【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
私はこの間、埼玉県内の民間保育園から声を聞いてきました。今日もたくさん傍聴に来られています。令和六年度、二〇二四年度、保育士を新規採用できたのは僅か一園だけでした。どこでも人材不足が深刻です。
こども家庭庁は、一歳児について、六対一を五対一以上に改善した場合、公定価格上の加算措置を行う一歳児配置改善加算をスタートさせました。ところが、この加算には要件が付けられていて、どこの園からも、園独自に加配せざるを得ず、負担を強いられているのに、なぜ更に要件を付けるのかと不満の声が上がっています。
辻内閣府副大臣に聞きます。
こども家庭庁として、一歳児の職員の配置基準の改定を目標にしているのか、それとも、保育士確保のハードルが高いので一歳児の配置基準の改定は困難だ、無理だとしているのか、どちらですか。
【辻清人 内閣副大臣】 伊藤委員御関心のその配置基準そのものの見直しをこども家庭庁としては目指しております。御指摘のように、一歳児の配置改善、五十数年ぶりに、この加速化プランにおいて、プラン期間中に六対一から五対一への改善を進めるとしていることを踏まえて、できるだけ早期に改善すべく、令和七年度の予算において措置したところです。
一歳児の配置改善には三歳児や四、五歳児の配置改善より多くの保育人材を要するため、まずは、基準の見直しではなく、保育の質の向上や職場環境、処遇改善等の観点から、一定の要件を満たす事務所への加算措置より対応を進めてまいります。
まずはこの形で令和七年度から一歳児の配置改善加算を着実に実施し、保育現場における職員配置の改善を進めてまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 一歳児の配置基準の改定目指していると、これはこれで重要な答弁です。しかし、では、一歳児配置改善加算の取組が配置基準の改定につながっていくことにふさわしいものになっているのかどうか、聞いていきたいと思います。
こども家庭庁は、令和六年度から四、五歳児の職員配置基準を改善しました。現行基準でもよいという経過措置を置いていることから、配置改善加算を実施していますが、三十対一から二十五対一への改善による公定価格の差額分として百十八億円を措置したと聞きました。こども家庭庁から、一歳児の配置基準を六対一から五対一にした方が、四、五歳児や三歳児の配置基準を見直した方より保育士の人数が必要となる試算を出していただきました。
これは利用児童数と配置基準から機械的に試算したものだということですが、それによりますと、四、五歳児で配置基準を三十対一から二十五対一にした場合の試算では必要となる保育士は全国で七千二百三十九人。これに対して、一歳児の配置基準を六対一から五対一にした場合は必要な保育士は全国で一万四千七百十八人で、約倍の保育士が必要となるということになります。
したがって、単純に計算すれば、配置改善に必要な予算も少なくともその倍が必要となるということが想定されます。一歳児の配置改善を進めるということであれば、より積極的な取組が必要となります。ところが、一歳児配置改善加算の予算額は約百九億円とされています。
こども家庭庁、この積算根拠示してください。
【竹林悟史 こども家庭庁長官官房審議官】 お答え申し上げます。
令和七年度の予算におきます一歳児配置改善加算につきましては、保育の質の向上や職場環境、処遇改善等の観点からの一定の要件を満たすことを求めております。
それぞれの要件に関する現状のデータにつきまして、三歳児配置改善加算を設けた際の初年度の取得率約七割を参考にしつつ、処遇改善等加算の取得率が約九割であること、ICTの活用率が約六割、それから職員の平均経験年数十年以上の割合が約七割であること等を勘案いたしまして、この予算では百九億円としているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 四、五歳児の配置改善加算における公定価格の差額分の実績百十八億円を見ても、保育士確保の困難さがうかがえます。ですから、だからこそ、予算額百九億円、一歳児の加算のね、これはこども家庭庁の姿勢が問われると思うんですよ、この額では。
