議事録

2025年3月31日 総務委員会(特定地域づくり事業推進法改正案質疑・反対討論)

議事録(未定稿のため今後変更される可能性があります)

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 総務省にお聞きします。現在、三十六道府県、百八事業協同組合があり、採用された派遣職員は六百五十三人だということですが、職員の給与水準はどのようになっていますか。また、離職率及びその理由、職員の要望、雇用の現場の問題点、課題をどのように把握していますか。お答えください。

【望月明雄 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答え申し上げます。

 組合から提出されました令和六年度交付申請書類によりますと、派遣職員の賃金は月二十万円台としている組合が百八組合中二十三組合と最も多くなっております。続いて、月十八万円台が二十二組合、月十九万円台が十六組合となっておりまして、これらを合わせますと、全体の五六%程度を占めている状況でございます。

 また、全体の単純平均では月十九万七千円となっております。

 派遣職員の離職の状況については総務省において毎年二回の市町村に対する調査の中で把握しておりますけれども、直近の、済みません、令和二年度の制度開始以降、昨年の十月一日までに派遣職員として採用された六百五十三人のうち、離職された方は二百三十八人の三六%でございます。

 また、離職理由でございますが、総務省の実施しました調査研究におきまして、就職や起業を行ったことが一番多くなっておりますけれども、そのほか、仕事の内容が本人と合致していなかったとか、本人や家族の事情によるといったことが主な理由として把握しているところでございます。

 また、総務省といたしまして、個別の派遣職員の要望につきましては、組合を通じて取り寄せました派遣職員の声などを取りまとめ、他の組合の運用の参考になるようホームページで公表をしているところでございます。

 雇用の問題点や課題につきましては、毎年実施しておりますブロック説明会を通じまして把握しておりますけれども、組合においては、派遣職員の確保に苦労しているとか、農閑期における冬場など、派遣先の確保に苦労しているといったことがございますが、職員サイド、派遣職員サイドとしましては、派遣職員の仕事内容のミスマッチとか職場環境のミスマッチといった課題があるというふうに把握しているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 

 給与水準については、全体の単純平均として月十九万七千円というお答えがありました。一般労働者の月額平均賃金三十一万一千八百円に比べてもやはり低い。これは離職にも影響していることはあり得る、あっ、離職にも影響していると思うんですね。

 総務省の資料では、事業協同組合当たりの派遣職員数は数名程度で、限られた範囲での雇用関係、派遣先との関係となります。

 制度では、監督は都道府県知事が行うこととされ、派遣労働の上で問題があれば当然労基署等に訴えることができます。しかし、地域の限られた関係の中で問題を感じたり改善が必要だと思っても、実際には声がなかなか届けられないのではないでしょうか。

 雇用上の問題点や苦情、要望を伝えて相談ができる、解決につながっていくような専用窓口が必要ではないかと思いますが、総務省の認識はいかがですか。

【望月明雄 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答え申し上げます。

 特定地域づくり事業協同組合が行う労働者派遣事業につきましては、原則として労働者派遣法の規定が適用されるというものでございます。今委員から御指摘もございましたが、同法におきましては、派遣労働者の就業に関しまして、苦情その他の問題が発生した場合に、その迅速な解決を図り、その他適正な就業を確保する観点から、派遣元事業主に派遣元責任者の選任が義務付けられております。このため、特定地域づくり事業協同組合においても、選任された派遣元責任者に職員の苦情等を相談できる体制が整えられているところでございます。

 また、労働者派遣法の違反が認められた場合は、都道府県労働局による助言や指導の対象になるとともに、改善命令等の対象になる場合があり、派遣職員は違法事案について都道府県労働局に申告することができるとされております。これらの制度につきましては、総務省のガイドラインに掲載をいたしまして組合等に周知しているところであり、職員の苦情、要望等につきましては、こうした労働者派遣法の規定等に基づき対応されることになると考えているところでございます。

 今後とも、関係府省と連携をいたしまして、制度を適用していく中で、相談体制を含め、職員の適切な労働環境が確保されるように適切に対応してまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】

 制度の目的は異なりますが、地域おこし協力隊では、隊員をサポートするフォーラム形成が都道府県単位で進められています。検討を求めたいと思います。

 労働者派遣事業では厚生労働大臣の許可が必要ですが、特定地域づくり事業では特例として厚生労働大臣への届出制が認められ、特定地域づくり事業協同組合としての認定を受ける場合も、労働者派遣事業に求められる雇用管理を適正に行う能力、個人情報の適正管理、事業を的確に遂行する能力については参酌、参酌するとされています。

 こうした特例を設けている理由は何ですか。

【望月明雄 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答え申し上げます。

 まず、本法におきまして届出制が認められている趣旨でございますけれども、人口急減地域において、組合の職員を組合員の事業に従事させる特定事業つくり事業を積極的に推し進めて地域における就業機会の確保を図るため、通常の許可制とは別に、小規模事業者による団体であっても労働者派遣事業を行うことが可能となるような仕組みを設ける必要があったということ、次に、組合は既に都道府県知事による認定を受けてその監督に服するとされていることから、更に労働者派遣事業の許可を受けさせる必要性が通常の許可制と比べて相対的に高くないこと、こういった理由によるものというふうに承知をしております。

