議事録

2019年12月5日 参議院環境委員会(再生可能エネルギーの促進と、メガソーラーの乱開発規制)

【伊藤岳議員】

日本共産党の伊藤岳です。冒頭、桜を見る会について一言申し上げます。税金を使った買収だったのではないかという疑惑が次々に明るみとなっています。政府・与党は、野党が求めている総理出席の予算委員会の開催に応じず、閉会になだれ込もうとしていますが、これは断じて許されないということを強く指摘をしておきます。

質問に入ります。太陽電池発電設備、メガソーラーについてお聞きします。再生可能エネルギーの電力需要の中に占める割合を飛躍的に促進していくことは、日本共産党としても一貫した方針、政策です。

ところが、気候変動を背景にしたこの間の一連の台風によって、太陽電池発電設備、メガソーラーの崩壊事故が埼玉県内でも連続するなど、再生可能エネルギー促進に影を落とし始めています。

経産省、2018年度、2019年度における太陽電池発電設備の被害状況のうち土砂崩れによる被害は、2018年度が11件、2019年度が7件、間違いないですか。

 

【河本経済産業省大臣官房審議官】

お答えいたします。経済産業省では、電気事業法に基づきまして太陽光発電の設備につきましての事故報告を受けておりますけれども、今先生御指摘のありましたとおり、土砂崩れによります事故は、そのうち2018年度は11件、2019年度は現時点で7件ということでございます。

 

【伊藤岳議員】

埼玉県で発生した一つの事故事例を紹介します。資料1を御覧いただきたいと思います。

越生町で、先日の台風19号により、メガソーラー建設現場が崩壊をしました。事業者が、斜度30度まではないが急斜面を森林伐採して、保水力を失った斜面の土砂が下の道路に崩れ落ちたものです。台風が来る前にも、一メートルを超える巨大岩石が崩落していました。ここは土砂災害防止法の定める土砂災害警戒区域に挟まれた地域でもあります。住民の皆さんは、土砂や岩石が崩壊した道路は通学路だ、一歩間違えばと、何でこんなところにメガソーラーを造るのかと話しておられました。

資料2に示しましたけれども、電気事業法による技術基準を定めた急傾斜地法で指定された斜度30度以上などの急傾斜地崩壊危険地域では、崩壊を助長し又は誘発するおそれがないように施設をしなければならないとしています。越生町の現場はこの指定区域ではありませんでした。

経産省、この越生町の建設現場のような、急傾斜地崩壊危険区域に指定されてはいないが土砂崩壊の危険性がある急傾斜地では、電気事業法による技術基準を見直して、発電設備の設置環境に応じて規制を強化すべきではありませんか。

 

【河本経済産業省大臣官房審議官】

お答えいたします。電気事業法に基づく電気設備の技術基準におきましては、人に危害を及ぼしたり、あるいは物に損傷を与えるといったようなおそれがないように、電気設備を安全に施設するということを求めております。しかしながら、今先生御指摘がありましたように、近年、自然災害の発生時に急傾斜地崩壊危険区域以外も含めました斜面に設置した太陽電池発電設備の崩壊事故、崩落事故等が起きているという状況を踏まえまして、経済産業省では、先般、太陽電池発電設備を斜面等に設置することによる土砂の崩壊、流出を防ぐための措置を技術基準等に新たに規定するという方針を関係の審議会にお示しいたしまして、その了承を得たところでございます。

今後、この方針を実行に移しまして、引き続き太陽電池発電設備の安全確保にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 

