議事録
【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。
地域公共交通とライドシェア問題について質問いたします。
地域公共交通の崩壊というべき事態が今進行しています。地域住民の足、生活の足である乗り合いバスはどうか。
国交省、乗り合いバス路線の完全廃止、撤退について、二〇〇九年から現在までどのような推移になっていますか。
【石原大 国土交通省大臣官房公共交通政策審議官】 お答えいたします。
全国の一般乗り合いバスのうち、二〇〇九年度から二〇二二年度までの十四年間で完全廃止された路線長は、合計で一万八千七百八十六キロ、年平均では千三百四十二キロとなっております。
【伊藤岳 参院議員】 今ありましたように、何と地球半周分もの乗り合いバス路線が完全廃止、撤退となっています。
国交省、首都圏における乗り合いバス路線の完全廃止、撤退は、直近の二〇二二年度、二〇二三年度でどうなっていますか。
【石原大 国土交通省大臣官房公共交通政策審議官】 お答えいたします。
首都圏の一般乗り合いバスのうち完全廃止された路線長につきましては、二〇二二年度で合計三百十三キロとなっております。また、二〇二三年四月から二〇二四年一月までの十か月でございますが、首都圏で完全廃止された路線長、合計で約五百十二キロとなっております。
【伊藤岳 参院議員】 今答弁のあった全国そして首都圏の廃止の状況を資料でお配りしました。都市部でも乗り合いバス路線の完全廃止、撤退が顕著になるという新しい段階に至っています。
斉藤国交大臣、なぜこんなに減っているんですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 一つは、このバス路線が廃止が相次いでいるということにつきまして、人手不足、運転手不足ということが挙げられます。そのほかにも、人口減少等いろいろな要因があると、このように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 大臣、今大事なことを言われました。人手不足、運転手不足。
資料を御覧いただきたいと思います。
乗り合いバスの運転手は、十年前の二〇一二年度の八万二千六百三十四人から二〇二一年度は七万四千三百四十人と大きく減少しているんですね。また、乗り合いバス事業者に委託する各自治体のコミュニティーバスの廃止、撤退も各地で大問題となっています。
私の地元埼玉でも、二〇二四年からの撤退が四市六事業者、そして二〇二五年以降の撤退の相談が今、地方自治体に次々と寄せられ始めています。長時間労働と低賃金による運転手不足は大きな問題です。
国交省、バス運転手の年間労働時間、年間賃金の全産業平均との比較について、この五年間の推移、示してください。
【石原大 国土交通省大臣官房公共交通政策審議官】 お答えいたします。
バス運転者の年間労働時間でございますが、直近五年間で申し上げますと、二〇一八年が二千五百二十時間、二〇二二年は二千三百十六時間と減少しております。一方、全産業平均の年間労働時間は、二〇一八年が二千百二十四時間、二〇二二年も同じく二千百二十四時間と横ばいで推移してございます。
また、バス運転者の年間賃金でございますけれども、二〇一八年が四百五十九万円、二〇二二年が三百九十九万円となっております。一方、全産業平均の年間賃金は、二〇一八年、二〇二二年とも四百九十七万円と横ばいで推移しております。
【伊藤岳 参院議員】 これも次の資料でお配りをしております。
バスの運転手は全産業平均と比べて長時間労働で、しかも低賃金となっています。その上、二〇二〇年以降は、新型コロナ感染や物価高騰などの影響で賃金は大きく落ち込んでいます。
大臣、なぜこんなに長時間労働で低賃金なんですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 一つは、先ほど委員もおっしゃいましたコロナ等の問題がございました。非常に利用者数が減ったということ。そして、基本的には、その背景としては大きな人口減少、過疎化が地方では特に進んでいるということ。それから、先ほども申し上げましたが、運転者不足というのも現実問題と進んでいる。その運転者不足の原因としては、このように給料が低く長時間労働である、魅力的な職場ではないというようなこともあろうかと思います。
【伊藤岳 参院議員】 では、大臣、お聞きします。
バスの運転手の賃金のこの落ち込みについて、国交省はどんな対策を取りましたか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 国土交通省としては、将来にわたって運転者を確保できるよう、賃上げなどの処遇改善は極めて重要な課題であると考えております。
ということで、まず、令和三年に運賃改定時における運賃算定手法の見直しを、また昨年には運賃改定の迅速化を行いました。また、来年度からは、運行費補助について、賃上げに資する運賃改定を行った事業者への支援強化を行うこととしております。
