議事録

2024年6月13日 総務委員会(地方自治法改正/国の自治体への新しい「関与」)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 個別法において、感染症や災害など想定外の事態が生じ、国の指示権がなかったことにより対処が不十分だった事例について、その後どう精査されたか、お聞きします。

 山野自治行政局長は、個別法における指示の規定三百六十二件の精査について、それぞれの省庁がそれぞれの所管でやっていると認識しておりますと答弁してきましたが、その後の経過と結果、示してください。

【山野謙 総務省自治行政局長】 三百六十二件、個別法に指示の規定があるということでございますけれども、御指摘の三百六十二件の指示等の規定については、これは、例えば事業活動の適正化のために設けたものなど、様々なものがございます。

 私ども、法制化に当たりまして、国民の生命等の保護に関する指示に関する法令について、法律上、どのような場合にどのような要件の下で国の役割が求められ、指示が設けられているかを確認したものでございまして、その結果として本改正案を立案したところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 いや、精査した結果示してくださいと言っているんですよ。精査していないんですか。

 衆議院で、立憲の吉川委員、民主の西岡委員、我が党の宮本委員、ずっとこの問題精査しろと言ってきたじゃないですか。何週間たっているんですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 ただいま申し上げましたとおり、三百六十二件の指示等の規定については、法制化に当たって、国から地方への指示がどのような事態においてどのような要件や手続の下設けられているのかについて検討を行うために、各省に照会を行い、確認したものでございます。

 本改正案の閣議決定後は、これらの規定について、必要に応じ適宜参照しているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 個別法での指示権が本当に必要なものであるのか、有効性を持つのか、その精査が済まなければ、肝腎の今回の法案の立法事実が明らかにならないじゃないですか。これで法案を通そうというんですか。これ、とんでもないことですよ。

 委員長、次回の委員会までに、個別法での指示権についての精査、その結果の報告を本委員会にするようにお取り計りを願いたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 松本大臣にお聞きします。参考人質疑で、本多滝夫龍谷大学教授から、現行の自治体の業務に対する国等の関与は地方自治法に定める一般ルールに基づくもので、それで間に合わない場合に例外として個別法を設けてもいいとされているものである、ところが、本改正案で新設する補充的指示権は、個別法で間に合わないときに補充的指示権を使うというもので、これまでの原則を、まあ自治法の原則をですね、根本的に逆転するもので、地方分権の考え方を否定するものだと指摘がありました。

 大臣、この自治法の原則を根本的に逆転するもの、地方分権の改革の考え方を否定するもの、この指摘どう思いますか。

【松本剛明 総務大臣】 地方自治法は、地方自治の本旨に基づいて国と自治体間の基本的関係を確立することを目的とする法律でありまして、関与の法定主義、関与の基本原則のほか、一定のものについて関与の一般的な根拠規定を設けております。

 国と地方の関係につきましては、地方分権一括法により、地方自治法において基本原則の整備が行われております。具体的には、国の関与は法律又はこれに基づく政令によらなければならないとする関与の法定主義、国の関与は必要最小限度のものとするとともに、地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならないとする関与の基本原則、また、国の関与について不服があるときは地方公共団体は審査の申出をすることができるとする係争処理制度などが定められたところでございます。

 本改正案は、関与の法定主義、関与の基本原則に沿って、大規模な災害、感染症の蔓延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における国と地方の関係の特例として、このような事態における関与の一般的な根拠規定を設けるものであります。

 本改正案は、国の安全に重大な影響を及ぼす事態に対して国と地方を通じた的確な対応が可能となるよう、現行の国と地方の関係を規定する章とは別に新たな章を設けた上で、新たに設ける補充的な指示についても、地方分権一括法で構築された国と地方の関係の基本原則の下で国が果たすべき役割を踏まえた限定的な要件と適正な手続を定めておりまして、御指摘の関与の基本原則等との整合性は担保されているものと考えております。

 補充的な指示は、地方分権一括法で構築された国と地方の関係の基本原則にのっとって規定するものであり、地方自治法の基本的な考え方を変更するものではございません。

【伊藤岳 参院議員】 午前中の岸委員の質問にもいろいろ長々と答弁されていました。今も長々ありましたけれども、要するに、専門家がですよ、参考人が、自治法の原則を根本的に逆転するものだ、地方分権の改革の考え方を否定するものだというふうな指摘、今の、大臣、まともに答えていないですよ。地方自治法の原則を内側から壊すもので、これ許されるものじゃないというふうに思います。

 参考人質疑を通じても、こうした地方の意見を聴くことが極めて重要だと感じました。理事会でも要望したんですが、地方公聴会の開催などを検討していただきたいと、求めたいと思います。

