議事録

2023年4月28日 本会議(マイナンバー 法案の利用範囲拡大、保険証廃止、公金受取口座、戸籍記載振り仮名問題を追及)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 会派を代表して、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。

 まず、マイナンバーの利用範囲の拡大について、デジタル担当大臣にお聞きします。

 個人情報保護委員会の直近の年次報告は、二〇一七年度から二一年度の五年間で、少なくとも約三万五千人分のマイナンバーに関連する情報の紛失、漏えいがあったことを明らかにしています。この年次報告について、政府は、誤送付も含めれば合計で約五万六千人分になるとしています。

 政府は、マイナンバー制度の利用範囲を税、社会保障、災害の三分野に限定し、利用できる事務や情報連携は法律で規定している、だから個人情報は安全なんだとこれまで繰り返し喧伝をしてきました。しかし、個人情報の紛失、漏えいは既に深刻な事態なのではありませんか。

 本法案は、基本理念の中で、マイナンバー利用を三分野に限定せず、その他の行政分野を加えるとしています。今でさえ深刻な個人情報の紛失、漏えいが続いているのに、全ての行政分野の中でマイナンバー利用を推進すれば、更に個人情報の紛失、漏えいが広がり、プライバシー侵害の危険が増大するのは明らかではありませんか。答弁を求めます。

 日弁連は、会長声明で、法改正に対する事前のプライバシー影響評価、PIA手続すら行われないまま、利便性や効率性のみを追求して法改正を急げば、自己情報コントロール権の保障が実現されていないこととも相まって、プライバシー保障上の危険性が極めて高まると厳しく指摘をしています。どう受け止めますか。

 本法案は、マイナンバーによる情報連携についても大きく拡大し、制度の大転換を行うものです。情報連携の対象を法規定から外し、法律の改正なしに、下位法令で規定するとしています。政府の一存でマイナンバーの情報連携を可能とするのはなぜですか。プライバシー侵害の危険性が広がるという認識はないのですか。

 以上、デジタル担当大臣の答弁を求めます。

 次に、マイナンバーカードと健康保険証の一体化の問題です。

 本法案は、健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに置き換えるものです。国民の大きな不安、強い批判があるにもかかわらず、なぜ現行の健康保険証を廃止するのですか。

 私の地元埼玉県の開業医を会員とする埼玉県保険医協会では、会員開業医にアンケートを実施して、その結果を公表しています。それによると、保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化となれば、オンライン資格確認システムの導入により、維持管理経費の負担などから、埼玉県下の約八千の開業医のうち一割に当たる開業医が廃業することになるとしています。肝腎の医療機関が廃業に追い込まれるのでは、何のための一体化なのですか。本末転倒ではありませんか。

 以上二点、デジタル担当大臣の答弁を求めます。

 本法案は、短期被保険者証、被保険者資格証明書の仕組みを廃止し、国民皆保険制度の根幹を壊します。さらに、マイナ保険証にしろ、創設する資格確認書にせよ、本人からの申請に応じた交付とします。まさに制度の一大転換です。

 厚労大臣にお聞きします。

 健康保険証は保険診療を受ける資格があることを示すもので、この保険証を被保険者に届けることは、国、保険者の責務です。健康保険証の交付を申請方式に変える根拠は何ですか。被保険者に保険証を届けるという国、保険者の責任放棄ではありませんか。

 申請方式とすれば、保険料を支払っていても、申請漏れ等により無資格、無保険となる国民が大量に続出することが避けられないのではありませんか。そんなことにならないというのであれば、その具体的な根拠は何ですか。はっきりとお答えください。

 申請の対象となる方には、案内、周知はされるのですか。病院などの医療機関が案内、周知の役割を担わされることになるのですか。申請漏れによって資格確認ができなくなった方にはどう対応するのですか。

 資格確認書の発行の対象であるマイナンバーカードによるオンライン資格確認が受けられない状況にある者とはどういう方を指すのですか。任意だから自分は取得しないという方、高齢者施設の利用者、入所者でマイナ保険証の代理申請が難しい高齢者の方、DV被害や虐待から避難されている方は対象になるのですか。保険証の廃止後、資格確認書は更新申請ができるのですか。こうした方々に医療費窓口負担の上乗せをどうして課すのですか。

