議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
総務省は、本法案では、どのような情報を削除すべきかということについての判断は大規模プラットフォーム事業者が自ら行うことを前提とした仕組みを構築することとしています。衆議院でも繰り返し答弁しています。我が党も、今後策定する政省令が、事業者に対しモデルとなる削除の基準を示し、削除を実行させるというものであってはならないと求めてまいりました。参考人質疑では、大谷参考人が、事業者が自ら基準を作り実行することが大事であることを強調されました。
総務省はガイドラインを作成すると言いますが、何を示すのでしょうか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 お答えします。
委員御指摘のとおり、本法案において、削除基準はプラットフォーム事業者が自らの判断で策定、公表することとしておりまして、運用状況の公表を通じまして基準の見直しが促されていくことを基本としているものでございます。
ただし、表現の自由に配慮しつつも、被害者救済の実効性を確保するため、総務省において、関係団体と協力することにより、ガイドラインなどによりましてどのような情報を流通させることが法令違反や権利侵害となるのか明確になるよう示すことを検討してまいりたいと考えているものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 削除の具体的な基準を示すものではないということですね。確認をしたいと思います。
二〇二一年の法改正で、誹謗中傷等の投稿を行った発信者情報について、SNS事業者等と通信事業者等に対する開示命令の申立ての一体的な審理に基づく開示が可能となりました。
ある弁護士事務所でお話をお聞きしてきましたが、法改正後、開示手続件数は大幅に伸び、膨大な件数となってはいるが、一方で、やはり海外プロバイダー、海外プラットフォーム事業者は開示に速やかに従わず、アクセスプロバイダーのログ保存期間との関係でタイムリミットのあるIPアドレス等の開示については仮処分を利用せざるを得ない状況にあるとのことでした。IPアドレス等の開示では、X社、旧ツイッターは、法改正後、仮処分の担保金十万円を求めるようにもなったというお話でした。
参考人質疑で、清水参考人は、特に海外の大規模プラットフォーム事業者が開示に速やかに従わないと述べられ、ログ保有確認に時間が掛かり過ぎる、誠実にログの有無を調査すべきこと、調査のための合理的期間を定めることが必要ではないか、六か月程度のログ保存義務を課すことを検討すべきだと提言されていました。
総務省は、この提言、検討しますか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 本法案では、各プラットフォーム事業者が、この法案に基づく規律の履行状況につきまして公表する、年一回公表するということでございますので、その公表状況を、先ほど申し上げましたように、有識者会議などを通じまして、そういった履行状況を確認しながら、必要なことについては検討してまいりたいと考えているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 発信者情報の開示は、引き続き時間と費用の壁があるというのが実態です。大規模プラットフォーム事業者の開示命令に対する速やかな対応が大きな課題だと指摘しておきたいと思います。
権利侵害情報の削除について、第二十五条一項で、当該申出を受けた日から十四日以内の総務省令で定める期間内と規定をしています。
総務省にお聞きしますが、法律では十四日以内と定め、総務省は省令で七日以内と定めようとしていますが、それはなぜですか。法律で七日以内と規定しない理由は何でしょうか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 お答えいたします。
情報通信の技術動向は日々刻々と変化をしておりまして、革新的な技術が次々と生まれている状況でございます。こうした最新技術によりまして、違法・有害情報に係る従来の対策手法では適切な対応に苦慮する場面も生じることも想定されるところでございます。
例えば、生成AIの登場によりまして、インターネット上に流通する動画などのコンテンツ量の爆発的な増加が見込まれるほか、精巧な画像、映像技術によりまして実際に権利侵害が発生しているかどうかの判断が難しくなる可能性も考えられるところでございます。
こうした状況に鑑みまして、期間設定に当たっては、一定程度の柔軟性を確保すべく、十四日を上限として一定期間内での対応を求めることとしてございます。
なお、当該上限の下、具体的な期間としては、総務省の有識者会議による報告書を踏まえまして、総務省といたしましては、一週間をめどに省令などに基づく詳細な制度設計を検討してまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 清水参考人が指摘された第二十五条二項の誤りについて、先ほど岩本委員からも誤りではないと御報告がありました。
総務省に聞きますが、どのように誤りではないのか、またこの第二十五条二項が迅速化規律の例外規定にはならないと言い切れるか、説明をしていただきたいと思います。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 お答えいたします。
清水参考人から御指摘がございました、主に三点ございます、少し細かくなりますが説明をさせていただきます。
第二十五条第二項柱書き前段の、同項各号に掲げる区分に応じの同項といいますのは、前項本文の規定にかかわらずの前項、すなわち第二十五条一項を指すこととなると。
それから二点目、第二十五条第一項と同条第二項で同じ内容を通知することになるが、第二十五条第一項では申出を受けてから一定期間内に通知しなければならないこととしている一方で、第二十五条二項に規定する一定の条件に該当する場合には期間の制約がなく、遅滞なく通知すればよいこととしております。
三点目、一定の条件に該当する場合には、第二十五条第二項前段により、送信防止措置を講じるかどうかを判断した後、遅滞なく通知すればよい、この場合、第二十五条第二項後段により、一定期間内に一定の条件のいずれに該当するかを通知しなければならないこととしているということでございます。
総務省といたしまして、清水参考人の御指摘を踏まえまして条文を細かく再度確認をさせていただきましたが、いずれも清水参考人の御指摘は当たらず、条文上の誤りはないということを確認したものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 この二十五条二項が迅速化規律の例外規定にはならないと言い切れるかということもお尋ねしたんですが、後に答弁してもらいたいと思います。
併せてお答えしていただきたいのは、被侵害者からの相談に携わる弁護士さんの間では、第二十五条二項三号のやむを得ない理由が多用されて結局投稿が削除されないことにならないかと大きな懸念が出されています。大谷参考人も、やむを得ない理由は極めて限られた場合だと言われました。
