議事録

2024年4月5日 地方創生デジタル社会特別委員会(住宅団地の再生事業では住民参加を/地域再生法改定案質疑・討論)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。地域住宅団地再生事業についてお聞きをします。

 住宅団地の再生事業は重要な取組です。二〇一九年の地域再生法の改正で、手続のワンストップ化やURによるノウハウ提供の仕組みなど、地域住宅団地再生事業がつくられましたが、今回、地域再生推進法人が認定市町村に再生事業について提案できる制度や任意記載事項と特例措置の新設、拡充が行われます。

 内閣府にお聞きします。

 政府は、住宅団地再生に関連する地域再生計画の認定件数を五年間で五十件となることを期待すると衆議院では答弁されました。本改正を受けて地域住宅団地再生事業に取り組むことが具体的に想定される団地再生事業の候補として挙げることができる住宅団地は幾つありますか。お示しいただきたいと思います。

【佐々木正士郎 内閣府地方創生推進事務局審議官】 お答えいたします。

 住宅団地再生については、地方公共団体、民間事業者等を構成員とする住宅団地再生連絡会議に参画している地方公共団体を中心に、地方住宅団地再生事業に加え、デジタル田園都市国家構想交付金等も含めた支援措置を活用して住宅団地再生に取り組む件数が約五十件となることを期待しているところでございます。

 住宅団地再生に関係する地域再生計画の作成を期待する地域としては、例えば、住民団体が一般社団法人を立ち上げコミュニティー施設の運営や地域イベントを実施している神奈川県横浜市の上郷ネオポリス、市、民間企業、住民団体等が一般社団法人を立ち上げ移住促進や高齢者支援を行っている兵庫県の、兵庫県三木市の緑が丘ネオポリスのような、地域の関係者が主体的に住宅団地の再生に取り組もうとしている地域を想定しているところでございます。

【伊藤岳 参院議員】 私の事務所で内閣府からヒアリングをした際には、そのほか三つほど候補が挙げられていました。

 自見大臣にお聞きします。

 大臣は、衆議院の議論の中で、地域住宅団地再生事業は、多様な主体が一堂に会して、多様な要素から成る住宅団地再生の姿を総合的に描くことが前提だと、今日もお話しされていました。認定市町村や地域再生推進法人、民間事業者、デベロッパーなどが関わって取り組まれていくことになりますが、地域住宅団地再生事業の主役はやはりあくまで住民である、こういう認識でよろしいでしょうか。

【自見はなこ 内閣府特命大臣(地方創生)】 もちろんでございます。住宅団地の再生に当たりましては、地域住民が自分事として主体的に取り組むことが大変重要であります。

 私が訪問させていただきました上郷ネオポリスにおきましても、高齢化率が実に約五〇%となる中でありましたけれども、リーダー的な存在の方とそして対等に皆様でコミュニケーションしていただく中で、住民の、地域の住民からの提案に基づいて整備をされたコンビニ併設型のコミュニティー施設である野七里テラス、ここを、主体を、住民主体で運営をしてございました。また、住民の皆様でいろいろ考えられて、団地の中でのボランティア活動、またイベントの開催を通じまして、例えば小さいお子さんが高齢者の御自宅に買物訪問で訪問するとかそういった交流、そういったものも盛んに行われてございました。

 政府といたしましては、このような優良事例の周知を行いまして、地域に居住する皆様、住民の方が主役でございますので、主体的に住宅団地の再生に取り組んでいけるように後押しをしてまいりたいと考えてございます。

【伊藤岳 参院議員】 大臣は、地域再生法には地域住宅団地再生事業の地域再生協議会の構成員に住民が明記されていない点について、衆議院の答弁では、住宅団地によっては地域住民の流出あるいは高齢化が急速に進行している地域もございます、こういった地域におきましては住宅団地の再生に参加できる者が少ないといったところも想定されることから、地域住民を必須の構成要素とはしておりません。今日も同じような答弁があったと思います。

 しかし、少なくとも、先ほど候補に挙げていただいた幾つかの団地再生事業の候補の団地ですね、この住宅団地には現に多くの住民がいます。自治会などの住民組織があります。内閣府もマニュアルの中で、協議会に地域住民の代表や住宅団地の自治会の参加を得ることが望ましいと示しています。

 現在、地域住宅団地再生事業を実施している二つの団地に続いて、これら候補に挙がっている住宅団地の再生事業にも、当然地域住民の代表や住宅団地の自治会の参加を得ることを必須の前提に据えていくべきだと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。

