議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。会派を代表して、デジタル社会形成基本法等の一部改正案について質問します。
デジタル化は、新しい科学技術の発展であり、その活用は国民生活の利便性を大きく高めるものです。同時に、デジタル技術や最先端のAIなどを開発、利用するGAFAなどの巨大IT企業は、圧倒的な世界市場のシェアの下で革新的技術の独占とデータの囲い込みによって巨大な利益の獲得を競っています。
全ての国民がデジタル技術にアクセスできる権利、不利益、不公正な取引や詐欺などにさらされる危険から消費者を擁護する仕組み、個人情報保護の徹底と自己情報コントロール権などの保障が不可欠であり、デジタル関連の諸施策を進める上では、十分な情報公開の下で国民の理解と納得を得ること、地域住民の意思と地方自治体の主体的な判断が尊重されるべきです。
ところが、岸田政権は、これらを全く置き去りにしながら、国、地方等が持つ行政情報の利活用を求める財界の意向を最優先に、強引かつ高圧的なやり方で政府のデジタル政策を押し付けています。
第一に、岸田政権があくまでも現行の健康保険証を廃止するとしている問題です。
武見厚労大臣は、マイナ保険証の利用率にかかわらず、二四年十二月二日から健康保険証の発行を終了すると言い放ちました。国民の不安をあおり、マイナ保険証の利用を迫ることはやめるべきであります。武見大臣、マイナンバーカードの取得もマイナ保険証の利用も任意であり、義務ではありませんね。明確な答弁を求めます。
総点検とは別に、データを住基台帳と照合した結果、新たに判明した保険証のひも付け誤りは何件になるのですか。マイナ保険証のひも付けは、住基台帳のデータベースを使った個人の特定の中で、氏名や住所の表記などからどうしても誤りが生じてしまうという構造的な欠陥があり、政府の総点検では全く解決されていません。マイナ保険証のひも付け誤りは、判明したもの以外にも更にまだ残っているのではありませんか。残っていないと断言できますか。以上、武見大臣の答弁を求めます。
マイナ保険証の利用率は、四月時点で六・五六%です。武見大臣、マイナ保険証の利用が依然として低い水準にとどまっている原因をどう分析していますか。国民の不信が背景にあると考えませんか。
河野大臣は、マイナ保険証の利用を受け付けていなかったり、マイナ保険証の利用者に紙の保険証の提示を求める医療機関があれば、専用窓口に連絡するように呼びかける文書を配布しました。河野大臣、密告を勧めるおつもりですか。マイナ保険証の利用を強要する保険証の廃止は撤回すべきです。答弁を求めます。
次に、スマートフォンへのマイナンバーカード機能の搭載についてです。
本法案は、個人を特定する機微な情報であることからマイナンバーカードにしか記載されてこなかった氏名、住所、生年月日、性別のいわゆる四情報と顔写真をスマートフォンに搭載するものです。スマートフォンを使ってマイナンバー法上の本人確認が可能となり、利用範囲が更に広がることは、同時に、紛失や盗難などを通じてマイナンバーカードの搭載情報が他人に渡る危険性も格段に高くなり、詐欺の標的にもなる危険性をはらむものとなります。既にマイナンバーカードの目視確認を悪用して他人のスマホを乗っ取るSIMスワップ詐欺が相次いでいます。
政府は、マイナンバーカードは安全、安心と繰り返してきました。河野大臣、安全、安心の過信が詐欺犯罪の狙い目になったのではありませんか。読み取りアプリの無償提供などを表明していますが、イタチごっこにならない保障はありますか。併せて答弁ください。
松本大臣、施設に入所する高齢者、障害を持つ方などに対応して総務省が発行した暗証番号を不要とする顔認証マイナンバーカードは、スマートフォンに搭載できるのですか。
消費者基本法に基づき、二〇二五年には第五期消費者基本計画が決定されます。基本計画の策定に向けた基本的方針では、高齢化の進展やデジタル技術の革新で消費者を取り巻く環境には著しい変化があるとして、デジタル社会における誰しもが不利益、不公正な取引にさらされる可能性に配慮した消費者利益の擁護を掲げています。
自見大臣、マイナンバーカード機能のスマホ搭載は、高齢者を含めた多くの国民が言わば常に実印と身分証明書を一緒に持ち歩く状況をもたらします。どのように対応するのですか。答弁を求めます。
国の情報システムと自治体情報システムの標準化についてです。
デジタル庁は、国の行政機関が行う情報システムの整備、管理に関する必要な予算を一括して要求し、確保しています。河野大臣、二〇二一年度補正予算以後二〇二四年度の当初予算までにデジタル庁に一括計上された国の情報システムの整備、運用経費の合計額は幾らですか。
デジタル庁は、二〇二〇年度の時点での政府情報システムの運用等経費及び整備経費のうち、システム改修に係る経費を二〇二五年度までに三割削減することを目指すとしています。しかし、国の情報システムの整備、運用に係る経費の全体は、毎年度増額する傾向です。運用等経費などの三割削減は達成できるのですか。
本法案は、法人の商業登記や不動産登記のデータベースを公的基礎情報データベース、すなわちベース・レジストリとして整備し、行政機関の間で情報連携をさせます。
