議事録

2025年3月14日 本会議(個人住民税の課税最低限の引き上げ/一般財源総額を前年度と実質同一水準ルールの廃止/地方交付税の法定率を引き上げ/自治体職員の増員/ジェンダー不平等な会計年度任用職員制度の改善)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 私は、会派を代表して、二〇二五年度地方財政計画外二法案について関係大臣に質問します。

 昨夜、石破総理が自民党議員十五人にそれぞれ十万円の商品券を配付していた事実が明らかになりました。政治資金規正法二十一条の二は、何人も政治家の政治活動に関して寄附をしてはならないと定めています。総理は土産代わりと言い訳していますが、社会通念上、到底通用しません。

 政治と金の問題が政治的大問題になっているときに、法に抵触するしないの以前に、総理の政治責任は極めて重大ではありませんか。総理の資格はないと厳しく指摘するものです。

 地方税法の改正案についてです。

 法案は、個人住民税の課税最低限の引上げを給与所得控除だけにとどめ、基礎控除の引上げを見送っています。その結果、減税の恩恵は、年収百十万円から百九十万円の給与所得者に限られ、年金生活者、給与所得のない人、非課税世帯などは取り残されます。総務大臣、なぜ基礎控除の引上げをやらないのですか。

 企業版ふるさと納税では、関連子会社への寄附金の還流、自治体と企業との癒着の実態が明らかとなっています。省令改正で対応するとしていますが、なぜ寄附法人や関連会社が仕事を受けてはならないと法律で定めないのですか。

 現在、日本とオーストラリアの間の部隊間協力円滑化協定に基づき、オーストラリア国防軍に対して、軽油引取税と自動車税環境性能割が免税されています。免税適用の実績量と金額をお示しください。

 法案は、今後、省令改正で、協定の締約国であれば自動的にその国の軍隊に免税が適用できるようにします。なぜ国会での法律改正の審議と手続を省くのですか。以上、総務大臣の答弁を求めます。

 次に、地方自治体の財源確保についてです。

 深刻な物価高騰の中、国民の暮らしは追い詰められています。今こそ、住民の福祉の増進を図るという地方自治体の役割が求められているのではありませんか。総務大臣の基本認識を伺います。

 二〇二五年度の地方財政計画では、地方税、地方交付税、臨時財政対策債などを合わせた地方の一般財源は、総額で昨年度から一兆五百三十五億円の増となっています。総務大臣、地方税、交付税が収入増となるのは、物価上昇で名目成長率が押し上げられた影響があるからではありませんか。御答弁ください。

 一方、政府の骨太方針は、地方の一般財源の総額を前年度と実質同一の水準に抑制するというルールを地方財政に課しています。このために、税収などが増えても、それを交付税特別会計からの借入金の返済や臨時財政対策債の発行ゼロのために優先的に回すならば、増額を一般財源の総額確保に十分に充てることにはなりません。さらに、地方の各支出経費には物価高騰が重くのしかかります。

 二〇二五年度に向けた地方財政審議会意見は、地方歳出の構造は、社会保障関係費の増加を、給与関係経費、投資的経費や公債費の削減、縮小で吸収するという平成十年代以降続いてきた構造から大きく変化してきており、今後、喫緊の課題への取組も求められると指摘し、歳出が増加することへの適切な対応を求めています。総務大臣、この意見をどう受け止めていますか。

 骨太方針のルールを廃止すべきではありませんか。地方交付税の法定率を引き上げ、財源保障機能と財源調整機能を十分に発揮させるべきです。答弁を求めます。

 自治体情報システムの標準化による自治体負担の問題です。

 情報システム標準化による費用負担は、今後、地方自治体の喫緊の課題となってきます。デジタル大臣、中核市市長会は、標準化準拠による情報システムの運用経費が平均二・三倍、最大では五・七倍増加するとしています。こうした自治体の懸念をどう受け止めますか。政府は、運用経費の三割削減を目指すとしていますが、三割削減を裏付ける根拠は何ですか。三割削減は確実にできると断言できますか。答弁を求めます。

 自治体職員の増員、会計年度任用職員の処遇改善についてです。

 地方自治体の職員数は、一九九四年から二〇二四年までに四十七万人が減っています。そのうち、二〇〇五年度から二〇一〇年度に行われた集中改革プランを通じて約二十三万人が削減されています。総務大臣、政府が主導した自治体職員の純減政策によって全国の自治体職員は大きく削減されました。この下で、二〇一一年三月の東日本大震災を始め、毎年のように全国各地で大規模な自然災害が繰り返し発生し、救援と復旧復興、生活となりわいの再建に苦労が重ねられています。こうした事態をどう考えますか。自治体職員の増員が必要なのではないですか。答弁を求めます。