これらの施策で運賃を上げ、かつ運転手のお給料を上げ、魅力ある職場にということがこの運転者不足を解消する一つの大きな手段であると、このように考えております。
【伊藤岳 参院議員】 今大臣おっしゃったように、賃金の算定基準の見直しをしたと。運賃の収入から人件費に回る分が増えるように基準を見直したということだと思いますが、じゃ、大臣、これで全産業平均に追い付きますか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 今こういう努力をしておりますが、まだ全産業平均にまで至っていないと、このように認識しております。
【伊藤岳 参院議員】 つまり、国交省自身の対策が全産業平均に追い付くと言えない対策なんですよ。
で、これだけ賃金が大きく落ち込む中で、先ほどの資料で示したように、運転士、八万人台でずっと推移していたのが、二〇二一年度からは一気に六千人以上減ることになったんです。運転士不足は、決してコロナ以後に始まった問題ではないと思います。国交省が十分この間対策を取ってこなかった、その結果が表れていると思うんですね。
国交省の第二次交通政策基本計画、二〇二一年に策定されましたが、この計画では、地域公共交通の交通崩壊が起きかねないと指摘をしました。国交省、その該当部分を紹介してもらえますか。
【石原大 国土交通省大臣官房公共交通政策審議官】 該当部分について読み上げさせていただきます。
日々の生活に密着した日常的な移動は、自家用車等のパーソナルなモビリティのほか、乗合バスやタクシー、地域鉄道、離島航路・航空路等の地域公共交通により支えられている。
しかしながら、地域公共交通は、人口減少等の影響により、輸送需要の縮小、運転者不足等の厳しい経営環境に置かれている。全国の約七割の一般路線バス事業者及び地域鉄道事業者において事業収支が赤字であり、国・地方公共団体の補助や、貸切バス・高速バス事業その他の事業の利益により補填することでサービス提供を継続してきたが、経営に行き詰まる例も見られる。
また、乗合バス・タクシー等の運転業務に従事する人々の労働環境は、全産業と比べ、労働時間は長く、年間所得額は低くなっており、人手不足・高齢化は年々深刻化している。このため、事業収支が黒字であっても、サービスの維持・確保が困難になっている場合もある。
こうした実情の下、地域公共交通が存在しない「空白地域」が、全国で拡大の一途をたどっており、年齢的理由や身体的理由等で自家用車を所有あるいは自ら運転できない「交通弱者」のモビリティの確保が極めて切迫した課題となってきている。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、旅客の輸送需要が更に減少している。交通事業が独立採算制を前提として存続することはこれまでにも増して困難となっており、このままでは、あらゆる地域において、路線の廃止・撤退が雪崩を打つ「交通崩壊」が起きかねない。
以上でございます。
【伊藤岳 参院議員】 今丁寧に読み上げていただきました。つまり、このままでは、あらゆる地域に、つまり都市部も含めたあらゆる地域に、住民の生活の足である地域公共交通が崩壊するという危機に直面しているとの分析なんですね。
そこでお聞きします。次のページに、次の資料を二枚お配りしましたが、国交省の乗り合いバス路線に対する支援があります。これ、説明してもらえますか。
【石原大 国土交通省大臣官房公共交通政策審議官】 お答えいたします。
国土交通省におきましては、バスの維持確保のために地域公共交通確保維持改善事業というものを講じておりまして、幹線バス系統と地域内フィーダー系統に対する運行費などの支援を実施してございます。
今申し上げました幹線バス系統というのは、複数の地方公共団体をまたがる広域的な地域間ネットワークを形成する路線で、バス事業者によって運行がなされております。
一方で、地域内フィーダー系統は、幹線バス系統に接続するコミュニティーバスやデマンドタクシーなどの形態を取るものがほとんどでございまして、自治体が中心となって運行されているものでございます。
これらに対する運行費支援の補助率でございますけれども、幹線バス系統については赤字額の原則二分の一、フィーダー系統については赤字額の二分の一以内となっております。
【伊藤岳 参院議員】 今説明のあった乗り合いバス路線に対する国交省の支援ですね。そのうちの一つ、地域内フィーダー系統補助、つまり地域内を小まめに走るバス路線の状況ですが、次をめくっていただくと、もう一枚資料をお配りしました。
この地域内フィーダー系補助の執行状況です。これ見ますとね、驚きました。乗り合いバス路線の赤字分の二分の一というのが補助対象経費なんですが、それに対する国の執行額、これ棒グラフの赤の部分ですね、それから申請額、黄色い部分ですが、この半分にも満たない。つまり、国の執行額は申請額の半分にしか執行していないということなんですよ。
