議事録

2024年6月12日 地方創生デジタル社会特別委員会(地域公共交通を守れ/ガバメントクラウド、官製デスマーチについて)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。政府が二〇二五年度末を期限とした自治体情報システムの標準化についてお聞きします。

 河野大臣は本会議で、標準仕様書が三回以上改定されたものが二十業務のうち十二業務と答弁されました。システム構築の基礎である標準仕様書が短期間に繰り返し改変されて定まらないことは、効率的どころか自治体とベンダーに多大な負担を掛けているというふうに思います。

 そして、今、自治体は限られた期間に自治体情報システムの標準化へ移行する作業に必死に取り組んでいます。二〇二三年度末時点でも、私の地元埼玉では県及び十九市町村が移行困難システムがあると国に報告しましたが、移行困難自治体と認められたのは八自治体だと聞いています。ベンダーが撤退したという自治体もあります。

 デジタル庁にお聞きします。

 先ほどの片山委員の質問も重なる部分もあるんですが、自治体標準化システムへの二〇二五年度末の期限内の移行できる自治体、先ほど片山委員、百七十一と言いましたが、デジタル庁からもその数字をお聞きしたい。あわせて、困難自治体は幾つか。先ほどの答弁ですと、要するに二〇二五年度末に移行完了はできないということですよね。どうですか。

【楠 正憲 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。

 今年三月に公表いたしました昨年十月調査時点における移行困難システムに該当する見込みのシステムを有する自治体は百七十一団体であり、保留を含めた場合の自治体数は二百二十一団体でございます。

 ただ、これ調査以降も移行困難システムに該当するシステムの申請を受け付けているところでございますので、現時点において二〇二五年度末の移行期限に間に合う自治体数を正確に申し上げることは困難でございます。

【伊藤岳 参院議員】 だから、二〇二五年末までに間に合わない自治体はますます増えるということですね。

 今日、資料をお配りしました。日経クロステック、五月七日付け、官製デスマーチ、つまり、死の行進がやってくるというタイトルの記事です。タイトル、恐ろしいタイトルですが。

 全国千七百自治体が一斉にシステム変更を強いられて、二〇二五年度末といいますが、年度末は確定申告があったり転出入の時期がありますから、それを避けようとすると、実際、二〇二六年一月、つまり、これから残り一年半で、通常一つの銀行でも四年掛かるような作業をベンダーが完遂させなければならないということです。とりわけ、定額減税など政府の仕様変更が追い打ちを掛けています。

 システム関係者、システム開発の担当者らが過酷な労働を強いられる、いわゆるデスマーチ、死の行進が始まっているとの指摘ですが、これ、デジタル庁、この官製デスマーチという事態がなぜ生じているのか、先ほど個別に相談しているという話がありましたが、官製デスマーチという事態がなぜ生じているのか、認識を伺いたいと思います。

【楠 正憲 デジタル庁統括官】 お答え申し上げます。

 一般に、これまで自治体のシステムというのは大体五年置きぐらいに大規模な移行というのを行っていて、ただ、これは、時期ができるだけ重ならないように時期をずらして、五年間であれば五分の一ずつ移行していくですとか、大規模の政令市等の自治体で複数システムを組み合わせて使っているような場合には、ある年には住民記録と何とか、別の年には何とかというふうにローリングして移行していくというのが一般的でございます。

 ただ、今回、二〇二五年に向けてということで、実質的に二〇二四年度、五年度の二年間でやるということになりますので、五年間で分散していたものをこれぎゅっと二年間に集めれば、それだけでやはり業務量としては二・五倍以上になってくるということで、そもそもの業務量というのが増えるだろうと、そういうことは認識をしておりました。

 一方で、私ども、ベンダーの労務管理等をやっているわけではないので、実際にどのぐらいその官製デスマーチといった状況があるのかというところは承知をしておりませんけれども、例年と比べて非常に負担が重くなるというような認識は強く持っていたところでございます。それに加えて、この移行だけではなくて、先般、制度改正に対応するための現行システムの開発作業等に当初の想定よりも多くのリソースを割く必要があるというような声も聞いているところでございます。