 会計年度任用職員は全国で六十六万人を超え、そのうち女性が七五・八%で、多くが主たる生計の担い手です。年収は二百万円から三百万円程度と低い水準に置かれ、年度ごとに任用されるという不安定な雇用です。健康で安心して働き続けることができ、差別がない職場にしてほしいというのが会計年度任用職員の切実な願いです。会計年度任用職員の現状は、ジェンダー不平等を象徴するものではありませんか。

 ILO、国際労働機関第百二十二号条約、雇用政策関係の報告書は、会計年度任用職員制度の実施五年後である二〇二五年度に、会計年度任用職員制度をどのように改善するか報告を求めています。誠実に応えるべきではありませんか。制度を所管する総務大臣、お答えください。

 埼玉県八潮市で起きた道路陥没、下水道事故の問題です。

 下水道法に基づく点検基準を根本から見直すべきではありませんか。公共インフラの点検、修繕、改築を計画的に進める上で、自治体の財源確保が課題です。国土交通省の防災・安全交付金は自治体の要望額に対して六割程度しか配分されていません。国交大臣、抜本的に増額すべきではありませんか。答弁を求めます。

 政府は予防保全を進めていくと繰り返しますが、結局、修繕に係る責任と費用負担は自治体任せです。修繕費用に対する財政支援を強化すべきです。国交大臣、お答えください。削減され続けた下水道職員を増員していく方向に切り替えるべきです。国交大臣並びに総務大臣に答弁を求めます。

 最後に、マイナ保険証のひも付け誤り、取得、利用の押し付けについてです。

 マイナ保険証に別人の保険情報がひも付けられる事案は今も続いています。政府は、二〇二三年に行った総点検と保険者による登録済みデータとの確認作業の結果、九千二百十七件のひも付け誤りがあったとしていますが、それ以降は、ひも付け誤りは確認していないとしています。しかし、全国保険医団体連合会は、昨年五月から八月に行った会員アンケート調査の結果、記者会見で公表し、百八十九医療機関でひも付け誤りがあったことを明らかにしています。ひも付け誤りが今も発生し続けていることを国民に隠すことは許されません。厚労大臣、緊急調査を行うべきではありませんか。お答えください。

 マイナ保険証をめぐるトラブルは収まっていません。ところが、政府は、診療報酬に格差を付けて、医療機関等に患者のマイナ保険証の利用を勧めることをあおっています。患者がマイナ保険証を使う機会を奪っていると、医療機関等としての認定の取消しまで振りかざすようなやり方は直ちにやめるべきです。

 マイナ保険証の利用を強引に押し進めることはやめて、保険証を残すべきです。厚労大臣、御答弁ください。

 以上、答弁求めて、質問を終わります。(拍手)

【村上誠一郎 総務大臣】 伊藤議員からの質問にお答えいたします。

 まず、個人住民税における基礎控除の引上げについての御質問がございました。

 個人住民税については、できるだけ多くの住民が広く負担を分かち合うという地域社会会費的な性格を有しております。このような性格や地方税財源への影響等を総合的に勘案いたしまして、個人住民税においては、給与所得控除の見直し等に対応する一方で、基礎控除は据え置くこととしております。

 自治体の首長の皆様からは、税収減等を懸念する声が上がっていてということは承知しておりますが、これらの地方税財源の配慮について地方からも一定の評価をいただいたものと考えております。

 次に、企業版ふるさと納税についての御質問がございました。

 事業者が自治体の事業を受注することについては、一般的に公正かつ自由な競争の下に行われるべきものと承知しております。

 企業版ふるさと納税を所管する内閣府では、内閣府令において、自治体は寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与してはならないとしております。しかし、入札、契約上の公正なプロセスを経ていれば、これに当たらず、一律に禁止されるものではないと解していると承知しております。

 次に、日本とオーストラリア間の部隊間協力円滑化協定などについて御質問がございました。

 まず、本協定に基づくオーストラリア国防軍への軽油引取税の課税免除の特例措置及び自動車税環境性能割の非課税措置については、これまでは適用実績はありません。

 また、今回の地方税法改正案における課税免除の特例措置等は、円滑化協定の規定を根拠するものとなっております。そのため、今後、円滑化協定の締結に際し、国会で御審議をいただいて承認された後に、国会の意思を適切に反映するよう、対象となる締約国を政令で規定することとしております。

