議事録

2023年3月10日 本会議(放送法の統一見解の撤回、後期高齢者の医療費負担二割撤回、市町村国保への支援、マイナンバーカードの交付率で地方交付税を傾斜配分するやり方を追及)

議事録

【伊藤岳 参院議員】日本共産党の伊藤岳です。

 私は、会派を代表して、地方財政計画、地方税法改正案、地方交付税法改正案について、関係大臣に質問いたします。

 放送法の政治的公平の解釈変更に、安倍政権下において政治的圧力があったことが明らかとなりました。極めて重大です。

 放送法第四条の政治的公平について、政府は、放送局の全体の番組を見て判断するとしてきましたが、二〇一五年五月十二日、当時の高市総務大臣は、一つの番組のみでも政治的公平が確保されているとは認められない場合があるとし、その後、電波法に基づく電波停止もあり得るとの国会答弁を行いました。二〇一六年六月、政府は解釈変更の統一見解を示したのです。

 総務省が認め、公表した行政文書は、当時の安倍首相の意向を強くそんたくし、個別の番組内容を政府が判断し、放送事業者に介入しようとする政治的圧力の実態を生々しく示すものです。礒崎元総理補佐官は、今月三日、ツイートをし、自ら総務省と数回にわたって意見交換したことを認めています。行政文書は、礒崎氏の意見交換から高市答弁までの流れの全体を裏付けるものです。疑惑が向けられている高市氏が捏造だと主張していることをもって、行政文書が示す一連の流れまで否定するなどできないことは明確です。加えて、高市氏の捏造主張については、総務省官房長も、一般論としながらも、行政文書について捏造があるとは考えにくいと答弁をしているのです。

 政治的公平について解釈変更を迫る政治的圧力が具体的に裏付けられた以上、二〇一六年の統一見解は直ちに撤回をすべきです。総務大臣の答弁を求めます。

 礒崎氏の証人喚問、関係者の国会招致などが不可欠です。国会としての真相究明を強く求めます。

 賃金は実質的に減る一方で、物価高の加速が止まりません。国民生活は一層深刻となり、貧困と格差の拡大が懸念されています。地方自治法が第一に掲げる住民福祉の向上を図るという地方自治体の役割を今こそ発揮することが求められています。総務大臣にその認識はありますか。

 ところが、国民に一層の負担を強いているのが岸田政権なのではありませんか。

 昨年十月、岸田内閣は、後期高齢者の医療費窓口負担の二割化を強行しました。年金が収入の大半を占める後期高齢者に、もう通院はできそうもないと受診抑制をもたらし、疾患を多く抱える後期高齢者の命と健康を脅かすという認識はあるのですか。

 後期高齢者の医療費窓口負担二割は直ちに中止をすべきです。厚労大臣の答弁を求めます。

 来年度、国保料値上げを行う地方自治体が大規模に広がろうとしています。その原因は、自公政権が二〇一八年度に実施した国保制度の都道府県単位化です。

 政府は、都道府県に一般会計からの繰入れ削減の目標化を押し付けて、国保料引上げの推進役を担わせてきました。こうした中、一期六年間の国保運営方針の最終年度を迎える二三年度は、国保料値上げへの一層の圧力が掛かるのです。

 年金生活者、非正規労働者、自営業者らが加入する国民健康保険の保険料の値上げは、家計に追い打ちを掛け、国民の生活を壊すことになるのではありませんか。

 国民皆保険制度の基盤は市町村国保です。市町村への十分な支援こそ国が行うべきです。厚労大臣、お答えください。

 異次元の少子化対策と言いますが、多くの自治体が求めている要望に正面から向き合わず、手をこまねいているのが岸田政権の姿です。

 学校給食の無償化が広がっています。我が党が独自調査を行いました。昨年十二月に発表した結果では、小中学校とも給食費を無償としている自治体は二百五十四、小学校のみは六、中学校のみは十一、合計二百七十一自治体に上っています。二〇一八年七月に文部科学省が発表した調査からも三倍を超える広がりです。