【自見はなこ 内閣府特命大臣(地方創生)】 二つの地域、団地ですね、小川町、そしてまた平塚、いずれも住民が参画をしております。

 令和四年三月に全国で初めて地域住宅団地再生事業の計画を制作、作成、そして公表をしていただきました埼玉県の小川町の東小川住宅団地におきましては、廃校の既存校舎を有効スペースとしてコワーキングスペースや地域交流スペース等を整備することで、多世代の住民の交流や関係人口を増やすということを促進することによりまして地域の住宅団地の再生を図ることとしてございます。

 この計画の策定に当たりましても、地域再生協議会に地域住民も参画した上で、町を中心として、埼玉県、事業者など多様な主体とともに議論が行われ、そして現在の計画に基づいて事業が実施をしているところでございます。

 また、町からは、地域住宅団地再生事業計画の下に、地域住民を含む関係者が住宅団地の再生という大きな目標を達成するために一堂に会して地域再生協議会で議論を行い、また住宅団地再生の絵姿を共有し、そして、この結果、同時に複数の事業を実施できるようになったということに大変大きな意義があったというふうに伺ってございます。

 政府といたしましては、このように、地域の住民が参加した上で地域のニーズを踏まえた住宅団地の再生の取組が各地で進むことを促してまいりたいと思ってございます。

【伊藤岳 参院議員】 今後の事業においても地域住民の参加が促していきたいという御答弁でしたね。

 今大臣も紹介していただきました私の地元埼玉県の小川町の東小川住宅団地、パークヒルという名前が付いています。同団地は、先ほど大臣も若干紹介していただいたんで省きますが、入居開始当初、一九八一年は千三百世帯でした。そして今、空き家率は一四・八%、これ全国平均の一三・六%を上回っています。人口もピーク時の四千人を、今現在三千二百人で、高齢化が進んでいます。で、二〇二一年三月に地域再生計画の認定を受けて、その後、地域再生協議会が設置され、地域住宅団地再生事業計画が作成されるということになりました。

 東小川団地の場合は、自治会長、あと地域代表者、つまり街区の代表者もメンバーに加わって、住民アンケートなども実施しながら、計画に住民の声が一定程度、まあ全部反映されたわけじゃないですが、反映されています。先ほど大臣が言ったように、その結果、介護事業所ですとかデマンドタクシーですとか、移住促進のためのお試し賃貸住宅とかいうことが始まろうとしています。

 先ほど大臣言ってもらったと思うんですが、改めて、この東小川団地の取組、どのように評価しておられますか。まあ先ほどので大体言ったということでいいですかね。先に言った。ちょっと、それじゃ、これは、それを飛ばします。評価はしていただいているというふうに思います。

 それで、その上で、私、さらに、これ東小川団地のお話をこの間伺って感心したのは、この住民が再生事業に加わったことがその後にも生きているんですよ。

 例えば、昨年十月に四年ぶりに団地の秋祭りを開催したそうです。これ、コロナもあって久々の開催になったということはもちろんあるんですが、その久々の開催の祭りに、やっぱりこれ住民参加なんです。これまで自治会の班長さんが毎年交代制でやっていた祭りを、それじゃ駄目だということで、有志の準備会を募った、ボランティアを募った。準備委員に七人が立候補してくれたそうです。ボランティアには、住宅に住んでいる中高生二十人を含めて、何と七十人が手を挙げてくれたそうなんですよ。で、そのメンバーで知恵を出し合って、秋祭りでは、地元中学校の吹奏楽部の演奏だとか、ヒップホップグループが出演するとか、団地住民十一人がフリーマーケットを出すとか、あと、面白いのは、中学生によるお年寄り向けスマートフォン教室、これもやったそうなんですね。

 住民は、こんなに集まると思わなかったと、こんなにぎやかになると思わなかったと、団地再生に向けての自治の力、創造の力が芽生えてきたと振り返っておられるんですね。これ、大事だと思うんです。その住宅団地再生事業を進めるに当たっては、当然、認定市町村の認識と主体的な取組が何よりも鍵となりますが、やはり住民参加があってこそ未来が見えてくるんだと思うんですね。

 地域再生法には、団地再生事業計画の作成について地域再生協議会の協議を経るということを義務付けてはいますが、先ほど来議論になっているように、しかし、住民というのは明記されていません。その理由について、今日も答弁ありましたが、地域住民の流出や高齢化の進行で、住宅団地の再生に参加できる者が少ないということが想定されると大臣言われています。しかし、住民が再生事業の主役である以上、やっぱり法律上の明記があるのは当然だと私考えるんです。住民参加が少ないとか時間が掛かってはいけないなどは、私、法律に明記しない理由としてはちょっと弱さがあると思います。