 次に、住民の福祉の増進についての御質問がございました。

 自治体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、教育、福祉など、広く住民生活に身近な行政サービスを担い、住民の福祉の増進に大変重要な役割を果たしております。

 このような行政サービスを自治体が安定的に提供していけるよう、必要な一般財源総額を適切に確保することが重要であると考えております。自治体が地域の実情に応じて住民ニーズにきめ細やかに対応していくことができるよう、地方の声をお伺いしながら取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、地方交付税、地方税の増の理由についての御質問がありました。

 給与、生産、消費の改善が見込まれるほか、円安等による企業収益の増や好調な株式市場等を背景に、地方交付税の原資である所得税等の税収や地方税収について、令和七年度において増収が見込まれております。

 次に、地方財政審議会の意見の受け止めについて御質問がございました。

 令和七年度の地方財政計画では、地方財政審議会からの意見も踏まえ、社会保障関係費や人件費の増加、物価高への対応を適切に反映した上で、一般財源総額について、交付団体ベースで前年度を一・一兆円上回る六十三・八兆円を確保いたしました。今後も、自治体が必要な行政サービスを提供しつつ、安定的な財政運営を行っていけるよう、必要な財源を確保してまいりたいと考えております。

 次に、一般財源総額実質同水準ルールと交付税率の引上げについての御質問がございました。

 地方の一般財源総額につきましては、閣議決定された基本方針二〇二四に基づき、実質的に同水準を確保することとされております。この基本方針の下、令和七年度地方財政計画におきましては必要な一般財源総額を確保いたしました。今後も、基本方針に沿って地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額を確保してまいりたいと考えております。

 また、交付税率の引上げにつきましては、国、地方共に厳しい財政状況にあることから、なかなか容易ではありませんけれども、今後とも、地方の財源不足の状況を見極めつつ、地方交付税総額を安定的に確保できるよう、政府部内で十分に議論してまいりたいと考えております。

 次に、自治体職員数に対する認識についての御質問がございました。

 自治体において、かつて職員数を抑制した中においても、例えば防災対策に携わる職員は増加させるなど、行政需要の変化に対応し、必要な人員配置を行ってきたと承知しております。なお、大規模災害においては、被災自治体単独での対応は困難であるため、全国の自治体から職員を派遣して支援を行っております。

 次に、自治体職員の増員について御質問がございました。

 自治体の定員については、各自治体において、行政の効率化、能率化を図るとともに、行政課題へも的確に対応できるよう、地域の実情を踏まえつつ、適正な定員管理を努めていただくことが重要と考えております。

 一般行政部門の常勤職員数は近年増加傾向にあり、総務省としても、自治体の職員数の実態などを勘案して、地方財政計画に必要な職員数を計上しています。

 次に、会計年度任用職員の現状につきまして御質問がございました。

 女性が多く割合を占める会計年度任用職員については、処遇の改善をしていくことは重要な課題であると考えております。

 次に、会計年度任用職員制度の改善について御質問がございました。

 会計年度任用職員につきましては、期末手当に加え、勤勉手当の支給を可能とする法改正を行うなど、これまでも適正な処遇の確保、改善に取り組んでまいりました。会計年度の任用職員が十分力を発揮できるよう、今後とも環境や制度の整備に取り組んでまいります。

 最後に、下水道の職員の増員について質問がありました。

 下水道事業の従事する職員数が減少傾向にある中、将来にわたり持続可能な経営を確保するための取組を進めることが全国的に課題となっております。このために、総務省としましては、中長期的な経営の基本計画である経営戦略を適切に策定し、改定し、計画的に組織、人材強化も図りつつ、業務効率化に取り組むよう、自治体に助言してきたところでもありました。引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

 以上であります。

【平将明 デジタル大臣】 伊藤岳議員にお答え申し上げます。

 自治体情報システムの標準化についてのお尋ねがありました。

 急速な人口減少社会に突入する中で、各自治体が個別に情報システムを維持管理をし、さらにセキュリティーを確保することは、人材面、財政面からも限界があり、自治体情報システムの標準化やガバメントクラウドへの移行に取り組むことは必要不可欠だと考えております。

 その上で、標準化後の情報システムの運用経費の増加に対する御懸念については、中核市市長会だけでなく、他の自治体からも指摘をされており、課題として重く受け止めております。