 憲法二十六条第二項は、「義務教育は、これを無償とする。」としています。子供たちが当たり前に人間として学校の中にいられるようにするためにも、給食を無償とし、どんな家庭の子も安心して食べられることとするのは当然です。国として学校給食の無償化に踏み出すべきではありませんか。

 国際公約である大学までの学費無償化をどう実現するのですか。

 以上、文科大臣、お答えください。

 保育現場は、人手不足から、勤務時間内に仕事が終わらない、子供の午睡中に事務仕事をやっているなどが実態です。厚労大臣、現場の実態から大きく懸け離れた保育士配置基準は見直すべきではありませんか。

 貧困と格差の拡大に歯止めを掛け、物価高の中、地域住民の暮らしを根本から支えることに地方税法改正案はどう応えているのですか。総務大臣の答弁を求めます。

 次に、DV、ドメスティック・バイオレンスの被害者保護とマイナンバーカードについてです。

 昨年一年間のDV相談件数は八万四千四百九十六件、過去最多を更新しました。国と地方自治体が被害者を保護するために最大限に努力していくことが求められます。

 ところが、マイナポータルを使って、DV被害者がどこの病院、どこの薬局を利用したかなどの履歴からその居場所を知られてしまう、いわゆる身ばれの危険があります。加害者による支配が当然想定されます。加害者がマイナポータルの代理人設定を行っていれば、被害者の情報が見られてしまう。デジタル大臣、その危険性を認めますか。

 また、マイナンバーカードのコールセンターにアクセスしてカードの停止をすれば、マイナ保険証は利用できなくなるのではないですか。マイナンバーカードを保険証として利用できなくなり、資格確認書を使わざるを得なくなった被害者も医療費窓口負担は高くなるのですか。

 以上二点、厚労大臣の答弁を求めます。

 人権侵害への危険性があるにもかかわらず、政府はマイナンバーカードの普及ありきでカードの普及率を交付税算定に利用し、自治体にカード普及を競わせようとしています。

 マイナンバーカード利活用特別分の地方交付税五百億円は、カードの交付率が全国の上位三分の一以上の自治体に傾斜配分するとしています。三分の一の根拠は一体何ですか。傾斜配分の度合いは何を基準に決めるのですか。全国上位三分の一以上、また、更に上位のカード普及率へと自治体をカードの普及競争に駆り立てることになるのではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。

 岸田政権は、地方の歳出を、前年度と実質的に同一の水準に抑え込むルールを続けています。このため、地方自治体は、社会保障関係費が毎年増加していっても、給与関係費などを削減していかざるを得ません。こうしたルールをやめて、住民の命と暮らしを支えるための財政需要に応えた地方財政の在り方へと根本的に転換すべきではありませんか。そのためにも、交付税の法定率を抜本的に引き上げるべきではありませんか。総務大臣、お答えください。

 最後に、LGBTQ、同性婚についてです。

 パートナーシップ条例が広がり、今月一日に導入した埼玉県嵐山町を加えて、二百六十六自治体、人口カバー率は六五%を超えました。

 多様な家族の在り方が認められ、一人一人の尊厳と権利が守られる地域と社会をつくっていくことが求められています。総務大臣の見解を求めて、質問といたします。(

 

【松本剛明 総務大臣】 伊藤岳議員からの御質問にお答えいたします。

 まず、政府統一見解の撤回について御質問いただきました。

 平成二十八年の政府統一見解につきましては、従来の解釈を補充的に説明したもので、より明確にしたものであり、従来の解釈を変更したものとは考えておらず、放送行政を変えたとも認識しておらず、放送関係者にもその点について御理解いただいていると認識しております。したがって、政府統一見解は撤回するものではないと考えております。

