議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
本改正法案附則は、NTT法の廃止を含め、NTT持ち株会社及びNTT東西の制度の在り方に検討を加え、二〇二五年通常国会をめどとして、日本電信電話株式会社等に対する規制の見直しを含む電気通信事業法の改正等必要な措置を講ずる法律案を国会に提出すると明記しています。NTT法廃止のための布石を打つものであり、我が党は反対をします。
総務省にお聞きします。
岸田総理が米国を訪問し、未来のためのグローバルパートナーとして日米首脳共同声明が発表されました。この中で、日本及び米国は、信頼でき、より強靱なネットワークを構築するために、志を同じくするパートナーと連携しつつ、ミクロネシア連邦及びツバルに対するケーブルシステムへの一千六百万ドルを含む太平洋地域における海底ケーブル整備のための資金を拠出する意図を有すると記されました。
こうしたデジタル通信インフラの強化は、高速大容量の通信、低遅延な通信、可用性の確保などにどのように有効なのでしょうか。
【田原康生 総務省国際戦略局長】 お答え申し上げます。
社会経済活動のグローバル化が進展する中、日米を始め国際的な情報の流通も拡大しており、私たちの日々の生活ですとか経済活動を維持する上で高速大容量な国際通信を安定的に確保することが重要な課題となっております。特に、四方を海洋に囲まれた我が国にとりまして、大容量、低遅延の通信を可能とする国際海底ケーブルは、欠くことのできない重要な情報通信インフラとなっております。
こうした状況も踏まえまして、政府といたしましては、民間企業などとも連携いたしまして、太平洋地域などにおける国際海底ケーブルの多ルート化の促進ですとか陸揚げ局の分散など、安全かつより強靱な海底ケーブルの実現に向けた取組を推進しているところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 今回の岸田総理の米国訪問は、米国側から大変歓迎をもって迎えられたことが伝えられています。
産経新聞の報道によりますと、米国が岸田総理を国賓待遇で招待した意義についてエマニュエル駐日米大使が次のように述べています。岸田政権は七十年来の日本の安全保障政策の隅々に手を入れ根底から覆した、防衛費のGDP比二%への増額、反撃能力の保有、そのためのトマホークの購入に踏み切った、防衛装備品の輸出にもめどを付けた、日本は今や米国にとって完全な安全保障のパートナーだと述べたと記事にしています。
そして、日米首脳共同声明には米国と自衛隊の作戦及び能力のシームレスな統合が盛り込まれ、日米軍事同盟の大きな変質が宣言をされました。
資料を御覧をいただきたいと思います。総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議、これ第一回の会議の議事概要の抜粋です。
この三枚目を見ていただきたいんですが、この会議は、国家安全保障戦略、つまり安保三文書の一つの中の文書ですが、その中で、総合的な防衛体制の強化と連携等として、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして、研究開発及び公共インフラ整備の分野における取組を関係省庁の枠組みの下で推進し、総合的な防衛体制を強化するとされた政府方針の下に設けられた会議であります。
線を引きました。松本大臣のこれ発言です。大臣はこう述べています。研究開発では情報通信、情報セキュリティー、センシング、これは情報の数値化という意味だそうですが、いわゆるデュアルユースが期待される重要技術課題において協力していける、情報通信の分野では多くの研究開発が行われている民間部門等についても適切なマッチング実施スキームを検討することが有効と発言をしています。
これ、大臣、大臣の発言として間違いないでしょうか、確認です。
【松本剛明 総務大臣】 議事要旨で記載をされているところでございますが、御指摘の昨年八月の第一回閣僚会議におきまして、私の発言、研究開発では情報通信、情報セキュリティー、センシングなどいわゆるデュアルユースが期待される重要技術課題において協力していけると考えている、情報通信分野では多くの研究開発が行われている民間部門等についても適切なマッチング実施スキームを検討することが有効と考える、このように、記載されているように申し上げているとおりでございます。
【伊藤岳 参院議員】 防衛強化のための閣僚会議で大臣はこのように言われたんですね。
この大臣が言われた検討することが有効という意味ですが、これは当然、これ防衛強化のための会議です、国家安全保障戦略の下の会議ですから。関係省庁の枠組みの下で推進する総合的な防衛体制の強化にとって有効だという意味で発言されたんですよね。
【松本剛明 総務大臣】 研究開発について申し上げれば、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発の仕組みは、総務省始め関係省庁が自らの政策目的、民生目的で実施する研究開発の成果を防衛省と共有するものでございまして、情報通信政策において情報通信が国民の生活に不可欠であるものかは、時代に合わせて研究開発が必要であることは皆様に申し上げるまでもないかと思いますが、その研究開発の成果を共有する仕組みとして意義があることを申し上げた内容になっているかというふうに理解しております。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、防衛体制の強化のために防衛省と共有するということに意味があるということですよね。これ、防衛強化のための閣僚会議ですから、そのことが問われる問題だと思います。
日経新聞の報道では、こういう報道がありました。防衛省は、今春にも、この春にも民間の次世代通信技術を安全保障に活用するための計画を作るが、その第一弾に想定されるのがNTTが開発中のIOWNだと。ミサイル攻撃情報の早期共有や電磁波を使った新作戦などに生かしていく、IOWNは情報を電気信号に置き換えずに送信でき、実用化ができれば、データ送信量は現在の百二十五倍、伝送遅延は二百分の一、消費電力は百分の一程度になる、こうした点から、防衛省はIOWNを高度な通信機能が不可欠な現代戦のインフラになると認定するなどと伝えています。