 情報システムの運用経費の増加要因は自治体ごとに様々であり、まずは事業者の見積書の内容をしっかりと精査いただく必要がありますが、デジタル庁としても、自治体に寄り添いながら、実態の把握や増加要因の個別分析を丁寧に行ってまいります。

 また、運用経費の三割削減の根拠に関するお尋ねがございました。

 自治体クラウドの導入に際し、約三割の情報システムの運用経費の削減効果が生じている例が多いことを踏まえ、標準化対象事務に関する情報システムの運用経費等について、標準準拠システムへの移行完了後に二〇一八年度比で少なくとも三割削減を目指すこととし、国はその目標の実現に向けて環境を整備することとしています。

 なお、三割削減の確実性についてのお尋ねがございました。

 情報システムの運用経費等の目標の達成に向けては、移行支援期間である二〇二五年度までの達成状況及び移行支援期間における実証等を踏まえるとともに、為替、物価などのコスト変動の外部要因も勘案する必要があることから、必要に応じて見直しの検討と達成状況の段階的な検証を行うこととしています。

 その上で、デジタル庁としても、事業者に対して見積内容を自治体に丁寧に説明することを要請しているほか、情報システムの運用経費が抑制され、目標が実現されるように、依頼があった自治体への見積精査支援、さらにクラウド利用料の大口割引等の提供、クラウド最適化支援などの取組により、自治体を最大限支援をしてまいります。

【中野洋昌 国土交通大臣】 伊藤岳議員から、埼玉県八潮市の道路陥没事故についてお尋ねがありました。

 下水道の点検基準の見直しについては、今回の陥没事故を重く受け止め、有識者委員会を設置し、点検手法の見直しなどを議論いただいているところであり、議論の結果を踏まえ、必要な対応をしっかりと検討、実施してまいります。

 地方公共団体のインフラの老朽化対策や防災・減災対策の取組への支援措置については、防災・安全交付金だけではなく個別の補助制度もあり、これらを合わせて支援をしてまいります。加えて、六月をめどに策定することとされている国土強靱化実施中期計画に下水道の老朽化対策を始め必要な施策を盛り込むべく、調整を進めてまいります。

 また、修繕費用に対する財政支援については、下水道事業は下水道使用料等による独立採算を基本としており、汚水に係る維持修繕に係る費用は使用料で賄うこととなっております。ただし、施設の改築については大きな投資を必要とすることから、国が財政支援を行っているところです。

 下水道職員の増員については、下水道事業を持続的に運営するため、事業を担う職員を確保していくことが重要であり、関係機関、団体と一体となって業務の魅力や社会的意義について積極的に発信、PRしてまいります。

 国土交通省としては、これらの取組を着実に進め、強靱で持続可能な下水道システムの構築に向けてしっかりと取り組んでまいります。

【福岡資麿 厚生労働大臣】 伊藤岳議員の御質問にお答えいたします。

 マイナ保険証のひも付け誤りについてお尋ねがありました。

 健康保険証情報に関する別人の個人番号とのひも付け誤りについては、令和五年五月に全保険者に対して点検作業を依頼し、令和五年十一月から令和六年四月までは、更に入念的な取組として、登録済みデータ全体について住民基本台帳との照合を行い、不一致があったものについて保険者等による必要な確認作業を行いました。

 また、令和五年六月から、資格取得の届出における被保険者の個人番号等の記載義務を法令上明確化するとともに、令和六年五月からは、資格情報を保険者が登録する際、その全件についてJ―LIS照会を行うチェックシステムの仕組みを導入しており、こうした取組により、新規のひも付け誤りを防止し、国民の皆様に安心してマイナ保険証を御利用いただける環境を整えており、マイナ保険証に関する個人番号の点検に関して現時点でこれ以上の対応を行うことは考えておりません。

 マイナ保険証の利用促進についてお尋ねがありました。

 医療機関等がマイナ保険証の利用促進の取組を行うとともに、診療情報等を活用した質の高い医療を提供する体制を確保することを診療報酬において評価しております。マイナ保険証は本人の健康医療情報を活用した適切な医療の提供に大きく寄与するものであり、医療機関の取組を評価することは必要であると考えています。

 なお、マイナ保険証の利用実績が著しく低い医療機関に対しては、事実関係の確認等を行うにとどまります。

 政府としては、マイナ保険証の利用促進と併せて、マイナ保険証をお持ちでない方には、申請によらず資格確認書を発行することや、医療機関等でマイナ保険証を利用できなかった場合でも円滑に保険診療を受けられる方法を示すなど、これまでどおり保険診療を受けられることについても丁寧に周知してまいります。