 次に、住民の福祉について御質問いただきました。

 自治体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、教育、福祉など広く住民生活に身近な行政サービスを担い、住民の福祉の増進に大変重要な役割を果たしております。このような行政サービスを自治体が安定的に提供していけるよう、必要な一般財源総額を適切に確保することが重要と考えております。

 自治体が地域の実情に応じて住民ニーズにきめ細やかに対応していくことができるよう、地方の声を伺いながら取り組んでまいります。

 次に、地方税法改正案について御質問いただきました。

 今般の地方税法改正案においては、物価高などの現下の経済情勢を踏まえ、中小企業者等が取得した生産性向上や賃上げに資する償却資産に係る固定資産税の特例措置を創設するなどの内容を盛り込んでおります。

 その上で、地方団体は住民の福祉の増進に重要な役割を果たしていることから、教育、福祉など住民生活に身近な行政サービスを安定的に提供していけるよう、自らの財源である地方税をしっかり確保できるよう努めたところでございます。

 次に、マイナンバーカード交付率の普通交付税の算定への反映について御質問いただきました。

 マイナンバーカードの交付率が高い市町村については、カードを利活用した取組に係る財政需要が多く生じることが想定され、また、これまでも普通交付税の算定に際して、地方団体を上位から三分の一ずつ区切る手法を用いていることを踏まえ、交付率の高い上位三分の一の市町村については、当該市町村の交付率に応じた割増し率により算定する予定です。

 カードの交付率については、普通交付税の算定スケジュール上、使用可能な最新の数値を用いる予定のため、現時点で交付率に応じた割増し率をお示しすることは困難ですが、これは財政需要を的確に算定に反映する観点から行うものであり、地方団体間の競争をあおる趣旨のものではございません。

 次に、一般財源総額の確保と法定率の引上げについて御質問いただきました。

 地方の一般財源総額については、骨太の方針において、令和四年度から六年度までの三年間、令和三年度地方財政計画の水準を下回らないよう、実質的に同水準を確保することとされております。こうした方針の下、令和五年度の地方財政計画においては、住民が利用する自治体施設の光熱費高騰への対応などの経費を充実した上で、交付団体ベースで令和四年度を上回る六十二・二兆円を確保いたしました。

 今後も、骨太の方針に沿って、地方財政計画の歳出に必要な経費を計上した上で、一般財源総額を確保してまいります。

 交付税率の引上げについては令和五年度予算においても主張いたしましたが、現在のところ、国、地方共に厳しい状況にあるため、容易ではございません。

 今後も、交付税率の見直し等により地方交付税総額を安定的に確保できるよう、政府部内で十分に議論してまいります。

 最後に、LGBTQ、同性婚について御質問いただきました。

 御指摘のパートナーシップ制度は、一部の自治体において、地域の自主性、自立性に基づいて独自に取り組まれている施策であると承知しております。性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないことですし、多様性が尊重され、全ての人々が、お互いの人権や尊厳を大切に、生き生きとした人生を送ることができる社会を目指していかなければいけないと考えております。

 

【加藤勝信 厚生労働大臣】 伊藤岳議員から四問の御質問をいただきました。

 後期高齢者の窓口負担についてお尋ねがございました。

 二〇二五年にかけて団塊の世代が後期高齢者となる中、負担能力に応じて、全世代で増加する医療費を公平に支え合う仕組みの構築は待ったなしの課題であります。

 後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直しは、現役世代の負担上昇を抑える観点から、負担能力や家計への影響を考慮した上で、一定の収入以上の方々についてのみ、その窓口負担を二割とするものであり、配慮措置も講じていることで必要な受診の抑制を招かないようにしており、中止することは考えておりません。

