議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
先ほどの理事会で、この審議の後、採決することが提案されましたが、本日の採決はするべきではないと強く申し上げて、以下、質問に入ります。
前回の当委員会で、個別法に規定されている三百六十二件の指示の規定について、各省庁における精査がどうなっているかの報告を求めました。
事態対処法で定められている武力攻撃事態への対応については必要な規定が設けられていて、本改正案に基づく関与は想定されていないと山野自治行政局長は答弁してきました。この事態対処法については必要な規定は設けられているというのは内閣官房が精査した上での判断だと田中行政課長から説明を受けました。
総務省も、この判断、つまり事態対処法については必要な規定が設けられているという考えでいいのですね。
【山野謙 総務省自治行政局長】 お答えいたします。
国民の生命等を危険から保護するための法律については、それぞれの所管の省庁において課題の把握が、取組が行われ、課題が生じたものについては必要な改正が行われているものと認識しております。御指摘の事態対処法についても、これまで本委員会において内閣官房からも答弁がございましたように、武力攻撃事態等の対応について必要な規定が設けられているものと認識しております。
総務省としても、武力攻撃事態等への対応については事態対処法制において必要な規定が設けられており、これに基づき対応することとなるものと理解しておるところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 今局長から答弁がありましたが、事態対処法のこの個別法の指示の規定は所管省庁である内閣官房が判断していると、規定はしっかり整備されているというのであればですよ、個別法に任せればいいじゃないですか。個別法に依拠して、本改正案に基づく関与の対象にはならないでよいではありませんか。
なぜ、指示権は特定の事態を除外するものではございませんとして、事態対処法を本改正案に基づく関与の対象とするんですか。
【山野謙 総務省自治行政局長】 本改正案は、答申を踏まえ、特定の事態の類型に限定することなく、その及ぼす影響の程度において大規模な災害、感染症の蔓延に類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例を設けるものでございまして、補充的な指示についても、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合に行うことができる、これは二百五十二条の二十六の五にこういう規定を置いておるわけでございます。特定の事態を除外していることでないことは条文上も明らかでございます。
その上で、指示の行使に当たっては、限定的に行うための要件を条文上規定しております。すなわち、この同じ規定におきまして、まず事態の規模及び態様、地域の状況等を勘案すること、その担任する事務に関するものであること、個別法に定めがある場合を除くこと、そして生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するため特に必要があるときに補充的な指示を行使できるものと規定してございまして、当該事態において個別法に必要な関与の規定が整備されている場合には、各大臣において必要と認めるときに当たらず、補充的な指示を行使することにならないことも、これは条文上に規定されているところだと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 そんなことをいろいろ書かなくたって、もし特定の事態が生じたならば、そのときに個別法を改正すればいいだけじゃありませんか。つまり、立法事実はないということですよ。
生命等の保護の措置だ、指示権だと言えばもっともらしく聞こえますが、発生するおそれなど極めて曖昧な基準で、政府の独断で判断すれば、憲法が掲げる団体自治も住民自治も踏みにじって政府の強権が発動するという、地方自治そのものを根本から壊すものになりますよ。安保三文書に基づいて、空港、港湾の軍事優先利用等を指示することを可能とします。戦争する国づくりを担うものじゃありませんか。
更に聞きます。
ほかの個別法に規定されている指示の規定については、指示の規定については、各省庁における精査の状況をつかみ、個別法の指示権で何が可能で何が課題であるかを把握したんでしょうか。
【山野謙 総務省自治行政局長】 私ども、この三百六十二件の指示につきましては、これは様々な規定がございます。例えば事業活動の適正化のために設けたものなど多種多様にわたるわけでございますが、法制化に当たりましては、国民の生命等の保護に関する指示に関する法令について、法律上、どのような場合にどのような要件の下で国の役割が求められ、指示が設けられているかを確認しておりまして、その結果として本改正案を立案したところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 だから、立法事実は全く存在していないんです。
沖縄県名護市にお住まいの方からファクスが届きました。ここにおられる総務委員全員の下にも同じファクスが届いたと思います。次のようにつづられておりました。
同法案が政府官庁への白紙委任状態にあると考えると、私は空恐ろしいことを想起せざるを得ない、地方公共団体を縛る先にかいま見えてくることは住民の基本的人権の剥奪だ、そこには悪夢のような戦前回帰が待っているだろう、地方自治が日本国憲法に組み込まれたのは、住民自治、団体自治がなかった戦前、戦争体制を国の隅々まで容易に貫徹できたからだ、もしもこうして地方自治が剥奪されてしまうならば、日本国憲法の骨が、肉が剥ぎ取られていくに等しいだろうと訴えて、同法案を廃案に追い込んでいただきたいと結んでいます。私も全く同感です。