河野大臣、これまで官報の印刷などのために国立印刷局が保有してきた法人などのデータを一括管理し、これを活用し、情報連携を行うならば、情報漏えいの危険性は高まるのではありませんか。この業務の主務大臣に内閣総理大臣を加える必要がなぜあるのですか。
国の行政機関等のガバメントクラウドは、アマゾンなどの海外クラウドサービスに圧倒的に依存しています。国の行政機関等のデータが海外事業者のクラウドに保有されることの危険性について考えていますか。
自治体情報システムの標準化への移行が地方自治体に大きな苦痛をもたらしています。
二〇二五年度までの移行期間に間に合わない自治体は、二十の政令指定都市の全てを含め百七十一団体に上り、人口では約五千万人に及びます。
自治体情報システムの標準化は、自治体の施策を国が構築するシステムの鋳型の範囲に収め、自治体が住民福祉のために行う独自施策を大きく制限するものです。全ての自治体を対象に、期限を決めて二十もの基幹業務をガバメントクラウドに構築された標準準拠システムに移行させるやり方には無理があります。しかも、システム構築の設計書となる標準仕様書が、定額減税の導入など岸田政権の都合で繰り返し改版されてきたことは重大です。
河野大臣、標準仕様書が二〇二二年八月以降二〇二四年四月までに三回以上改版されたのは、二十の対象基幹業務のうち幾つあるのですか。
自治体の持ち出しが増えています。松本大臣、デジタル基盤改革支援補助金の上限を撤廃し、同補助金は二〇二五年度以降も延長すべきではありませんか。
以上、答弁を求め、質問とします。
【河野太郎 デジタル大臣】 まず、マイナ保険証が利用できなかった場合の専用窓口への連絡の呼びかけについてお尋ねがありました。
マイナ保険証については、一部例外を除き、全ての医療機関と薬局においてカードリーダーの設置とマイナ保険証の受付が義務化されています。
そのような中、マイナ保険証の利用を希望する国民の皆様がより安心して御利用いただけるよう、医療機関などでマイナ保険証が利用できなかった場合にマイナンバー総合フリーダイヤルに連絡いただくよう、デジタル庁ホームページでも従来から周知しており、同様の内容を文書で周知したものです。
次に、健康保険証の廃止についてお尋ねがありました。
マイナ保険証は医療の質の向上につながるものであり、その効果の早期発現のため、現行の健康保険証の発行を十二月二日に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することとしており、この方針に変更はありません。
次に、マイナンバーカードについてお尋ねがありました。
マイナンバーカードの券面確認はアナログな目視に頼らざるを得ないことから、デジタル技術の活用を進め、厳重な不正行為対策が講じられたICチップを読み取ることで確実な本人確認を推進していくことが重要です。
そのため、デジタル庁において、既にあるパソコン用カード読み取りアプリを周知するとともに、自らスマホ用カード読み取りアプリを開発する必要性などについて検討を進めます。
また、マイナンバーカードのセキュリティー対策については、次期カードを含め、適切な対策を行い、国民の皆様が安心して利用できるよう努めてまいります。
次に、国の情報システムの予算額についてのお尋ねがありました。
二〇二一年度補正予算から二〇二四年度当初予算までにデジタル庁に一括計上された国の情報システムの関係予算の総額は一兆七千八百六十八億円です。
次に、政府情報システムの運用経費等、経費などの三割削減目標についてのお尋ねがありました。
二〇二〇年度当時の政府情報システムの運用環境を前提に、システム経費全体のうち、運用等経費及び整備経費のうちのシステム改修に係る経費の決算額を二〇二五年度までに三割削減することを目指しています。
比較に当たっては、経費削減の取組とは直接関係がない他律的な要因、例えば制度改正による新機能追加、サイバーセキュリティー強化、物価高などによる増加分を除くこととしています。
目標達成を目指し、引き続き経費削減に取り組むとともに、最小限のコストで利便性向上などのデジタル化の効果を最大化できるよう取り組んでまいります。
次に、データの一括管理と情報漏えいの危険性についてお尋ねがありました。
国立印刷局が運用を担うことを想定している商業登記関係データベース、不動産登記関係データベース、住所・所在地関係データベースについては、国立印刷局が既に保有しているデータベースとの統合は想定しておらず、情報漏えいの危険性が高まるとは考えておりません。
なお、国立印刷局が実施するベース・レジストリに関する業務については、デジタル庁の長たる内閣総理大臣を主務大臣に追加することとしており、情報管理の徹底について適切に監督指導を行ってまいります。
次に、ベース・レジストリ業務について、主務大臣に内閣総理大臣を追加する必要性についてお尋ねがありました。
国立印刷局が実施するベース・レジストリに関する業務については、デジタル庁が実施する行政分野横断の業務と密接に連携して実施しなければならず、また、データベースに関する技術仕様の見直しなどについて適切に監督を行う必要があることから、デジタル庁の長たる内閣総理大臣を主務大臣に加える必要があると考えております。
次に、ガバメントクラウド上で取り扱うデータの危険性についてお尋ねがありました。