先ほど、もう先に答えていただいた、次の質問答えていただいたんだけれども、確認しますが、一歳児配置改善加算の加算措置を受けるには要件を付けていますね、要件を付けています。要件一、処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの全てを取得している、これ今お答えでは全国で九割の園。二つ目、業務においてICTの活用を進めている、これ全国で六割。施設、事業者の職員の平均経験年数が十年以上、これが約七割だということで間違いないですね。
全てを満たす施設、事業所は幾つありますか。
【竹林悟史 こども家庭庁長官官房審議官】 お答え申し上げます。
令和七年四月一日の時点で、一歳児配置改善加算の各要件を満たす施設や事業所、それから、要件全てを満たす、今先生お尋ねのですね、施設、事業所が具体的にどれだけあるかにつきましては把握をしていないところでございます。予算積算上の見込みとして、先ほどそれぞれの割合をお答えさせていただいたところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 要件付ける、この三つの要件を全て満たさなきゃ加算措置されませんが、一体どれぐらいあるのかという数字は今ないということでした。
しかし、先ほどの七割、六割、あっ、九割、六割、七割という三つの要件のそれぞれの数を機械的に掛け足せば、掛け算すれば、全施設、事業所のうち約四割弱しか対象にならないと思うんですね。そもそもですよ、多くの施設、事業所が、三つの要件を満たさない事業所が多いと。最初から加算措置の対象から外れるということじゃないですか。
内閣府副大臣、こんなことでいいんですか。
【辻清人 内閣副大臣】 一歳児の配置改善、五十数年ぶりの取組でありまして、まずはこの三要件をこの令和七年度から加算、加速化プランの一環として着実に実施することで職員配置の改善を進めるとともに、今後の対応につきましては、今申し上げましたような様々な背景踏まえながら丁寧に検討してまいりたい考えでございます。
【伊藤岳 参院議員】 要するに、一歳児配置改善には三歳児や四、五歳児よりもより多くの人材が必要となる、予算も掛かる、だから要件を付けて加算対象を絞ったということにならざるを得ないと、そういうことですね。
【辻清人 内閣副大臣】 伊藤委員のお考えのこの配置基準の改善、これ進めていくこと重要だと考えていますが、この保育人材の確保等の関連する施策との関係も踏まえる必要がありまして、保育士の配置基準、これ最低基準として仮に将来的に法令上定める、これを変えることになれば、仮に配置基準の見直しを実施した場合、基準を満たすことができない保育所は運営を継続することができなくなりますので、先ほど申し上げましたような様々な背景を踏まえながら、今年度から着実に現在の加速化プランの一環として職員配置の改善を進めるとともに、丁寧に検討してまいりたい考えでございます。
【伊藤岳 参院議員】 だから、もちろん予算措置しなければ保育園は保育士確保できませんよ。だから、今予算がないから、出せないから加算対象絞ったということだと思うんですよ。
職員の平均経験年数が十年以上との要件について聞きます。三原大臣は保育事業所の平均経験年数がおおむね十一年であるからだとこの要件の理由について答弁されました。私がお話を聞いてきた民間保育園は、保育士の平均経験年数が十年なんてとてもいかないと、考えられないということでした。
内閣府副大臣に聞きます。
現場における保育士の平均経験年数がなぜこんなに低いんでしょうか、保育士を募集しても十分になぜ集まらないのか、保育士がなぜ離職してしまうのか、その理由はどこにあると認識していますか。
【辻清人 内閣副大臣】 お答えします。
まず、保育士の平均勤続年数と平均年数、勤続年数はこれ令和六年において八年であり、三原大臣が以前答弁された十一年というのは平均経験年数でございまして、勤続年数というのはこれ一か所の保育所で何年働くかの平均でございまして、経験年数は何か所かも含めて一人の保育士が……(発言する者あり)済みません。この要因を令和六年賃金構造基本計画、統計調査の数値を基に検討すると、ほかの、保育士の平均年齢三十八・六歳と、ほかの職に比べて低いんですね。妊娠、出産、子育てによる離職が多いと考えられる女性の割合が九三・七%と、ほかの職と比べて高いことなどが考えられます。