大臣は、衆議院の委員会で、総務省としてはIOWNの研究開発を支援していると答弁されましたが、このIOWN、資料、お配りした資料の、二枚めくっていただきますと、赤のラインで囲ってある⑤の情報通信というところですが、これ、防衛体制強化のための重要技術課題の⑤、情報通信なんですが、そこで、高速大容量の通信、低遅延な通信、広域な通信、あるいは従来よりも高性能な通信ネットワーク、光通信等に応えるものとしてと書いていますが、そういうものとして、IOWNの開発はそういうことで支援しているということですよね。どうなんですか。
【松本剛明 総務大臣】 IOWNの技術開発への支援ということでございますけれども、先ほども申しましたように、国民生活に欠かすことのできない情報通信の分野において国民の利便性を向上させるために研究開発が必要である中、今多くの皆様がブロードバンドを利用されたりする中で、高速大容量、また低遅延、そして、IOWNの場合はGXにもかなう電力消費量の低減などの効果も期待されるところでありまして、国民の皆様、利用者の皆様にとって大切な技術開発であるという視点から支援をさせていただいているものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 大臣、ちょっとごまかしてもらっては困るんですよ。国民生活の利便性の向上のためにIOWNはある、それはそうだと思いますよ。
ただ、大臣は、さっきの閣僚会議で、防衛体制の強化のための重要技術課題として協力していけると言ったじゃないですか。その協力していけるという研究開発というのは、じゃ、何なんですか。IOWN以外にあるんですか。IOWNのことでしょう、大臣が言ったのは。
【松本剛明 総務大臣】 個別の研究開発、どのような研究開発がこの防衛体制の強化に資するものであるかということにつきましては、これを明らかにすることで様々サイバー攻撃などの対象となるおそれもあることから、具体名を明らかにすることは控えさせていただいております。
【伊藤岳 参院議員】 IOWNも入るんですか、そこに。
【松本剛明 総務大臣】 一般論で申し上げて、国務大臣として、国民の生命、財産を守るために防衛力を確保することは必要であるということは申し上げなければならないかと思いますが、個別の研究開発について対象が、どのような研究開発がこの枠組みに参加をしているのかということにつきましては、先ほど申しましたように、具体名を明らかにすることは控えさせていただいております。
【伊藤岳 参院議員】 会議の目的はっきりしているんですから、はっきり答弁していただきたいと思います。
大臣にもう一つ聞きます。
通信政策につきましては、利用される方々の環境が変わる、技術が変わってきている、国際情勢も変わってきているといった変化を踏まえて、時代に合わせて不断の見直しが必要であると。つまり、市場の変化、技術の変化、そして国際情勢の変化と大臣言われています。この大臣が言う国際情勢の変化の中には、日米首脳共同声明が示した国際情勢の認識、これ当然含まれていますね。
【松本剛明 総務大臣】 委員が御指摘の日米共同声明の認識といったものが何を指すのかということについて、私も正確に今理解を申し上げているところではありませんけれども、一般的に、先ほど申しましたように、国務大臣として、政府として国際情勢の認識は共有をいたしているところでございますが、私自身が国際情勢の変化と、変わってきているということで申し上げましたのは、情報通信分野に関連する国際情勢の認識でございまして、グローバル競争の進展、経済安全保障環境の変化、地球温暖化の進展など、世界的規模の社会環境や市場環境の変化のことを指しておりまして、通信政策に係るこのような変化を踏まえて、さらには利用環境の変化や技術革新なども考え合わせて、時代に合わせた政策の見直しが必要と考えることからそのように御答弁を申し上げたところでございまして、今般のNTT法改正は、国際競争力の強化がグローバル競争の進展などを踏まえれば喫緊の課題であるということで、そこに焦点を当てて行うこととしたものでございます。
【伊藤岳 参院議員】 明確には答えられませんが、大臣も内閣の一員ですから、日米共同声明の中の国際情勢の認識というのは一致するはずなんです。
つまり、この日米同盟の下での軍備強化路線に合わせた情報通信政策の変質だと指摘したいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 はい。じゃ、もう一問あったんですが、時間という通知が来ましたので、次回に譲りたいと思います。終わります。
以下反対討論
【伊藤岳 参院議員】 私は、会派を代表して、日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案への反対討論を行います。
反対理由の第一は、本法案の附則には、NTT法の廃止を含め、NTT持ち株会社及びNTT東西の制度の在り方について検討を加え、二〇二五年通常国会をめどとして、日本電信電話株式会社等に対する規制の見直しを含む電気通信事業法の改正等必要な措置を講ずる法律案を国会に提出すると、自らの廃止検討を明記しているからです。利益優先の経営をより推進し、ユニバーサルサービスの責務から逃れたいNTTと、政府保有NTT株の売却、完全民営化を狙う与党の議論と歩調を合わせ、NTT法廃止のための布石を打つものであり、反対です。
反対理由の第二は、法の廃止を言いながら、研究開発の推進責務や普及の責務を廃止し、外国人役員に関する規制や役員選解任決議の認可の緩和、剰余金処分の決議認可の廃止、商号変更の自由など、NTT持ち株会社、NTT東西両会社の経営に対する政府関与の担保を縮小、廃止するものであるからです。
そもそも、日本電信電話株式会社等に関する法律は、公社時代に国民負担で築き上げた国民の財産である通信インフラの権利を承継したNTT持ち株会社とNTT東西両会社に、国民への電話のあまねく提供や研究開発の推進、普及などの責務を定め、それを実行させる会社とするために必要な担保措置を定めた法律です。
本法案は、国際競争力強化を理由に、これらの担保措置を縮小、廃止し、さらには、NTTが軍事研究を行う道を開くものです。しかも、NTT法の廃止を前提としています。
本法案には断固反対であることを述べて、討論といたします。