議事録

2023年3月8日 予算委員会(放送法の政治的公平の解釈変更を示した行政文書ファイル問題)

議事録

【伊藤岳 参院議員】 日本共産党の伊藤岳です。

 政治的公平に関する放送法の解釈についての一連の文書が総務省の行政文書であることを松本総務大臣はお認めになり、総務省としても公表されました。

 松本総務大臣、行政文書と判断した根拠を御答弁願いたい。

【松本剛明 総務大臣】 ちょっと手元に条文がございませんが、行政文書は、御案内のとおり、定義は、当該行政機関の職員が作成をしたこと、職務上用いるとして保管をする組織的な対応などを含めて定義はそれぞれ決まっておりますので、今回は、御指摘のあった文書について、作成であるとか保管であるとか、それぞれの定義について少し精査をするのに時間を要しましたが、確認をさせていただいて、また、作成などが最終的に明確でないものもございましたが、フォントや体裁などから総務省が作成したと判断をされるのではないかということで、御指摘のあった文書については全て行政文書とすべきということで、行政文書として判断をいたしまして公表させていただきました。

【伊藤岳 参院議員】 つまり、当該文書は、行政文書は、作成者が総務省の職員だった、総務省内で共有されていたということだったと思います。

 大臣は、一部の関係者の認識が異なる部分があるなど正確性を確認できないものがあると言われてきましたけれども、正確性の確保が必要だと言いますが、しかし、行政文書として確認したのであるならば、それは総務省が省の業務として担当課室の職員が作成をして、業務としての必要性から関係者で共有しているということだと思います。

 放送法のレクについては、礒崎首相補佐官自身も認めておられる。したがって、礒崎氏のレクから藤川議員の二〇一六年五月十二日の質問に至る経過は、この行政文書に沿った一連の経過があった。大臣、そういう認識をしていますよね。

【松本剛明 総務大臣】 一点補足させていただきます。

 行政文書は、当該行政機関の職員が作成したものだけではなくて、当該行政機関が取得したものも行政文書として保管をすることとなっておりまして、先ほど御指摘のあった文書については、今、そういうことを含めた定義に該当するということで、行政文書として公表させていただいていると御理解をいただけたらと思います。

 その上で、これまでも当委員会について申し上げてまいりましたが、文書に記載されていることについては、関係の方々から聞き取りをさせていただいておりますけれども、認識が異なるとおっしゃる方もおられる。

 関係の方々が具体的にどのようなことをおっしゃったかは、聞き取られた方々自身のまた御了解を取らねばならないので、個々については今の段階では申し上げられませんが、その意味で正確性は確認できないものでありますので、その文書に記載をされている内容のとおりのことがあったかということで御質問をいただいたとすれば、確認ができませんので、私としては、今、そのようなことがあったとは考えておりません。

【伊藤岳 参院議員】 私聞いているのは、一連の経過があったというふうに認識はされているんですかということなんです。

 礒崎氏のレクには、放送法第四条、政治的公平についての解釈で、すぐに個々の番組でも政治的公平には抵触するものがあるはずだ、その事例を示せというふうに迫って、礒崎氏自身の案を示して、これは認められるかと詰め寄って、こういう経過が書かれています。そして、これは安倍総理と自分が決める問題だ、無駄な抵抗をするな、こういう一連の経過が書かれています。

 これ、政治的圧力そのものではないですか。この経過は認められるんですね。

【松本剛明 総務大臣】 今お読みいただいたのが私どもが行政文書として発表した文書であろうかというふうに思いますが、今お読みいただいたのも記載内容の一つでございまして、その記載内容については事実であるかどうか正確性を確認をさせていただくことができないものであるということで、その記載内容を前提に御回答申し上げることは申し上げかねるというふうに思っておりますが。

 私自身も、礒崎氏から法律の、礒崎当時の総理補佐官から法律について、解釈について問合せ、照会があったというふうに、ことは、関係の方々も同じ認識を持っている方がいらっしゃいましたので、問合せ、照会があったことは聞いておりますが、その内容が今おっしゃったような記載内容であるかということに関しては、今おっしゃった文書全体の中で認識が違うとおっしゃる方もいらっしゃるので、その発言等がそうであったかについては確認ができていないと申し上げたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 大臣、だから、礒崎当時の秘書官から働きかけがあったという経過は認識一致ですね。

【松本剛明 総務大臣】 私どもは、法律の解釈についての照会、お問合せがあったので、所管省庁として御説明を申し上げたというふうに理解をいたしております。

 その上で、是非御理解をいただきたいのは、その後の高市大臣の答弁、政府統一見解も含めて、従来の解釈を変更したものとは考えておりませんで、また、放送行政もそれと変わらずに行わせていただいているというふうに是非御理解をいただきたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 こういう礒崎氏のレク、その働きかけの経過があったということはお認めになっているんだと思います、御自身もね、いろいろ言われるんですけれども。