 次に、本改正案のいわゆる特例関与について、改正案第十四章は一連の新しい関与の仕組みを設けています。第二百五十二条の二十六の五の補充的指示が注目をされていますが、その前段の二十六の三、二十六の四について今日聞きたいと思います。

 二十六の三、資料及び意見の提出の要求の主語は各大臣又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関となっていて、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態又は発生するおそれがある場合であることを認定する権限を持つのは、各大臣又は都道府県知事その他の都道府県の執行機関と読めます。

 都道府県知事又はその他都道府県の執行機関、つまり教育委員会とか公安委員会とか選挙管理委員会などが事態又は発生するおそれを認定することができるということですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 お答えいたします。

 資料、意見提出の要求において、国民の安全の重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合に該当するかにつきましては、権限行使の主体である各大臣と都道府県知事その他の執行機関が、その担任する事務に関し、実際に生じた事態の規模及び態様、当該事態が発生する可能性の程度等に即して判断するものでございます。

 災害対策基本法、新型インフル特措法などにおいて国が役割を果たすこととされている事態に比肩する、その程度の被害が生じる事態であり、該当するかどうかの判断は各機関において客観的に行われるというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 各機関で行われる。つまり、公安委員会など、教育委員会など、県の執行機関が判断できると、判断することが可能だということですね。知事や教育委員会、公安委員会などの執行機関の判断で、事態又は発生するおそれが、発生するおそれとすることが可能だという答弁でした。

 その上で、第二百五十二条の二十六の三第一項、第二項は、大臣又は都道府県知事その他都道府県の執行機関が生命等の保護の措置を講じるために必要と認めるときは資料の提出及び意見の提出を求めることができるとしています。

 本改正案では、この求めることができる資料の種類や範囲に制限は定められているんですか。当該市町村が持つ資料や住民に関するデータ全般が資料提出の対象となりますか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 お答えいたします。

 今般のこの規定に基づく資料の提出の中身、内容でございますけれども、ただいま申しましたように、様々な事態においてこの該当するかどうかについて前提とする資料でございますので、必要の限度においてその提出を求めるということになると思います。

【伊藤岳 参院議員】 必要の限度って、どこに、法文に書いてあるんですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 二百四十五条の三の規定の趣旨に基づきまして、判断の前提となる資料の提出でございますので、その必要な資料の提出を求めるというふうに解しております。

【伊藤岳 参院議員】 判断の前提になるって、だから、制限規定にはなっていないんですよ。ごまかさないでくださいよ、局長。駄目ですよ、これは。

 生命等の保護の措置を講じ、その措置について適切と認める国や都道府県の関与を行うために必要なものだから、対応のために必要な資料、その種類や範囲に制限なく住民のデータ全般を掌握するということになると思います、この法文では。

 六日の参考人質疑で本多滝夫参考人が配付された陳述書の中にはこうありました。第二百五十二条の二十六の三第一項に基づく大臣又は都道府県知事若しくはその都道府県の執行機関による普通地方公共団体に対する資料の提出の要求及び意見の提出の要求とそれに対する普通地方公共団体の回答がオンライン上で常時行われることも想定される、特例関与のはずである国民の安全に重大な影響を及ぼす事態のときの資料の提出の要求を常態化、日常化させるおそれがあると指摘しています。

 総務省、この特例関与のはずである国民の安全に重大な影響を及ぼす事態のときの資料の提出の要求が常態化させられるおそれがある、これ、もっともな指摘だと思うんですが、この懸念にどう答えますか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 御指摘の、オンライン上常時行われる、あるいは資料の要求を常態化させるという御趣旨を十分に理解できているかどうか分かりませんが、本改正案の第二百五十二条の二十六の三に基づく資料の提出の求めは、これは、国と地方との間で十分な情報共有、コミュニケーションを図り、地方の実情をより適切に把握できるようにする観点から、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、これは、国による事態対処に関する基本的な方針の検討ですとか、あるいは国が直接講じる措置、あるいは地方公共団体に関する関与などの目的で国から地方公共団体に対し資料の提出を求めることができるものでございまして、あくまで国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に限って行うことができるというものでございます。

 私どもとしましては、現状の状況を把握している地方公共団体の間で十分な情報共有、コミュニケーションを図ることは極めて重要だと思っております。これは地方団体に負担を掛けない形で行われることも重要でございますので、事態の対応に最前線で当たる地方公共団体の置かれる状況に配慮しつつ、目的を達成するために必要な限度の範囲で行われるべきものというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 だから、聞いていることに答えていないんですよ、局長。

 私は、オンライン上で常時共有されることにならないかと聞いているんです。それ、どうですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 ただいま申し上げましたように、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に限って行うことができるということと、事態の対応に最前線で当たっている地方公共団体の置かれる状況、これは大変多忙を極めることもございますので、そういった状況に配慮しつつ、目的を達成するために必要な限度で行うということでございます。