 建設職人で構成される埼玉土建国保組合の取組についてお話を伺いました。私たち国保組合では、年度初め、組合の分会ごとに健康保険証の渡し会を開催しています。その場で国保制度について説明し、健康診断を受けることなどをお話をしています。組合員の健康増進にとってとても重要な機会ですというお話でした。

 国民皆保険制度は、こうした健康保険組合の取組や努力などに支えられています。申請方式は、国民皆保険制度の根幹を揺るがすのではありませんか。

 以上、厚労大臣の答弁を求めます。

 次に、公金受取口座の登録における特例制度について、デジタル担当大臣にお聞きします。

 本法案では、行政機関が把握している口座を公金受取口座として、受給者等に通知し、一定期間内に同意しないとの回答がなければ公金受取口座として自動的に登録可能としています。本人が知らないうちにひも付けされてしまう方法を取るべきではありません。明示的な同意、オプトインではなく、オプトアウトとしたのはなぜですか。

 EUデジタルサービス法では、利用者が自由かつ十分な情報に基づいた意思決定を行う能力を欺いたり、操作したり、あるいは実質的にゆがめたり、損なったりすることをダークパターンとして禁止をしています。本人が不同意の回答をしなければ同意したとみなすのは、ダークパターンに当たるのではないですか。

 以上、お答えください。

 最後に、戸籍や住民記載台帳に振り仮名を追加する問題です。

 本法案は、戸籍に記載されている人の氏名の振り仮名について、施行日から起算して一年以内に限り届出をすることができるとしています。しかし、一年を経過した後には、本籍地の市町村長が、管轄法務局長等の許可を得て、一般的な読み方で戸籍に振り仮名を記載するとしています。例えば、私の氏名は伊藤岳(がく)ですが、「がく」ではなく「たけし」が一般的な読み方だとされて、知らない間に望まない振り仮名が戸籍に記載されるということがあり得るということです。それは嫌です。

 今後生まれてくる子の名については、本籍地の市町村長が一般的な読み方であるかどうか審査を行い得ることになるとしていますが、一体どのような審査が行われるのですか。命名権、人格権への侵害に当たるのではありませんか。命名に行政が介入するのですか。法務大臣の答弁を求めます。

 個人情報保護の対策は後回しにしたまま、保険証を人質に取ってマイナンバーカードの取得を強制することはやめるべきです。

 以上を述べて、質問を終わります。(拍手)

 

【河野太郎 デジタル大臣】 まず、個人情報保護への懸念についてのお尋ねがありました。

 マイナンバー制度のセキュリティー確保策として、特定個人情報保護評価や安全管理措置の義務付けなどの制度面、個人情報の分散管理などのシステム面の両面において、個人情報保護に十分配慮した仕組みとしています。こうした対策により、情報漏えい等の報告があるものの、いずれもマイナンバーは悪用されておらず、マイナンバー制度の仕組みに起因するものでもありません。

 本改正でマイナンバーの利用範囲を拡大しても、こうした仕組みには何ら変更はなく、引き続き個人情報保護について万全の対応に努めてまいります。

 次に、情報連携の規定方法と個人情報保護についてのお尋ねがありました。

 本改正案では、情報連携を速やかに開始する観点から、法令でマイナンバーの利用が認められている事務の範囲内で、主務省令において情報連携を可能としています。

 この場合においても、情報連携できる主体、事務は法令で厳格に限定されていることから、政府の裁量が大きくなることはなく、主務省令の改正に当たってはパブリックコメントを行う必要があり、国民の皆様に見えないところで改正を行うことはありません。

 また、先ほどもお答えしましたように、この改正により、個人情報保護に十分配慮した仕組みに何ら変更はございません。

 次に、健康保険証の廃止についてのお尋ねがありました。

 マイナンバーカードを健康保険証として利用することにより、患者にとって医療データの共有等により診療の質の向上になることを始め、医療機関、薬局、保険者を含め、様々な立場からより良い医療につながるといったメリットがあります。

 このように、安心、安全でより良い医療を提供するだけでなく、医療保険制度の事務を効率化し、質を高めていくため、マイナンバーカードによる受診を原則とし、健康保険証を廃止するものです。

 次に、オンライン資格確認システムについてのお尋ねがありました。

 オンライン確認システムは、患者にとって医療データの共有により診療の質の向上になるほか、医療機関、薬局、保険者にとってもより良い医療につながるものです。その原則義務化に当たっては、機器の無償提供やシステム改修費用の補助を行うとともに、やむを得ない事情がある場合には経過措置を設けるなど、必要な措置をとっています。医療DXの基盤となるものであり、医療現場に導入の趣旨や支援策などを丁寧に説明しながら、導入をしっかりと進めてまいります。