【伊藤岳議員】

是非規制強化急いでもらいたいと思います。

では、もう一つ事故事例を紹介いたします。資料3を御覧をいただきたいと思います。埼玉県小鹿野町で、2年前の2017年の台風により、メガソーラーごと土砂が崩壊した現場です。ここは事業者が農地整備で県に申請して、河川土手に土砂を受け入れて積み上げていきました。その後、県に申請せずに更に土砂を積み上げていきました。社長は同じですが、別の事業者がその軟弱地盤の上にソーラーを設置しました。そして、台風による大雨で、積み上げられた土砂が広範囲に崩れました。それほどの軟弱地盤だったわけです。また、この崩落によってせき止められた河川から越水をして、近隣の家屋が浸水被害にも遭っています。住民の方は、盛土で景観はすっかり変わってしまった、そしてこんな事故まで起きてし

まってと、悔しい思いを語っておられました。

昨年の自然災害を受けて、電気事業法による技術基準が一部改正をされました。太陽電池発電設備に係る技術基準については、支持物、発電設備を支えるものですね、その強度を、電気設備に対する一般的な技術基準に加え、太陽光パネルを支える支持物の安全性の観点から上乗せ基準が設けられ、地震や風圧などに対する安定と定められました。

それでも小鹿野町のような現場のような被害ケースも多発をしています。技術基準が太陽電池発電設備が維持されるかどうかという範囲にとどまっているからではないでしょうか。小鹿野町の現場は、発電設備を維持する支持物ではなく、発電設備を設置した地盤そのものが非常に軟弱でした。

経産省、軟弱地盤の崩壊、流出などで周辺の生活環境に支障を来す地域では、電気事業法による技術基準を見直して、発電設備の設置形態に応じて立地を規制若しくは禁止をするべきではないでしょうか。

 

【河本経済産業省大臣官房審議官】

お答えいたします。

先ほど、太陽電池発電設備を設置する際にとるべき措置について技術基準等に新たに規定するということを申し上げましたけれども、こちらは特に斜面である場合に限ったというわけではありませんで、今先生御指摘の軟弱地盤の場合も含めまして土砂の流出あるいは崩壊を防ぐということを求めるものであります。

太陽電池発電設備の設置の場所が多様化をしておりますので、そうした中で、設置場所やあるいは設置形態に応じてとるべき措置を明確化するという観点から、必要な検討を今後着実に進めてまいります。

 

【伊藤岳議員】

本来、太陽電池発電設備は再生可能エネルギーとして促進をされるべきものです。しかし、危険箇所で建設が進んで事故も続発をする、これでは住民合意、国民合意が築けずに、結局、再生可能エネルギーの促進が進まないことになってしまいます。

経産省のワーキンググループの会合では、太陽電池発電設備について、設置者や設置形態の多様化などを踏まえ、特化した新たな技術基準の整備を図る、2020年度に検討を進めるとなっています。

そこで、私は、以下、提案をしたいと思います。第一、急傾斜地における発電設備の設置については、急傾斜地崩壊危険区域に指定されていないが崩壊の危険性があるところでは規制を強化すること。第二、軟弱地盤上における発電設備の設置については、設置形態に応じて立地を規制若しくは立地を禁止すること。経産省、いかがでしょうか。

 

【河本経済産業省大臣官房審議官】

お答えいたします。太陽電池発電設備につきましては、火力発電あるいは風力発電のように、発電方式に特化した技術基準、これが現在存在をしておりません。一般的な電気設備に係る技術基準の中で関連規定が設けられているというところでございます。

先ほど申し上げましたように、今御指摘のあった点につきましては、まずは、その現行の電気設備に関する技術基準等におきまして、斜面あるいは軟弱地盤等に設置する際に取るべき対策について必要な措置を規定する予定でございますけれども、さらに、経済産業省といたしましては、太陽電池発電設備の設置者あるいは設置形態が多様化している状況等も踏まえまして、今後、太陽電池発電設備に特化した新たな技術基準というのを整備をするということにしておりますけれども、その中でも、いわゆる斜面あるいは軟弱地盤を含め

まして、設備を設置する際に設置者が取り組むべき対策、こちらにつきまして規定する方向で検討を進めてまいりたいと考えております。

 