大臣、何でこんなことになるんですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 先ほど政府委員から説明しましたように、幹線については二分の一と、それから地域内フィーダーについては二分の一以内ということで、なぜ、まず二分の一以内ということで幹線と差があるのかということかと思いますけれども、補助対象の地域内フィーダー系統は全国に四千以上も存在していることに加え、収支状況が非常に厳しく全体の赤字欠損分も相当な規模に上ることや、複数市町村をまたがる幹線バス系統を補完するものであるため、予算の制約がある中、二分の一以内としているところでございます。
そして、問題の本質である、なぜこんなに少ないのか、執行額に追い付いていないのかという点でございますけれども、地域内フィーダー系統の維持確保に当たっては、地方公共団体等の運行赤字額の二分の一以内を交付するとともに、地方公共団体の負担に対しては特別交付税措置が講じられているところでございます。
その上で、地域公共交通が置かれた現在の厳しい状況に鑑み、昨年来、地域公共交通のリデザインの取組を推進しておりまして、令和五年度補正予算及び令和六年度予算案において、AIオンデマンド交通の実証運行等を支援する共創・MaaS実証プロジェクトを始め財政支援の各種メニューを措置しているところでございます。ここはしっかり対応していきたいと、このように思っております。
【伊藤岳 参院議員】 二分の一以内と言うけど、これ、今グラフ見てもらったら、二分の一どころか、更にその二分の一じゃないですか。しかも、予算に限度がある、だったら予算増額すべきじゃないですか。どうですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 まず一つは、確かに二分の一以内で、そのまた二分の一で、トータルとして四分の一ではないかという御指摘、そのとおりでございます。
しかし、その赤字欠損額については、ほとんどがいわゆる地域公共団体が行っているわけですが、それに対しての財政支援措置、これいろいろ違いますけれども、例えばその八割を地方財政措置で補助している、こういう現実もございます。そういうことも含めます。
だからいいと言っているわけじゃないんで、今後、先ほど申し上げたような、これからの地域公共交通のリデザインでどういうふうにこの地域の最後のラストワンマイルと言われるフィーダー線系統を支援していくか、しっかり議論していきたいと、このように思っています。
【伊藤岳 参院議員】 普通なら、私の所管外ですと言う分野じゃないですか、それ、地方交付税ね。
これ、足りない分は地方特別交付税措置していると言うけれども、そもそも地方交付税というのは国が地方に代わって徴収する地方税ですよね。地方の固有財源ではないんですか。地方のお金、地方の固有財源じゃないですか。
松本総務大臣にお聞きします。私のこの認識、間違っていますかね。
【松本剛明 総務大臣】 地方交付税は、法の定めに従って、また地方交付税率などの定めに従って確保された交付税を地方にお渡しをするものでありまして、普通交付税と特別交付税という仕組みで現在お渡しをさせていただいていますが、それぞれ地方ともよくお話をした上で、今現状、必要な施策について、また災害などの臨時の需要について特別交付税などで措置させていただいているというふうに認識をしています。
【伊藤岳 参院議員】 いずれにしても、地方交付税というのは地方の固有財源だということだと思います。それなのにですよ、その地方の財源に頼って国交省が自らの補助事業に十分な役割を果たしていない、ここが問題なんですよ。しかも、地方交付税が措置されていると言いますけれども、これ八掛けですね、全額じゃありません。地方に負担が生じているじゃありませんか。斉藤大臣、こんなことでいいんでしょうか。
大臣、地域内フィーダー系補助の予算は増額すべきじゃないですか。どうですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 地域の公共交通、これは、赤字分は全部国が負担するという考え方よりも、国も当然入ります、そして地域、地方公共団体も真剣に考える、そして地域の事業者も考える、地域住民も考える。そういう意味では、地方公共団体が、地方公共団体の特別な予算の中で、固有の予算の中で地域の公共交通を支援するというのは決しておかしいことではないと私は思います。
ただ、国もしっかり、この地域の公共交通をしっかり支えていかなきゃいけないということで、国、地方公共団体、事業者、そして地域、しっかり話し合っていきましょうというのが昨年法律を作らせていただいたリデザインの考え方でございます。
【伊藤岳 参院議員】 私が言っているのは、余りにも国交省の責任がないということですよ。今、その乗り合いバス路線に対する支援というのは二百億円程度ですよ。私たち日本共産党は、せめて五倍の一千億円に増額することを提案しています。その程度の増額はすべきじゃないかということを聞いているんですね。
そしてもう一つ。実は、この地域内フィーダー系統補助については、新たに開始する路線に適用するとかの条件が付いてくるんですよ。ですから、初めから支援の対象外となる赤字路線があるんです。だから、私の埼玉県でも、私のじゃない、私の住む埼玉県でも申請可能な路線はごく限られて、僅か、僅かですよ、五千三百八十四万円しか行っていないんですよ。
