業に対する規制が私は甘過ぎると思います。私、先日、産業廃棄物処理業者の埼玉県の業者を訪ねました。この業者さんは、欧州では、プラごみは自治体では回収、焼却していません生産から回収まで企業が責任を持つ、これが明確です。プラスチックの生産者、使用者の企業責任を強調しておられました。

 このプラスチックの生産者、使用者の企業責任を徹底していくべきだと思いますが、今後の予定や取組などいかがですか。

 

【小野洋政府参考人】

 生産者の責任でございますが、日本におきましても、例えば容器包装リサイクル法というのがございまして、容器包装のプラスチックについては、生産者、企業の責任も加えて、そのリサイクルを図るという取組がございます。今後、そのリサイクル法の適正な運営というのは更にやっていきたいと思います。

 さらに、レジ袋につきましては、今後有料化、まあお金を取るということで削減を図っていくというようなこともございます。さらに、資源循環戦略というのを作成いたしておりまして、様々な手法を駆使してプラスチックごみの削減を図っていくということでございます。

 

【伊藤岳議員】

 今レジ袋の有料化などの話がありましたが、いずれにしても僅かです、割合からいうと。プラスチックを大量生産し、大量に焼却し続けている国の戦略の大本を切り替えることなしには、この海洋ごみの問題、プラごみの問題は永遠に解決しないと思います。

 是非、企業責任、生産者責任を厳しく問うことを施策に盛り込んでいただくことを強く求めて、質問を終わりたいと思います。

 

(以下参考人に対する質疑)

 

【伊藤岳議員】

 山田参考人、奥脇参考人、今日は貴重な話をありがとうございました。日本共産党の伊藤岳です。

 尖閣周辺の中国の領海侵犯、過去最多という話を先ほど政府からも聞きましたけれども、力による現状変更は断じて許されないと思います。私たち日本共産党も中国に対して厳しく抗議し、是正を求めているところでございますが、今日は海洋基本法に関わっての議論ということでもありますので、奥脇先生の方から、海洋基本法の五十九条の御提示が改めてありました。ごめんなさい、国連海洋基本条約のこの五十九条ですね、五十九条に基づいて、この尖閣周辺の利害関係の対立をどう具体的に対処していくのか、これまでのお話とかぶるところもあるかと思いますけれども、お二人の参考人に是非御意見をお聞きしたいと思いますし、また関連して、諸外国の例で、こういう紛争解決という点で先進的な例などありましたら、お伺いしたいと思います。奥脇参考人、山田参考人、両方でお願いいたします。

 

【奥脇直也参考人】

 先ほどの五十九条というのは領有権問題とは全く関係ない条文なので、EEZ、時々そういう、何というんですか、海洋保護区にするとか、共同漁業水域にしたらどうかとか、資源は分けられるんで、領土は分けられないけど資源は分けられるとか、いろいろそういう提案はあるんでしょうけれども、やはり基本に領土問題があるときにはそういう妥協というのは非常に難しいと。基本的にやはり領土問題を解決するということが重要なんだろうと、こういうふうに思っています。

 領土問題の解決ということでは、東南アジア諸国で、最近幾つかそういう島の領有をめぐる国際裁判、これを国際裁判で解決しようと、こういうようなことが実際にICJに付託されるというようなことも起こっていますが、それは両方がある意味で裁判で片付けましょうと、こういうことで合意するわけですから、そういう合意ができれば尖閣も竹島も日本は裁判に持っていったらいいと、こういうふうに思います。それが唯一平和的に解決する手段なんだろうと、こういう気がしています。

 しかし、残念ながら、中国はそういう提案、あるいは韓国もそういう提案に一切乗らないわけですから、それを無理やり乗せる手続があるかどうかというところが最大の問題で、国際社会というのは基本的にはそういう強制管轄を持つ、義務的管轄を持つ裁判所というものは存在しないというところで、たまたまフィリピンと中国との南シナ海仲裁は、領土問題を外してフィリピンが持っていったために管轄権あると、こういう話で処理がされたわけですけれども、しかし、結局それも、両当事者ともその判決はそれはそれとしてということで、それを尊重しているようには見えないわけで、やはり両当事者が合意してやっていかない限り領土問題の解決、裁判解決というのはできないのではないか、こういうふうな気がしています。

 

【山田吉彦参考人】

 領土問題において、どうしても土地の問題に目を置いてしまいます。ですが、北方領土にしても尖閣諸島周辺にしても、周辺の海域、悲劇は周辺の海域で起こっているというのが現状です。海域の管理ということが私は最も重要であると考えている中で、やはり日本の主張する領海、そして排他的水域をしっかりと守るという意思表示、これが曖昧であると、曖昧だと他国に感じられるような状態では行動はできないと。

 尖閣諸島周辺海域にいいますと、中国は大漁船団を送り込み、それを中国中央電視台で世界中に配信し、あたかも中国の海域であるような喧伝をしている。そして、国際的な意思を領土問題が存在しているように持っていってしまった。

