議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
NHK経営委員会の新体制がスタートした下でのNHK予算承認についての審議となります。
前任の森下経営委員長の下で、かんぽ生命の不正販売を報道した番組が日本郵政グループからの干渉を受け、NHKが第二弾の放送を取りやめるという事態が起き、さらには、NHKのコンプライアンスを理由に経営委員会が会長を厳重に注意したという事実が後に発覚しました。そのときの議事録の公開はいまだされていません。NHKが視聴者・国民の信頼を回復することができるのか、重要な場面に立っているという認識が必要だと思います。
まず、放送法についてお聞きします。
松本総務大臣、放送法の目的を定めた第一条の趣旨と、それを踏まえて放送番組編集の自由を規定した第三条の意義について説明をしていただけますか。
【松本剛明 総務大臣】 放送法第一条は目的の規定でございまして、この一条の中で、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって放送による表現の自由を確保することなどを定めております。また、放送法第三条は、ただいま御指摘もあったかと思いますが、放送事業者の放送番組編集の自由を定めております。
これらの規定が設けられている趣旨は、規律の確保はできる限り放送事業者の自主的な規律に委ねられるべきものであるということと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 戦前、戦中、NHKが政府の統制下に置かれて侵略戦争遂行の宣伝機関の役割を担ってしまったという痛苦の反省の上に、日本国憲法の下で作られたのが放送法だと思います。放送法の目的をうたった第一条の上に立って、第三条では、放送事業者に対して自らを律する機会を保障することによって放送法の規律が遵守されることが表現の自由を確保することになるとされています。
古賀信行NHK新経営委員長にお聞きします。
放送法第三十二条第二項、経営委員は、個別の放送番組の編集について、第三条の規定に抵触する行為をしてはならない、この意義についてどのように認識しておられますか。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 放送法三十二条の規定のとおり、経営委員が個別の番組の編集には関与できない、このようにまず認識いたしております。
この個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができないという規定を踏まえまして、私自身しっかり運営してまいりたいと、このように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 古賀経営委員長の放送法第三十二条に対する認識について答弁がありましたが、だからこそ、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈して「クローズアップ現代+」の第二弾の放送を取りやめて、しかも、その経営委員会が当時の上田会長に対して、まさに番組編集について極めて稚拙などとして厳重注意をしたという事実は、この放送法の根幹に関わる重大な疑惑であり、問題なんですよ。
資料をお配りいたしました。
稲葉延雄NHK会長にお聞きしますが、会長は、経営委員会について、個別の放送番組など業務の遂行に関する事柄は、放送法で規定されているとおり、執行部側の自主自律を担保していただくことが大変大切だと定例会見で語られました。会長、なぜこういうことを述べられたんですか。
【稲葉延雄 日本放送協会会長】 私が発言した内容は今委員が言及したとおりでございますが、NHKが公共放送としての使命や役割を適切に果たしていくためには、経営委員会、執行部とも放送法にのっとって業務運営に当たる必要があるという言わば当たり前の原則を述べたものでございます。
NHKの業務運営に当たっては、経営委員会が執行部をしっかり監督してガバナンスを利かせるとともに、執行部は自主自律を担保しつつ業務を執行していくことが何より大切だというふうに考えてございます。
今後も引き続き、経営委員会と執行部がそれぞれの役割と機能を十分発揮することによって、視聴者・国民の皆様の役割や期待に応えてまいりたいと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 古賀経営委員長にお聞きします。
今、稲葉会長が当たり前のことを言ったというふうに言われました。放送法で規定されているとおり、執行部側の自主自律を担保していただくことが大変大切、この会長の発言、これ、新たな経営委員会自身に問われている問題ではないでしょうか。その認識はございますか。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 御指摘のとおり、これは極めて重要な点だと私も考えております。
【伊藤岳 参院議員】 大事な認識言われたと思いますが、ただ、一般論としてこの放送法を遵守するということだけでは済まされないと思うんです。
古賀委員長に重ねて、古賀経営委員長に重ねてお聞きしますが、森下氏の主導で放送法第三十二条違反があったのではないかという視聴者・国民の疑念を払拭する責任について経営委員長はどのように考えているんでしょうか。この疑念を取り払って国民の信頼を取り戻す責任が新経営委員会にはあるんではないですか。具体的にお答えください。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 今後それをお示ししていくのが私の責務だと、このように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 今後お示しされるということでありましたけども、重ねて聞きます、古賀経営委員長。