 この件につきましては、規定上も、必要があると認めるときは普通地方公共団体に対し資料の提出を求めることができるとされておりまして、条文上明白になっているというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 局長、駄目ですよ、その答弁。そんなことは、今言われたことはもう何遍も聞いていますよ。

 オンライン上で常時共有されることになるんじゃないかという参考人の指摘について聞いているんです。これ、否定できなかったと思いますね。

 次に移ります。

 二百五十二条の二十六の四、これ、事務処理の調整の指示ですが、各大臣は、その担任する事務について、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するために、事態に係る都道府県について、市町村を超える広域の見地から、都道府県と市町村の調整を図るために必要な措置をとることができるとしています。この二十六の四の一号から三号では、法律や政令で指定都市、中核市が処理するとされている国道、県道等のインフラの管理や都市計画、これ一号ですね、法改正を受けて作る政令で定める事務、これ、保健所とか福祉事務所などが想定されています。これ二号です。そして、条例による事務処理特例で市町村に下りている事務、三号が挙げられています。

 これ、生命等の保護の措置に必要な事務処理として、法案が除外している事務範囲、事務処理というのは何かあるんですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 お答えいたします。

 第二百五十二条の二十六の四、事務処理調整の指示ということでございます。調整の対象となる指示、事務につきましては、ただいま御指摘ありましたように、都道府県が処理することとされている事務のうち、指定都市又は中核市が処理するもの、それから、保健所設置市区など、規模、能力に応じて市町村が処理するものとして政令で定めるもの、それから地方自治法等に基づく条例による事務処理特例の運用により市町村が処理するものが該当します。

 指定都市などがその規模、能力に応じて処理する事務としては、例えば、福祉、医療に関する事務、あるいは御指摘ありましたインフラの管理の関する事務、それから災害対応に関する事務、こういったものがあるというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 つまり、法文上、排除されている事務処理はないということだと思うんですよ。全ての事務処理が各大臣の指示の下での事務処理の調整の対象となるということでしょう。もう一度答えてくれますか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 調整等の対象となる事務は、都道府県が処理することとされている事務のうち、指定都市又は中核市が処理するもの、保健所設置市区など、規模、能力に応じて市町村が処理するものとして政令で定めるもの、それから地方自治法等に基づく条例による事務処理特例の運用により市町村が処理するもの、これに限られるわけでございますので、全ての事務ということではございません。

【伊藤岳 参院議員】 昨日レクで聞きましたけど、要するに全ての事務ということになりますと言っていましたよ。そういうことになるんですよ。

 各大臣の指示の下で、ほとんどの事務処理が調整の対象となるということです。一号、二号、三号、今説明されましたが、そういうことですよ。

 総務省、法案の二百九十八条第一項、事務の区分の中では、二百五十二条の二十六の四、事務処理の調整の指示は、第一号法定受託事務とするとされています。これ間違いないですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 御指摘のとおりでございます。

【伊藤岳 参院議員】 だから、法定受託事務となる。

 したがって、二百五十二条の二十六の四、これ全体がですよ、これ自体が法定受託事務ですから、代執行まで含む都道府県を通じた国による強力な関与、権力関与となるんですよ。

 例えば、今、沖縄の辺野古の新基地建設とか台湾有事を想定した先島諸島の住民の避難計画とかに住民の懸念や不安が広がっています。そうしたときに、こうした強力な権力関与、権力の関与を与える、地方自治法の原則を内側から覆すことは絶対にこれ容認することはできないと思います。

 六日の委員会で、補充的指示は拒否できるのかと質問したら、局長は、補充的指示については従っていただくと即答されました。

 事務処理の調整の指示も拒否権はないんですか、どうですか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 事務処理の指示でございますけれども、これは法的な指示でございますので、都道府県についてはこれは法的な義務が生じるということになると思います。

 その先、調整については、これは直接的に法的な義務が掛かるというわけではございません。

【伊藤岳 参院議員】 従っていただくということですね。

 じゃ、地方自治体が拒否した場合、どのような措置がとられると想定されるんでしょうか。罰則だと明言はされていなくても、例えば財政上の差別が伴うことはないのだろうか。例えば、この間、政府の推進する国策に協力すれば交付金などで優遇するということをやられてきましたよね。これ、財政上の差別などはないと言い切れますか。また、その根拠はありますか。

【山野謙 総務省自治行政局長】 必要な指示、これは調整の場合にも必要であるから行うということでございまして、財政の措置云々にかかわらず、必要なものについては法的な義務が生じるというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 今日いろいろ聞いてきましたけれども、聞けば聞くほど一層問題点が浮き彫りになる法案だというふうに思うんです。

 引き続き、当委員会での十分な審議を求めて、同時に、引き続き問題点を問うていくことを述べて、質問を終わります。