 という中で、私どもとしてはしっかりと、日本人が守る意思、そして日本人が使える海域にしていく、漁業ができる、例えばマグロの、クロマグロの産卵場にも近いということもありますし、マグロ漁等を安定してできるような環境づくりを日本としては水産庁も含めやっていく必要があるんだと思います。

 そのときに、今、台湾と日台漁業取決めというのがあります。お互い認め合う環境の中で、台湾は今具体的に尖閣諸島の領土の主張は政府に対してはしてこないと。これは約束を守られている中で、台湾、日台漁業取決めというのが結ばれています。日本側としても、例えば台湾との話合い、あるいは隣国に対しても、漁業を行う、そして漁船を守るという体制を取っていくのを見せていくことが重要だと思っています。

 事例に関しましては、先ほど奥脇先生がお話しされていたことの中に一つ、ペドラブランカ島というシンガポールとマレーシアが係争した例があります。ただし、これはおっしゃったとおりに、両国の合意の下で白黒付けようとしたわけですが、結果的にけんか両成敗的な部分がありまして、島自体はマレーシアのものになったんですが、それが近いということなんですが、付随している、あっ、島自体はシンガポールのものになったんですが、付随している小さな島は管理していないということで、マレーシアのものにしました。隣り合っている島が、大きい島はシンガポールだけど小さい島はマレーシアということになったために、海域を分けることができなくなりました。結果的に両国ともデメリットも負ってしまうということになりました。

 国際法に頼るということは、多分にけんか両成敗的な分野というのが出てきます。そして、必ずしも守る国と守らない国があるというのはフィリピンと中国の事例にも出てくるようなことですので、国際法に訴えかけて白黒付けてみるというのはひとつ日本としても面白い、面白いといいますか、非常に重要な話だと思うんですが、それに必ずしも、その後の対応も考えておかなければいけないことになるかと思います。

 

【伊藤岳議員】

 歴史的に見て固有の領土であるということをしっかり主張していかなきゃいけないと思います。

 山田参考人にちょっと別な問題でお聞きしたいんですが、先ほど日本の外航商船の話がありました。国際コンテナ・バルク戦略港湾政策の下で、この隻数などの変化は分かるんですが、往来といいますか、往来の増減ですとか艦船の大型化ですとか、その辺の変化などを教えていただければと思いますのと、それと、先ほど私も質問させていただいたんですが、前段で、今回のあのクルーズ船の問題も受けて、検疫体制という問題で御私見があればお聞かせいただきたいんですが。

 

【山田吉彦参考人】

 御指摘、タンカーよりもむしろばら積み船等、日本船が運ぶ量というのは非常に増えてきています。実は、元々、タンカーあるいはLNG船というのは日本船が比較的ありました。圧倒的に少なかったのは、コンテナとバルクキャリア、ばら積み船ですね。例えば、鉱物、鉄鉱石を運んでくるような船はほとんど外国船だったのを日本にシフトしていくという中で、以前よりもかなり日本の船が運んでいる積荷の量というのは増えております。これは圧倒的に増えております。その中で、通行量に関しましてはまだまだ日本船の割合というのは低くなってしまっているのも現状だと思います。ほとんどの、海の世界は旗国主義、あくまでも船籍を持った国が主体的に動きます。その中で、やはり船の責任を持つという意味でも、日本船が増える戦略というのが必要になってくると思います。これは国際的な流れの中でもありますが、やはり自国が責任を持てる海運体制、これは有事の際にも自国の船は自国が守れる体制というのが必要になってくるんだと思います。自国の船でありながら我が国が守れないというのでは、日本に運んで、日本に積荷を運んできてくれる国々の方に対しての日本の国際的な責任を果たしていないんではないかと考えます。

 もう一点、今回の洋上のこの事例というのは、もう本来であれば十分に準備をしておかなければいけなかった事例なんですね。実は、例えばロシアから小樽に入ってくる船の中でインフルエンザが蔓延していたということがありました。そのときはもう入国拒否したという事例もありました。検疫体制、ただ、今後、やはり三千人規模の洋上検疫体制、あるいは着岸してしまったらどうなるのか等というのが十分に対処しなければいけない。さらに、例えば北朝鮮から漁船が大分流れてきています。多くの生存者がいても病気を持っているという可能性がかなり高くなっている中で、やはり日本の検疫体制は必要であると思います。特に洋上、大量に船は一度に入ってきます。これ、対馬の事例でもあるのですが、対馬に韓国から一船でまとまって来ると検疫や入管手続が申し訳ないんですがおざなりになっていないかと私は感じておりました。やはり、フットワークのいいチーム、要は何か事があったときにすぐに入管でも検疫でも動かせるようなチームというのを常に準備しておかなければ、日本は海洋大国なので港も多い、しかもクルーズ船を各港が全部誘致してきましたので、今横浜であったことがあした神戸である、あるいはもっと小さい港であることも十分考えられる。清水であったり、当然、那覇はもっとリスクも持っています。となると、動けるようなチームというのを常につくっておかなければいけないと思います。

 

【伊藤岳議員】

 事前に準備をする、しておかなきゃいけなかったという御指摘、ありがとうございました。時間が来ました。ありがとうございました。以上で終わります。