大臣、予算額が足りているという認識なんですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 決して足りているという認識ではございません。
今、先ほど来申し上げましているように、地域の公共交通が大変厳しい状況にある、この認識は一緒でございます。この地域公共交通をどう守っていくか、特にラストワンマイル、地域フィーダー線、これをどう守っていくか、これは予算の増額も含めて今後しっかり議論していかなくてはならないと思います。
【伊藤岳 参院議員】 いや、本当にその予算を増額していくというのは、まさに今予算審議ですから、そうしないと住民の生活の足を守ることはできませんよ。
次に、タクシーとライドシェアについて聞きます。
タクシーも運転手の賃金改善が課題になっています。こういう事例があります。賃金体系を二〇二二年十一月に改定したさいたま市の飛鳥交通大宮というタクシー事業所において、最多賃金帯である、最も多い賃金帯である営業収入が四十三万円の運転手さんの場合、何と五万二千四百三円も賃下げが起きているんですよ。
斉藤大臣、この賃下げが起きている、こんな事態を放置されていいんですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 その個別具体的な例についてはちょっとコメントを差し控えさせていただきますが、一般論として、運転者の賃金等の労働条件については基本的に労使間で決定されるべきものであると承知しておりますが、運賃改定の効果が事業者における賃金に適切に反映されていない事実が確認された際には、当該事業者に対し適切に反映するよう指導を行ってまいりたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 埼玉県では昨年の十一月に運賃改定されたんですよ。それでも賃金に反映されていないんです。しっかり是正指導してください。
タクシーの運転手は、こうした足下で賃下げという事態が放置されたままなんです。こんなことも解決できないで、幾ら移動の足の確保だといってライドシェアだといっても、一方で運転手離れには加速、歯止めが掛からない。結局、移動の足の問題は解決しないんではないですか。大臣、認識どうですか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 過去においてタクシーの供給過剰による収益基盤の悪化や運転者の労働条件の悪化等の問題が生じ、タクシーが地域公共交通としての機能を十分に発揮することが困難な状況となり、これを解消することを目的として平成二十一年にタクシー特措法が制定されたと、経緯がございます。
本年四月から開始する地域の自家用車や一般ドライバーを活用する新たな運送サービスは、タクシーの不足を補完する範囲内で実施するものとしております。タクシー運転者の労働条件や処遇などの点も十分に踏まえて、慎重に制度設計をしてまいりたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 慎重に制度設計すると言うんですが、四月から始まるライドシェアの解禁では、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスですよね。しかし、このアプリ配車にはこんな問題が既に起きているんですよ。
これ、複数の事業所、複数の運転手から、私、聞いてまいりました。アプリによる配車では、例えば行き先が長距離乗車になる場合、アプリの系列タクシー事業所の運転手に配車が優先されるとか、アプリ配車を受けた回数で運転手に順位が付けられて、その順位が上の人がアプリからの配車優先的に来るというようなことがあるというんですね。
そしてまた、こんな話もありました。休憩も取らずに、何とか順位を上げようとして仮眠時間まで削って頑張って頑張って、順位が上位に上がったら急に配車通知が来なくなったという話もあるんですよ。つまり、アプリによる配車で運転手さんの手取り賃金に格差や賃下げが生じているという話なんですよ。
大臣、このアプリによる配車の導入でタクシー運転手の賃金や処遇が引き下げられることはないと、絶対ないと言い切れますか。
【斉藤鉄夫 国交大臣】 今回の四月からの施行は、一部地域また時間帯でタクシー不足が言われております、こういう、あと観光地もそうです、そういう社会的課題に対してどう対応するかという観点でございます。今、それにつきましていわゆるパブリックコメントを取っております。そういうパブリックコメントでも、そういうお声が来ていることも確かでございます。そういう声にも十分配慮しながら、そして先ほど申し上げましたようにタクシー運転手の処遇等も十分配慮しながら制度設計をしていきたいと思います。
【伊藤岳 参院議員】 ないとは言い切れないですね。
このアプリによる配車の参入を狙っている楽天などが入っている新経済連盟がライドシェアの解禁を迫っています。大企業の利益優先にして地域公共交通がゆがめられることは絶対にあってはならないと指摘して、質問を終わります。