経営委員長、衆議院の総務委員会でこう述べられました。議事録をきちんと作成して公表していく、公表してというのは、放送法の基本だというふうに考えておりますと答弁されました。これは、経営委員会が当時の上田会長に厳重注意した二〇一八年十月二十三日の経営委員会の議事録を作成、公表することが放送法の基本だというふうな考えだということですか。どうなんですか。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 元々、この経営委員会議事録については、経営委員会で議論して決めたことはその過程含めて遅滞なく公表するという建前になっております。その趣旨を貫徹していくのが非常に大切だと。
今委員おっしゃいました過去の事例に照らしてというところまで私はまだ持ち合わせておりません。ただ、今後きちんとやっていかなきゃいけないというその決意はしっかり持っているつもりでございます。
【伊藤岳 参院議員】 経営委員長、今日、この質疑の中で、決め事を知らせる責任があると、それが議事録だと言われました。ただ、その二〇一八年十月二十三日のこの議事録ができていないことは、この決め事を知らせるということが履行されていないということになりますね。ですから、この二〇一八年十月二十三日の議事録も、作成する、公表する責任は古賀経営委員長にもあるという認識でいいですね。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 具体的にその議事録そのものについてはしっかりもう一回振り返ってみたいと思いますが、いずれにいたしましても、委員おっしゃるその事案は今係争にもなっているところあって、ということでございますから、私は、そのこと自体について私の立場で、私の考えとしてここでお披瀝することは差し控えたいと、このように思います。
【伊藤岳 参院議員】 古賀経営委員長、係争中だからというのは、これは理由にならないと思いますよ。放送法第四十一条の規定なんですから。先ほど来、経営委員長もそのこと言われました。視聴者・国民のNHKと経営委員会に対する疑念を払拭する責任が経営委員長には求められていると思うんですよ。
それで、東京地裁の判決が二月の二十日にありました。経営委員会のこのときの議事録と録音データの開示を求める訴訟の判決でした。
その判決では、過去のある時点において被告NHKの役職員が本件録音データを保有していた事実、つまり本件録音データが存在している、この場合には、その状態が継続していることが事実上推認され、本件録音データがいずれかの時点で削除されたことが立証されない限り、被告NHKの役職員が現時点においてもその本件録音データを保有していると認められると結論付けました。御存じだと思います。
古賀経営委員長にお聞きします。
この東京地裁の判決は、端的に言えば、議事録が、二〇一八年十月二十三日の議事録がいまだ開示されていないというのは、開示されていないんだから本件録音データはまだ保有しているだろう、それに基づいて議事録を作成するまだ途上にあるんだろうという認識を示したものだと思うんです。
経営委員長、議事録が作成、公表されていないんだったら録音データは当然破棄することなく持っているだろう、これ普通に考えて当然だと思います。録音データはあるんですよね。どうですか。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 何せ係争中でございますから、私からはここではコメントは控えさせていただきます。
【伊藤岳 参院議員】 いや、係争中と言いますけど、放送法第四十一条の規定に基づいて聞いているんです。逃げちゃ駄目ですよ、経営委員長。
じゃ、別な角度でお聞きしますよ。
放送法の第三十二条の違反について重大な疑惑が残っています。第四十一条に基づく議事録の公表もされていないです。これ、異常な事態だと思いませんか。これ、新経営委員会体制の下でもいつまでも引きずるんでしょうか。引きずるわけにいかないと思うんですよ。
そして、新中期計画、経営計画には、国民から信頼されるNHKとうたっているじゃないですか。国民から信頼されていない事案があるんだったら、議事録をここは作成し、公表し、国民の信頼を取り戻す。係争中云々じゃない。古賀経営委員長、その責任があなたにはあるんじゃないですか。どうですか。
【古賀信行 日本放送協会経営委員会委員長】 私といたしましては、今後、私自身が運営していく経営委員会のありようでお示ししてまいりたいと、このように思っております。
【伊藤岳 参院議員】 是非、議事録と録音データの速やかな全面開示を求めて、これからも求めていきたいと思うんです。
それでは、インターネット配信の必須業務化についてお聞きをしたいと思います。
資料をお配りいたしました。
インターネット配信業務によって新しいサービスがどのように提供されるかはいまだNHK側からは示されていませんが、そういう中で、受信料徴収の対象についてはこのように明確に書かれました。特定必要的配信の受信を開始した者、難しい言い方ですが、つまり、テレビは持たないけれどもインターネットを活用し、かつ、NHKが受信できるアプリを入れて受信契約を結ぼうとする人というふうにこの改正放送法案では記されています。
総務省にお聞きします。
このNHKを受信できるアプリを入れたことをNHK側はどのように確認することになるんでしょうか。アプリのインストールだけでは、個人を特定されて受信契約締結することにはならないと思うんですが、いかがですか。
【小笠原陽一 総務省情報流通行政局長】 お答え申し上げます。