 最後に、公金受取口座の登録制度についてのお尋ねがありました。

 本制度は、デジタル的な手法によらない簡易な登録方法を用意することによって、幅広い世代で、より簡単に給付金等をお受け取りになることができる基盤を整備するために創設するものです。

 また、本制度の実施に当たっては、書留郵便等により個別に事前通知を行うほか、広報等による周知徹底を図る予定であり、不同意の回答を行う機会を確実に確保することとしています。

 さらに、登録により国民の皆様が不利益を被るものでもないことから、御指摘は当たらないと考えます。(拍手)

 

【加藤勝信 厚生労働大臣】 伊藤岳議員の御質問にお答えいたします。

 資格確認書を申請方式とする理由についてお尋ねがありました。

 来年秋の健康保険証の廃止後は、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を基本としつつ、オンライン資格確認を受けられない状況にある方には資格確認書により受診をしていただきます。

 資格確認書が必要となる事情には様々なケースが想定されるため、全ての被保険者に一律に交付するのではなく、申請に基づいて交付することとしていますが、資格確認書の取得については、申請を勧奨するなど必要な対応を行ってまいります。

 資格確認書の申請漏れ対策についてお尋ねがありました。

 資格確認書の申請については、保険者から被保険者に対して、保険証の廃止について資格確認書の取得も含めて周知するとともに、オンライン資格確認を受けられない状況にある被保険者には代理申請を含め申請を勧奨し、資格確認書の申請が期待できないと判断された場合には、本人からの申請によらず職権で交付するなど、必要な対応を行ってまいります。

 資格確認書の交付対象者や更新の可否、受診時の自己負担についてお尋ねがありました。

 資格確認書は、マイナンバーカードを紛失した方や更新中の方、カードを取得していない方などに交付することは想定しており、高齢者施設の入所者や、DVや虐待から避難しカードの取得が難しい方々の申請がなされることも想定をしております。

 また、資格確認書には有効期間が設定されますが、本人の申請に基づき更新の手続が可能となっております。

 オンライン資格確認を導入している医療機関等については、薬剤情報などを活用した医療の質の向上が期待されるため、診療報酬上の加算の対象となっており、マイナンバーカードを利用した場合には、問診等の業務負担が減るため、患者負担を低くしているところであります。

 資格確認書の取扱いについては、今後の運用方法などを踏まえた上で検討することとなりますが、オンラインで薬剤情報等の患者情報を確認することはできないため、現行の被保険者証と同様の扱いになると考えております。

 資格確認書の仕組みの国民皆保険への影響についてお尋ねがありました。

 資格確認書の取得については、オンライン資格確認を受けられない状況にある方に申請を勧奨するなど必要な対応を行うこととし、これにより全ての被保険者が必要な保険医療を受けることができる仕組みとするため、国民皆保険の根幹を揺るがすとの御指摘は当たらないと考えております。

 マイナンバーカードによる受診により、御自身の健康、医療に関するデータに基づいたより良い医療を受けられるようにするなど、多くのメリットがあります。こうしたメリットなどを国民の皆さんに丁寧に説明してまいります。(拍手)

 

【齋藤健 法務大臣】 伊藤岳議員にお答え申し上げます。

 まず、本籍地の市町村長による氏名の振り仮名の審査についてお尋ねがございました。

 戸籍に記載する氏名の振り仮名につきましては、届出を受けた市町村の戸籍事務担当者が、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものかどうかを審査することになります。

 具体的には、漢和辞典など一般の辞書に掲載されている読み方については幅広く認めることが考えられ、一般の辞書に掲載されていない読み方についても、届出人から個別に説明を聞いた上で、社会において受容され、慣用されているものかどうかを判断することになります。

 次に、戸籍の氏名の振り仮名に関し、子の命名の在り方についてお尋ねがありました。

 本籍地の市町村長が戸籍に氏名の振り仮名を記載する場合の審査に当たりましては、いわゆる名のり訓等を幅広く許容してきた我が国の命名文化を踏まえた運用とすることを予定しています。

 したがって、行政が命名に介入するというものであるという御指摘は当たらないものと考えております。(拍手)