 地域住民の参加と意見の反映を地域再生法に明記すべきではないかと思いますが、改めて大臣の見解を伺いたいと思います。

【自見はなこ 内閣府特命大臣(地方創生)】 お答え申し上げます。

 すばらしいお取組の御紹介、誠にありがとうございました。私どもといたしましても、今回の法律の趣旨でもございますが、やはり地域に住んでおられる方々が自らのこととして考えていただくということや、あるいはその地域の基礎自治体との伴走の中で様々なノウハウを蓄積していただくことにも大変大きな意味があるとも思ってございます。

 また、お尋ねの住民の意見が反映される仕組みについてでございますが、地域再生基本方針におきまして、地方公共団体が地域再生計画を策定する際には、地域住民を通じ、住民のニーズを十分に把握し、反映するように努めるというまず規定を置かせていただいてございます。

 委員もおっしゃっていただきましたが、その地域住宅団地再生事業計画を策定する際にでありますが、地域再生協議会の協議を経ることとされておりまして、この協議会には住宅団地の住民や地域住民の参加は必須とされていないわけでございますが、住民の事業の実施に際しまして密接な関係を有する者、その他必要がある者、必要があると認める者といたしまして市町村の判断で構成員に加えることは可能であり、また同時に、自ら構成員としても加えるようにできるという、こういう仕組みをつくらせてはいただいてございます。

 ところが、問題意識全く同じでございまして、私たちも、まず住民が主役だということ、そして住民のニーズを酌み取った事業内容となるということは極めて重要であるということでございます。よって、地方公共団体向けのガイドラインにおいては、可能な限り協議会に地域住民の代表や住宅団地の自治会、自治体の参画を得るように周知を行っていると、こういうことでございます。

【伊藤岳 参院議員】 更にお聞きします。

 自見大臣は、地域住宅団地再生事業は、多様な要素から成る住宅団地再生の姿を総合的に描くことが前提だと説明してきましたけれども、走り出した再生事業が結果として個別事業となってしまうことはないのだろうかと。

 例えば、自家用有償旅客運送事業の話も先ほど出ましたけど、始まってみたものの、その事業が後退してしまう、撤退してしまう、結局廃校に入ってきたコンビニだけ残ったと、そうならない担保というのは、この制度上、どこかにあるんでしょうか。

【自見はなこ 内閣府特命大臣(地方創生)】 地域住宅団地再生事業は、多様な主体が一堂に会し、土地利用、医療、福祉、交通等の様々な要素から成る住宅団地再生の姿を総合的に描くことを前提として、その実現のための調整や各種手続をワンストップで行い、同時並行でスピーディーに進めることを実現する制度でございます。

 前提となるその絵姿でございますが、合意を得るということに多くの労力を有するため、地域の事情によってはでありますが、十分に調整を行うことができず、結果として個別事業を行うのみとなったケースもあったというふうにも承知してございます。そのためでありますが、今回の改正によりまして、地域再生推進法人の提案制度ということを導入することによりまして、地域の関係者が主体的に取り組むことで住宅団地再生の姿を描きやすくしたところであります。

 またでありますが、地域の実情により結果として個別事業のみを行うこととなったといたしましても、地域住宅団地再生事業について、多様な主体が一堂に会し、そして目指すべき住宅団地再生の姿を総合的に議論していくということは、住宅団地再生を一歩でも前に進めていくためには重要であると思ってございます。

 なお、そういった絵姿を描くのが難しいというお声もいただいているところでもございまして、そういったために、様々な知見やノウハウ、あるいは意欲的な取組の紹介などがその地域に伺って必要になるという場合も想定してございまして、地域活性化伝道師と呼んでおりますが、そういった専門家の方々の紹介、派遣制度や、あるいは国交省の住宅局が策定をしております住宅団地再生の手引き、こういったものを活用していただくことも可能でございまして、地域が目指す住宅団地再生のこの絵姿の実現に向けて、最大限の後押しをしてまいりたいと考えてございます。

【伊藤岳 参院議員】 専門家の知恵、もちろん民間の知恵も必要だと思いますが、やっぱり住民参加とその住民の意見の反映が、再生事業の明日、未来が見えてくるという点では大事だということを強く強調しておきたいと思います。