ただいま委員が御指摘いただいた行為について、今国会に提出している放送法の一部を改正する法律案におきましては、通信端末機器上の一定の操作等を経てNHK特定必要的配信の受信を開始した者を受信契約の締結義務の対象とすることということとしております。
つまり、一定の操作を経て受信を開始した者というふうにしているわけでございますが、それではこの一定の操作等ということについて具体的にはどうなっておるか、どうなるかということにつきましては、今後NHKにおかれまして検討されることになると思いますが、例えばですが、受信開始の前に、通信端末機器上でNHKの特定必要的配信を受信するためアプリをダウンロードした後、IDやパスワードを登録し入力することが例えば想定されます。この場合、このID等を入力してNHKのサイトあるいはアプリにログインした者を例えば特定必要的配信の受信を開始した者として特定する仕組みが考えられるところでございます。
【伊藤岳 参院議員】 アプリをインストールしてIDを登録しても、これは視聴する意思とはみなされないと思うんですよ。視聴するとは限らないと思うんです。しかし、今の答弁でいうと、ID登録の時点で受信契約の義務が発生してしまうということだと思うんですね。
稲葉会長にお聞きします。
これまでNHKと受信契約を結ぼうとしてこなかった方、約一千五百万人と言われますが、その未契約者の中から、今回この法案が通りますと、インターネットを利用し新たにID登録して実際に自ら受信契約を結ぼうとする人というのが、これ本当に出てくるとお思いでしょうか。NHKとして何らかの調査は実施したんでしょうか。
【稲葉延雄 日本放送協会会長】 御指摘の統計的な調査は行ってございませんので、確かなことは必ずしも分からないんですけれども、テレビをお持ちでないと思われる方から、NHKのコールセンターやSNS上で、受信契約を締結してNHKプラスの登録をしたいというような御要望というのはあるというのを確認してございますので、そういったことから、ある程度の類推はできるかと思います。
今回の放送法の改正案では、コンテンツ視聴の形態がテレビからインターネットに急速に変化する中で、テレビを設置していない方に対してもNHKの放送番組を継続的、安定的に提供するものと、こういうふうに承知しております。
放送法は今現に議論される最中でございますが、改正された際には、放送と同様にインターネットを通じて公共放送としての使命を果たしていきたいというふうに考えております。
【伊藤岳 参院議員】 視聴者と国民の理解が必要だということを申し述べておきたいと思います。
旧ジャニーズ事務所問題についてお聞きします。
稲葉会長、旧ジャニーズ事務所問題について、TBSなどは第三者委員会を立ち上げました。NHKはなぜ第三者委員会を設置して解明しようとしないんですか。
【稲葉延雄 日本放送協会会長】 これは以前にもお答えしたんでございますが、例えば不正経理問題とかいうものは、取材、制作に関わる領域ではありますけれども、公金である受信料の私的利用という公共放送の職員としての倫理、行動に関わる問題でございまして、こういった種類の問題については、第三者委員会を設置して調査するというのは適当ではないかというふうに思っております。
一方、ジャニーズ問題のような放送の内容について、報道機関として自主自律を堅持する立場から、自ら原因や背景を解明し、それを放送を通じてお伝えするというのが報道機関、放送人としては適切ではないかと、まずはこういう形で調査をしていくというのが今のNHKの基本スタンスです。
【伊藤岳 参院議員】 もう一つ聞きます。
旧ジャニーズ事務所が所有するビルであるパークウエースクエア3、これ渋谷区神南にあります。このビルの三階から七階部分、約七百五十坪、これ全てNHKが借りています。どのような賃貸借契約になっているんですか。家賃は幾らですか。
【稲葉延雄 日本放送協会会長】 例のNHKが借りている物件の賃貸借契約でございます。
個別の契約の具体的な内容についてはお答えできないんですけれども、建物の要件あるいは利便性など業務上必要な条件を満たすということを考慮した上で、コストなどを精査し、通常の手続にのっとって適切に契約をしているということでございますが、多分、お尋ねの趣旨はそういうことではないんだろうと思います。
一方で、NHKとしては、こういう人権上あるいは人道上問題を起こした企業などと契約する際、どういう在り方がよろしいか、こういった問題を起こした企業とNHKが契約する際、何を考えなければいけないか、そういった課題が検討していく必要があるのではないかと考えております。
【伊藤岳 参院議員】 このパークウエースクエア3の隣には、パークスクエア1、2というビルもあって、これもNHKが借りていますね。これ、三つ合わせて恐らく総額数十億円規模になると思いますよ。なぜこれ賃貸契約を結ぶ必要があったのか、この事実をつまびらかに示すべきだと思います。最後に一問聞きます。
【伊藤岳 参院議員】 はい。新たな営業アプローチというのが言われていますが、これはどういう趣旨で始められたのか。これ、対話訪問をやるというんですが、今まで対話訪問の主力を担ってきたNHKスタッフ、地域スタッフやNHKメイトに役割を担ってもらう必要があるんじゃないでしょうか。簡単にお聞かせください。
【稲葉延雄 日本放送協会会長】 はい。新たな営業アプローチにおきましては、多くの方にNHKの放送サービスに触れていただいて、それで公共的価値に共感し、NHKを必要だと感じていただくことが重要だと考えてございますので、そのため、具体的には、放送、デジタル、書面、複数の施策を通じてNHKの公共放送としての役割等を丁寧に説明していくと。こういった取組に加えて、視聴者の皆様にも直接お会いして対話する機会も大変重要だと思っておりまして、対面だからこそできるコミュニケーション活動というのも活発にやっていきたいというふうに思っております。