【伊藤岳議員】

是非、今日紹介した事例も踏まえて見直しを進めていただきたいと思います。

自治体の先進的取組にも学ぶべきだと思います。埼玉県の日高市では、太陽電池発電設備の設置に係る条例をこの8月に制定しました。概要は、災害の発生の防止並びに良好な環境及び景観の保全のために保護すべき地域として特定保護区域を指定し、この区域においては事業の規模にかかわらず市長は同意をしないものとする。また、事業者は、事業を行うときには、市長に届出するとともに市長の同意を得るものとする。さらに、関係自治体との事前協議と届出を義務付ける、関係自治体と住民への説明も義務付けるというものであります。

大臣、この日高市の条例の市長の同意、また、事前協議と届出、住民説明の義務付け、これどう評価されますか。

 

【小泉進次郎環境大臣】

私も全国いろんなところへ行きますが、日高市といえば、クリ、ウド、ブルーベリーと、特に高麗川マロンというのは大変人気もあると聞いています。そういった日高市、また各自治体が、それぞれの地域の特性に応じて環境に配慮した適切な再生可能エネルギーの導入に向けて取り組むことは重要だと考えています。

環境省は、従前より、環境への配慮が適切になされるよう環境影響評価制度等に係る自治体担当者間のネットワークを構築をしていて、各自治体の取組について情報共有や意見交換を行っているところです。

 

【伊藤岳議員】

自治体の取組も重要ですが、このメガソーラーの乱開発の根本には政府が制定したFIT法があると私は思います。FIT法の固定価格買取り制度で事業計画の認定と再生可能エネルギーの促進はしますが、一方で、今日紹介したような乱開発を引き起こしているのではないでしょうか。

なぜなら、FIT法では、事業者の義務としているのは接続契約の締結、設備の持続的維持でありまして、関係自治体と住民との関係では、理解と協力に努力をするという努力義務にすぎません。事業者や企業に大変甘い法体系となっています。さきに紹介したような埼

玉県で発生した事故の根本的な原因も、ここに根源があると思います。

大臣、日高市の条例にも学んで、環境影響評価法で、太陽電池発電設備の設置において、特定の保護区域などでは大臣は事業に同意しないという意見を示すべきではないですか。

 

【小泉進次郎環境大臣】

太陽電池発電設備は、先般の政令改正によりまして、来年、令和2年の4月から新たに環境影響評価法の対象事業として追加されます。環境に著しい影響を及ぼすおそれがある事業に対しては、この環境影響評価法に基づく環境大臣意見の提出などを通じて、適正な環境保全措置が講じられるよう対処していく所存であります。

 

【伊藤岳議員】

電気事業法の技術基準で規制が及ばないところ、これは環境影響評価法で規制していくという環境大臣としての強い姿勢を是非お示しいただきたいと思います。そうでないと、何のための環境省なのかということになってしまうのではないでしょうか。

是非、周辺の生活環境に支障を来すおそれのある地域などの発電設備の評価においては、大臣がしっかり、是認できないという意見を表明していただきたいということを再度求めておきたいと思います。

繰り返しになりますが、再生可能エネルギーを飛躍的に促進していくことと住民の理解、合意というのは、表裏一体のものだと思います。日本共産党としては、再生可能エネルギーの電力需要の中に占める割合を2030年までに4割とする政策であります。ドイツは2030年までに65%、フランス40%などの目標を持っています。日本の2030年度までの22パーから24パーという目標は余りにも低いと思います。目標を抜本的に引き上げるべきだと思います。

その引き上げた目標の達成のためにも、地域共同、地産地消、地域分散型の方向でこそ、再生可能エネルギーの整備は進んでいくのではないでしょうか。そして、こうしてこそ、再生可能エネルギーが気候変動対策の主力となる、中心となる、パリ協定の2050年以降、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標に日本が貢献していく道が、私はここにあると確信をいたします。

是非そういう観点から施策を進めていただくように改めて強く求めまして、私の質問といたします。