 大臣、聞きますけれども、従来の解釈を補充的に説明したものだと、放送行政に変更があったと認識していないと、大臣、強弁されていますけれども、しかし、長年政府は、放送法第四条が定める政治的公平とは、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断すると明言してきたではありませんか。そもそも権力を持つ政府が一つ一つの番組内容について、あれはいいとか、これはおかしいとか、白黒付けることはすべきではない。これは放送法の基本中の基本ですよ。放送法の基本となっている、基礎となっている憲法二十一条の表現の自由の基本中の基本じゃないですか。

 松本大臣、どうですか、この認識はありますか。

【松本剛明 総務大臣】 申し上げてまいりましたように、番組の全体を見て判断をするというこれまでの解釈を補充的に説明をしてきたものであるというふうに考えております。

 その上で、委員も御案内のとおりでございますが、昭和三十九年の四月にも御答弁をさせていただいておりまして、一つの、ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、これが直ちにというような答弁、長くなりますから間を省略しますが、これが政治的に不公平である、こういうことを判断するというような答弁をしておりますけれども、基本的な考え方はその後も一切解釈を、基本的には解釈を変えていないというふうに理解をいたしておりますし、また、今お話がありましたように、私どもは、放送行政、憲法の表現の自由、知る権利、大変重要でございますので、慎重に適切に法にのっとって放送行政をこれまでも、これからも行ってまいりたいと考えております。

【伊藤岳 参院議員】 放送法の基本だというふうに認識しているかどうかと聞いたんですよ、この番組全体で判断するということが。それに答えてくれればいいんです。

 ところが、二〇一六年の安倍内閣の下で統一見解がまとめられて、一つの番組のみでも政治的公平性が確保されるとは認められない場合がある、その場合はこういうことですよと例示をしている。

 これ、当然、解釈の変更ではないですか、大臣。これのどこが解釈変更ではないと言えるんですか。説明してください。

【松本剛明 総務大臣】 先ほども御答弁申し上げましたが、平成二十八年の二月にたしか政府の統一的見解が出ているかというふうに思いますが、平成二十八年の三月の国会における議論におきましても、当時の高市大臣が、これ、質問された側は、平成二十七年五月十二日の総務委員会での議論、そして平成二十八年二月十二日の政府統一見解に関連して御質問をされておられまして、政治的公平に関する御質問でありますが、これは、過去の答弁、現在発行されている逐条解説の内容に比べて踏み込んでいる内容にも見えますが大臣の見解を伺いますと聞いたことに対し、高市大臣は、放送法四条第一項の政治的公平に関する解釈は、従来のもの、現在発売されている平成二十四年逐条解説集と変わりはございませんと明確に答えておりまして、政府統一見解に携わったというか、発表された直後にもそのように政府としてそう理解をして御答弁申し上げていると理解しております。

【伊藤岳 参院議員】 大臣、本当に統一見解読んでいるんでしょうか。明確に書いていますよ。一つの番組のみでも政治的公平性を確保されているとは認められない場合がある、こういう場合だって例示しているんです。

 公表された行政文書の中に、平成二十七年二月十八日の山田総理秘書官レク結果というのがあります。礒崎首相補佐官、当時が総務省の幹部に放送法の解釈変更を働きかけた件に係る総務省と山田総理秘書官とのやり取りの文書です。こう書いています。

 今まで番組全体でとしてきたものに個別の番組の政治的公平の整理を行うのであれば、放送法の根幹に関わる話ではないか、本来であれば審議会等をきちんと回した上で行うか、そうでなければ放送法改正となる話、こう言っていますよ。山田総理秘書官のこの発言、私、総務省としては真っ当な筋の話ではないかと思います。

 松本大臣、どう思いますか、この発言。

【松本剛明 総務大臣】 御引用いただいた文書について、御発言された方も含めて、確認を取った文書ではないと考えておりますので、その文書を前提にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 確認じゃないんですよ、だから。こういうふうに山田さんが発言している、この内容についてあなたはどう認識ありますかと聞いているんです。確認の問題じゃないんですよ。こういうことを言っていることについての見解を聞いているんです。

【松本剛明 総務大臣】 当該文書は私ももちろん拝見はいたしておりますが、私は、当時の高市大臣が答弁で解釈を変更したものではないと委員会でおっしゃっていることは公的な記録に残っておりますので、そのように考えております。

【伊藤岳 参院議員】 全然違う話なんですね。

 さっきから言っているように、一つの番組では判断しない、番組全体で判断するというのは、これずっと政府が言ってきたんですよ。これ、放送法の基本ですよ。憲法二十一条の基本ですよ、これ。それが今、統一見解で変わった。そして、その山田秘書官が言っている、個別の番組の政治的公平の整理を行うんであれば、放送法の根幹に関わる話だと言っているんですよ。