保育所の離職理由について、例えば東京都の令和四年度東京都保育士実態調査では、過去に保育士として就業した方が退職した理由として、職場の人間関係に次いで、仕事量が多い、給料が安いなどが上位に挙がっていると承知しております。
こういった状況を踏まえて、業務負担の軽減を目的として、保育士の補助を行う保育補助者の配置、清掃や消毒、園外活動時の見守り等の保育の周辺業務を行う保育支援者の配置、登降園管理システムの導入などICT化の推進などに努めつつ、更なる処遇改善を行うなど、引き続き保育士の離職を防ぐ施策にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。
【伊藤岳 参院議員】 今東京都の調査、示されましたけど、余り都合のいいように言わないでほしいんですが、一番は給与が低いということですよ、二番が人員が足りないということですよ、保育士が辞めている理由は。
私、お話を聞いた中で、若い保育士さんから次のような話聞きました。人手が足りなくて、年休を取りたいなんてとても言い出せない雰囲気だと、また、給与が安くて何度も辞めようと思ったという声を聞きました。現在の保育士をめぐる現状は、自民党政府が配置基準の改善を長年放置して、一人一人の保育士の負担が重くなって、非常勤職員や会計年度任用職員の導入などによる雇用の不安定化と低賃金をもたらしてきた、その結果ではないんですか。保育の現場を、保育士を大切にできてこなかったからではないんですか。
その政府がですよ、保育士配置改善の見直しを言うときに、なぜ施設や事業所の職員の平均経験年数が十年以上という要件を課すんですか。加算の対象となる施設や事業所を何で絞るんですか。職員の平均経験年数が十年以上という要件を付すのはやめるべきだと思います。
副大臣、どうですか。
【辻清人 内閣副大臣】 今回、加速化プランにおいて、この配置基準の変更の際の今回のいわゆる経験年数についての十年ということ、今回、職員配置の改善を令和七年度からスタートしまして、今後の対応につきましては、繰り返しになりますが、諸般の事情、背景を踏まえながら、丁寧に委員の御指摘も踏まえながら進めてまいりたい考えでございます。
【伊藤岳 参院議員】 丁寧もいいんですけど、配置基準、配置改善加算を行うのが先だと私思いますよ。
辻内閣府副大臣、もう一問聞きます。
三原大臣は、本要件の在り方につきましては、加算の取得や実際の配置の状況等を踏まえてまた検討してまいりたいと、四月三日、衆議院の委員会で答弁しています。もう六月になりますよ。
この一歳児配置改善加算についての実施状況の把握を早急に行うべきではないかと思いますが、いかがですか。
【辻清人 内閣副大臣】 今年度、四月から開始した一歳児の配置改善の加算については、今後、加算の所得状況や実際の配置の状況等の確認を行うための調査を実施することとしています。
具体的な調査時期や項目については、昨年度行った三歳児と四、五歳児の配置改善の実態調査なども参考に検討を進めている状況でございますが、これについては、例えば四月時点では配置改善ができていなかったとしても、年度途中で改善がなされるケースも想定されるため、こうした現場の実態を適切に把握できるような形で調査時期や項目も含めて検討している状況でございます。
【伊藤岳 参院議員】 調査は実施するということは分かりました。早急な対応が求められると思います。
ICTの活用率の要件について聞きます。
業務において登降園管理及び一機能以上のICT機器を導入、活用している施設、事業所は約六割という先ほど答弁でした。
ICT活用には、機器の導入と運用、そして財政負担が必要となります。お話を聞いてきた民間保育園によりますと、登降園の管理や安全を言うのならば、人手が足りずに目が行き届かない保育士の配置改善こそがまず先だと口をそろえておられました。
内閣府副大臣、こうした現場の声聞いていないんですか。