 国民健康保険への支援についてお尋ねがございました。

 国民健康保険は、加入者の特性上、保険料負担が相対的に重くなっているため、給付費の五割を公費で負担するなど、他の制度より手厚く公費を投入しており、平成三十年度以降は、財政支援を拡充し、毎年約三千四百億円の追加公費を投入しております。平成三十年度の制度改革において、国において財政支援を拡充するとともに、都道府県と市町村が共同で運営する仕組みとし、都道府県単位での保険料水準の統一に向けた取組を進めることで、法定外繰入れの解消を図り、安定的な財政運営を確保していくこととしております。引き続き、安定的な運営が図られるよう努めてまいります。

 保育士の配置基準についてお尋ねがございました。

 保育士の配置、保育士等の配置改善を図っていくことは重要な課題と考えており、平成二十七年度から三歳児に対する職員の配置改善に取り組んでおります。いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項に含まれている配置改善については未実施となっており、引き続き、安定的な財源の確保と併せて検討が必要と考えております。

 令和五年度予算案においては、現場の保育士の負担軽減を図るため、大規模な保育所においてチーム保育推進加算の充実を行うほか、見落としなどによる園児の事故を防止するための支援員の配置を推進することとしています。

 こども政策担当大臣の下、子ども・子育て政策として充実する内容を三月末を目途に具体化し、六月の骨太方針までに、将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示するものと承知しており、厚生労働省としても、必要な連携協力を行ってまいります。

 マイナンバーカード停止中の健康保険証利用についてお尋ねがございました。

 DV等の被害を受けて避難している方については、加害者が情報を閲覧することがないよう、オンライン資格確認等システム上、情報を閲覧制御する仕組みを設けております。制御期間中はカードを保険証として利用できませんが、被害者保護の措置がとられた後、被害を受けている方からのカードの再交付申請に基づき、改めてカードを交付し、健康保険証として利用していただくことは可能であります。

 資格確認書を利用した場合の窓口負担は、オンラインで患者情報を確認できないため、現行の健康保険証を利用する場合と同様の取扱いにならざるを得ないと考えておりますが、現在、政府として、カードの特急発行、交付の仕組みの創設を進めており、DV等の被害を受けている方へのカードの再発行の場合に対しても、関係省庁と連携して検討を進めていきたいと考えております。

 

【永岡桂子 文科大臣】 伊藤議員にお答えいたします。

 学校給食の無償化、学費無償化についてお尋ねがありました。

 児童生徒の学校給食費については、経済状況が厳しい保護者に対して、生活保護による教育扶助や就学援助を通じて支援をしているところです。学校給食費の無償化については、学校の設置者と保護者との協力により学校給食が円滑に実施されることが期待されるとの学校給食法の立法趣旨を踏まえ、設置者である自治体において適切に御判断いただくものと考えます。

 学費無償化については、国際人権規約の趣旨も踏まえて、これまで、幼児教育、保育の無償化、高等学校等就学支援金による授業料支援、高等教育の修学支援等、修学支援新制度など、学校段階全体を通じた教育の無償化、負担軽減に取り組んできたところです。

 また、給付型奨学金と授業料等減免については、令和六年度から、負担軽減の必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ対象を拡大することとしており、具体的な制度設計を進めているところです。

 今後とも、教育に係る経済的な負担軽減の取組を通じ、教育の機会均等に努めてまいります。

 

【河野太郎 デジタル大臣】 DV被害者等の情報を加害者が閲覧できる危険性についてお尋ねがありました。

 DV等の事例において、加害者が被害者のマイナンバーカードを持っていて、その暗証番号も把握している場合や、マイナポータルにおいて加害者が被害者の代理人として登録されている場合は、マイナポータルを使って被害者の情報を加害者に知られる可能性がありますが、二十四時間対応のコールセンターに御連絡いただくか、マイナポータルから代理人設定の解除を行っていただくことにより、加害者が情報を閲覧できないようにすることができます。この点、しっかり周知、広報に努めてまいります。

 DV等の被害に遭っている住民から相談があった場合に適切な案内が行われるよう、このような対応については、関係省庁とも連携の上、改めて自治体等に対して周知を行ってまいりたいと考えております。