そして、地方自治体首長からも地方自治法改正に懸念の声が広がっています。
今日資料をお配りしました。
先ほど岸委員が紹介した佐賀の知事の記事は左の上です。先ほど岸さんがこれ使ったので、私、別なのを紹介します。
この右下の記事の一番下の段落に赤線を引っ張りましたが、東京世田谷区の保坂区長の話です。自治体への国の特例関与を包括する一括法ではないか、コロナや災害以外を全部含めて白紙委任するのは有事法制のつくりと一緒だと指摘しています。その隣、総務大臣も務められた片山元鳥取県知事は、必要性を全く感じない、立法事実がないから作る必要もない法律だと一喝をされています。
松本総務大臣、大臣は、答申後、地方六団体の意見を伺いながら法制上の検討を行ってきたと答弁されてきました。しかし、地方自治体の首長に、首長経験者から強い懸念の声が次々と広がっているではないですか。それでもこの法案通すんですか、大臣。
【松本剛明 総務大臣】 委員がお示ししました資料を拝見をしましたところ、沖縄県の玉城デニー知事は、想定外の事態に万全を期すという観点から必要性は認めるとおっしゃっていただいております。
これからも、御意見をいただいてきたところでございますけれども、申しましたように、本改正は、地方六団体の代表も構成員とする地方制度調査会の答申に基づくものでございます。この答申は、地方六団体等からも意見聴取した上でお取りまとめいただいております。
また、この改正案を検討するに当たりましても、地方自治法の規定に基づいて地方六団体に情報提供を行い、自治体と丁寧に調整を行った上で立案をいたしました。知事会からは御要望をいただき、補充的な指示を行う際には、あらかじめ自治体に対して、資料、意見の提出の求め等の適切な措置を講ずるよう努めなければならないことといたしました。
引き続き、自治体の皆様にも丁寧に御説明を申し上げたいと思いますし、総務省として、法案が成立した際には、その施行に当たりまして、法律の運用の考え方について各府省へも周知徹底を図ってまいりたいと思っております。
地方分権ということに関連して申し上げれば、この本改正案は、地方分権一括法で構築された国と地方の関係の基本原則にのっとって、現行の国と自治体の関係に関する規定と明確に区分した特例を国民の生命等の保護を的確、迅速に行うため規定するものでありまして、地方分権に反するものではないと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 大臣、都合のいいところだけ取らないでくださいよ。首長さんが何を言わんとしているのか、しっかり受け止めるべきだと思います。
本法案は通すべきではないと訴えて、質問を終わります。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党、私は、会派を代表して、地方自治法の一部を改正する法律案への反対討論を行います。
まず、地方自治体から懸念の声が大きく広がる中、今採決しようとすることに強く抗議いたします。
本改正案は、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断すれば、生命等の保護の措置の的確かつ迅速な実施を確保するために国が地方自治体に指示をすることができる指示権を新たに導入するものです。地方分権を覆すだけでなく、憲法が保障する団体自治、住民自治を根本から破壊し、地方自治体を国に従属させるものであり、断固反対です。
我が国を悲惨な侵略戦争に導いた戦前の中央集権的な体制の下、地方自治体は戦争遂行の一翼を担わされました。その深い反省の上に、日本国憲法は第八章に地方自治を明記し、団体自治と住民自治を保障しました。ところが、歴代の自民党政権は、自治体の権限や財源を抑制し続け、一九九九年に成立した地方分権一括法でも、地方分権を掲げて機関委任事務を廃止したものの、広範な自治体の事務を法定受託事務とした上に、国による強力な関与の仕組みを法定し、自治事務に対しても国による是正の要求を可能としてきました。
本改正案による指示権がとりわけ重大なのは、国による強制的な関与が基本的に認められない自治事務にまで国が極めて強く関与できる仕組みとなっていることです。
国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断する類型も基準も、大規模な災害、感染症の蔓延その他としているだけで極めて曖昧で、さらに、発生のおそれがある場合も判断することができるなど、恣意的判断が可能です。
当委員会の審議では、いわゆる補充的指示だけでなく特例関与がたやすく発動され、発動されれば強力な権力的関与として働くことが明らかになりました。
総務省は個別法には三百六十二件の指示の規定があることを示しましたが、総務省はこれら個別法で規定されて想定される事態や指示の妥当性や課題についての検討すらしておらず、そもそも立法事実が成り立ちません。
その一方、事態対処法などは対象除外にならないと繰り返しています。安保三文書に基づく戦争する国づくりは断じて許されません。
本法案は、廃案とすべきであり、採決すべきではありません。
第二に、本法案は特例関与の中で国による自治体職員の派遣のあっせんを可能とするものです。国の指示に基づく業務遂行のために自治体職員まで駆り出すものであり、重大です。
第三に、本法案は、他の自治体又は国と協力し情報システム利用の最適化を図ることを自治体の努力義務とするもので、国が進める情報システムの整備の取組に幅広く協力をしていくことを自治体に求めるものです。自治体に情報システムの利活用を押し付けることは反対です。
以上述べて、反対討論といたします。