 次に、参酌の方でございますけれども、人口、地域人口の急減に対処するための特定事業の推進に関する法律第三条第四項におきましては、都道府県知事が特定地域づくり事業協同組合の認定を行う際、特定地域づくり事業を確実に遂行するに足る経理的、技術的な基礎を有すると認められるかを判断するに当たり、労働者派遣法第七条第一項第二号から第四号までに掲げる基準を参酌するものとされたものと承知しております。これは、労働者派遣事業を行おうとする特定地域づくり事業協同組合の認定に当たっては、労働者派遣事業の運営に関し十分な専門性及び人的体制が確保されていることを確認することが求められるためというふうに考えられております。

 なお、総務省では、法の規定及び附帯決議を踏まえまして、都道府県における円滑な事務の執行に資するようガイドラインをホームページ上で公開するとともに、毎年実施しているブロック説明会等においても周知をしているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】

 総務省も、法令用語として、参酌とは、一般的にいろいろな事情、条件等を考慮に入れて参照し判断することと回答しているように、あくまで参照ですよ。遵守すべき基準となっていないことは大きな問題だと思います。

 最後に、特定地域づくり事業の目的から見て、事業協同組合が職員を市町村に派遣する場合、その市町村において雇用されるの代替となるようなこととすれば、それは好ましいと思っておられるのか、そして、法改正は、員外利用について、市町村への派遣に限って員内利用の五〇%までの拡大し緩和するものです。少なくとも常勤職員や会計年度任用職員等が行っている事業の一部を切り出して員外派遣の対象とすることは出てくるし、それは本質的には代替につながっていく問題じゃないかと思います。

 こうした代替を規制することはこの法律でできますか。

【望月明雄 総務省大臣官房地域力創造審議官】 お答え申し上げます。

 特定づくり事業協同組合制度は、人口急減地域において、地域の仕事を組み合わせて年間を通じた仕事を創出し、職員を組合で無期雇用した上で、組合員である事業者に派遣する制度でございます。

 市町村は組合員になることができませんが、組合員の利用に支障がない場合に限り、組合員による利用の二〇%の範囲内で組合員以外の者も利用できることができるというふうにされておるところでございます。

 今般の法改正は、運営する施設とかイベント時期などの人手不足に対応したい市町村と、冬の農閑期などの組合による利用が少ない時期に派遣先を確保することで雇用を増やしたい組合のニーズの一致を踏まえまして、市町村に職員を派遣する場合に限り、利用割合を五〇%まで緩和するものであるというふうに承知をしているところでございます。

 改正法の規定では、主に人手不足である市町村での活用が想定されているところでございます。

 そういったことから、当該市町村において現に雇用されている常勤職員や会計年度任用職員等の職員の丸々の代替とか、そういったことは余り想定はされてはいないのではないかというふうに考えておりますけれども、制度の趣旨を十分に踏まえ、適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】

 法律上、そういう規定はないということですね。問題点を指摘して、質問を終わります。

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】

 私は、日本共産党を代表して、特定地域づくり事業推進法改正案に対する反対討論を行います。

 現行法は、地域人口の急減に直面している地域において、都道府県知事からの設定を受けた事業協同組合が、その無期雇用する職員について、組合の地区を含む市町村に限定して労働者派遣事業を行うものです。

 人口減少が進む地域において、市町村が観光協会など積極的に連携して仕事をつくり、移住支援などを含めた地域おこしや地域活性化に取り組む中で、こうした事業を活用する取組がありますが、一方、制度の中身は厚生労働大臣の許可制である労働者派遣事業を届出制にした労働者派遣事業の規制緩和であり、真に地域で安定して働き続けられる仕組みとは言えません。

 本改正案は、こうした問題点はそのままにしながら、労働者派遣を会員以外に行う員外利用を市町村への派遣については五〇%までできるようにするものです。市町村への派遣については現行でも二〇%まで可能ですが、市町村への派遣実績は、二〇二二年度が二団体、二三年度が三団体だけであるなど、市町村への員外利用枠を拡大する根拠は十分に示されていません。

 さらに、市町村業務の隙間をこうした派遣事業で穴埋めしていこうとすれば、隙間バイトのような形で、更に不安定で劣悪な労働が自治体の現場に持ち込まれることになりかねません。市町村業務の人手不足は自治体が任用を増やすことで対応すべきであり、農山漁村での働き手の確保というならば、いうのなら、農林水産業など当該地域に根差した産業に対して所得補償など、生活を成り立たせる抜本的支援こそが求められています。

 改正案は、真に安心して働き続けられる仕組みではなく、更に制度をゆがめることにもつながりかねないため、反対であることを述べて、討論といたします。