 デジタル庁としては、自治体や事業者の状況を引き続き丁寧かつ具体的に確認をして、円滑かつ安全な移行に向けて、各制度所管府省庁と連携をして最大限支援してまいりたいというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 ベンダーの業務がデジタル庁の管轄じゃないと言うけれども、でも実際、死の行進というような事態が、深刻な事態が起きているんですよ。ちょっと無責任な答弁だと思いますね。しかも、定額減税の仕様書変更などでそれに追い打ちを掛けているわけですから、こうした事態を深刻に受け止めて対応すべきだと思います。

 総務省にお聞きします。

 本会議で松本大臣は、デジタル基盤改革支援補助金は自治体の意見も踏まえながら補助金に係る対応を検討してまいりますと答弁されましたが、自治体は不安に包まれています。

 この標準化の移行に要する費用は、私、全額国費で措置すべきだと思いますが、この財政措置についてどういう作業を進めているのか、教えてください。

【三橋一彦 総務省大臣官房審議官】 お答えいたします。各地方公共団体が標準準拠システムへ移行するための経費を支援いたしますデジタル基盤改革支援補助金につきましては、昨年の移行経費調査の結果を基に令和五年度補正予算で五千百六十三億円の所要額を計上し、総額六千九百八十八億円としております。

 本補助金は、人口やシステムの実態に基づく分析結果により配分しております。各団体には、各団体における効率的な執行に向けての情報提供も行っておりまして、現在、各団体で移行経費の精査をいただいているというところでございます。

 こうした精査の結果や執行状況も踏まえながら、円滑かつ安全に標準準拠システムに移行ができるよう、引き続き地方公共団体の意見を丁寧に伺いながら補助金に係る対応を検討してまいります。

【伊藤岳 参院議員】 埼玉県知事も国に支援を要請する緊急事態です。移行費用に加えて運営経費、運用経費が数倍と示された自治体もあります。是非この国費での措置を検討していただきたいと思います。

 次に、地域公共交通について伺います。

 国交省にまずお聞きします。

 私、三月の予算委員会で、全国や首都圏の乗り合いバス路線の完全廃止・撤退キロ数について質問しました。そこでお聞きしますが、首都圏において二〇二二年度末と二〇二三年度末の廃止キロ数はそれぞれ幾つですか。また、うち埼玉県どうなっていますか。

【舟本浩 国土交通省大臣官房審議官】 お答え申し上げます。

 首都圏の一般乗り合いバスのうち完全廃止された路線については、二〇二二年度で合計三百十三キロであり、このうち埼玉県については八キロとなっております。また、二〇二三年度におきましては、首都圏で完全廃止された路線は合計九百二十七キロでございまして、このうち埼玉県については五十二キロとなっております。

【伊藤岳 参院議員】 これ、事態の深刻がすごいですよね。つまり、完全廃止した路線、首都圏では約三倍、一年間で。埼玉はもっとすごいですけれども、いう状況です。

 加速度的に乗り合いバスの廃止、撤退が進んでいます。しかし、この間、地域によっては自治体や事業者の努力で変化も生まれています。

 二つの事例を紹介します。

 東京都の葛飾区は、バス事業者に対する新たな助成金の制度、約三千五百万円の予算を投じて開始しました。バス運転士の住居手当や借り上げ住宅の費用を運転士一人当たり月額二万円を上限に補助するというものです。区の担当者は、運転士の確保が課題になっている、運転士の確保が課題になっている、職員の高齢化が進み、定年退職が増加、採用人数を増やしたいと、この創設した意図について話しておられます。

 埼玉県新座営業所の管内の市内循環バスからの撤退を表明していた東武バスウエスト、各関連市町村に通知がありまして、令和七年度以降も継続運行すると前向きの回答が届きました。その回答を見ますと、待遇改善策として、運転士給与のベースアップ、入社祝い金制度、転居に伴う住居支援を実施した、運転士不足率マイナス一八%だったが五%程度回復したと書かれています。ただし、六十歳以上の比率が二〇%を超え、高齢化も進んでいるため、運行ダイヤの見直しなども含め調整させていただきたいと課題も提起されています。