【辻清人 内閣副大臣】 平成二十七年度の子ども・子育て支援制度を創設以降、保育所等の公定価格においてICTの活用を要件とした加算は今般のこの改善加算が初めてでございますが、一歳児の配置改善には、これICTの活用を含めた三つの要件のうちの一つ、これ保育政策として重要性の高い、保育の質の向上や職場環境の改善を進める観点から設定したものでございます。
このICT活用については、保育所等におけるICT化推進等事業で補助対象としている四機能のうち、令和八年度から保育DXの一環として全国展開を進める保育業務施設管理プラットフォームとの接続を見据えて、園児の登園、降園の管理に関する機能を必須とした上で、残り三つの機能のうち一つ以上を導入し、活用することを要件として求めたものです。
【伊藤岳 参院議員】 今副大臣言われましたけど、保育園の公定価格において、ICTの活用を要件とした加算はこれが初めてなんですよね。全くこれまで付けたことのないような要件を何で突然持ち出して現場の足を引っ張るんですか。
改めるべきですけど、どうですか。
【竹林悟史 こども家庭庁長官官房審議官】 お答え申し上げます。
副大臣の答弁の繰り返しになるのでございますけれども、一歳児の配置改善には三歳児や四、五歳児の配置改善よりも多くの保育人材が必要となるということがございますので、あくまで保育の質の向上、あるいは人材不足の中で持続可能な改善を図る観点から、まずは職員の処遇改善や職場環境改善を進めている施設を対象にして、そこに限定して措置をすることとさせていただいたところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 人材が必要だから、予算が掛かるから加算措置を、要件設けて加算を絞るというやり方ですよ、これ駄目ですよ。
自治体にとっても保育士の確保は重要な課題です。
村上大臣にお聞きします。
地域区分、地域手当の改定案が提示されました。その中で、例えば、東京都と隣接をしていて地域手当が一二%から八%へと格差が更に広がった朝霞市においては、配置基準一人当たり月一万円の独自加算を行ってきて、東京都への保育士の流出を食い止めようとしてきたそうですが、しかし、今回の改定案が実施に移されれば、これ以上はもう限界だと、手の打ちようがないと話しておられます。
地域区分、地域手当の改定案については、さいたま市を含む七政令市長は、現行の地域区分の水準を維持し、必要な財政措置をとしています。埼玉県を含む六県知事は、現在の水準を超える設定にすると提言をしています。
保育士の確保に逆行する地域手当の改定であってはならないと考えます。自治体にとって保育士の確保は重要な課題となっている中で、村上大臣の認識を伺いたいと思います。
【村上誠一郎 総務大臣】 伊藤委員にお答えします。
地方公務員の地域手当の支給地域については、従来、市町村単位とされておりましたけれども、近年、人材確保が大変厳しくなってきている中で、近隣市町村との人材確保の公平性の観点から問題があるなどの指摘もいただいております。
このため、総務省としましては、支給地域を広域化し、国における地域手当の見直しの後の指定基準と同様に、都道府県単位を基本とするとの助言を行いました。こうした公務員地域手当の見直し等も踏まえ、保育の公定価格の地域区分につきましても、現在、こども家庭庁におきまして見直し方法についての議論が進められているものと承知しております。
その上で、保育士を始めとする専門人材の確保は総務省としましても重要な課題であると、そのように認識しております。
このため、都道府県等が専門人材を確保し小規模市町村に派遣する取組に対しまして交付税措置を講ずることや、育成方針の策定など、人材の育成、確保の取組の好事例集を作成し、自治体へ普及促進することとしております。保育士を含めた専門人材の確保に向けた取組を支援しているところであります。
各自治体の取組が着実に進むよう、引き続き必要な助言、情報提供をしっかり行ってまいりたいと、そのように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 はい。保育園の存続に関わる大問題が起きていると指摘して、質問を終わります。