クラウドサービス事業者は、ガバメントクラウド上の情報システムで国や地方公共団体が保有するデータにアクセスできないよう制御されているため、クラウドサービス事業者が行政機関のデータを保有することはありません。
加えて、データを保有する行政機関が必要に応じたレベルで第三者が解読できないようにデータの暗号化処理を行えるようにすることや、クラウドサービス事業者に対してバックアップも含めてデータを日本国内において適切に管理することを求めるなどの安全対策を講じているところです。
最後に、自治体情報システムの標準化についてのお尋ねがありました。
標準仕様書については、制度改正や指定都市要件といった自治体からの要望に応える場合など、必要に応じて改定を行っています。二〇二二年八月から二〇二四年四月までに三回以上の改定がされたものは、二十業務のうち十二業務です。
なお、改定に当たっては、自治体や開発事業者への影響を慎重に確認するとともに、事業者などから寄せられた質問に対し速やかな回答に努めています。
【武見敬三 厚生労働大臣】 伊藤岳議員の御質問にお答えいたします。
マイナンバーカードの取得とマイナ保険証の利用についてお尋ねがありました。
マイナンバーカードは、最高位の身分証として、対面での本人確認など厳格な本人確認の下で交付する必要があるため、取得を義務化せず、本人の申請に基づくこととされているものと承知をしています。
マイナ保険証については、我が国の医療DXを進める上で基盤となる仕組みです。マイナ保険証を利用するか否かは御本人の意向によるものではありますが、一人でも多くの皆様にマイナ保険証を御利用いただけるよう、引き続き利用促進に取り組み、その移行に際してはデジタルとアナログの併用期間を設けるなど、必要な環境整備に取り組んでまいります。
マイナ保険証のひも付け誤りについてお尋ねがありました。
マイナ保険証について、昨年春に別人へのひも付け問題などが報道され、国民の皆様に大きな不安を与えました。このため、全保険者による自主点検に加え、更に入念に登録済みデータ全体について住民基本台帳との照合を行い、不一致があったものについて保険者などによる必要な確認作業を行い、この度、終了をいたしました。その結果、昨年十一月末以降、五百二十九件の誤登録が検知されたところであります。
また、新規のひも付け誤りを防止するため、今月七日より新規の加入者についてJ―LIS照会を行うチェックシステムの仕組みを導入したところであり、こうした取組を通じ、国民の皆様に安心してマイナ保険証を御利用いただける環境が整ったと考えております。
マイナ保険証の利用が進まない原因の分析についてお尋ねがありました。
マイナ保険証の利用が進まない原因としては、ひも付け誤り等による国民の皆様の不安に加え、薬剤情報等のデータを活用したより良い医療を受けることができることなどのメリットが十分に浸透していないこと、医療機関などの窓口で保険証を前提とした対応がなされてきたことがあるものと考えています。
このため、ひも付け誤りを防止するための取組を行い、国民の不安払拭に努めてきたほか、今月より七月までをマイナ保険証利用促進集中取組月間として、医療機関等への一時金の支給や集中的な広報の展開など、関係者が一丸となって利用促進に取り組んでまいります。
【松本剛明 総務大臣】 伊藤議員から二問御質問をいただきました。
まず、顔認証マイナンバーカードのスマートフォン搭載についてお答えいたします。
顔認証マイナンバーカードは、高齢者の方など、暗証番号の設定や管理に不安のある方のために導入した暗証番号の設定を不要としたカードです。このため、暗証番号が必要なカード機能のスマートフォンへの搭載はできませんが、希望される場合には、通常のマイナンバーカードに切り替えることでスマートフォンへ搭載することは可能となっております。
次に、デジタル基盤改革支援補助金についてお答えいたします。
補助金の額について、補助金は人口やシステムの実態に基づく分析結果により配分していますが、自治体による精査の状況も丁寧に伺いながら、実態を踏まえた対応をしてまいります。
デジタル基盤改革支援基金の設置期限は令和七年度末とされていますが、一部の団体の一部のシステムについては、移行作業に多くの時間を要するなど、期限までに移行が困難な状況です。自治体の意見も踏まえながら、補助金に係る対応を検討してまいります。
【自見はなこ 内閣府特命担当大臣(消費者担当)】 伊藤岳議員にお答えいたします。
マイナンバーカード機能のスマホ搭載に関連して、高齢化とデジタル技術の革新の中、消費者保護のためにどのように対応するのかについてお尋ねがありました。
現在、消費者庁においては、高齢化やデジタル化に伴う消費者の保護を重要な課題と捉え、注意喚起や情報リテラシーの向上などの消費者教育等を進めており、来年度からの五年間の消費者政策の方向性をまとめる次期消費者基本計画の策定においても、これらを踏まえ、消費者利益の擁護の観点から検討を行っております。
具体的には、デジタル社会においては誰しもが不利益、不公正な取引にさらされる可能性があることに配慮した消費者利益の擁護、高齢化、孤独・孤立社会に対応した包括的な消費者支援の在り方等の観点について、消費者等の当事者の皆様のお声を聞いた上で策定をしてまいります。