 運転士の給料を上げたりの処遇改善などで運転士を確保しているんですね。事業者も、地域公共交通なんだから、むげに廃止、撤退、減便というわけにはいかない、何とか維持したいと考えているわけです。前向きな努力が始まっていると思います。しかし、更なる支援がないと、高齢化の下、立ち行かなくなるというのが事業者の切なる声だと思うんです。これは首都圏の事業者共通した大きな課題となっていると思うんですね。

 国交省にお聞きします。こうした動きが首都圏、全国にほかにありますか。つかんでいますか。

【舟本浩 国土交通省大臣官房審議官】 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、バス事業者により路線廃止の意向が示されたものの、地域公共交通会議等、正式な会議の前に、事前の協議において路線が存続することになった事例があるというふうに、こういう事例があることには承知をしてございます。

 その上ででございますけれども、持続可能な地域公共交通の在り方につきましては、自治体、国、公共交通事業者など地域の多様な主体が参画をいたします地域公共交通会議といったような会議が制度化をされてございます。この会議におきまして、地域の特性や現況を踏まえて丁寧に御議論をしていただくことが重要だろうというふうに考えてございます。

 具体的な、先生今御指摘ございましたような、路線バスの維持をする又は廃止をするといったような議論につきましても、日頃から路線バスが置かれている状況などをこうした場において関係者で共有をしていただくことで適切な結論を出すことが可能になるものと考えてございます。

 国土交通省といたしましては、先ほど申しました地域公共交通会議などに地方運輸局が参画してございますので、この地方運輸局等を通じまして適切な助言、また動向についてもしっかり把握をしてまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 先ほどの数字から分かるように、今、手を打つ必要があります。その中で、民間の努力、自治体の努力によって前向きな変化が生まれているのですから、国交省も一歩踏み出して、路線バスの廃止、撤退を食い止めるために動き出すべきだと思います。

 こやり政務官に伺います。

 事業者や自治体を支援するためにも、バス運転士の高齢化が進行する中で、退職者数に見合った若い層の採用を増やせるように、賃上げにつながる支援、住居支援などに使える新たな財政措置や今ある支援策の拡充、必要ではないでしょうか。どうですか。

【こやり隆史 国土交通大臣政務官】 委員御指摘のとおり、バス路線、これが将来にわたって維持され、しかも利便性の高い公共交通機関であり続けられるように、バス運転者の処遇の改善、これを図っていくことは大変重要であるというふうに考えております。

 このため、先ほど委員もやり取りがありましたように、地方公共団体でも様々な知恵を絞っていただきながら工夫をしていただいておりますけれども、国としては、主としてバス事業者の経営改善、体力強化につながる取組を進めているところでございます。

 具体的には、運賃の改定の仕組みについてより柔軟化しまして、より収入増につながる制度見直しを行ったことに加えまして、業務効率化、省力化のための取組への支援、あるいは採用活動、二種免許取得に係る費用に対する支援、こうしたことを今進めているところでございます。

 こうした取組を通じまして、バス事業者の経営改善あるいはバス運転者の待遇改善を図っていけるように、これは各自治体とも協力しながら必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに思います。

【伊藤岳 参院議員】 自治体の知恵に比べて、国交省が、やっぱり運転士確保の処遇改善という策、まだ踏み込んでいないなと思うんです。

 中でも、地域内フィーダー系統補助の増額は喫緊の課題です。

 埼玉県のときがわ町でお話聞いてきました。路線バスを運行する事業者が、夕方以降の通勤通学時間帯の運行から撤退してしまったそうです。事業者は、補助金の中で、範囲では足らずに、分の良い民間会社の送迎に夕方はシフトしちゃった。夕方は運行しない。現在、町は、町が持っているバスを使用して、運転士は観光バス会社に委託して無料代替バスを運行しているそうです。もう涙ぐましい努力です。渡邉町長は、一般財源から持ち出してフォローしていると窮状を訴えておりました。