 このことは大臣も認識同じですか、どうかと聞いているんですよ。もしこれ認識が違うと言うんだったら、これ、総務大臣辞めるべきですよ。どうですか。

【松本剛明 総務大臣】 政府統一見解についての解釈ということであれば、先ほども御答弁をさせていただいておりますが、放送法第四条第一項に定める政治的公平であることの判断については番組全体で見て判断するということで、これが従来からの一貫した解釈でございます。

 今御指摘のあった平成二十八年政府統一見解における極端な場合については、一つの放送番組のみで判断するといえども、他の番組とのバランスを見て全体で判断するものと理解をいたしております。

 この政府統一見解におきましても、今お読みいただいた部分以外の部分を全て読むと長くなるのであれをいたしたいというふうに思いますが、解釈は番組全体としてのバランスの取れたものであることとしており、幾つか途中は省略をさせていただきましたが、この従来からの解釈については何ら変更はないというふうに申し上げております。

 その際、番組全体を見て判断するとしても、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、一つ一つの番組を見て全体を判断することは当然のことであるということで、一つの番組でもと書いてありますので、解釈が変更がないこと、そして全体を見ることについても申し上げているのがこの統一見解だと理解をいたしております。

【伊藤岳 参院議員】 放送番組全体でとしてきたものを個別の番組の政治的公平の整理を行うのであれば、放送法の根幹に関わる、放送法改正に関わる話だ、このことも大臣言えないんだったら、本当に大臣としてあなた失格だと思いますよ、本当。

 今回、総務省公表した行政文書の経緯がなければ、統一見解はなかったはずです。政治的圧力によって作られたことは明白です。

 大臣、統一見解撤回してください。どうですか。

【松本剛明 総務大臣】 政府の統一見解につきましては、国会の方の御要請に基づいて政府としてお示ししたものであり、内容についてはもう従来からの一貫した解釈に補充的な説明を加えたものと考えておりますので、撤回をするといったものではないというふうに理解をいたしております。

【伊藤岳 参院議員】 二月十八日の山田総理秘書官レク結果では次のような発言も書いてあります。安保法制を議論する前に民放にジャブを入れる要旨なんだろうが、政府がこんなことをしてどうするつもりなのか、どこのメディアも萎縮するだろう、言論弾圧ではないかと山田さん言っているんです。

 これ、大臣、この発言どう思いますか。メディアが萎縮してしまうような解釈変更だったんじゃないですか。

【松本剛明 総務大臣】 繰り返しになりますが、解釈を変えたものではなく、放送行政も変えたとは認識しておらず、そのことについては御理解をいただけるように私どもも放送事業者の方にも御説明を申し上げ、御理解をいただけていると思っておりまして、メディアの皆さんが萎縮しているかどうかというのは主観的なお話ですので私が申し上げることではないと思いますが、十分に御理解をいただいています。

 その上で、山田当時の総理秘書官がどうおっしゃったかということについては私どもは確認できておりませんので、そのことに対するコメントは控えさせていただきます。

【伊藤岳 参院議員】 今、大臣、放送法を所管する総務省が問われているんですよ、大臣が。これ徹底の解明が必要だと思います。

 委員長、お願いがあります。

 当時の礒崎首相補佐官の証人喚問、そして関係者の国会招致を求めたい。お取り計らいを願いたいと思います。

【伊藤岳 参院議員】 高市大臣にお聞きします。

 公表された行政文書にある高市総務大臣、当時と総務省幹部らとのレクや安倍総理、当時との電話会談。先ほど、このレクについて、礒崎さんって余り知らないからこういうレクはあり得ないと言われましたけれども、自分の思い語られましたが、このレクがあったことが実際あったのかなかったのか、安倍元総理との電話があったのかなかったのか、もう一度明確に言ってくれますか。

【高市早苗 内閣府特命担当大臣】 少なくとも、その放送法の解釈を変更するしないといったレクは受けておりません。

 それから、安倍総理との電話ですけれども、その放送法に係るですね、内容に係るような電話をしたこともございません。

【伊藤岳 参院議員】 まあ、ないと言う。

 じゃ、この文書の中に出てくる、官邸には総理大臣、いや、総務大臣としては答弁を準備しておきますと伝えてくださいと、こういったことはなかったということですか。

【高市早苗 内閣府特命担当大臣】 絶対にございません。官邸にはという言い方も私はいたしません。その場合は個別の名前を言っているはずでございます。そのような放送法に関するレクをそのときに受けてはおりません。

【伊藤岳 参院議員】 まあ、ないないと言われるんですけれども、もう行政文書として認められたんですよ、高市大臣。捏造だと繰り返していますけれども、大臣、あなたの部下だった職員が作成し、共有してきた行政文書ですよ。ましてや、政府の作成した行政文書の正確性を野党側で立証しろなど、筋違いも甚だしいと思います。

 大臣、自らの発言に従って大臣お辞めになるべきだ、見苦しい言い訳はやめるべきじゃないですか。どうですか。

【高市早苗 内閣府特命担当大臣】 なぜその不正確な文書に従って私が辞めなきゃいけないんでしょうか。反対にお伺いしたいと思っております。