 民間事業者の施設整備に関する地方債の特例についてお聞きします。地方債の起債対象が広がるということで、総務省にお聞きします。

 地方財政法第五条は、地方公共団体の歳出は地方債以外の歳入をもって財源とすることを定めています。本改正で補助経費の地方負担分を地方債の起債対象とすることによって、地方の財政規律に影響を及ぼすことはないのか、つまり、地方債以外の歳入をもって財源とするという原則が崩れるようなことにならないのか、総務省としての見解、伺いたいと思います。

【濱田厚史 総務省大臣官房審議官】 お答えいたします。

 地方財政法第五条第五号は、地方公共団体が行う公共施設又は公用施設の建設事業費につきまして地方債を充当できることと規定しております。

 一方、今回の法案に、改正法案におきましては、同法の特例といたしまして、交付金を充てて民間事業者等が行う公の施設の整備に係る助成について地方債を充当できることとしております。これは、民間事業者等が整備する施設のうち公の施設であるものについては、設置のために地方公共団体の条例が必要であり、公共性、公益性が制度的に担保されることを踏まえたものでございます。

 民間事業者等が整備する施設でありましても、公共性、公益性が担保された施設に限定されますことから、地方公共団体が整備する公共施設や公用施設と同様に財政規律は保たれるものと考えているものでございます。

【伊藤岳 参院議員】 今後、注視していきたいと思います。

 最後に、自見大臣、企業の地方移転を促進する地方拠点強化税制についてですが、これまでインサイドセールスや企業の管理業務を受託する事務所が本店又は主たる事務所の対象になっていなかったのはなぜですか。今回対象を拡大する根拠、お示しいただきたいと思います。

【自見はなこ 内閣府特命大臣(地方創生)】 お答え申し上げます。今回でございますけれども、元々地方拠点強化税制は、調査及び企画部門、情報処理部門、研究開発部門、そういった部門に適用されるものを事業者等々を対象としていたところでございまして、今般、委員もおっしゃっていただきましたように、令和六年度の法改正におきまして、IT等の活用のいい立地に関する地理的上制約が少なく、地方への移転等が比較的想定しやすいインサイドセールスや企業等の管理部門の受託を行う事務所を追加することといたしました。

 このICTを活用するインサイドセールスでございますが、コロナ禍に営業形態が変化する中で普及が進み、地方における拠点の強化の可能性が高まったが、高まりましたが、デジタル化の進展を背景に拡大が今後認められるということ、見込まれるということから、事業部門については、これまではこうした環境が十分に整っていなかったため対象としてはいなかったということでございます。

 今後、インサイドセールス等を新たに対象に加え、地方への人の流れを一層強いものにしてまいりたいと存じます。

 

 

以下反対討論

【伊藤岳 参院議員】 私は、日本共産党を代表して、地域再生法の一部改正案について反対の討論を行います。

 高齢化の進行、空き家の増加、交通機能の低下などが課題となっている住宅団地の再生や企業の地方移転など、東京圏一極集中を解消するための施策を進めていくことは重要です。しかし、本法案には看過できない問題が含まれております。

 地方拠点強化税制について、政府は、認定件数六百二十五件、雇用創出数二万六千人余りとしていますが、これは事業計画として提出された計画人数を足し上げた延べ人数です。実際に雇用促進税制の適用を受けた実績件数で見れば、直近三年間では各年度とも十件以下です。また、オフィス減税も雇用促進税制も移転型の適用は少数です。

 政府が目標とする二〇二七年度までに雇用者数四万人を達成するために、これまで本店又は主たる事務所の対象外としてきた電話やオンラインを活用した営業、コンサル業などを対象事業所に加えるなどの対策に走っていますが、これでは看板倒れになりかねません。東京圏への一極集中を是正する取組にも逆行しかねません。

 また、反対理由とはしませんが、重大な懸念がある問題の一つは、地域住宅団地再生事業について住民参加が必須となっていないことです。地域再生法は、地域住宅団地再生事業の事業計画の作成について地域再生協議会の協議を経ることを義務付けていますが、地域再生協議会の構成員は、法律上、認定市町村、地域再生推進法人、事業実施者等とされており、住民は明記されていません。内閣府のマニュアルでは、協議会に地域住民の代表や住宅団地の自治会の参画を得ることが望ましいとされていますが、住宅団地の再生事業を実際に進める上では住民参加とその意見の反映は避けて通れない問題です。

 また、本法案は、民間事業者の施設整備に自治体が補助をする場合、地方債の起債を可能としますが、本来民間事業者が自ら整備すべき施設を公の施設に指定したり、また逆に、地方自治体がその責任で行うべき公の施設を民間事業者に丸投げすることにもなりかねません。

 以上を述べて、討論といたします。