 こやり政務官、斉藤大臣は、前回、予算委員会などで、決して地域フィーダー補助足りているという認識ではございません、地域公共交通をどう守っていくか、予算の増額も含めてと答弁されていましたが、この地域公共交通事業の地域内フィーダー系統補助の増額、来年度予算に向けて省内の検討はどう進んでいますか。

【こやり隆史 国土交通大臣政務官】 委員御指摘の地域内フィーダー系統、こうしたこと、あるいは最後のラストワンマイル、これをどうしていくかということについて、各地域、地域ごとに様々違いはありますけれども、大変厳しい状況にさらされている、これをどうやって守っていくかということが大変重要な課題であるというふうに認識をしているところでございます。

 国交省では、本年五月、地域の公共交通リ・デザイン実現会議を取りまとめを行いまして、その中で、こうした厳しい地域交通を維持していくためには、いろんな地域にある資源、こうしたものを最大限活用していく、多様な関係者による連携、協働の推進が重要であるということが方針として示されたことも踏まえまして、現在、具体的な施策の検討を行っているところでございます。

 地域公共交通を将来に向けて守るために、引き続き委員御指摘の地域内フィーダー補助を始めとする地域公共交通の維持、確保に必要な予算に努めていきたいというふうに考えております。

【伊藤岳 参院議員】 地域内フィーダー補助に必要な予算確保を目指していきたい、答弁ありました。是非実現してほしいと思います。今、赤字内の二分の一以内の補助が四分の一しか補助されていないという実態ありますから、これ是非脱却してもらいたいと思うんです。

 今日、自見大臣に来ていただきました。

 内閣府の地方創生では、人が集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくるとして、都市のコンパクト化と周辺等の交通ネットワークの形成、つまり都市内の拠点と拠点を公共交通ネットワークで接続する都市構想に取り組んでいます。

 そこで伺いますが、今お話ししたような地域路線バスの加速度的な廃止を食い止めなければ、この地域と地域を結ぶ住民の足、ネットワークが分断されることにならないでしょうか。認識どうですか。

【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 お答え申し上げます。バス路線を始め、地域公共交通は、地域と地域を結ぶコンパクト・プラス・ネットワークを進める上で不可欠なサービスの一つであり、デジタル田園都市国家構想総合戦略においても重要政策、重要施策の分野と位置付け、取組を進めているところであります。

 国土交通省においては、昨年、地域交通法を改正し、バス、タクシー等、地域交通の再構築に関する仕組みの拡充に加えまして、交通事業者が行うDX、GX等の投資や、あるいは、先ほど、こやり政務官からも御説明があった二種免許取得等、人材確保に資する取組に対する支援等、関係予算、制度も拡充しながら、バス路線等の維持、そして活性化に向けた地域交通、公共、地域公共交通のリデザインを進めていると承知をしてございます。

 また、関係省庁により設置をされてございます地域の公共交通リ・デザイン実現会議におきまして、地域公共交通を維持していくためには多様な分野の関係者による連携、協働の推進が重要であるとの方針も示されたところでございます。

 こういった、関係する制度そして予算等を最大限活用いたしまして、地域と地域を結ぶネットワークであるバス路線の維持確保に向けて全国の取組をしっかりと支えてまいりたいと考えてございます。

【伊藤岳 参院議員】 リデザイン構想の話も出ましたけど、これ、デジタル化と絡めないと交付されない補助が多いんですよね。

 先ほど話したように、今乗り合いバスの事業者、もうそういう状況じゃない、四苦八苦、何とか確保するために、維持するために四苦八苦です。デジタル化の余裕ないんですよ。

 だから、自見大臣、もう一度聞きますが、地方創生の面からも、内閣府地方創生の分野でも運転士の確保に資する仕組み、検討を始めるべきだと思うんです。どうでしょうか。

【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(地方創生)】 バス路線を始めとする地域の公共交通というものは非常に重要だという認識を私どもも持っておるところでございます。

 引き続き、関係する制度、予算等も最大限に活用し、また、地域の悩みに寄り添って対応してまいりたいと考えてございます。

【伊藤岳 参院議員】 終わります。