総務省、多忙はやむを得ない理由にはなりませんよね。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 お答えいたします。
第二十五条二項は、同条第一項の一定期間以内に判断、通知を行う義務の例外として、やむを得ない等の一定の事情が認められる場合には、一定期間内に連絡した上で遅滞なく通知を行えば足りるとするものでございます。
これは、期間内での応答が難しい事情がある場合に、対象となるプラットフォーム事業者が期間を遵守することのみにとらわれて申請内容を十分に吟味せず削除してしまい、発信者の表現の自由に萎縮効果をもたらすことがないよう、事業者による的確な判断の機会を確保することを目的とするものでございます。
御指摘のやむを得ない理由といたしましては、例えば天変地異などにより営業所が被災したため期間内での応答が難しい場合など、限定的な理由が考えられるところでございます。御指摘のような場合は該当しないものと想定しているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 多忙、忙しさなどは理由にならないということを確認したいと思います。
清水参考人は、やむを得ない理由の内容を実際にはこういう場合に限定されますよということを、ガイドライン等々、条文解説とか、そういうところで明らかにしていく必要があると述べられました。
総務省はどのように対応していきますか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 本法案が成立した暁には、様々なものにつきまして省令やガイドラインなどで関係団体と連携しながら検討を進めてまいりたいと考えておりますので、必要に応じまして、そういった求めがございましたら考えてまいりたいというふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】 大谷参考人は、本当にやむを得ない理由でなかった場合、被侵害者の側としてどのような手続を次に取れば自分の救済措置が図られるかといったことについてのプロセスが見えるようになっていないと迅速化規律というのが骨抜きになってしまう可能性もあると話されました。
局長、この法案、本法案ではこれに対応できるんでしょうか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 本法案第二十五条第二項第三号の、先ほどから御指摘いただいておりますやむを得ない理由としては、例えば天変地異などにより被災したため期間内での応答が難しい場合などが考えられ、これに該当するようなケースは限られると考えております。
その上で、本法案では、一定期間内に第二十五条第二項三号のやむを得ない理由がある旨を申出者に通知する必要があるとともに、やむを得ない理由が解消次第、対象事業者は遅滞なく削除対応を行うか否かについて通知しなければならないこととされております。
こういったことを通じまして、迅速な被害者救済のための制度内容になっているのではないかと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 グーグル等の米国IT企業の人員削減が顕著です。特にX社、旧ツイッターでは、同社が買収された二〇二二年十月から翌年の二〇二三年五月までの間に、不適切なコンテンツの監視や削除に関わっていたスタッフが三割削減されたと報道があります。これでは有害情報に対応できないと思います。大谷参考人は企業には説明責任があると言われ、清水参考人は実際X社の対応の遅れは顕著となったと指摘をされました。
大臣にお聞きします。海外の大規模プラットフォーム事業者の人員削減が有害情報の対応を悪化させていること、大臣、どう思っていますか。総務省として何ができるんでしょうか。
【松本剛明 総務大臣】 御指摘の報道は承知をしているところでございます。
委員御指摘のとおり、違法・有害情報への適切かつ迅速な対応には専門的な人員の配置が重要であると考えております。そこで、本法案では、権利を侵害されたとする者からの削除の申出を適切に調査するために、大規模なプラットフォーム事業者に対して、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害への対処に関して十分な知識、経験を有する者として、侵害情報調査専門員を選任する義務を課しているところであります。大規模なプラットフォーム事業者には、本法案に基づくこのような義務に適切に対応してもらいたいと考えているところでございます。
御提案させていただいている改正案では、二十四条ではこの専門員の数についても規定をさせていただいているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 大臣も、今、第二十四条の侵害情報調査専門員のお話をされました。この専門員の選任について、清水参考人が、大規模プラットフォーム事業者の場合、代理人の顧問弁護士の事務所の人たちを選任することが想定されるが利益相反が生じ得る、どういうふうに対応を取っていくのかが大事だと述べられました。
大臣、この利益相反をどう考え、どう対応していきますか。
【松本剛明 総務大臣】 本法案では、権利侵害をされたとする者からの削除の申出を適切に調査するために、大規模なプラットフォーム事業者に対して、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害への対処に関して十分な知識、経験を有する者として、侵害情報調査専門員を選任する義務を課しているところでございます。
この選任基準については現時点では未定でありますが、日本の法令や文化、社会的背景に精通した者を想定しておりまして、本法案が成立した暁には、その趣旨が実現されるような運用に努めたいと考えております。
その上で、御指摘がありましたようなプラットフォーム事業者の代理人である顧問弁護士を選任した場合に侵害情報調査専門員として適切であるかどうかにつきましては、当該の者が置かれている立場、背景等の個別の判断になるかと思います。利益相反とならないよう、しっかりと運用いたしたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 この侵害情報調査専門員の選任が生きたものになるように、そして被害者の救済につながるようになることを強く求めたいと思うんです。
最後に、局長にお聞きします。海外の大規模プラットフォーム事業者が、人員不足の下、AIのみにチェックさせていきなり投稿やアカウントを削除する事例、いわゆる誤バン、誤ったバンが発生しているということも問題だと思います。
総務省は、この問題について問題意識持っていますか。具体的にどのように対応しておりますか。
【今川拓郎 総務省総合通信基盤局長】 委員御指摘の件について報道などでは承知をしておりますが、具体的なことについては今確認をできておりませんので、しっかり確認をして、必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 しっかり検討していただきたい。質問を終わります。